Living with joy 走るように生きてた頃 何も見えなかった いつもいつも笑いながら ずっと泣きたかった あなたに逢えたことが私の夜明けだと思う ねぇ 涙よりも悲しみよりも そばにいたいから そう あなたとなら嵐の夜も 青空を信じられる 欲しいものは何もないの ここにあなたがいる 願うことはたったひとつ ずっと愛したい 見えない場所でそっとあなたに勇気をあげたい ねぇ 明日よりも想い出よりも 今を信じてる そう あなたとなら生きる全てを 喜びに変えてゆける たったひとつだけの愛を贈ろう あなたに‥‥ ねぇ 好きなシャツやコーヒーの味 ささやかなことが そう いつの間にか同じになって ふたりは今ひとつになる ねぇ 涙よりも悲しみよりも そばにいたいから そう 生まれたての愛を育てて I'm living with joy forever, You & me‥‥ 1 練習用トラックを走るアグネスデジタルの姿を見た。 小柄な体を前傾させ、美しいフォームと安定した足運びでカーブを潜り抜け、直線で内ラチのやや外側で一気に加速。 ゴールを切った彼女の姿は、現役のころから聊かも衰えていない。 デジタルは徐々に減速すると、トラックの中で見学していた同じジャージの新バたちにちゃんと見てた?と首を傾げた。 だがウマ娘たちは彼女ではなく俺の方を見て、そしてデジタルもそれに気づいてこちらに振りむいた。 来てたんだ。 買い物で近くまで寄ったからな。 エコバッグからミネラルウォーターのペットボトルを差し出すと、デジタルはありがと♪と受け取って新バ達に向き直った。 俺も背を向けて家路につく。 アグネスデジタルは現役を引退し、学園のスタッフとして働いている。 そして俺は彼女の元トレーナーであり、今は主夫だ。 2 ある時からアグネスデジタルは勝てなくなった。 怪我や不調が原因ではない。単により強大なウマ娘が頭角を現してきただけだ。 覇王を打ち倒した勇者も、新たな戦士に切り払われ、新たな魔物にねじ伏せられた。 ウマ娘の笑顔を見るためなら無限の努力が出来ると断言するデジタルだが、無限の努力が無限の成果を実らせるとは限らない。 デジタルが引退を口にしてからも俺は強引にレースに出走させた。まだやれるはずだ。まだ走れるはずだ。アグネスデジタルの限界はここにはない。 結果。俺のエゴで走らせた最後の3レースは、いずれも惜敗だった。 ムラッ気のあるアグネスデジタルが、惨敗ではなく惜敗。それも三連続で。 3 これはもう偶然では無い。 如何なるバ場でもどんなポジションからでも勝ちに行けると謳われた“変態”アグネスデジタルが、そのポテンシャルを全力で発揮して尚届かない。 そんなウマ娘が走る時代になってしまったのだ。 大好きなウマ娘ちゃん達を、今度は観客席からじっくり愛でようかなって。 引退会見でそう告げた彼女の笑顔。 その裏にあった葛藤は俺だけが知っている。 ――――並んで走りたいのに。 それは彼女が現役時代、最初で最後に漏らした弱音だった。 4 デジタルは引退後、すぐに学園のスタッフとして就職した。当然だ、今まで並んで走って萌え散らかしていたデジタルが、客席からウマ娘を愛でるだけで我慢できるはずもない。 そしてその愛は彼女をトレーナー見習いとしてめきめきと成長させている。 元々オールラウンダーで鳴らした名バだ。極端に言えばどんなバ場でも勝ち方を知っているウマ娘。 記録を読み返し、ビデオを見返し、先輩トレーナーのアドバイスを受け、 ウマ娘の艶姿にニマニマしつつ自分や生徒の走りの長所と短所を理論的(デジタル)に分析する。 そして惜しみない愛と情熱で新バ達にその教えを授ける。 ウマ娘の笑顔の為に無限の努力が出来るのは今も変わらない。いずれ間を置かずに多くのウマ娘の礎になるだろう。 俺はと言えば、デジタルの引退と同時に学園を辞め、結婚を前提にデジタルに交際を申しこんだ。 トレーナー続けないの?引く手数多なのに。 目を丸くするデジタルに、 俺の愛バはアグネスデジタルだけだからな。 と告げると バーカ。 と言ってはにかんで笑った。 いつまでも生きていける気がした。 5 いつまでたっても下手だね、オムライス。 破れた薄焼き卵からはみ出たチキンライスを見て、デジタルが言う。 明日はもっとうまく作るよ。 いや、二日連続はちょっと……。 穏やかに苦笑いする妻 俺は彼女にこんな笑顔しかさせられない。彼女がウマ娘を推す時のようには熱狂させられない。 でも何故か俺はそれでいいと思った。俺は彼女がウマ娘達を愛するようには深くも広くも彼女を愛せない。 でも彼女が穏やかに笑うたび俺の心は暖かくなる。何も怖くなくなる。 6 走るように生きてた頃 何も見えなかった いつもいつも笑いながら ずっと泣きたかった FMから懐かしい曲が流れ始めた。 俺結構好きなんだよこの曲。 そう?あたしは… …あたしも好きになろうかな。 デジタルは少し顔を赤らめた気がした。 ねぇ 好きなシャツやコーヒーの味 ささやかなことが そう いつの間にか同じになって ふたりは今ひとつになる ねぇ 涙よりも悲しみよりも そばにいたいから そう 生まれたての愛を育てて I'm living with joy forever, You & me‥‥ -- 出会いの話、またはタメ口になった理由 1 練習用トラックを走るアグネスデジタルの姿を見た。 小柄な体を前傾させ、美しいフォームと安定した足運びでカーブを潜り抜け、直線で内ラチのやや外側で一気に加速。 いいじゃないか。その直後のふるまいを除けば。 彼女は息も整えないまま周りのウマ娘を凝視してはオドオドと近づいた。そして話しかけられては顔を赤らめて誉め言葉をまくしたてた。 一通り話が終わると呆れ顔で離れていく相手と胸の前で手を組んで笑顔で放心するデジタル、というパターン。 話には聞いていたけどこれは極まってるなあ…。 初めまして。-ひゃい!? 声をかけると案の定掛かった声。 今日から俺が君のトレーナーだ。 -…。 何? -あ、いえ!びっくりしまして!よろしくお願いします! 話が早いのはありがたいけど。 -エヘヘ、あたしなんかのトレーナーについてくれるだけでも有難いことですから! 自己評価低いなあ。それと敬語はいいよ。 -いやあ見てましたよね?あたしいつもああいう感じだから、トレーナーさんなかなか決まらなかったんですよね! デジタルは気恥ずかしそうに頭を掻いて笑う。今にして思えば、その時俺はもうその笑顔にやられていたんだろう。 2 彼女は自分のこともほかのウマ娘のことも誰よりも理解している。そしてその事に微塵も打ちひしがれていない。 何故なら愛しているから。ウマ娘という存在を愛しているから。 こんな子はどう育てたって強くなるに決まっているじゃないか。 -あー、何だかいやらしい笑い方してますよー? ごめんごめん。それと敬語はいいってば。 -えっじゃあ……。……NTR竿役みたいな笑い方やめてよ。 なそ にん ? その後俺たちは紆余曲折を経て重賞を荒らし回った挙句結婚する仲になったのだが、その話は長くなるので別の機会にしておこう。 -- 青春はまだ終わっていない 1 >あまりにもウマ娘ちゃんにお熱なのでごめんな俺ウマ娘じゃなくて…って意地悪で言ったら信じられないくらい怒られた後泣かれたりしろ ばーっかじゃないの!?!? デジタルは風になった。 涎を垂らしえへえへと喘ぎながら今日の授業のカリキュラムを話すデジタルに、 「本当にウマ娘大好きなんだな」「うん!」「ごめんな俺がウマ娘じゃなくて」とやってしまったのが運の尽き。 