二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1708786287415.png-(133747 B)
133747 B24/02/24(土)23:51:27No.1161123850そうだねx1 01:11頃消えます
「ごちそうさま。
あー。食べたなぁ」
お腹が心地よく満たされると、箸を置く音さえも小気味よく響く気がする。
アタシは食べるのが好きだ。口に運ばれる食事の味はもちろん、見た目も、匂いも、話す言葉も、そこで過ぎてゆく時間の全てに楽しみがあるから。
「お粗末さま。どうだった?」
最近は彼に料理を振る舞ってもらうことも増えた。肉屋と青物屋のおじさんに揃って乗せられてしまって豚肉と白菜を買わされているところも、なんだかんだで新しい料理に挑戦するのが楽しくて、鼻唄を歌いながら具材を切ってゆく姿も、思い出すだけで微笑ましくなる。
そんな彼がアタシの感想を待ちわびていることも、きっとそういう楽しみのひとつだ。食べている最中のアタシを見守る表情はあんなにも優しそうだったのに、今はすっかり褒めてほしがりの子供のような顔をしている。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
124/02/24(土)23:51:43No.1161123967+
美味しかったと口に出そうとしたけれど、そんな彼の表情があんまり可愛らしくて、つい笑ってしまう。
「あははっ。なに、その顔」
「いや、口に合ったかなって気になっちゃってさ。
…もしかしておいしくなかった?」
出会ったばかりのころはもっと固くて、落ち着いた大人だと思っていたのに、付き合えば付き合うほどその愛らしさが見えてくる。
「そんなことないよ。白菜は味が染みてたし、お肉も柔らかくて美味しかった。
きみが面白い顔するんだもん。いじわるしたくなっちゃった」
どんなスパイスよりも綺麗に、食卓に華を添えてくれるそれが、アタシはひどく好きだった。
224/02/24(土)23:52:01No.1161124104+
美味しい料理に楽しい時間。いつものように満たされて、いつものように幸せでいっぱい。
だからこれで今日はおしまいにしても、少しも文句はないはずだった。
「今日もよかったな。
きみ、ほんとに料理上手だよね」
「元々は精々人並みくらいだったんだけどな。誰かさんのお陰で作る機会が増えたから」
でも、皮肉っぽく笑いながら答えるきみを見ていると、アタシも悪戯心が湧いてくる。
「へー。じゃあ、アタシの好みはばっちりわかるってことだ」
「…まぁ。けっこう自信あるよ」
少したじろぎながらも、怖気づかずに向き合ってくれたことが嬉しい。
だから、もっと踏み込んできてほしい。アタシの心を、きちんと拾い上げてくれるように。
「じゃあ、訊いちゃおう。
今、アタシが食べたいものはなんでしょう」
324/02/24(土)23:52:15No.1161124178+
「ははは。なんだ、まだお腹空いてるのか?」
そんなアタシの他愛もない問いかけに、珍しく彼が微笑んで返した。いつもならけらけらと笑うのはアタシの役なのだけれど、たまには笑われてみるのもいいと思った。
「うん。
というか、きみの作ったものが食べたいんだ。そのためならいくらでも空かせるよ」
きみが微笑む。その次には恥ずかしそうにぷいと目を背ける。
移ろう雲のようにころころと変わるきみの表情を、味わい尽くしたかった。

真面目な顔になった彼は、少しだけ首を傾げて思案していた。その表情が何かを思いついたように柔らかくなって、席を立った彼がキッチンに向かうと、それについていくアタシの足取りも軽くなる。
「そうだな。
ちょっと待っててくれるか?」
またきっと、楽しいことが始まる。そう思うといてもたってもいられなかった。
424/02/24(土)23:52:28No.1161124270+
「だめだぞー?
できるまで待っててくれよ。もうちょっとだから」
咎める彼の声も優しくて楽しそうだから、何度も同じことをしては窘められるのをやめられなくなる。そうやって彼が律儀に、けれど楽しそうに構ってくれるのが嬉しくて、入口に隠れたまま笑ってしまうと、示し合わせたように彼のくすくすと微笑む声が聞こえた。

