二次元裏@ふたば

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222965 B21/12/18(土)00:45:41No.877371270+ 02:15頃消えます
『──殿下は先日のエリザベス女王杯も────』

「知ってる?あのアイルランドの……」
「知ってる知ってる!凄いよね〜ガチ気品って感じ」
「しかもウマ娘なんでしょ!どんな風に走るんだろ〜……」
「いや見ればいいじゃん……ほら」

『───ここで、ファインモーション殿下のレースの様子を────』
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/12/18(土)00:46:03No.877371352+
「ご馳走様!あー美味しかった……」
「相変わらずいい食いッぷりだなァ……」
「シャカールは食べなさすぎなんだよ。もっと沢山食べないと!」
「うるせェ。体重管理くらいちゃんとしてる」
「そういうことじゃないよ〜」

繁華街とはいえ、平日昼過ぎは割合静かなものである。
通る人は遅い昼食を取りにきたサラリーマンやら自営業やらくらいのものである。
だからか、彼女らがいるラーメン屋にも彼女ら以外の客足は乏しかった。
221/12/18(土)00:46:16No.877371414+
「毎度」

醤油の匂い立ち込める店内を後にすると、冬の灰色の空気が頬を掠める。
たまらず畳んだマフラーを広げ、口元まですっぽりと覆い隠す。
隙間から立ち昇るいい匂いの呼気が毛糸に絡まって、満腹には少々堪えた。

「シャカールは寒くないの?」
「ちゃんとジャンパー着てるだろうが」
「ほんと〜?」

傍らの彼女を見れば、確かに薄いのを一枚羽織ってはいた。
見た目の割に保温性が高いのでお気に入りなのだが、傍目から見れば寒そうにも取られるかもしれない。
321/12/18(土)00:46:30No.877371491+
「薄ッぺらに見えるかもしれねェが、ちゃんと内部に空気の膜を……」
「ていっ」
「はっちゃぁぁぁぁぁあ!?ああ、クソ何しやがる!?」
「あはははっ♪凄い声でた!」
「畜生、忘れろっ!この!」
「きゃーっ♪」


寒風の中、彼女たちは沢山歩いた。
一歩先行く方が様々なものに目を光らせ、後からもう片方が渋々付いて回る。
彼女らを知るものからすればそれは実に見慣れた光景だっただろう。
421/12/18(土)00:46:49No.877371575+
「シャカール!これどう!?」
「あ?……あー」

『ラード3倍』

「……いいんじゃねぇの。お前らしくて」
「やった♪すいませーんこれ下さーい!」


デパートビルから紙袋と、抱えた箱で前の見えない片割れを手に引き歩く。

「買い過ぎだ……」
「ごめーん。あともうちょっとがんば……っ」
「……おい、どうした」
「……ううん」
521/12/18(土)00:47:19No.877371744+
開いたガラス戸から、橙色の光芒が彼女の目を撫でる。
一瞬暗んだ視界を慣らすと、そこには、

「……ちょっと、眩しかっただけ」

一日の終わりを告げる橙の明け空が広がっていた。


「殿下」
「ん、これよろしくね」
「かしこまりました」
「あー……ッったく……」

いつの間にか控えていた黒服が、大荷物を次から次へとバンに詰め込んでいく。
首を回して凝りのほぐれたころには、あの山のような商品は既に夕陽の向こうへと走り出していた。
621/12/18(土)00:47:45No.877371858+
「お送りします」
「構わねェよ。自分で帰る」
「そっか。じゃあ、またね♪」
「……おう」

彼女もまた、夕焼けに影になって消えていく。
その姿が見えなくなるまで、逆光に目を潤めながら手を振った。


「殿下、そろそろ」
「うん。……行こうか」
721/12/18(土)00:47:55No.877371902+
黒い車が、静かにタイヤを唸らせる。
行く先を告げることも、談話に耽ることも無く、見知らぬ景色を流していく。
さっきまであんなに楽しかった光景が、もう既にセピア色の写真になっていくような心地さえしていた。

「殿下」
「ん……ご苦労様」

おもむろに止まった車を降り、マフラーを巻きなおす。
そびえ立つ石段を前に、じっと、暴れる心の手綱を握る。

「……やはり、私も」
「ううん。一人で行く。待ってて」
「……はっ」
821/12/18(土)00:48:11No.877371962+
朱に染まる石段を、一つ一つ踏んでいく。
ウマ娘からすればそんなに大変なものではないのに、足取りは重たくて仕方ない。