詰まるところそんなことを口に出すほど俺は初心だったわけで、そんな軽口にむきになるほど俺の妻もまた初心だった訳だ。 初心同士ならやることもまた初心(しょしん)。学園の練習用トラックで妻は蹲って泣いていた。 「俺が悪かった。」「何が悪かったか分かっていますか?!」 2 何とデジタルな問いであろうか。 これは間違えたら終わる。口に手を当てじっくり考え、20秒ほどで口先で胡麻化すことを諦めた。 「俺はお前に、ウマ娘と同じくらい愛されたいと思った。」「は?」「お前がウマ娘に萌え萌えするのと同じくらい、俺に萌えてほしかったんだよ!」 「なんと情けない男だ!」立ち上がったデジタルはしかし満面の笑みで。その夜は正直のご褒美としてとても熱いうまぴょいを交わしたのであった。 -- ガラスの剣戟 1 「久しいな。アグネスデジタル。」 「お久しぶりです、デジタルさん~。」 「ひゃああ~~♥♥♥ オペラオーさんにドトウさん、永遠のライバル揃い踏みっ♥♥♥♥ アッダメッ♥しんど過ぎてムリ♥終わっちゃう♥終わっちゃう♥助けて」 「フフッ、相変わらずだな。」「すまんな。」 呆れて笑うテイエムオペラオーに、腰の抜けたデジタルに代わって俺が挨拶をする。 「ではボクらは挨拶に回ってくるよ。」「ああ。」「また会いましょう~。」 「行かないでえ~!!」「お前はもっとしっかりしろ。」 トレセン学園OG交流戦。 理事長主催のいわば親睦会みたいなものだ。 「むっふっふっふ♪」 だがただの親睦会ではないのは、勝負服の手袋を嵌め直すデジタルの表情を見ればわかる。 「勝てそうか?」「そっだね~?交流戦だからって和気あいあいと走ってくれるんならブッコヌイちゃうケド」 「それは絶対にない。」「だよねえ~♪」 2 俺たちの視線の先には先ほど分かれた二人のウマ娘、テイエムオペラオーとメイショウドトウの後姿がある。 皮膚の下からうっすらと浮かび上がる筋肉は一目見ればわかる。『仕上げてきた』と。 オペラオーとドトウが手を抜く理由はない。それを熟知しているデジタルも勿論この日の為に仕上げた。 テイエムオペラオーとメイショウドトウは嘗て宿命のライバル同士とも呼ばれた超強豪だ。 この二人が同じレースに出たらもう一着と二着は決まったとまで言われた。そういう時代があった。 その停滞した時代に幕を下ろしたのが、アグネスデジタルだ。 去る秋のG1、バ群をかき分けて二人が競っていたゴール前。外から走ってきたデジタルが伸び伸びと加速し二人を置き去りにしてゴールイン。 オペラオーもドトウも観客も、作戦を言い含めた俺でさえ、みんな何が起こったかわからない顔をしていた。 そして、一つの時代が終わったのだ。 オペラオーにとってドトウは不屈の挑戦者だった。 ドトウにとってオペラオーは超えるべき壁だった。 アグネスデジタルはそんな二人の関係ごと葬り去った。 オペラオーとドトウがライバル同士なら、二人にとってデジタルは宿敵だ。 3 「大体、あの二人呼んだのお前だろ。」「え、なんでわかるの?」 デジタルは引退後、トレセン学園のスタッフとして働いている。トレーナー資格はまだ持っていない。現在は筆記試験クリアの為3回目の挑戦中だ。 「大方理事長にでも吹き込んだんだろ?夢よもう一度、あの名シーンをまた見たいと思いませんか?なんつって。」 「さすがあたしの夫クン♪」 そしてこの俺は彼女の元トレーナーであり、現在は伴侶だ。 「見たいのは自分のくせに。」「あったりまえジャンッッツツ!!」 出走ウマ娘の目が一斉にデジタルを見た。 オペラオーは不敵に笑い、ドトウは困り眉を更にすぼめて、それぞれのパートナーに向き直った。 彼女らも、デジタルが肉体を仕上げて来たことを見抜いている。まあこのふくらはぎを見れば誰だって… 「イテッ!」蹴られた。 「ジロジロ見ないの!」「お前にだけは言われたくないよ!」 ウマ娘たちがゲートに向かうと、オペラオーの元トレーナーがこちらにやってきた。 「ようヒモ。」「ヒモじゃねえ!」 世の中は、まだ主夫に厳しい。 4 「燃えてるぜ、うちの王子様は。」「見りゃ分かるさ。」 「何せこの一か月、全部の仕事断って体づくりしてきたからな。」「マジか。」 オペラオーは引退後、そのキャラクターとルックスを生かして芸能界に入った。 歌手、女優、ダンサーとマルチに活躍するエンターテイナーだ。 「ドトウちゃんも今日は本気ですよ。」「久しぶりです。」 ドトウの元トレーナーもやってきた。今は俺と同じく、夫をやっている。 「おかげでこの一か月はずっとわたしが家事をやってました。」「いいでしょ、家事。」「いやあなかなか難しいですねぇ……。」「教えてやれよヒモ。」「だからヒモじゃねえって!」 そう話していると、ファンファーレが鳴り始めた。 三人同時にゲートを向く。自分の愛バを確認する。 勝負服に身を包んだウマ娘たちが、それぞれのやり方でコンセントレーションをとっている。うちのデジタルはニマニマキョロキョロしながら涎を延々と拭い続けている。 アレで走ると手が付けられないほど速いのだから、世の中はわからない。 そしてゲートが開き、俺は笑った。 5 「全くウマ娘って奴らはしょうがねえなっ!!」 スタート直後、アグネスデジタル、テイエムオペラオー、メイショウドトウの前方にウマ娘たちが躍り出て進路をがっちりとブロックした。 デジタルとオペラオーとドトウに好きに走らせたらレースが終わると、必死の形相で前をとっている。 彼女らは一人たりとも、あの秋のG1の再現など見たがっちゃいない。自分が一着をとることしか考えていないんだ。 「うひいいいいぃぃぃぃ♥ウマ娘ちゃんたちにもみくちゃにされちゃうっ♥好き放題にされちゃってるぅううっ♥♥」 デジタルのアドレナリンがオーバードーズに達しても彼女らは前を開けない。勝つことしか頭にない。 ……だが、それじゃあウチのデジタルには勝てないよ。 横を見るとオペラオーのトレーナーが不敵な笑みを浮かべていた。 何かあるな。先頭のバ群を見ると、オペラオーが隙間を見つけようともがいている。 だがブロックしているウマ娘たちは彼女の動きを敏感に察知し、前進しても後退しても右に行っても左に行ってもつかず離れずのブロック位置をキープし続けている。 6 怪訝な顔をする俺に、オペラオーのトレーナーは「時計を見な」と言った。 第一コーナー通過タイムはコースレコードだった。 引退バ戦とは思えないほどの超ハイペース。一体どういう事だ? 「マークされるのは初めからわかっていた。」オペラオーのトレーナーがにやりと笑う。 レースを見れば、オペラオーも同じく不敵に笑っていた。ストライド走法で速度を維持しつつ、少し遅れてみたり、前に出てみたり、内や外に体を傾けてみたりする。 その度に彼女をブロックしているバ群も揺れる。 「ちょっと揺さぶるだけで複数のウマ娘のスタミナを削れるんだ、安いもんだろ。」 それは理屈だ。理屈だが…。速度を変えたり体を傾けたりしながら走るのは、『ちょっと揺さぶる』なんて生易しいものではない。 自らフォームを崩しながら、スタミナを垂れ流して走る自滅行為。足にかかる負担も大きく故障の可能性すらある。 だがオペラオーは得意げに笑みつつバ群を指揮する。さながら歌劇のように。 「バケモンかよ……。」 俺は思わず口に出した。 7 「引退前より強くなってるんじゃないか?」「いやあ流石にそれはないな。」 オペラオーのトレーナーが否定する。 「今日のオペラオーの仕上げはこのレースの為だけの特別誂えだ。相当な無理をした。まともなローテーションで勝ち続ける力は、もう彼女にはない。」 