アタシは猫みたいだと、きみに言われたことがあったね。
ひとりは気楽で好きだけど、構ってほしいと一度思うと、悪戯心を抑えきれない。
本当にそうだね。笑えてしまうくらいに、アタシはわがままな猫のままだ。
でも、それはきみがいけないんだよ。
いつだって真剣に、誰よりも楽しそうに、アタシと遊んでくれるきみが。
524/02/24(土)23:52:43No.1161124375+
「はい、どうぞ」
白くもっちりとした麺に、澄んだ褐色の出汁がきらきらと光る。彼が出してきたそれは、もう満腹のはずのお腹に食欲を呼び戻すには十分だったけれど、すする前に好奇心が勝った。
「うどん?だけど、上になんか乗ってるね」
黄色く細いたなびく雲のように、玉子が所々に散りばめられている。箸を入れるととろりと後を引く感触が新鮮で、彼と顔を見合せた。
「余ってたきのこと生姜を入れてみた。あと卵も。
こないだテレビでやってたんだけどさ。関西の方だと、うどんはあんかけにして食べるんだって」

少し誇らしげににこりと微笑むきみを見ていると、葱と生姜の香りがいっそうよく感じられる。そんなきみが作ったものを、早く食べてみたくて仕方なくなる。
「…すごいな。思ってもいなかったのに、なんだかすごくしっくりくる。
…うん。いいね。美味しそう」
アタシの思いの外からきみが楽しさを運んできてくるのが、何よりも好きだ。きみの手が世界の裏表紙をめくると、そこには知らない景色が広がっている。
624/02/24(土)23:52:55No.1161124455+
褒められるのが照れくさくて、少し茶化すように微笑むきみ。それでもアタシの「好き」を、何よりの宝物と言ってくれるきみ。
アタシの好きな世界を、アタシと同じように好きでいてくれたきみ。
「予想外だったんだ。
なら、正解じゃない?」
そんなきみがくれたものには、いちばん大きな丸をあげたい。
「うん。正解じゃないよ。
だってさ、大正解だもん」
アタシの好きが、きみの中で夢になる。
それはきっと何よりも、アタシの心にぴったり嵌まる気がするから。
724/02/24(土)23:53:10No.1161124559+
「覚えてる?
あのときも、きみにうどん作ってもらったよね」
まだ彼がアタシのトレーナーではなかった頃の話だ。風邪を引いて行き倒れかけていたところを、彼に介抱してもらったことがあった。
思い出すと、また笑ってしまう。彼はあのときからそうだったっけ。ずっと契約を断り続けてきたのに、アタシのことを理解したいと、寄り添うことをいつまでも諦めなかった。
「ふふっ。なんでもわかっちゃうんだね、アタシのこと」
「なんでもはわかんないよ。わかってあげたいけどさ」
きみがずっとそのままでいてくれることが嬉しくて、あのときからずっときみに甘えるのをやめられない。自分でもどうかと思ってしまうけれど、それがどうしようもなく楽しい。
「じゃあ、もう一問やってみようか。
アタシが今いちばんほしいものは何だと思う?」
824/02/24(土)23:53:25No.1161124650+
こうやって彼に何かを問うと、彼は決まって少し困ったような顔をする。アタシの提案はいつも突然だから、当然かもしれないけれど。
「急だなぁ、ほんとに」
「いいからいいから。
当ててみてよ。今思い浮かべてるからさ」
でも、最後には結局、笑いながら付き合ってくれるのだ。それが楽しいから、巻き込みたくなってしまうのだけど。
「新しい蹄鉄?」
「うーん、残念」
正解してくれるなら無論嬉しいけれど、彼に当ててもらうことだけが楽しみなら、ここまでのめり込むことはなかっただろう。
「好きな詩集とか」
「いいね。でも、今の一番じゃないかな」
惜しい答えを出してきたときの、掻いてほしい場所のすぐ隣を撫でられるようなもどかしさも、まるで見当がつかなくて、それでも考えるのをやめないでいてくれる彼の表情も全部が好きだから、アタシは彼に問い続けるのだ。
924/02/24(土)23:54:02No.1161124897+
「ごめん。降参」
「あははっ、落ち込まなくてもいいよ?きみでもわかんないと思ったから訊いたの」
とはいえ、今回は少しばかり意地悪だったかもしれない。答えられないことがわかっていたからこそ、問いかける意味があったのだから。
「大丈夫だよ。
今もらったから。アタシのほしかったもの」
そう答えたアタシに、彼は訝しげな顔をした。わかっていたことなのだけれど、それが愉快でつい笑ってしまう。
「きみはなんでもしてくれるからさ。
きみがちょっと困ってるところが見たくても、それだけはくれないんだもん」
1024/02/24(土)23:54:37No.1161125175+
訝しげに皺の寄っていた額が呆気にとられたように開かれて、そのあとすぐにもう一度皺が寄る。今度は拗ねたように、じとりとした視線でこちらを睨む彼と一緒に。
「…ずるいぞー」
「あはは。アタシもそう思う」
それも楽しいと無邪気に笑えてしまうアタシを、結局は同じように笑って許してくれる。
そうやってアタシについてきてくれるのが嬉しいのだけれど、ふと疑問も湧いてくる。
「でも、きみってほんとに変わってる」
「ん?」