「はっ……はっ……」

頬を割く風は冷たく、照らす夕陽は生暖かい。
とにかく爪先だけを見て、ゆっくりと、着実に、脚を前に。

「……あ」

気が付けば次の段は無くて、ただ太陽が到着を祝福するように背を照らしていた。
921/12/18(土)00:48:26No.877372034+
並ぶ石の隙間を行く。
事前に場所は把握している。
合ってるはずの道のりを、何度も何度も反芻する。

そして、ようやく。

「……久しぶり、だね」


亡き、元トレーナーの墓碑と向き合えた。
1021/12/18(土)00:48:42No.877372107+
もらった線香と、細い花束を供え、手を合わせる。
どこか間違ってやしないかと、心音に聞き返しながらどうにか参拝を済ませた。

「ふぅ」

改めて、墓石をじっと観察する。
知っている苗字。

「……うふっ」

それが、真っすぐと現実を物語る。
1121/12/18(土)00:48:52No.877372145+
「久しぶり」

話しかける。

「あれから5年くらい経っちゃった。ごめんね。ずっとお参りできなくて。
……やっと、来れたんだ」

「あれから結構色々あったよ。私も、もう日本には居ないし」
「国の為に、民の為に尽くすのが、私の役目だけど、実際やると結構大変」
「ね、トレーナーのお仕事と、どっちが大変かな。なんて」

問いかける。

返事、無し。
1221/12/18(土)00:49:36No.877372346+
「……っ、あ」

溢れ出す。

「……あ、ああっ……!」

「なんで、なんで勝手に行っちゃうの!?」
「急いでたなら、私に頼ってくれれば良かったのに!」
「ご両親のことも何とかできたかもしれないのに!!」

脳裏に浮かぶのは、セピア色の記憶。
続くと信じて疑わなかった、ぶつ切りのフィルムの思い出。
1321/12/18(土)00:49:50No.877372419+
「ごめんっ……ごめんなさいっ……我儘言ってごめんなさいっ……!」
「ちゃんと、言うことっ……聞かなく、って、ぇ、ごめんなさいっ……!」

墓石に縋りついて慟哭する。
冷たい大理石も、肌に食い込む鋭利な角も、気持ちを堰止めてはくれない。


「あ……っ、あとね、言わなきゃいけないの……!言わなきゃいけなかったの……!」

紡ぎだす。

「ありがとうって……!ずっとずっと、ありがとうって……言えなかったの……!」
1421/12/18(土)00:50:03No.877372462+
「私をレースに出してくれてって……」
「私の夢を支えてくれてって……」
「私と、出会ってくれて、ありがとう……っ、って……!」

後悔を、未練を、がむしゃらに言葉にする。

「あぁっ……う……あぁぁぁっ……っく……はっ」

そのほとんどが、涙に塗れて聞くに堪えないものだった。
それでも、

「ありがとう……ありがとうね……ずっと、ずっと」

「大好き、だったから……!」
1521/12/18(土)00:50:16No.877372520+
どれくらいの時間が経ったか分からない。
とりあえず、顔を上げてもまだ夕陽はそこにあった。

「んずっ……ははは……沢山泣いちゃった……」

その顔は夕焼けのように晴れやかで。

「色々言ってスッキリしちゃった!もっと早く来ればよかった!」

どろどろの笑顔は、太陽にも負けず輝いていた。
1621/12/18(土)00:50:41No.877372648+
「じゃあ、そろそろ行くね。次、いつ来られるかは分かんないけど……」

土ぼこりを払う、ついでにお墓もさっと払う。
じゃあね、と小さく口の中で呟いて、背を向けた。


立派になったね────


「……!」

一瞬、風が吹く。
「……うんっ!」
振り向かずに、石段を下りて行った。
1721/12/18(土)00:50:54No.877372706+
「お帰りなさいませ」
「ただいま。じゃあ帰ろうか」
「その前に、これを……」

