鍋の前に立っていた。
2月14日。季節外れのハゼの天ぷらを我がトレピッピへの贈り物へとする為だ。かつてバレンタインで真鯛の刺身を渡して以来、バレンタインはなんやかんやで魚を渡す日にアタシの中ではなっていた。
……それが来年も再来年も続くかはアタシちゃんの気まぐれだが、まあ今年はハゼの天ぷらを贈ることにしたのだ。
以前のバレンタインでゴールドシップ様をトレーナー室で待っていたらしいアイツに敬意を称し、今年はトレーナー室で天ぷらを揚げてやるのだ。
そんなこんなでトレーナー室にカセットコンロを持ち込み揚げ物の準備をする。火をつけてアイツを待つ。
……………アタシの予測ではそろそろトレーナーが部屋を訪れるはずだ。
……………来ない。後で無人島だなと心で決めつつ熱された油に天ぷら粉をまぶすしたハゼを入れる。
……………来ない。ジュージューと音が鳴りカラリと揚がったハゼの天ぷらが出来上がる。
……………来ない。段々と天ぷらが冷えていく。
……………来ない。ムカついてきたので天ぷらを食べた。冷えた天ぷらはあまり美味くない。

ゴルシちゃんが待ち伏せなんてサプライズを選んだのが間違いだった。とりあえず学園をうろついてトレピッピにチョコ寄越せとドロップキックだ。
そう思いトレーナー室から出てアイツを探す。
簡単にトレーナーは見つかった。

トレーナーが居た。レース場の前でウマ娘たちのレースを眺めている─────楽しそうに。キラキラした目で眺めている。

…………アイツは元々アタシのトレーナーになる前からウマ娘の練習を毎日見に来る程の真面目ちゃんではあった。
熱心にウマ娘を見るアイツはアタシから見ても情熱に溢れた新人トレーナーで……とても暇そうだった。
熱心で決意に溢れて走りを見ているくせにワクワクしてなかった。熱い気持ちがあっても楽しそうではなかった。このゴールドシップの走りを見て尚、情熱と決意しかその目の中には存在しなかった。
それが死ぬ程ムカついた。そしてそれ以上に面白そうな奴だとも思った。
コイツがアタシの走りを楽しみにした時、アタシの存在は更に上の次元へと辿り着く。だからアイツを捕まえて────。

そんなアイツがレースを見ている。
キラキラした目で、楽しそうに眺めている。
その目を見るのは初めてではない。そうだ。アタシのレースを見る時そんな目をする様になった。だから、初めてではない。
ただ、アイツがアタシ以外のレースをその目で見るのは初めてだった。
「よおトレーナー」
「ゴールドシップ…？どうかしたのか？」
「おいおいおいおい、今日という日がどんな日か忘れたのか？かの有名なふんどしの日を？」
「初めて知ったな…」
アタシと会話をするトレーナーは何も変わっていない。普段通りでいつも通りのトレーナーだ。だけど少しだけ気分が良いのか声が跳ねていて。
「それよりゴールドシップ」
────お前。アタシが走ってた時は。お前の目の前で初めて走った時は。
「あの子。あの芦毛の子」
────お前が暇そうにレースを見てた時は。お前とアタシが初めて出会ったこのレース場では。
「あの子、面白いレースをするんだ」
────そんなに楽しそうな顔、して無かっただろ。

目を開けた。
右、左、上、下、後、前。首を動かし手を動かし、現状を再確認する。
ここはトロフィーの中。今の記憶は考えたくない可能性のシュミレーション。断じて現実では無い。
現実のトレーナーは知らねぇウマ娘のレースを楽しそうに見てないし、アタシは冷えた天ぷらを食べたりしていない。
ただのシュミレート。空想で人工の戯言だ。
ぐらぐらと揺れる視界でトロフィーから出る。ここに1秒でも居たくなかった。
心配してくれたのか、出た先にはウマ娘が何人か集まっていた。
「その…大丈夫ですの？」
マックイーンがアタシに声をかける。

『ゴルシちゃん号再起動中…再起動中…』
『アタシを誰だと思ってる。ゴールドシップ様だぜ！』
『最悪過ぎて気分が悪い！ここはマックイーンに奢ってもらわねぇと気が済まないな！』
『私様にかかれば餃子の皮でピザを作るようなものでございますわよ』
幾つも言うべき台詞が思い浮かぶ。そうだ。完璧無敵最強のゴルシちゃんはこんな冗談のような面白トロフィーになど鼻で笑う。
だから、だから。

「────楽しそうな顔をしてたんだ」

なのに。アタシの口から零れたのはそんな一言で。
そのまま揺れる視界と震える足でトレーナー室へ向かう。でも、アイツはそこに居なくて。そのままソファーで横になった。
アイツに会いたいのか会いたくないのか……アタシには何もわからなかった。
ただ、レース場へ探しに行く気にはなれなかった。それだけの話だ。