「大変でしょ。アタシに付き合うの」
1124/02/24(土)23:54:51No.1161125261+
前に、彼のやっていることを試しにやってみようと思ったことがあった。彼が行き先を決めて、口を一切出さずにそれにただ付いていく。
自分の行きたい場所に逸れてしまわないように、随分苦労して我慢し続けたことを覚えている。わかっていたことだったけれど、アタシの辞書に忍耐という言葉はなかったのだった。
「わからないならわからないで、お互いに不干渉ってことでいいじゃんって、アタシは思っちゃうからさ。頑張ってわかろうとするっていうのが、きっとできないんだよね」
そうして、それをずっと続けてきた彼の根気を、改めてありがたいなと思い直したものだった。
自分の無軌道さは、ほとんど必ずと言っていいほど、周りにいい影響を与えてこなかった。だからこそ、不思議で仕方ない。
どうしてきみは、そんなに頑張れるの?
1224/02/24(土)23:55:07No.1161125389+
アタシがそう訊いたとき、彼は少し意外そうな顔をしていた。どうしてそんな当たり前のことを訊くのだろうと、驚いているかのように。
そうして彼は少しだけ思案していたけれど、やがてひとつの答えを得たように、穏やかに微笑んだ。
「そうだな。
実はさ。あんまり頑張ってるって思ってないんだ」
彼の口から出てきた言葉に、今度はアタシが呆気にとられる番だった。
彼がはじめに、アタシの気まぐれに付き合いたいと言ったとき、アタシは遠慮も干渉もなしとはっきり言ったし、その言葉通りにしてきた。だからこそ、彼がどうしてそこまでできるのかと、不思議に思っていたのだけれど。
「え?」
「わかったって思えたときだけじゃない。わかるまでの道のりも、大変だけどすごく楽しいんだ。
だから、やめたいって思ったことは一度もないよ。そうやってシービーのことがひとつずうわかっていくとさ、ほんとに楽しいなって思うから」
1324/02/24(土)23:55:35No.1161125585+
そう口にする彼の顔は、何の曇りも迷いもなく、ただ優しく包み込むように微笑んでいた。
「…でも、それって変わってるってことなのかな、はは」
照れくさそうに笑うその顔が、どれだけアタシを幸せにしてきたのかも知らないで。

