わたしの名前は相羽 海香(あいば うみか)。 今年小学4年生の10歳。 好きな人は隣の家に住んでる高校生の光輝お兄ちゃん。 わたしは『選ばれし子供』…っていうのみたいです。 でも普通はいるはずのパートナーのデジモンはいなくて…スピリットっていうデジモンの力が宿ってるアイテムでわたし自身が『進化』します。 わたしのデジヴァイス、ディースキャナの中に十闘士フェアリモンの風のスピリットが入っているんです。 ……フェアリモンってわたしがデジタルワールドに来る前から有名。 スーパーヒーローみたいに強くてかわいいんです。でも、その……ちょっと、いや結構…えっちな恰好。 とにかく、そのフェアリモンさんとわたしのスピリットのフェアリモンは同じだけど違うみたい。 どーしゅべつこたい?ってことらしい、よくわかんない。 デジモンって不思議だね。 わたしはデジタルワールドに来てすぐにスピリットと出会い、フェアリモンに進化…スピリットエヴォリューションできるようになりました。 見たことあるあの妖精のような姿になって戦うことにはすごく驚いたけど人間の時の私と比べたらパンチもキックもすごく強くてジャンプもすごい跳びあがるし、空も飛べる。 テレビアニメで見たヒロインみたいですごく興奮した。 でもあの恰好はちょっと恥ずかしいなって。 …まだマシだったんだけど。 最初は戦うことなんてとても考えられなくてこわかったけど悪いデジモンに襲われるデジモンを見たら助けなきゃ!って思う方が強くて戦うようになっていました。 リアルワールドとデジタルワールドを行き来しながら、デジタルワールドで悪いデジモンをこらしめる。 なんだか本当に正義のヒロインみたいで実は楽しくなっていた自分もいた。 同じ十闘士のヴォルフモンという仲間もできました。 わたしが困ってたり戦いで苦戦していると颯爽と現れて助けてくれる本当にかっこいいヒーロー! でもでもわたしが好きなのは光輝お兄ちゃんで!これは決して浮気とかじゃなくて! こほん……そしてわたしはいつしかディースキャナの中のフェアリモンのスピリット…ううん。 フェアリモンとお話ができるようになっていました。 お話といっても言いたいことがなんとなくわかるとか、進化してるときにフェアリモンと今同じ気持ちなんだ!って強く感じてすごく力が湧いてくることがあったりする感覚。 すごくうれしかった。パートナーがいる選ばれし子供たち『テイマー』の人たちを少しうらやましいなって思ったりしてたから。 わたしとフェアリモンもきっと形は違うけど、そんなパートナーになれるんだなって思った。 そうしてリアルワールドの日々の合間にデジタルワールドの冒険、そんな二重生活を続けていたんです。 そんなある日、事件が起きました。 その日はいつもより学校から早く帰ってこれて、いつものようにわたしはデジタルワールドにやってきて。 暴れているデジモンに遭遇して、逃げ回ってる幼年期や成長期のデジモンたちを守ろうとして戦いました。 でもその暴れデジモンは凄く強くて、フェアリモンに変身してもまったく歯が立たなくて。 あとから知ったけどそのデジモンは『完全体』という今まで相手にしていた『成熟期』のデジモンよりも更に上のデジモンだったそうです。 何度も何度も立ち上がったけどその度にたたきつけられて。 ついに立ち上がれなくなっちゃったその時、進化したままのわたしからフェアリモンのスピリットが浮かびあがった。 暴れデジモンがそれを掴んだ瞬間、胸の奥底からぞわってした。 フェアリモンがわたしから離れていくような錯覚…ううん、本当にフェアリモンを連れ去られるって思った。 スピリットを奪われたらフェアリモンとお別れ。 そんなの嫌だ!絶対に! そう思って無我夢中でスピリットを全身で抱きしめるように繋ぎ止めた。 奪い取ろうとする暴れデジモンの力と。 絶対に離さないって抱きしめるわたしの力。 あんなに力の差があったのにわたしはフェアリモンが奪い取られないように抵抗ができていた。 今までにないような凄い気持ち。 フェアリモンに進化した時は自分が自分じゃないような気持ちになった。 でもその時はフェアリモンと自分が一つになった…ううんわたし達が『わたし』なんだっていう不思議な感覚。 どんどん力が湧いてきて全身が光に包まれていた。 その瞬間、駆け付けたヴォルフモンの攻撃が暴れデジモン弾き飛ばしてくれました。 スピリットを奪おうとした手が離れて隙ができたところにわたしは全力で必殺技を叩き込んだ。 今までが嘘のように一撃で完全体の暴れデジモンをノックダウンできた。 凄い!って自分で驚くのも一瞬のうちにわたしは異変に気付いて。 驚くとか固まるとかより先にその場を飛び去った。 周囲の歓声やヴォルフモンの驚いた声を背に今までに出したことのないようなスピードでその場を後にして。 