「凄いですね……まともじゃないローテーションなら勝てるって事ですよね?」 ドトウのトレーナーが怖いことを言った。オペラオーのトレーナーは答えなかった。 「いやああぁっ♥いやじゃないっ♥やめてっ♥やめないでっ♥もっと近くにきてくださいいいうひひいぃぃい♥♥♥」 相変わらずデジタルは脳内麻薬を爆裂させながら走り続けている。ブロックは解けないが、彼女の周りのウマ娘たちの表情が険しくなり始めた。 デジタルもまたスタミナの削り合いは十八番。それも彼女の場合は今回だけの作戦じゃない。いつも通りの『アレ』だ。 ドトウはというとその後方のバ群の中で苦しそうに走っている。オペラオーのようにバ群をコントロールする術を持たない彼女は、特徴的な渦巻く瞳を開いて我慢強くチャンスを待っている。 「さあ、第三幕(Resolution)だ。」 8 第三コーナーに差し掛かったところでオペラオー包囲網のスピードが大きく落ちた。スタミナ切れしたウマ娘は、最早速度を維持したままカーブを曲がれなくなっていた。 雪崩を打って下がってくるバ群に対し、オペラオーは大きく外に出てスパートをかけた。 後方のバ群ももうこうなってはブロックなどしていられない。皆めいめいに脚を使いだす。 ほぐれたバ群からいち早く抜け出したのはアグネスデジタル。 「オペラオーさああぁぁぁぁあんん♥♥♥」 「フフ、もう来たか。君はやはり恐ろしい!」 「もっと近くでぇぇぇえ♥顔を見せてくださいいいいい♥♥♥」並びかかる。 「……待ってぇ~……。」その後方からかかる間延びした声を聴いて、オペラオーとデジタルの背中に冷たい汗が流れた。 「はっ……はっ……待ってくださいぃぃ~……。」 息切れ交じりのおっとり声とは裏腹に、流星のようにバ群を切り裂いて猛追を始めるメイショウドトウ。 「あああっ♥積年のライバル対決!♥♥もう無理、アタシもう無理でっしゅうう♥♥♥」 何が無理なのか全くわからないスピードでデジタルが逃げる。 9 「なんなんだあのスパートは!」オペラオーのトレーナーが観客席から乗り出す。 「間違いなく現役時代より速いぞ。どんなトレーニングをしたんだ?」 「それはドトウちゃんに秘密って言われたので、言えません。」 ドトウの夫は俺の疑問ににっこりと笑って応えた。 「これくらいやらないとオペラオーさんと戦えませんから、って言ってました。」 『これくらい』とはどのくらいなのか。きっと現役時代なら止められたぐらいの超猛特訓に違いない。 「バケモノめ……!」オペラオーのトレーナーが吐き捨てた。 引退バは後のレースを気にしなくていい。オペラオーもドトウも、それを前提にしたトレーニングと調整を行ってきたのだろう。 「全くウマ娘って奴は……!」 オペラオーはバ群をコントロールする作戦と身体能力を磨いてきた。 ドトウはマークが散った後勝ち切るためのスパート力を磨いてきた。 二人とも現役時代にはなかった武器を引っ提げて雪辱に挑んできたわけだ。このレース一回限りしか使えない、とっておきのガラスのつるぎを。 10 ウマ娘冥利に尽きるじゃないか、ええ? お前が萌えている二人の巨星は、お前を倒すために私生活をぶん投げて準備をしてきた。これはもう愛だろ。 応えてやれ。 応えてやれ! 「アグネスデジタルゥウウウウウ!!!!!」 ドトウはデジタルを抜き、オペラオーとの叩き合いに入った。 「ひゃあああああ♥キタキタキタキタきちゃったあああああ♥♥♥♥」 前方で居並び走るテイエムオペラオーとメイショウドトウが輝いて見える。否、輝いている。 これが見たかった。ずっと見たかった。いつだって見ていた。最強のウマ娘二人の、余りにも尊いその御尊走(ごそんそう)。 これを見るためにこのレースを用意したと言っていい。二人が奇麗ですね。あたし死んでもいいです。 「はっひゅっはひゅっ♥」 「過呼吸になっている!」「心配いらない。」 オペラオーのトレーナーに俺は平然と返した。見ろ、過剰に供給した酸素が足へと流れ込み、更なる加速を生んでいる。 11 「知りたくなかったメカニズムだ。」「驚くのはここからさ。」 デジタルの頭が上や下にふらふらとし始めた。無理もない、今回のレースの為にデジタルのスタミナは2000メートルきっちり走り切る分しか仕込んでいない。 そしてオペラオーが仕組んだ超ハイペース展開とレース中のウマ娘に萌えまくるその性質により、そのスタミナは底を尽きつつある。 第四コーナーを抜け、デジタルのスピードが落ち始めた。 最後の直線はテイエムオペラオーとメイショウドトウの一騎打ちとなった。 ああ……オペラオーさんもドトウさんも素敵ですぅ…… あんなに汗をかいて、あんなに必死になって…… その顔が見たい……見たいよ…… あたしは……ウマ娘ちゃんと共に生き…… ウマ娘ちゃんと共に死ぬ……! 力が……。力が……!!! 「欲しいいいいいいいいい!!!!!!!」 12 だってそこに 推し(ほし)が 勝利(ほし)が 夢(ほし)が 星が輝いて!!いるからぁぁぁぁ、ああああああああっ!!!! 最後の直線でオペラオーとドトウが耳にしたのは、異様な足音。 「ピッチ走法!」「そう!時限式のニトロを仕込んでおいたのさ。」 この一か月、デジタルの脚は筋力トレーニングを徹底的に行った。そして、意識が朦朧とするトレーニングの終了時に毎回、歩幅を狭めた走り方をさせた。 「強い脚力で何度も地面を蹴ればスピードが出る。道理だろ?」 「そんな無茶が通るわけが……!」「そうですよ、大体意識が遠のくことを前提にレースの準備をするなんて信じられない!」 「この加速は、最後の100mだけ持ってくれればいい。スタミナが尽きることも計算の上だ。そして何より。」 アグネスデジタルが風になる。 「この作戦は、彼女が考えた。」「……バケモノめ!!」「バケモノですね……。」 13 二人の間に見える星。それは勝負の火花、友情の炎、ああそんな言葉じゃ表現できないくらいの情念、関係、時間。無数の思いの輝き。 テイエムオペラオーとメイショウドトウの間のほんのわずかな隙間。 そこにそこに、たどり着く。星への扉。そこに首を差し出す。 14 扉は閉じた。 まるで示し合わせたようにライバル二人の肩は密着した。 テイエムオペラオー。 「もう前は。」 メイショウドトウ。 「譲りません。」 「ぎにゃああぁあぁあぁあぁ~~~~~ ~~~~~!!!!!!♥!♥!♥!♥♥♥♥♥♥♥」 15 結果。テイエムオペラオーとメイショウドトウは同着。アグネスデジタルは三着となった。 全ての力を使い果たしたアグネスデジタルは満面の笑みのまま32時間眠り続け。そして。 練習用トラックを走るアグネスデジタルの姿を見た。 小柄な体を前傾させ、美しいフォームと安定した足運びでカーブを潜り抜け、外に膨らんだまま直線で一気に加速。ゴールを切った彼女の姿は、現役のころから聊かも衰えていない。 デジタルは徐々に減速すると、トラックの中で見学していた同じジャージの新バたちにちゃんと見てた?と首を傾げた。 だがウマ娘たちは彼女ではなく俺の方を見て、そしてデジタルもそれに気づいてこちらに振りむいた。 「来てたんだ。」「買い物で近くまで寄ったからな。」 エコバッグからミネラルウォーターのペットボトルを差し出すと、デジタルはありがと♪と受け取って新バ達に向き直った。俺も背を向けて家路につく。 アグネスデジタルは現役を引退し、学園のスタッフとして働いている。 そして俺は彼女の元トレーナーであり、今は主夫だ。 