何も言わずに驚かせるように、彼の胸に飛び込んでみる。
「わ」
「うん。やっぱり変わってるよ、きみは。
…でも、うれしいな。アタシと全然違うのに、違うことがすごくうれしい」
びっくりしたように目を見開いても、ちゃんとアタシを抱き留めてくれる。
そんなきみのぬくもりを、少しでも感じていたくて。
「ごめんね?わがままで。
でも、やめないよ。やめてなんてあげない」
「…しょうがないよな。
惚れた者負け、だもん」
1424/02/24(土)23:55:51No.1161125695+
誰よりもわがままなアタシを、きみは好きだと言ってくれた。そんなアタシをずっと支えて、諦めないでいてくれた。
だから、ぜんぶがわからなくてもいいよ。
わからないからわかろうとしてくれるきみも、アタシは好きだから。
1524/02/24(土)23:56:06No.1161125792+
座る彼に向かい合いながら、しなだれかかって顔を見る。何も言わずにただ抱き合って、目だけを見ながら心の中まで覗こうとする。
もちろん、何か特別なものが見えるわけじゃない。なのに何かが見えるような気がして、こそばゆくてもどかしい。
「ふふふっ、あはははっ。
やっぱりいいな。言葉にしたらすぐなのに、言葉にしないで探りあうのって、もどかしいけどそれが楽しいや。
こういうくだらなくて楽しい時間を、ずっと好きでいられたらいいね。きみも、アタシも」
そのくすぐったさが面白くて笑いだしてしまったアタシも、微笑みながらそんなアタシを抱き留めてくれるきみも、きっとただの数寄者なのだろう。
自分と違う誰かの悪ふざけが、楽しくて仕方ない数寄者だ。
なら、ずっと遊んでいよう。遊ぶのが楽しくて、アタシもきみも一緒にいるんだから。

もう一度、彼と目を合わせる。触れてしまうくらいに顔を近づけて、放った言葉の熱も感じられるくらいの距離で、囁く。
「じゃあ、もういっかい。これで最後。
…今、アタシがほしいものは何でしょう?」
1624/02/24(土)23:56:20No.1161125894+
また、きみの目を見る。恥ずかしそうに迷いながらも、何をしたいのか、何をしてほしいのかはとうにわかっている、そんな目を。
答えははじめからわかっている。でも、それを示すのが照れくさいのも、知ってる。
だからこそ、きみに選んでほしい。きみの手で、アタシが欲しいって伝えてほしい。

「ん…
…正解。ふふっ」
いつもアタシがしてばかりだったから。
たまにはきみにキスしてほしい。
1724/02/24(土)23:56:24No.1161125921+
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美味しかったと口に出そうとしたけれど、そんな彼の表情があんまり可愛らしくて、つい笑ってしまう。
「あははっ。なに、その顔」
「いや、口に合ったかなって気になっちゃってさ。
…もしかしておいしくなかった?」
出会ったばかりのころはもっと固くて、落ち着いた大人だと思っていたのに、付き合えば付き合うほどその愛らしさが見えてくる。
「そんなことないよ。白菜は味が染みてたし、お肉も柔らかくて美味しかった。
きみが面白い顔するんだもん。いじわるしたくなっちゃった」
どんなスパイスよりも綺麗に、食卓に華を添えてくれるそれが、アタシはひどく好きだった。
1824/02/24(土)23:56:39No.1161126013+
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座る彼に向かい合いながら、しなだれかかって顔を見る。何も言わずにただ抱き合って、目だけを見ながら心の中まで覗こうとする。
もちろん、何か特別なものが見えるわけじゃない。なのに何かが見えるような気がして、こそばゆくてもどかしい。
「ふふふっ、あはははっ。
やっぱりいいな。言葉にしたらすぐなのに、言葉にしないで探りあうのって、もどかしいけどそれが楽しいや。
こういうくだらなくて楽しい時間を、ずっと好きでいられたらいいね。きみも、アタシも」
そのくすぐったさが面白くて笑いだしてしまったアタシも、微笑みながらそんなアタシを抱き留めてくれるきみも、きっとただの数寄者なのだろう。
自分と違う誰かの悪ふざけが、楽しくて仕方ない数寄者だ。
なら、ずっと遊んでいよう。遊ぶのが楽しくて、アタシもきみも一緒にいるんだから。