そして今。 誰もいない湖にたどり着いたわたしは荒れた呼吸を整えてそれとは違う理由もあってバクバクと脈打つ心臓をなだめる。 ずいぶん長い前置きになりました。 誰に説明してるんだって? 誰に説明してるんでしょうね。 わたし自身に説明してるのかも。 説明が欲しいのはわたしだって言うんですよ。 いい加減に現実逃避やめます。 自分の体を見下ろす。 今はまだ進化しているまま。それは感覚でわかる。 でも今まで進化していた姿とぜんっぜん違う。 身長は前と同じくらい、少し低い? 髪の毛は足先まであるんじゃないかってくらい長くて前と同じだけど、スミレの花みたいな髪色は今は艶やかで本当にきれいな真っ黒。 胸は……前よりも確実に大きい。 そして湖の水面をのぞき込む。 とっても見慣れているようで見慣れない顔…フェアリモンの顔とは違う。 その水面の映っているのは少し垂れ目気味で進化前のわたしとそっくりだ。 ……いや、わたしだ。本来のわたしじゃなくてわたしが成長したらこうなるんだろうなぁっていう顔。 「どうしてわたしがフェアリモンの恰好になってるのぉ!!」 直感でわかる。 わたしは成長したわたしの姿でフェアリモンになっているんだ。 (ウミカが私を繋ぎ止めた時、私とウミカが今までよりも遥かに強く結びついちゃったのね) 頭の中ではっきり声がする。 フェアリモンだ。 今までずっとお話したかったあのフェアリモンの声がする。 本当だったら感激して大喜びしてたと思う。 でもそれどころじゃないんだなぁ!!? (ウミカとわたしが深く融合した結果…どういうわけか『フェアリモン』に進化した姿がわたしのテクスチャじゃなくてウミカ自身が成長した姿になったというわけね) 「なんでもいいからなんとかしてよぉ!フェアリモン!!」 フェアリモンの言うように『フェアリモン』になっているわたしの姿はなぜか15歳くらい?にわたしを成長させたような姿だった。 『フェアリモン』と同じで下着みたいな恰好で。 「いくらなんでも恥ずかしすぎるよぉ!!!!!」 (今までもその恰好で戦ってたんだけど?) 「それはそうだけど違うのぉ!」 自分で言うのもなんだけど本来の『フェアリモン』よりもおっぱいが大きく、ピンク色だったコスチュームは黒色が基調となっていた。 色白の肌色に黒色が凄く映えているように見える。 黒色ってなんかすごくえっちに見える。 ……なんか、前もそうだったけど……これ凄く下着みたいだ……!!! 「これもしかして物凄く変態さんの恰好じゃない!?」 (わたしにそれを言う???) 動転しているわたしに対して物凄く冷静なフェアリモン。 むしろケラケラ笑ってる。 なにがおかしいんだよちくしょう!! おかしいのはこの格好だよ!! 「あとなんでバイザーついてないのぉ!?前の時はつけてたじゃん!」 (しらなぁーい) ムキィーーーーーーーーー!!!! 怒ってるせいなのか顔が真っ赤になってるのを感じる。 いやこれ恥ずかしくて真っ赤になってるだけだ。 耳まで真っ赤だ。 なんだったら首や肩まで真っ赤になってる。 顔から火が出そうってこういうのを言うのか、言ってる場合かーい! 「こんなの誰かに見られたら破滅だよぉ!!」 (今のウミカを見ても本当のウミカと繋げられる人はいないんじゃない?) 「たしかにヴォルフモンにも進化した姿しか見せたことないけどぉ!!」 腕をぶんぶん振って抗議してみる。 おっぱいが揺れるのを感じる。 大人の女の人が揺れてるのを羨ましくみたこともあるけどそうじゃない!今じゃないの! 「とにかく!元の姿に戻して!」 (はいはい) そう言って次の瞬間には全身がデジコードに包まれて小学生であるわたし本来の姿に戻る。 服も元の恰好である。 「よかった…本当によかった…あー恥ずかしかった」 (これから先が思いやられるわね) 「そんなこと言ってもねフェアリモン、あの恰好は人間基準ではすごくえっちで恥ずかしくて…」 そこまで言って思考が止まる。 なんだか凄く嫌な予感がする。 なんて言った? 「これから先…?」 (言ったでしょ、『フェアリモン』に進化した姿がウミカ自身が成長した姿になったって) つまりどういうことだろう。 それってこれからもフェアリモンに進化したら成長したわたしの姿であのえっちな恰好になるの? えっ?わたしあれでこれからも戦うの? えっ?わたし10歳だよ? フェアリモンって結構足を大胆に開いたり、蹴ったりするんだよ? えっ本当に? 「そんなぁ……」 (ごめんね?) ごめんねじゃないが。 あんなえっちな恰好で飛び回ったりしてたら変態さんだと思われちゃうよ! もしも光輝お兄ちゃんに見られたわたし死んじゃうよ…!? まあお兄ちゃんデジタルワールドにいるわけないけど… 本当にこれからどうなっちゃうの…私のデジタルワールド生活…… (続かない)