fin -- Living with joy 2 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バで現トレーナー見習い、アグネスデジタルです♪ いきなりでごめんなさいなんですけど、デジたん今夫婦関係で悩んでいるのです! あはーいきなりそんなヘヴィーオブジェクトをぶつけられても困るというのは十分承知しておりますはいすみません。 でもでもデジたんにとってすごく大事なことなので、どうか広い心で聞いていただければとっても嬉しいですっ! …大丈夫?聞いてくれる?じゃあお話ししますねっ。 アタシの夫は元々アタシのトレーナーをやっておりました。よくある奴ですえへへ…♪ いやいやウマ娘ちゃんへの愛だって衰えておりませんよ!?結婚したからって趣味を止めるバ鹿がいますか!?!?いや、これはいるかもですけどぉ。 夫婦間でご理解がなかった場合ってそうならざるを得ませんし不幸なことですけどお互いにこう心をすり減らすような譲り合いがですね、あれ何の話でしたっけ? そうそう、アタシに夫がいることとウマ娘ちゃん達を愛していることに矛盾はないって事です!浮気じゃないんです!!わかれ!!!わかってくれ!!!!! 2 アタシの夫はそりゃもう献身的なのです。ノロケじゃないですよノロケですけど本気でノロケるのはもっと後ですでへへ♪ 所謂主夫って奴です。家事全般をやってくれております。デジたん本当に助かっていて、トレセン学園に仕事に出て帰ってきてお風呂入ってご飯食べて寝て、で一日が終わっちゃうんです。すごくないですか?! 掃除も洗濯もご飯もお布団敷くのも何にも考えなくていいんですよ!? ウマ娘ちゃん達を育てる楽しい楽しい仕事をすることに全てをつぎ込めるのです。マジ幸せ。 ……でもデジたんは思うのです。仮にもアタシのトレーナーをやってくれた夫をこのまま燻ぶらせていいのか?! こんな言い方はアレだと自分でも思いますケド、このアグネスデジタルはなかなか凄いウマ娘なんですよ、ご存じだと思います! GI六勝という成績を支えてくれたのは夫です。ぐすっ。すみません今の嘘泣きでした。GI六勝はマジです。えへん。 別にトレーナーという仕事に拘る訳じゃないんですけど、なんだろう? あの人にデジたんを支えるだけの人生を送ってほしくないと思っちゃうんですよ! 3 あの人はそうしたいからそうしてくれてるってわかってるんですけど、でもでもそれってなんか悪いじゃないですか!…負い目!そう負い目がある! 負い目がある夫婦って離婚しそうじゃないですか!? Living with joyって曲知ってます?タカハシヨーコ?さん?だったかな?のあんまり売れてない歌!言い方!! いやすごい人なんですってねヨーコタカハシ。調べたらユーメーなアニメのテーマソングで大ブレイクしたとか。 じゃなくて。Living with joy 今からBGMで流します。許可は取ってます。取ってるよね?取ってました!流します! 歌詞の中でね、あ、歌詞言っていいんでしたっけ。いいですよねそりゃ曲流すんですもの。歌詞ダメで曲流していいなんてありえないじゃん! 失礼しました、でねでね、ダンナが、あダンナって言っちゃった若干のポリティカルコレクトネスが心配ですが個人の自由では? 好きなシャツやコーヒーの味 ささやかなことが いつの間にか同じになって ふたりは今ひとつになるって歌詞があるんです。 ダンナと趣味が違うデジたんとしては全肯定はできないんですケド、同じものが何となく好きになっていくって素敵だなぁ~~って思うんです。 4 別に好きなものが全部同じにならなくたっていいんですよ。ワサビが食べられるようになったとかだけでもいいんです、好きな人の好きなもの一つでも自分が好きになれたら素敵だなって。 ダンナも多分そうだと思うんです、デジたんの好きなものを一つでも好きになれたらめっけもんだなって。思ってると思うんです。思ってると思うんです? この歌詞でいう「ひとつになる」って、何もかも同じなることじゃないと思うんですよ。 そういうちょっとした、「あ、この人と同じ部分ができた」ってだけで合体できるというか。 いやらしい意味じゃないですよ?いやらしい合体もしますけど。 この歌は「ひとつになれたところがある」っていう幸せを歌ってると思うのです。 だってデジたんはデジたんでダンナはダンナですもん。そして推しは推しですもん。 二人三脚一心同体はできても、同じものにはなれないでしょ?そんなの意味ありません。デジたんとダンナが違うから、二人三脚や一心同体になる意味があるわけで。 5 違う二人が一つになれるから意味があるんであって、完全に一致したらたった一人になるだけじゃないですか。 でねでね?デジたんとダンナはまだ、二人三脚できてない!って思うのです。今はダンナが背負ってくれてるって感じ。 でもでもデジたんだってダンナのこと好きなんです!ダンナのことを助けたいと思うのです。 ダンナにデジたんを支えるだけの人生を送ってほしくないって思うんです。 デジたんを支えるだけの人生こそダンナの幸せっ!なのかもしれないけどそれじゃデジたんは満足できないぞ!って。 だってだって、デジたんとダンナで、確かにひとつになれたところがあるんだもの。食べ物とかお酒の好みとか。 二人で一つになれているはずなのに、デジたんだけが好きなことしてるのは違うと思う。もっと重荷を任せてほしい。 いやマゾじゃありませんよ!! ダンナにも好きなことして欲しいんです。デジたんダンナの好きなこと何にも知らないんです。びっくりしました! それでも妻かよって刺さるから言わないでほしいわかってるから。 いや食べ物とかお酒の好みとかとは別でさ、趣味とか生き甲斐とかの話。あーーーーそうですね。 6 好きなことじゃなくて、「ツライこと」を支えさせてほしい。 何がツライんだろ?腰痛?肩こり?油もの?マッサージすればいいのかな?胃を。胃を? 胃。そっか、デジたんもなんか家事をやればいいのです。 掃除だって洗濯だっておさんどんだって、二人でやった方が早いですよね。楽しいですよね。 そんなにばっちりデジたんお仕事、ダンナ家事って分けなくていいんだ。デジたんも家事やるしダンナも仕事手伝ってくれたらうれしいな。 持ち帰り仕事とか結構ありまして。あ、実は今も手伝ってもらっているんですけど。 そう、好きなことだけじゃなく、楽じゃないことだってひとつになれたらいいんです。 そうと決まれば今日から早速やっていきましょう! ひとつになりに行ってきます!ひとつに!ひとつになりますからね!!でへへ…♥ それじゃあバイバイ、深田恭子でした。 -- タメ口デジタル 1 「デジコーチは苦手なコースってあるんですか?って訊かれたからG2以下の芝って答えたらなんで?って言われたの。なんで?」「何?なぞなぞ?」 今日の夕餉は豆腐ハンバーグです。六冠バアグネスデジタルのご感想は 「…コメントしづらい。」「お前の競走成績みたいだな。」「バカタレッ!」 机の下の脚を蹴られた。 「おいしくないわけじゃないんだけど、肉風味のふわふわしたものって感じでデジたんの舌は今ズブくなっています!」「食べたことない?」「ん。」 割とほかにない食感ではあるよな、豆腐ハンバーグ。 「お醤油だばあー!」「楽しそう。」「ごはんに着地しました!」「ああそれ美味い奴。」「美味しいっ!」 「語彙がツインターボみたいになってる。」「ツインターボちゃんに謝って!謝りなさい!」「ごめんなさい。」 「ごちそうさまでした。」「お粗末様でした。」 デジタルはなんだかんだで育ちがいいんだよな。毎回茶碗にご飯粒一つ残さない。 潰れてこびりついたりするから米粒コンプは見た目より難度が高いトロフィーなのだが。