もう一度、彼と目を合わせる。触れてしまうくらいに顔を近づけて、放った言葉の熱も感じられるくらいの距離で、囁く。
「じゃあ、もういっかい。これで最後。
…今、アタシがほしいものは何でしょう?」
1924/02/24(土)23:56:41No.1161126020+
きみが作ってくれたものなら、皿の端まで味わいたい。
知ってる味でも、知らない味でも、きみのものなら愛おしい。アタシのことを想いながら、きみが作ってくれたものなら。
だから、もっと伝えてよ。
全部残さず、食べてあげるから。

きみのことが、大好きだから。
2024/02/24(土)23:56:51No.1161126110+
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訝しげに皺の寄っていた額が呆気にとられたように開かれて、そのあとすぐにもう一度皺が寄る。今度は拗ねたように、じとりとした視線でこちらを睨む彼と一緒に。
「…ずるいぞー」
「あはは。アタシもそう思う」
それも楽しいと無邪気に笑えてしまうアタシを、結局は同じように笑って許してくれる。
そうやってアタシについてきてくれるのが嬉しいのだけれど、ふと疑問も湧いてくる。
「でも、きみってほんとに変わってる」
「ん?」

「大変でしょ。アタシに付き合うの」
2124/02/24(土)23:57:07No.1161126215+
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「ごめん。降参」
「あははっ、落ち込まなくてもいいよ?きみでもわかんないと思ったから訊いたの」
とはいえ、今回は少しばかり意地悪だったかもしれない。答えられないことがわかっていたからこそ、問いかける意味があったのだから。
「大丈夫だよ。
今もらったから。アタシのほしかったもの」
そう答えたアタシに、彼は訝しげな顔をした。わかっていたことなのだけれど、それが愉快でつい笑ってしまう。
「きみはなんでもしてくれるからさ。
きみがちょっと困ってるところが見たくても、それだけはくれないんだもん」
2224/02/24(土)23:57:24No.1161126339+
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「ははは。なんだ、まだお腹空いてるのか?」
そんなアタシの他愛もない問いかけに、珍しく彼が微笑んで返した。いつもならけらけらと笑うのはアタシの役なのだけれど、たまには笑われてみるのもいいと思った。
「うん。
というか、きみの作ったものが食べたいんだ。そのためならいくらでも空かせるよ」
きみが微笑む。その次には恥ずかしそうにぷいと目を背ける。
移ろう雲のようにころころと変わるきみの表情を、味わい尽くしたかった。

真面目な顔になった彼は、少しだけ首を傾げて思案していた。その表情が何かを思いついたように柔らかくなって、席を立った彼がキッチンに向かうと、それについていくアタシの足取りも軽くなる。
「そうだな。
ちょっと待っててくれるか?」
またきっと、楽しいことが始まる。そう思うといてもたってもいられなかった。
2324/02/24(土)23:57:40No.1161126444+
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「だめだぞー?
できるまで待っててくれよ。もうちょっとだから」
咎める彼の声も優しくて楽しそうだから、何度も同じことをしては窘められるのをやめられなくなる。そうやって彼が律儀に、けれど楽しそうに構ってくれるのが嬉しくて、入口に隠れたまま笑ってしまうと、示し合わせたように彼のくすくすと微笑む声が聞こえた。

