「よもや我に勝負を挑む愚者が存在するとはな……」  大きな体躯の牛の悪魔が、閉鎖空間の中で呟く。  この悪魔の名はガド。勝者が、敗者から賭けたものを奪うゲーム――アクマゲームを取り締まるゲームマスターだ。  対して、彼の前にはやや筋肉質な人間の男が立っている。この男は、ゲームマスターである悪魔を呼び出すことが可能な悪魔の鍵を所有しているホルダーだ。  基本的に、アクマゲームは人間同士で行い、それをゲームマスターが取り締まる流れになっている。だが、このホルダーは悪魔かつゲームマスターであるガドに勝負を申し込んだのだ。  自在に実体化して触れたいものにだけ触れられる等の、人非ざる力を持つ悪魔に人間が勝つことなど通常では不可能。故に、ゲームの内容やルールをこちらが決め、それに異議がなければゲームを行う形にするのはどうかとホルダーは提案した。  通常のアクマゲームのように悪魔が提示するゲームを行う形だと、勝敗は火を見るより明らか。退屈を嫌うガドにとって、それは望むところではないため彼はホルダーの提案を受け入れた。 「良いだろう。人間の無駄な足掻きを眺めるのも、面白そうだ。……それで、おまえがゲームに勝った時は何を求める?」  ガドの問いに、ホルダーはただ一言こう答える。オレの性奴隷になれ、と。 「これは驚いた。おまえが色情狂であるのは知っていたが、我まで対象になるとはな」  性別や種を問わず欲情する性質の人間。それがこのホルダーだ。悪魔であるガドに欲情するのも当然の流れであった。 「いいだろう。ならば我が勝利した場合、おまえから情欲を奪ってやる」  あらゆるものと性行為するために生きているようなホルダーにとって、情欲を失うことは命を失うことに等しい。だが、それでもホルダーは迷わずガドの提案を受け入れた。ホルダーの表情は、自身に満ち溢れている。 「ふむ。負けることを考えていないといった表情だな。面白い。敗北し、その面が絶望に歪むのを早く見てみたくなった。準備ができ次第、疾くゲームを始めようではないか」  §    制限時間は五分。  その間、ガドは絶対に実体化を解かない。その状態で、ホルダーはあらゆる手を駆使してガドに刺激を与える。ガドは刺激を与えられている間、抵抗してはいけない。五分以内にガドが性的絶頂を迎えるか実体化を解除してしまったらホルダーの勝利。そうでなければガドの勝利。  これが、ホルダーが提案したゲームの内容をざっくりとまとめたものだ。 「ゲームと呼べるかは甚だ疑問だが……これも経験か。退屈しのぎ程度にはなれば良いがな」  ホルダーが提案したゲームの内容は、性的なことに興味がないガドにとっては心底くだらないものであった。だが、一度ゲームをやると決めた以上それを反故にするのは彼の矜持が許さなかったようだ。ため息を吐きつつも、ガドはホルダーの提案を受け入れてその場に横たわった。  閉鎖空間の上部にタイマーが表示され、起動する。それと同時に、ホルダーは行動を開始した。  ホルダーは、仰向けで横たわるガドのズボンに手を伸ばし、一気に引きずり下ろした。  黒光りする太々しい男根と重量感がある睾丸が露わになる。  懐からローションを取り出したホルダーは、自身の右手にローションをまとわせてガドのやや黒ずんだ亀頭部をごしごしと擦り始めた。 「……ふん。無駄なことを」  ローションにまみれた手で亀頭部を擦られても、ガドは顔色一つ変えない。これは効果が薄いと察したホルダーは、次の手に打って出た。  ホルダーは、両手に精一杯の力を込めてガドを開脚させる。その後、左手でガドの尻たぶを引っ張った。  亀頭部と比べるとやや色素が薄い肛門が、外気に晒される。ホルダーは、その肛門にローションをまとわせた指を伸ばした。 「おまえが何をしようが我には無意味……ぐおっ!?」  固く閉じた肛門に、ホルダーが人差し指を一気にねじ込んだ瞬間、ガドの口から大きな声が漏れた。