指先のパワーもウマ娘と人では大きな違いがある。デジタルは今年だけでもう箸を二膳オシャカにしてる。 2 洗い物を終えて居間に戻ると、眼鏡と寝間着を装着したデジタルがソファに座り、テーブルの上に資料を広げている。 「明日のメニュー?」「今週と来週分。」道理で多い。「今日まとめなきゃだめなのか?」「ちょっと前倒しにしたいんだあ。」 うん、そういう時はある。ウマ娘の成長はスケジュール通りにはいかないものだ。 「…。」「…。」「…涎っ!」「はっ!」 新バの資料を凝視していたと思ったら案の定。 「はっじゃないんですよデジタルさん。」「ウマ娘ちゃんの資料を見て萌えないなどありえない。」「向いてないんじゃないのこの仕事。」「おまえー!」 おお、かかったかかった。立ち上がった。 「ご飯の時もだけどさぁ!愛バにかける言葉じゃないんだよぉさっきから!」「わかった手伝うって。」 「何がコメントしづらい競走成績だ。あんたがトレーナーだったんでしょうが! デジたんだけの責任じゃないですうぅー。二人三脚一心同体で走ってあの結果なんですうぅー。」「じゃあ俺もG1六冠だな。」「都合のいいことばっかり言う!」 3 二人で二時間ほど新バ達のトレーニングメニューを確認していると、デジタルが船をこぎ始めた。こっくりこっくり。 無理もない、自分で走って見せるトレーニングを何度もやっているのだ、肉体の疲労も溜まっているのだろう。 デジタルが今日食べたのは手のひら大(※指の部分を除いた面積)の豆腐ハンバーグ五個にご飯中盛り五杯、サラダをボウルに一杯。 ウマ娘は本当によく食べるので食費もバ鹿にならない。今日の豆腐ハンバーグも、少しでもエンゲル係数を下げるためのチャレンジの一つだ。 デジタルの競走バ時代の賞金がまだがっぽり残っているし彼女の実家も太いから暮らしに困るような恐れはないのだけど。 「軽っ。」 眼鏡をはずして抱き上げて寝室までお運び申し上げる。もう完全に熟睡している。 よく動きよく食べよく眠る。そしてこの小柄な体。まるで育ち盛りの子供だ。 そっとベッドに下ろし、布団を掛けてやる。跳ねのけられた。 「暑いからタオルケットにして。クーラー入れて。あとおでこに貼る冷たいやつとアイマスク持ってきて。」 おまえー! -- 少し面白い 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、リアルパカチューバーの、アグネスデジタルですぅ~♪ 本編に入る前に一言。 当チャンネルでは、TBSラジオ 伊集院光のUP's 深夜の馬鹿力 「少しおもしろい」コーナーあての投稿は受け付けておりません! 今後はTBSラジオ様に送り直しませんので、気をつけてくださーい! お叱りから入ってしまってごめんなさいでした!でもでも本当に迷惑がかかっているので、やめてくださいね! では本日のお話。 2 配信の先輩ゴールドシップちゃん、いやゴールドシップ様にお会いしてきたんですよぉ~~~~♪ 学園ではなくてスタジオで!理由は押しかけたからです推しだけに!20秒で摘まみだされました!! ADの恰好してたんですけど「鋭い眼光」ですぐバレました流石猛獣とあだ名されただけのことはあります! いやいやお呼ばれもしていないのに行ったりはしていませんよ?ノンアポで推しに迷惑を掛けたりなど決して決して致しません! ちゃんとご招待を受けて、ADの恰好してきてくれって言われて従っただけです!その上でやっぱいいわって出走取消となりました!!! はぁ~~暴君…好き…♥ 「最後に握手だけ、してもらってもいいですか♥♥♥」って頼んだら 「そういうとこだぞ」って言われたんですけどどういう意味なんでしょうか? 3 ところでゴールドシップ様はゴルシとよく呼ばれていますけども、デジたんとしてはやっぱりゴールドシップ、とフルネームでお呼びしたいところです。 ゴルシというのもあの方のいたずら好きで奔放なところをよく表した語感だと思うんですけど、 でもでもやっぱりゴールドシップさんは美しいのです!その美しさを表現するにはフルネームの方が向いている気がするんですよねえ。 背の高い恵まれたバ体にメリハリのあるお体、均整の取れた顔、黙ってれば美人とはよく言われるそうですが喋ってても美人ですよ!とんでもないこと喋るから視覚が疎かになるだけで!!忍術かな? デジたんもとんでもないこと喋れば真似ができるかもしれません! ハルウララさん直伝忍法とうめいの術~! ゴールドシップさんのハロン棒は あれゴールドシップ様どうしてここにデジたんはまだとんでもないことを言えていないので透明ではなくつまりその伸ばされた手は確実にデジたんの頭を掴んで 4 いやあ~~尊さに頭蓋が締め付けられるということはあるのですね!胸ではなく。実に暴力的な威力でした! スタッフさんも先に言っておいてくださいよぉ~視聴者さんがびっくりするじゃないですかデジたん突然死なんて。 皆慣れてる?あ、そう。 5 尊さと言えば何と言ってもウイニングライブですよねっ!!皆さんもお楽しみ! いやーよかったですよね█████████ちゃんの引退ライブデジたんも同時引退でそれどころか実はあのライブ本当はデジたんも…ん? █████████ちゃん。 █████████ちゃん! ……ムム!これはもしや。 キンイロリョテイちゃん。███████ちゃん。 キンイロリョテイちゃん!███████ちゃん!なるほどなるほど!あははは!おまんこ、あっ ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ 6 今のは皆さん聞かなかったことにしてくださいええお願いします!おまえは なにも みなかった! …よし。皆さんよろしいですね?デジたんはよろしいですよ。 ███████ちゃんみたいな処理がされると思ったのです。なるほど何となくわかりました!これから気を付けます!! まったく。デジたんもウイニングライブで踊ったりする、つまりはこれでもアイドルの端くれでありましてぇ、アイドルは決しておまんこなどと言ったり ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ 7 うう~~ごめんなさい~!二度も立て続けにやらかしてしまうとは~…。ご迷惑をおかけしてすみません…。 話題変えましょうか。変えましょう。変えさせてください! うまぴょいがセックスの隠語として定着して久しいですが ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ え、セックスもNGワー ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ 大変失礼いたしました。今日はあまり話せませんでしたね本当にすみません。 ではそろそろ終わりの時間ですので、残りの時間で「少しおもしろい」を、少し。 -- 猛暑の日 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルで~す♪ 前回に続いてゴールドシップさんのお話です。トレセン学園で偶然会う機会がありまして、配信の話をしておりましたら 「お前あれ面白いと思ってやってんの?」 デジたんの頭の中でNyan Catが宇宙空間を飛びました。 「悪いっ!言い過ぎた!」 え、ゴールドシップ様の口から謝罪っ!?珍しいと思ったらデジたんの目からポロポロと涙が出ていたんです。 