アタシは猫みたいだと、きみに言われたことがあったね。
ひとりは気楽で好きだけど、構ってほしいと一度思うと、悪戯心を抑えきれない。
本当にそうだね。笑えてしまうくらいに、アタシはわがままな猫のままだ。
でも、それはきみがいけないんだよ。
いつだって真剣に、誰よりも楽しそうに、アタシと遊んでくれるきみが。
2424/02/24(土)23:57:43No.1161126465そうだねx2
おわり
シービーとくだらない遊びを心から楽しみたいだけの人生だった
fu3174492.txt
2524/02/24(土)23:57:56No.1161126540+
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アタシがそう訊いたとき、彼は少し意外そうな顔をしていた。どうしてそんな当たり前のことを訊くのだろうと、驚いているかのように。
そうして彼は少しだけ思案していたけれど、やがてひとつの答えを得たように、穏やかに微笑んだ。
「そうだな。
実はさ。あんまり頑張ってるって思ってないんだ」
彼の口から出てきた言葉に、今度はアタシが呆気にとられる番だった。
彼がはじめに、アタシの気まぐれに付き合いたいと言ったとき、アタシは遠慮も干渉もなしとはっきり言ったし、その言葉通りにしてきた。だからこそ、彼がどうしてそこまでできるのかと、不思議に思っていたのだけれど。
「え?」
「わかったって思えたときだけじゃない。わかるまでの道のりも、大変だけどすごく楽しいんだ。
だから、やめたいって思ったことは一度もないよ。そうやってシービーのことがひとつずうわかっていくとさ、ほんとに楽しいなって思うから」
2624/02/24(土)23:58:19No.1161126688+
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「はい、どうぞ」
白くもっちりとした麺に、澄んだ褐色の出汁がきらきらと光る。彼が出してきたそれは、もう満腹のはずのお腹に食欲を呼び戻すには十分だったけれど、すする前に好奇心が勝った。
「うどん?だけど、上になんか乗ってるね」
黄色く細いたなびく雲のように、玉子が所々に散りばめられている。箸を入れるととろりと後を引く感触が新鮮で、彼と顔を見合せた。
「余ってたきのこと生姜を入れてみた。あと卵も。
こないだテレビでやってたんだけどさ。関西の方だと、うどんはあんかけにして食べるんだって」

少し誇らしげににこりと微笑むきみを見ていると、葱と生姜の香りがいっそうよく感じられる。そんなきみが作ったものを、早く食べてみたくて仕方なくなる。
「…すごいな。思ってもいなかったのに、なんだかすごくしっくりくる。
…うん。いいね。美味しそう」
アタシの思いの外からきみが楽しさを運んできてくるのが、何よりも好きだ。きみの手が世界の裏表紙をめくると、そこには知らない景色が広がっている。
2724/02/24(土)23:58:32No.1161126791+
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美味しかったと口に出そうとしたけれど、そんな彼の表情があんまり可愛らしくて、つい笑ってしまう。
「あははっ。なに、その顔」
「いや、口に合ったかなって気になっちゃってさ。
…もしかしておいしくなかった?」
出会ったばかりのころはもっと固くて、落ち着いた大人だと思っていたのに、付き合えば付き合うほどその愛らしさが見えてくる。
「そんなことないよ。白菜は味が染みてたし、お肉も柔らかくて美味しかった。
きみが面白い顔するんだもん。いじわるしたくなっちゃった」
どんなスパイスよりも綺麗に、食卓に華を添えてくれるそれが、アタシはひどく好きだった。
2824/02/24(土)23:58:51No.1161126918+
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「覚えてる?
あのときも、きみにうどん作ってもらったよね」
まだ彼がアタシのトレーナーではなかった頃の話だ。風邪を引いて行き倒れかけていたところを、彼に介抱してもらったことがあった。
思い出すと、また笑ってしまう。彼はあのときからそうだったっけ。ずっと契約を断り続けてきたのに、アタシのことを理解したいと、寄り添うことをいつまでも諦めなかった。
「ふふっ。なんでもわかっちゃうんだね、アタシのこと」
「なんでもはわかんないよ。わかってあげたいけどさ」
きみがずっとそのままでいてくれることが嬉しくて、あのときからずっときみに甘えるのをやめられない。自分でもどうかと思ってしまうけれど、それがどうしようもなく楽しい。
「じゃあ、もう一問やってみようか。
アタシが今いちばんほしいものは何だと思う?」
2924/02/24(土)23:59:07No.1161127022+
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座る彼に向かい合いながら、しなだれかかって顔を見る。何も言わずにただ抱き合って、目だけを見ながら心の中まで覗こうとする。
もちろん、何か特別なものが見えるわけじゃない。なのに何かが見えるような気がして、こそばゆくてもどかしい。
「ふふふっ、あはははっ。
やっぱりいいな。言葉にしたらすぐなのに、言葉にしないで探りあうのって、もどかしいけどそれが楽しいや。
こういうくだらなくて楽しい時間を、ずっと好きでいられたらいいね。きみも、アタシも」
そのくすぐったさが面白くて笑いだしてしまったアタシも、微笑みながらそんなアタシを抱き留めてくれるきみも、きっとただの数寄者なのだろう。
自分と違う誰かの悪ふざけが、楽しくて仕方ない数寄者だ。
なら、ずっと遊んでいよう。遊ぶのが楽しくて、アタシもきみも一緒にいるんだから。