その反応を見たホルダーはにやりと笑いながら、中指も一気に挿入して激しいピストン運動を開始した。 「なっ、何だこれはっ! ま、待て、やめろ……っ!」  未知の刺激を受け、ガドの表情に焦りの色が浮かぶ。ガドは思わず実体化を解除しそうになったが、それは敗北を意味するため歯を食いしばって堪えた。  ゲームはが始まってから、まだ一分も経過していない。つまり、あと四分以上ガドは耐える必要がある。 「なっ、何故だ……!」  性行為の経験が豊富なホルダーは、すぐに前立腺を探り当てたようだ。  二本の指で前立腺を的確に抉られ続けている内に、ガドの太々しい男根が徐々に硬くなっていく。彼が性的な快感を得ていることは明らかだ。 「んおっ!?」  突如、ホルダーがガドの肛門から指を勢いよく引き抜いた。ようやくこの責め苦が終わったと思ったガドは、安堵する。この後、さらなる責め苦が待っていることを知らずに。  ――ホルダーが自らの下衣を脱ぎ捨て、いきり立つ男根を取り出す。  ホルダーの男根は、太さも長さもガドに負けずとも劣らない、人間としては規格外のサイズであった。  ホルダーは巨大な男根にローションをまとわせた後、その先端をガドの肛門に押し当てる。 「よせ……!!」  静止の言葉空しく、肉壁を押しのけてガドの中に規格外の男根がねじ込まれる。 「ぐおおおおおっっ!?」  ガドは目を見開き、涎を垂らしながら叫んだ。  痛み。そして、人間が快感と呼ぶ、ガドにとっては未知の感覚。それらが全身を駆け巡り、ガドの身体を大きく震わせた。  ホルダーは容赦せず、男根を根元まで一気に押し込む。その状態で、彼は全体重をかけてガドの前立腺を押しつぶした。 「こ、こんな、こんなことが、あって良いはずがっ……!!」  ホルダーが、全体重をかけた状態で円を描くように腰を動かす。その刺激はガドに多大なる快感を与え、ついにその瞬間が訪れた。 「わ、我が、人間ごときに……、がああああああぁぁっ!!」  ガドの肉棒の先端――ぷっくりと開いた鈴口から、大量の白濁液が噴出する。これが、ガドにとっては初めての射精。なおかつ、敗北が決定した瞬間だった。  ホルダーは勝ち誇った表情を浮かべながら、ガドの耳元でこう囁く。これでお前はオレの性奴隷だな、と。 「あ、うぁ……」  初めての射精と敗北にショックを受けたガドの顔が、絶望に歪む。そんなガドに追い打ちをかけるかのように、ホルダーは呟く。性奴隷の証として、オレの種をお前の腹の中にたっぷり注いでやる、と。 「ひあっ!?」  ホルダーはガドの乳首を乱暴につねりながら、腰を勢いよく振り出した。  閉鎖空間内に、乾いた音がリズミカルに響く。  乳首と前立腺、そのどちらもガドにとっては性感帯であったようだ。弱点を同時に責められ、快感の許容量を超えたガドの両目から涙が零れ落ちる。  ――今となっては意味を成さないタイマーの音が鳴り響き始めた頃、ホルダーはガドの中で絶頂を迎えた。  ガドの腹がホルダーの精液で満たされ、膨らんでいく。 「あ、あつ……ぐううううぅぅっ!!」  ホルダーが放った精液の熱を感じながら、ガドは二度目の絶頂を迎えた。  収縮と拡張を繰り返す肉穴の感触を楽しみながら、ホルダーは最後の一滴までゼリー状の精液をガドの中に注ぎ込んだ。  閉鎖空間内に、悪魔と人間の濃厚な精のニオイが充満する。  射精を終えて満足したホルダーは、ガドの頭を撫でながら彼に命令した。オレの性奴隷であることを自らの口で宣言しろ、と。  敗者であるガドに、拒否権はない。彼は悔し気な表情を浮かべながら、命令に従った。 「我はおまえの……いや、マスターの、性奴隷だ……」  ――こうして、ガドは堕ちてしまった。  今後、彼がアクマゲームを開催することはないだろう。  今日以降、彼が呼び出されるのはホルダーの性処理をする時だけなのだから――。 【了】