そんなつもりじゃなかったんだ、言い方が悪かった、お前には本気でいかねばならないと思っていたがいくら何でも意地悪が過ぎたなと困った顔をするゴールドシップ様尊い…。 いえいえ、あの時は言葉に出来ませんでしたが、本来デジたんは 「はい!」 と胸を張って言うべきだったのです。 その上で「至らぬところがあればどうぞお教えください!」と言えなければいけませんでした。 2 まったくアタシの未熟の致すところであってゴールドシップさんに悪いところは一切ないと頭を下げ返したのですが、 ゴールドシップさんもこのままじゃアタシも寝つきが悪い、今日は飯を奢らせてくれ、と仰るので願っても無し!とお返事。 夕方デジたんの自宅にやってきたのは黒いスーツでビシっと男装キメたゴールドシップさん、いやゴールドシップ卿でした。 着の身着のままのデジたんの手を取って、玄関先に止めてあった黒塗りのリムジンにデジたんを放り込みます。なんてワイルド…好き…♥ 後部座席に二人並んで座るとリムジンは発進しました。 お隣のゴールドシップ卿の横顔のりりしさと、コロンの香り、そこに混じるわずかな汗の匂い。 デジたんの心臓は爆発寸前。クーラーが効いているはずの車内で汗びっしょり。二回ほど振舞っていただいたOS-1、美味しかったです! リムジンは夜の都会を駆け抜け、車のライトと窓の光が彩るビル街へと辿り着きました。 そしてアタシはゴールドシップ卿に手を引かれ、ビルの中へ…。 最高の時間でした!! また一緒に行きましょうね、はなまるうどん!! 3 というわけで人をおちょくることにかけては全く妥協しないゴールドシップ様の真髄を見せていただきました。 汗と言えばこの季節、暑さにやられて食欲がなくなったりしていませんか? 一昔前は外の気温と冷房の冷却の温度差で体調を悪くする、冷房病がよく危惧されておりました。 しかし今はそれよりも熱中症の危険の方が強く報道されていますね。 冷房病で体調を崩すとQOL(クオリティ・オヴ・ライフ)が下がりはするものの死へのカウントは遠目です。 しかし熱中症は一度かかるとEOL(エンド・オヴ・ライフ)一直線。 一先ず体温を下げて熱中症を回避し、冷房病についてはその後で対策するのがいいみたいです。 4 食欲がないからと言って食事を抜いたりすると、暑さに対抗できる体力も失ってしまいます。 特にヒトよりも新陳代謝が激しいウマ娘ちゃんにとっては影響が大きい。 そこでお勧めしたいのがジュースです。定番のバナナはもちろん、旬を迎えるパパイヤマンゴーパイナップルなんかも美味しいですよ♪ ビタミンも豊富ですし糖分も多く含まれていて、カロリーが取れます。 サプリメントでもビタミンやミネラルは補充できますが、カロリーはどうしても不足しますからね。 ジュースと言えば今デジタンも手元にございます!(ズゴゴゴゴ)聞こえましたか?何のジュースだと思います? ヒント! デジたんは今トレセン学園で新バちゃん達のお世話をさせていただいております。 ヒントその2! この時期のトレーニングはたっくさん汗をかいちゃいますよね!終わった後の服を絞ると はいヒント終了~~~!!!! 5 デジたん一番のおすすめは思い切ってスイーツを食べることです! 太っちゃう!って思うかもですけど食べないよりずっとマシです! 暑さに負けて絶食するよりは、無理にでも何かおなかに入れた方がいいってオグリキャップさんも言ってました!! 萎えた食欲をですね、油と糖のおいしさで押し切るんですよっ!甘い物は別腹とも言います! 勿論食べすぎはよくありませんが、どうせ食欲ないんですから大して食べられません!心配は無用です! 美味しさで押し切って食べるってデジたん結構大事だと思っていまして。 食欲ないなーと思ったらスイーツに限らず思い切って好きなものを食べてみてください責任は持ちませんっ! ちなみにデジタンの好物はエリート塩飴です。 6 暑さ対策でもっと単純なのは体を冷やすこと。すなわちプールですっ! デジたん最近お休みには必ずプールに出かけています。 勿論トレーニングの為ですよ?いつもウマ娘ちゃん達の水着を拝んで溺れ死んでます!心肺機能の向上が見込めますね! あとそれと関係があるかよくわからないんですけど近くのプール何故か全部出入り禁止になっちゃいました。困ったものです。 最近は毎週遠出をしてプールに出かけて出禁になっています。 皆さんもいろいろ工夫して、夏の暑さを乗り切ってくださいねっ! 最後にペンネーム「静かな鈴鹿」さんからのメールをご紹介します。 「はい、寝る前にスズカさんのお話聞きましょうね」 -- 酷暑の日 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスぅ↑デジタルですぅ♪ いやあ今日は少し恥ずかしいお話をさせてください、聞いてくださいよここはデジたんの日記帳! 実はですね、夏うつをやらかしてしまいまして。 というのも数日前、学園で新バちゃん達のトレーニングを指導していたんですけど、そのお姿に全然萌えないんです。 汗の煌めき、肉体の躍動、懸命な表情。 どれもデジたんの大好物の筈なのに、何だか気分が盛り上がらない。 こいつはコトだぜ!せにゃ! トレーニングを先輩トレーナーさんにお任せしまして医務室へ。 デジたん死ぬんでしょうか!!! 安心沢大先生の谷間に話しかけると押しのけられながら診断を受けまして。 で、夏うつと。駿川さんには伝えておくから早く帰宅せよと言われました。 2 夏うつというのは夏バテともよく似た症状ですが、不安になったり気力が失せたりという精神面の不調が特徴だそうです。 日の浴びすぎ、疲れすぎ、それに室温と外気温の差とかでストレスが積もり、自律神経が不調になる。 結果、交感神経が強く機能しすぎてオーバーヒートを起こしてしまうんだそう。 日頃新バちゃん達に萌えまくっているデジたんには心当たりがありまくり。 その日は安心沢大先生の勧めもあり、もうおとなしく帰って寝ることにいたしました。 夏うつというのは過覚醒という言わば「目を覚ましすぎ興奮しすぎ」が原因だそうで、 寝て休むのが一番なんですって! 大人しくベッドでダウンしておりました。 寝ながらタブレットで新バちゃん達のお写真見ていたら取り上げられました。 「興奮しすぎが原因って言われたろ!」はいっ! えっ?写真の出どころ?それは███████ ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ 3 おかげで現在は復調しております。今元気! しかし元競走バとして、そして見習いながら新バを預かるスタッフとして、体調管理はプロフェッショナルのつもりだったのですが~…。 とってもとっても恥ずかしい気持ちでした。はい。 夫も大変心配してくれまして。 元トレーナーでありながら妻の不調に気づけないとは情けないとシュンとしておりました。 彼の見立てだと、溜まった疲労がピークを越えてしまったんだろうとのこと。 現役の頃はこんなことなかったのにどうしてかな?と聞いたら、言いにくいけど、年齢かな、だって。 言いにくいことをよくもぬけぬけと! 確かにデジたんはもう繁殖牝バに入ってもおかしくない年齢ですけども。 もう少し後でと思っていましたが、体力がピークを越えた以上早めに考えた方がいいのかも。 でもでもデジたん体格がまだ小さいのでもっと大きくなってからの方が安心なんですけど、 もう成長の余地ないっ!!(台パン) 4 今夜早速種ぴょいします。 それはそれとして、ご心配おかけして大変失礼いたしました。 トレセン学園の方々もありがとうございます。 