アリナのアトリエfor観測者ちゃん /// 「ほほぅ、よく描けてますね。そっくりです」 「まるで知ってたみたいな言い草なんですケド」 言葉とは裏腹に興味なさげに呟いて 「それはさておき、詳しく話して。プリーズ」 ジト目で催促する彼女が何故かほほえましく思えてクスリと笑いつつも、怒らせるつもりは無いので話すことにします 「そうですね、基本的にわたしがこうなるのは絶望よりも魔力消費が要因のことが多いです。だからなのか、あまり外に獲物を求めて行動するタイプではないようですし、強さとしてはそこまでではないはず」 「フーン…」 「ま、こうなってしまってはあとはもう討伐されてGSを差し出す以外に価値は無いのですけどね。この本のページを捲っては出来ることがないかと探し、全てが手遅れなことに気付いて嘆く……愚かというほかありません」 微妙に憤懣を滲ませながらわたしがそう言うと、アリナさんは少し意外そうな顔をして 「…いつもヘラヘラ笑ってばかりなアナタがそういう悪口とか言うのって珍しいヨネ。正直、リトルサプライジングなんですケド」 「わたしはわたし自身のことだけは嫌いですからね。それが周りに仇なす魔女になったとあれば尚更です。まぁ、アリナさんは知らないでしょうがそれは酷いことをしてきましたからね、わたし」 いや、本当に酷いことをしてきたものです。それも、それが酷いことだと露呈していないのがなお酷い 「本来であればわたし以外の誰かが座るべき場所に、それも相手がその場所を奪われたとすら思わないようなやり口で滑り込み、その相手ともにこやかに微笑みを浮かべて仲良くする。いつかどこかでここよりも高い巨人の肩の上に立ったわたしたちの知識や記憶を使って技術知見の剽窃をし、さもわたし自身が生み出したかのようにその産物を振り回して称賛を浴びる。法令やコンプライアンス、時には生命倫理も踏み越えて犯罪行為に手を染める……」 自嘲ではなく、ただ事実として様々な悪事に手を染めたことを思い出しながら告解するように吐き出す 「色々やってきましたからね。今更うまい具合に裁かれたり、あるいは許してもらったりできるとは思ってません」 「だから死ぬのは怖くない……って言いたいワケ?」 つまらなさそうな、しかしどこか怒りを滲ませた声で問われれば 「まさか。死んで許されるような閾値はとうに超えてます。むしろわたしは生き続けなきゃいけない。生きる義務がある。ずっとずっとずっと、力及ばず砕け散るその時まで償い続けるために」 「後ろ向きなんだか、前向きなんだか……アリナの求める美とはだいぶズレてるけどそれで何か強制できるワケでもないし、せいぜい長生きしてヘルプでもアポロジャイズでも続けてれば?」 「それはまぁ、ご期待に沿えずすみません。なにぶん固有魔法がこんな、アリナさん基準でいう美しい生き方が出来ない代物ですので」