「ウェー……センセイがまた変なことやってる……」煌々と光を放つ端末を見てマニカは怪訝な顔をする 「最近なんかいつもよりヘンな格好で歩いてると思ったら……動画配信? ナンデ?」 (ハシ=サンに知られたら怒られるだろうに)端末の横には、どこから拾ってきたのか、若い女性が煌びやかな衣装で映った古ぼけたピンナップの数々 ピンク色のやたら裾の短いスカート丈のドレスめいた服装の意味が、なんとなく分かった 「タノシイとかカワイイとかよく分かんないけど、こんなものわざわざ見に来るなんて……暇なのかね」 マニカには夜な夜な行われているこの動画配信の意味が理解出来なかった しかし、センセイがこんなことをやっている余裕が出来たくらいに今は平和な状態、というなのだろう それ自体に悪い気はしなかった「フッ」一息、笑みが零れた 『ユカ=サン?』『映ってる』『さてはお子さんか!』『ちょっとやめないか』画面右上のコメント欄がにわかにざわめき立つ 「エ……もしかしてこれ映ってンの?」画面の点滅が激しくなっていることに気がつき、呟く 『はい』『見えてるよ』『カワイイ!』リアルタイムで行われるレスポンスは確かな現実だ!「エ」 『カワイイだ!』『映り込み助かる』『幼女だ』『フィヒーッ!』『プリザーヴド=サン!?』『ドーモ、「永遠のドラゴンアイドル☆リュー・ユカの配信チャンネル」=サン、初見です』 「え? え?」 キャバァーン!キャバァーン!赤色のコメント欄で万札が乱れ飛ぶ! 「ウソ、やだっなにこれ、どうなってンの!?」 ナムサン! 配信を終えたあと終了のボタンを押し忘れる、いわゆる配信事故である! 「ちょ、ちょっとマッテ! ウチそういうんじゃないから!?」無意味に端末の前で手を振り乱したり顔を手で覆い隠したりしているうちに、来場者数は加速度的に増えていく! 「いち、じゅう、ひゃく、せん……これ全部、万札……? う、ウソでしょ?」『本当です』マニカの顔はみるみる青ざめていく! 「み、みんなジョークだよね? カネってもっと大切なもので、大事にしないとでさァ……? あ、アイエエエ……!?」 『カワイイヤッター!』『この配信に「良い」を押しました』『激しく前後』『フィーヒヒヒ!フィーヒヒヒ!』『ワシのプリザーヴド=サンじゃぞキサマら!』『オヌシにインタビューする』 「アイエエエ! コワイ! コワイよォー!」マニカは泣きながら部屋を飛び出した キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!……この配信の来場者数は今までの数千倍にもなり、ドージョーの食事が少し豪華になった