皆さんも本当に気を付けてくださいね。 ダウンしたデジたんが言っても説得力無いかもですけど、不調は気力で跳ね返そうとすると長引きますよマジで。 大人しくお医者さんやダーリンやハニーやパパやママの手を借りましょう! そしてその様子を写真や動画に収めてデジたんに送ってくださいっ!! はぁ~看病てぇてぇですよね…♥ 「ごめんね心配かけて」「いいさオレときさまの仲だ」なんて言ったりしたりしてっ♥♥ 5 普段元気な子が思わぬ怪我や病気で不調になって気弱になるのいいですよね! それも症状自体は深刻じゃない奴がいいの。 普段元気だからこそ寝なきゃいけないぐらいの状況自体にショック受けてしょぼんとなるくらいがデジたんにはちょうどいい塩梅。 だって元気にならないと快気祝いぴょいが出来ませんからねっ! 「心配かけた分、たっぷりお返ししてあげる」「ベッドの上じゃいつだって強いところを見せてやるぜ」って! きゃぁあ~~~~~♥♥♥♥ 「最近になってコブラ読んだのか」って?うん。 あっチャット欄がコブラ一色になった! 待て待てこれはデジたんの配信ですぞっ!!遠慮して!!!もっとデジたんを愛して!!!! 「お前ダンナいるじゃん」そういう正論はいいんだ。 6 と言ったところでそろそろお時間です、スーパーチャット読んでいきましょうねっ! 「いつも配信楽しみにしてます」ありがとうございますっ! 「体お大事に」ありがとうございますっ! 「もっとダンナとの話しろ」えぇ~~?聞きたい~~~? 「ご飯を食べるんだ」オグリキャップさんいつもありがとうございます! 「バクシンバクシーン!」ダウト!元委員長のお言葉はもう少し理性的ですっ!反省してくださいっ! 「今日は早く寝ろって言っただろ」えっ?誰? ハンドルネーム… ヤバッコレバレた終わります(ブツッ) -- アグネスデジタル、行きますっ! それはG1を勝った時のウイニングライブのこと。 センターで歌いながらウマ娘ちゃんに左右から挟まれる幸せに浸っていると、「アグネスデジタルー!」の声が。 客席に目を向けると、何人ものお客様がアタシのグッズを身に着け、サイリウムやうちわを振り回しアタシの名前を叫んでいます。 ライブ中なのに泣いてしまいました。 「好きなウマ娘ちゃんと戦う」というアタシの中の小さな棘が音もなく外れました。 胸の中でずっと止まっていた歯車が、するすると動きだします。 育ててくれたスタッフや好きなウマ娘ちゃん達の為だけじゃなくて、アタシを好きでいてくれる人たちの為にも、力は湧いてくるんだ。 そんな当たり前の事に気づかなかったなんて。 アタシはボロボロに泣きながら頑張って最後まで笑って歌い続けました。 ――各バゲートイン。左右には麗しいウマ娘ちゃんたち。客席にはウマ娘ちゃんを応援する横断幕。その中にアタシの名前もあります。 手を振ります。大好きなウマ娘ちゃんと大好きでいてくれるファンと、アタシをここまでにしてくれたトレーナーさん達。 走る以外のことは要りません。 ゲートオープン。 アグネスデジタル、行きますっ! -- 新バの頃 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですぅ♪ 皆さんはアグネスデジタってますか?デジたんはアグネスデジタってますよっ! アグネスデジタらない時は是非是非こちらを視聴していってくださいっ♪ ということで本日はですね、新バ戦を見に新潟まで行って来ましたっ! 「えっ?トレセン学園の生徒が地方でデビュー?」と思われるかもしれません。 しかし新潟競バ場のレースはURAの管轄!つまり中央競バであります。 出場するウマ娘はヤベー奴しかいないっ! そのヤベーウマ娘ちゃんの内一頭にですね、僭越ながらデジたんがお世話させていただいたというか、お手伝いさせていただいたウマ娘ちゃんがおりましたので。 本日はその萌え萌え雄姿を拝みに……ではなくですねっ! 応援にっ!行ってきたのですっ!! 2 緊張してるかな?と思って控室をノックするとどうぞーと普通の声。 デジたんでーすとお邪魔すると、ストレッチをしておりました。 正トレーナーさんも手伝っております。尊い死にます死にました。 「緊張とか、ありませんかぁ…?」 尊さで輝くトレーナーさんとウマ娘ちゃんペアに気圧されながらお伺いしますと、 「大丈夫でーす。」と背中を押され前屈しながら剛毅なお返事。 将来活躍してくれそうな器を見せてくれました。 出走の時。 デジたんも客席でバ券を握り締め固唾を飲みます。 是非勝っていただきたい! ゲートオープン!! 3 やれーいけーさせーきゃーがんばってー♥♥♥♥ デジたんが如何に燃えたかはもう言うまでもないので省略します。 しかしながら善戦空しく彼女は2着と相成りました。 その後の控室。扉の前でノックするのを数分ほど躊躇っておりました。 頑張ってコンコンもしもーし。どうぞー。その声は出走前と同じ、大器の声。 「デジたんですぅ~…。」 恐る恐る扉を開けると 「あぁすみません負けちゃって。」 カラッとしたもんです。笑ってすらいた。 頑張ったね、とか自分もメイクデビューでは負けたから、とか色々話すことを準備してたんですけど、その一言で全部吹っ飛んでしまいました。 反省点は色々あるでしょうが、それは彼女のトレーナーが世話することであって。 とにかくメンタルに引きずっていないのは凄くいいことです、また学園で会いましょうねっ! とだけ言って逃げるように去りました。 4 大物だわぁ~…若さと野心に溢れてて…好き…♥と萌え萌えしながら新幹線に乗りましたが、やっぱり思うところはございます。 どうしてもねっ? 自分が負けたときはああだったかしらとか、 負けた悔しさってあんな感じに消化、昇華できていいもんなのかしら、とか、 でもそういうことってちゃんと正トレーナーさんがわかっていることであってデジたんが気を揉むことではないのでは? そもそもメイクデビューできるレベルまで育っているし中央競バメイクデビュー2着って相当なモンだぜデジたんだってそうだしとか ぐるぐるぐるぐる頭の中で考えていたら終点東京に辿り着きましたとさ。 シンカンセンスゴイカタイアイスを買ってないっ! そんなに期待してるものでもないけどっ! でもカッパー(銅)製のスプーンをわざわざ買って持って来たのにもったいないっ!」 家路でカップアイスをごっそり買ってきました。冷凍庫に収まらなかったので夫が内緒で買っていた秘蔵の冷凍本マグロを取り出してスペースを確保!なんで隠せると思うんですかねっ!? マグロはキッチンに全部置いて室温解凍です。 5 デジたんそれだけでは収まらなかったので池袋に出かけて噂のウマ娘喫茶に行って来ましたっ! お店の名前もメイクデビューですし、ちょうどいいんじゃないですか?何が? ウマ娘に扮したヒト娘に囲まれてふわふわしていたら、 「もしかして、アグネスデジタルさんでしょうか」って訊かれたのではいっ!と答えたら店内が異様な雰囲気になりました。 ああ、名の知れた限界オタクということで出禁かしら、と荷物をまとめているとデジたんだ!本物!って声が。 ああっ、お店にご迷惑でしたらすぐ帰りますのでと告げると、 いえいえとんでもない、本物のウマ娘さんに来てもらえるとは願ってもいないこととお優しいお返事。 デジたん持ち上げられる分にはいくらでも大歓迎ですので、感激で泣きながらサイン書いたり握手したり一緒にビデオ見たりしましたっ! 特にデジたん最後の2レースのビデオは何度も見せていただきましたっ! どちらも█████████ちゃんが一着でデジたんは掲示板にも載りやしねえ凡走。 