ゴルシの曇らせを書きたかった
書いた

よくやった
横になるね

ちなみに小ネタとしてハゼの魚言葉は未来永劫です

魚言葉…！？

シンプルに自分から興味が移ってると感じるのはダメージでかいよね

>魚言葉…！？
花にもあるんだ
魚にあっても不思議はない

>考えたくない可能性、最悪の想定、絶望のバレンタイン
不穏が過ぎる称号をつけるんじゃない！

それだけの話だ。まで読んだ
いい文章だった横になるね

>魚言葉…！？
ゴルシはバレンタインで真鯛の刺身を渡してくるしその時に魚言葉ってのがあると教えてくれる
ちなみに真鯛の魚言葉は宿命

時系列で考えるとこれが1番最初のドリームトロフィー改の使用者か…

ゴルシ曇らせが俄に流行る兆しを見せている

>時系列で考えるとこれが1番最初のドリームトロフィー改の使用者か…
なぜこの時点で叩き壊さなかったんだ

マックイーンも心に傷を負ってやけ食いに走ってたが…ゴルシの子の惨状をみて止めようとは思わなかったか…

トレーナーやモブウマ娘を屑化させるようなことはせずトレーナーを自分の好きになった性格のままでかつ考えてみれば十分あり得るような世界を見せるのが最高にタチ悪いよこのトロフィー！

「」と来たら曇らせが得意すぎるぜ…

「────楽しそうな顔をしてたんだ」
この一言だけでゴルシの絶望を表現出来るの本当に凄いと思う

ちゃんとフォローまで書いて…

>ちゃんとフォローまで書いて…
フォローは当日にトレーナーがするよ多分な

幻覚でトレーナーが見たモブウマ娘のモデルってまさかソダシか…？

>ちゃんとフォローまで書いて…
何人ぶん書けばいいのかな…

>幻覚でトレーナーが見たモブウマ娘のモデルってまさかソダシか…？
芦毛って言ってるし多分モデルとかはないんじゃないかな

ゴールドシップよりも魅力的かつ個性的な芦毛ってそんな簡単に存在してたまるかって故の曇らせだろうし…

>幻覚でトレーナーが見たモブウマ娘のモデルってまさかソダシか…？
明確なモデルは無くただトレーナーが惹かれただけのウマ娘です
芦毛なのはゴルシへの当てつけです

>🐴ゴールドシップよりも魅力的かつ個性的な芦毛ってそんな簡単に存在してたまるか

>トレーナーやモブウマ娘を屑化させるようなことはせずトレーナーを自分の好きになった性格のままでかつ考えてみれば十分あり得るような世界を見せるのが最高にタチ悪いよこのトロフィー！
このゴルシの怪文書と
ファインモーションの３年間を綺麗な思い出として心に傷が残ることなく綺麗なまま美しく終わった想定の世界は
本当にタチが悪いと思う

望む未来を求めるだけ見せてくれる万仙陣みたいな恐ろしさがあった無印とは別の意味で恐ろしいよね改トロフィー

冬木聖杯みたいな願いを歪ませて叶えそうだなこのトロフィー

普通こういうシュミレーターって猿の手みたいな「悪意ある解釈」とか「極端に改変された世界」を見せて悪夢に捕らえられるやつじゃん
でも違うんだよ
なんかこう普通に在り得そうなやつなんだよ

シミューーーー！！！！！１１１１

あくまであり得るかもしれない最悪の可能性を演算して出力してるだけだからね…曇る

>望む未来を求めるだけ見せてくれる万仙陣みたいな恐ろしさがあった無印とは別の意味で恐ろしいよね改トロフィー
いい夢見せてくれる無印を攻略出来ても改は攻略出来ない子がいそうだし逆もありそうなのが中々いいと思う

そういえば無印は封印済みだっけ？

シュミがわるいね

今のところ乗り越えたのはオグリだけか…

> 「あの子。あの芦毛の子」
一瞬トレーナーが🐴ソウル宿したのかと

>今のところ乗り越えたのはオグリだけか…
性質考えればウララも乗り越えられそう

>このゴルシの怪文書と
>ファインモーションの３年間を綺麗な思い出として心に傷が残ることなく綺麗なまま美しく終わった想定の世界は
>本当にタチが悪いと思う
どっちも書いたなんて言えない

>そういえば無印は封印済みだっけ？
封印した無印を倉庫から引っ張り出して改造したのが改

「」ン…お前だったのか…

>どっちも書いたなんて言えない
外道〜！

>No.889574515
いい腕してやがる...

トレセンそのものが飲み込まれそうになりそうなぐらい危険な存在だった無印と違って絶妙に封印されなさそうな危険度なのがいやらしい

>トレセンそのものが飲み込まれそうになりそうなぐらい危険な存在だった無印と違って絶妙に封印されなさそうな危険度なのがいやらしい
度胸試しや怖いもの見たさで訪れる子とか最悪の未来を想定するための対処法としての需要とかありそうだよね

>いい夢見せてくれる無印を攻略出来ても改は攻略出来ない子がいそうだし逆もありそうなのが中々いいと思う
というか攻略のための心の持ちようが違いすぎて片方を攻略できる子ほどもう片方を攻略出来ない気がする

元々トレーナーが自分以外からもバレンタインチョコを貰った状況に対応できるようにってシミュレーションのはずなのに出力MAXで乗り込むから…

つまりネイチャが一番横になる……？