黒服は懐からハンカチを差し出す。

「……そんなに顔酷い?」
「ここまで聞こえてきましたから」
「!?……もーっ!」

ぐしぐしと顔を直し、少しむくれた表情で座席に腰を下ろす。

「ふふっ……」

小さく笑って、ハンドルを握った。
1821/12/18(土)00:51:08No.877372771+
『────夕焼けは、穏やかに空を包んでいた』

「……ねえ。何をそんなにニヤニヤしてるの」
「なーいしょ♪国家機密であるぞー!」
「うっ……」
「あははっ!ほら、速くラーメン食べに行こう!」
「またぁ……?」

夢見てしまうのは止められない。
たとえそれがあり得てはならない夢だとしても。
でも、

「……♪」

夢として読むくらいなら、許されるだろう。
1921/12/18(土)00:51:20No.877372820そうだねx10
「……ねえ、あれなんだろう」
「知らないの?アグネスデジタルの干物だよ」
「何の何だって?」
「夏場とか年末によく見かけるんだよね〜。尻尾で撫でて上げると跳ねてかわいいんだよ」
「ふーん……」
フリフリ
「んひ”っ」
「あっ、ホントだ面白ーい!」
2021/12/18(土)00:52:46No.877373260+
デ…デジタルッッッ!!
2121/12/18(土)00:53:05No.877373344+
し…死んでる…
2221/12/18(土)00:54:22No.877373740+
何たる無茶を!
2321/12/18(土)00:56:03No.877374180そうだねx9
偉いぞきちんとハッピーエンドに持って行って…
2421/12/18(土)00:56:04No.877374183+
デジたん…なんとむごい…
2521/12/18(土)00:56:54No.877374433そうだねx3
アレ書き上げたのかデジタル先生…
2621/12/18(土)01:00:47No.877375461そうだねx10
>「夏場とか年末によく見かけるんだよね〜。尻尾で撫でて上げると跳ねてかわいいんだよ」
>「ふーん……」
>フリフリ
>「んひ”っ」
>「あっ、ホントだ面白ーい!」
ちょっとここエッチ
2721/12/18(土)01:01:07No.877375536+
存分に干からびていいぞ
2821/12/18(土)01:06:46No.877377014そうだねx1
安易に蘇らせる以外のハッピーエンドもいいと思うんですよ
2921/12/18(土)01:10:45No.877378040+
幸せでいてほしいウマ娘ちゃんから自分を曇らせるお話描いてと言われるデジたんの心境は…
3021/12/18(土)01:11:26No.877378200そうだねx4
>幸せでいてほしいウマ娘ちゃんから自分を曇らせるお話描いてと言われるデジたんの心境は…
血反吐吐きながら頑張って頑張った
結果
>「知らないの?アグネスデジタルの干物だよ」
3121/12/18(土)01:11:43No.877378259+
>デジ・ポート氏
>安易に蘇らせる以外のハッピーエンドもいいと思うんですよ
「」ャイヨーが弾丸を貴様に向けて発射!
3221/12/18(土)01:14:10No.877378768そうだねx8
まあ多分現実は幸せだから…
3321/12/18(土)01:19:15No.877379872+
デジたん…ブッ倒れるだけじゃ飽き足らず乾物になるなんて…
尊すぎて汁出しすぎたって訳か……
3421/12/18(土)01:20:15No.877380069+
>>「夏場とか年末によく見かけるんだよね〜。尻尾で撫でて上げると跳ねてかわいいんだよ」
>>「ふーん……」
>>フリフリ
>>「んひ”っ」
>>「あっ、ホントだ面白ーい!」
>ちょっとここエッチ
M向けおねショタの波動を感じた
3521/12/18(土)01:23:52No.877380838+
カカシ先生思い出した
3621/12/18(土)01:24:12No.877380900+
>デジたん…ブッ倒れるだけじゃ飽き足らず乾物になるなんて…
>尊すぎて汁出しすぎたって訳か……
ウマ娘ちゃんの尻尾でそのうち元に戻るだろ……
3721/12/18(土)01:27:29No.877381635+
お姫様は王子様と死別するのは創作の中だけでいいからね…
3821/12/18(土)01:35:14No.877383348+
俺も尻尾でフリフリされてえなぁ…・
3921/12/18(土)01:36:18No.877383547+
デジおち
4021/12/18(土)01:52:47No.877386851+
離別を乗り越えた姿って美しいですよね…
4121/12/18(土)01:56:04No.877387471そうだねx3
頼んだらここまでしっかりとした離別の物語出せるのはプロだよデジたん…
4221/12/18(土)02:05:55No.877389291+
悲しいけど希望あるエンドだし
描きあげたデジたん凄いけど
殿下…どんな感情でこれをリクエストしたの…?
4321/12/18(土)02:08:39No.877389835+
>殿下…どんな感情でこれをリクエストしたの…?
離別モノのなんか見て自分で妄想したら止まらなかった
じゃあ出来そうな人に形にしてもらおう!とか
4421/12/18(土)02:09:17No.877389960+
殿下は強欲だからな…
トレーナーと死別したときの悲しみすらも欲しくなったんだろう…
4521/12/18(土)02:09:27No.877390000そうだねx2
殿下自身はよく創作物である展開私たちでやってみてほしいなー!ぐらいしか考えてない


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