もう一度、彼と目を合わせる。触れてしまうくらいに顔を近づけて、放った言葉の熱も感じられるくらいの距離で、囁く。
「じゃあ、もういっかい。これで最後。
…今、アタシがほしいものは何でしょう?」
3024/02/25(日)00:03:55No.1161128916+
当ててほしいけど当たらなくても楽しい遊びいいよね
3124/02/25(日)00:07:22No.1161130306+
諦めないでって言ったもんな…
3224/02/25(日)00:09:35No.1161131308+
遊んでほしいのに疲れて寝ちゃうとむすっとしながら隣に寄ってくるシービーとかもあるといいと思います
3324/02/25(日)00:10:41No.1161131759+
お互いの変わってるところが好きなのでもう手遅れ
3424/02/25(日)00:14:05No.1161133105+
自分と同じじゃなくて違うけどその違いを愛せる相手に巡り会えるのって幸せですよね
3524/02/25(日)00:17:02No.1161134225+
逆にシービーがトレーナーの献立を当てようとしたりもするんだよね
3624/02/25(日)00:20:48No.1161135830+
ついてきてくれるのが嬉しいなんて今までは思ってもいなかったのにね
それが嬉しいってわかっちゃったら…もうね
3724/02/25(日)00:21:53No.1161136264+
本当の正解は食後のチューやったんやろ!?
3824/02/25(日)00:22:38No.1161136569+
ストーリーでも時々言葉にしなくても心が繋がってることに憧れてるときがある
3924/02/25(日)00:25:09No.1161137524+
いきなり額をくっつけてきて「今なに考えてるか当ててみてよ」って言ってくるシービー
トレーナーがわかんないって笑うと「わかるまでこのままね」ってにこにこしてるシービー
4024/02/25(日)00:26:48No.1161138124+
アンタのCB怪文書待ってた
やっぱ好きだわ
4124/02/25(日)00:27:51No.1161138474+
言わなくても伝わっててほしいけどやっぱり言葉にもしてみたくて不意打ちぎみに「大好き」って小さく囁いてみるシービー
でもトレーナーには聞こえてなくて聞き返されてちょっと拗ねたみたいにどさりと寄りかかるシービー
4224/02/25(日)00:29:20No.1161138980+
この子をお迎えしてちょうど一年目だけどまだまだ脳を焼かれてる
4324/02/25(日)00:35:30No.1161141075+
うどん作ってあげたのトレーナーは覚えてないけどシービーは覚えてるとかでもいいと思います
4424/02/25(日)00:36:09No.1161141283そうだねx1
シービー本当に可愛い
好き
4524/02/25(日)00:39:10No.1161142440+
>うどん作ってあげたのトレーナーは覚えてないけどシービーは覚えてるとかでもいいと思います
作ってっておねだりされたときになんで作って欲しいのかわかんなくてきょとんとするトレーナーとちょっと拗ねるシービー
4624/02/25(日)00:44:28No.1161144342+
縛らないけど寄り添ってくれるっていう関係が今までになくぴったりはまるんだ
4724/02/25(日)00:51:14No.1161146639+
一緒に住んでお風呂上がりの背中とかタンクトップ姿のへそとか思いっきり見ちゃって「えっち」って笑われたいだけの人生だった
4824/02/25(日)00:52:31No.1161147081+
スレッドを立てた人によって削除されました
毎回赤字に病人が湧いてるのにスレ「」は管理せずに寝てるスレッド


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