「…負けたレース見て、楽しいんですか?」かなりのもんですっ!「そうですか…。」 6 いやぁ得るものの多い旅路でございましたっ! ほくほく顔で家に帰るとマグロ尽くしの夕食が待っておりました。 「てめえで解凍したんだから責任持てよな。」 勿論ペロリと平らげました。夫は何故か泣いてましたっ!! それではそろそろお時間です。 ジャカジャカじゃんけーん?スタート! ジャカジャカジャン!ジャカジャカジャン!ジャカジャカジャカジャカジャン!イェーイ! ジャカジャカジャン!ジャカジャカジャン!ジャカジャカジャカジャカジャンケンポン! デジたんの手は~?女握り(この動画はぱかちゅーぶ運営により停止されました) 参考: https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=190731 https://make-debut.com/ -- 愛を試すなかれ 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アッグネッスデッジタッルでっす♪ 愛があればたとえ火の中水の中、ということでねっ! 今日はデジたんのウマ娘愛がどれほどのものかを、試してやろうじゃないかと! スタッフさんが色々と用意をしてきたようですっ! 愛を試すだなんて随分と罰当たりな事を考えるもんですねっ! 増してやこのデジたんのウマ娘愛を試そうとは。 これは思い知らせてやらなくてはいけません! ということで収録した様子を見てもらいます。 愛の試練に愛で打ち勝つ姿をどうぞご覧ください~♪ 2 ということでやってまいりました霊峰富士! 一発目富士山はガチが過ぎない? ほかにも試練あるんですよね? (ありますよ)ですよね? ……で、何をするんです? 浅間神社をできるだけ廻ろう~!できるだけってどういうことですか?! (デジナレ) 「浅間神社はセンゲンジンジャとも呼ばれ、富士信仰の神社として全国にございます。 今回回る予定なのはその中でも、 東口本宮冨士浅間神社、北口本宮冨士浅間神社、冨士御室浅間神社、山宮浅間神社、富士山本宮浅間大社の5つ。 本来は日帰りバスツアーで巡るこの5つの神社を、デジたんの脚で巡り、ウマ娘ちゃん達の安全と活躍を祈願しようということだそうです。」 やってやろうじゃないですかっ! 3 (デジナレ)「デジたんは気合十分。バスツアーで先回りする非情なスタッフを追いかけて、まずは東口本宮冨士浅間神社へっ!」 これはスタッフより先に着けたかな?なるほどこの神社のフジは、頭に点の無い方の「冨士」なのですね。 うわ~~すごぉ~い! (デジナレ)「これはハルニレの木です。静岡県の天然記念物です。でっかい!」 葉っぱに透ける日の光が奇麗ですねぇ~♪ (デジナレ)「しかしのんびりはしていられません、あと四つ。デジたんは手早く参拝し次の神社へ!」 はぁ…はぁ…ここかな?北口本宮冨士浅間神社! (デジナレ)「たかぁ~い木と灯篭が導く鳥居への道。さすがのデジたんもこの景色を全力で走る気にはなれませんでした。」 すごい~…。これ景色が開けた先にボスが待ってるやつですよね。幹部クラスの。 (デジナレ)「まだ余裕がありそう。こちらも参拝し、さあ次の神社へ。」 4 …着きましたっ!冨士御室浅間神社!!ここも頭に点の無い方の「冨士」ですねっ!げほっげほっ! (デジナレ)「実はここに来るまでに横の道を走る観光バスに追いついたのです。 最初の神社の時点で追い抜いていると思ったら実は今追いついたところということに気づいたデジたんはスパートをかけたのであります。 まあ追いつけなかったんですけど。」 ああっ!石の龍がうまぴょいしてるっ!! (デジナレ)「百福の龍宝珠、という絡み合う複数の龍が織りなす宝珠を象った彫刻です。 うまぴょいとか言ってはいけません!ドラぴょいといいましょう!うーードラだっち!」 他と比べると敷地はあんまり大きくありませんね。 でも狛犬とか、ヤブサメの碑とか、彫刻が多い感じですっ! (デジナレ)「ここも丁寧に参拝し、次の神社へ。ところが。」 ……ぐっええー……。 5 (デジナレ)「次の目的、山宮浅間神社に向かう途中でデジたんの脚が止まってしまいました。」 おなか減ったんですけどぉ~……。でも食べて走ると多分吐いちゃう。 (デジナレ)「がんばれデジたん!ウマ娘ちゃんの愛はどうした!」 大丈夫、いけます。 (デジナレ)「いけませんでした。」 [大写しされるうつ伏せのアグネスデジタル] ---- ……はい、というわけでね、見事に敗北しました。パターン・サワーホマレー、愛って減っちゃうんだよ まだ第一関門だったというのに。 次は何を用意してたんですか? (負けるなロートル!現役の競争バとガチバトル!という企画で) その方が100倍の愛が出ましたよ!!ていうかロートル呼ばわりが酷すぎる!!スタッフにデジたんへの愛が無いんですよぉ!! 6 というわけで、霊峰富士の神社は無理せず、車やバスで参拝しましょう。 間違っても走っちゃだめですよ?あなたのお名前が「阿久利黒」とか「鬼鹿毛」とか言うのであれば止めませんけどもぉ~……。 企画としてはもうちょっと頑張りたかったというのがあります、はい。 でもでもどの神社も有名なだけあって手入れが行き届いていましたし、素敵な魅力にあふれていましたっ! これでウマ娘ちゃんとのデートだったら最高だったんですがっ! (どんなウマ娘ちゃんとデートしたいですか?) え、言ったら叶えてくれんの? じゃあねえ…♪うーん…むっふふ…♪えーとねえ……♥♥ えーと…でぇへへへへ…。 えっとねえ、待ってね今考えてるから。 んー……むっふっふっふ……♪ デートでしょお?ねぇ?そしたらさ…いやーどうしようかな……むぇへへへへ♥ うーん……。……やっぱりシンボリクリ (エンディングテーマ) -- 愛を試せ 1 「フケちゃった~~ぁ♪」 帰ってくるなりただいまの代わりに劣情を告げるアグネスデジタル。 紅潮した顔で体中汗びっしょりにして、手荷物を放り投げた。 ちょっと待て、と止める間もなく俺の胸にドスン、と小さな上半身を預けた。 「シよ?」 首を上げて上目使いで見つめてくる。 「まず風呂に入れ。」 「どうせ汗かくし意味ないジャンッ!」 デジタルは腰に手を回して俺を寝室へと押し進めていく。 「わかったわかったっ!」 2 タオルケットを押し入れから2枚取り出し、ベッドの上に重ねて敷く。 シーツよりも洗うのが楽だからだ。 「ほら早くっ!勃たせて勃たせてっ♪」 もう待てないとばかりに服を脱ぎ散らかして生まれたままの姿になったデジタル。 俺も服を脱ぐ。 裸になって向かい合うと、デジタルは胸を張り、両手を腰に当ててお尻をくいくいと左右に振って見せた。 「ほーらほーらはーやーくっ!勃起っ勃起っ♪」 その股間を下から掌で包むように握ってやる。 「ひゃんっ♥」 「俺はどちらかというと声で興奮するタチだ。」 3 片手でデジタルの陰部を押し揉みながら、もう片腕で腰を抱え、ベッドに載せて座らせる。 「前戯っ、いいからぁっ♪」 「俺が良くないんだよ。」 先ほどまでのデジタルの痴態で既に肉竿に芯は入っているが、まだ交尾には程遠い。もう少しかわいい声を聴かなくては。 俺は彼女と向かい合わせに座ると、唐突に淫裂に中指と薬指を入れる。 「んにゃっ!?」 驚く声を無視して膣の入り口近くを恥骨側に向かって掻きむしる。 「ひゃぁっ、だめっ、よすぎるからっ、ダメだってばっ。」 柔らかい襞が俺の指を強く締め付けてくる。 聞く耳持たない。いや、聴いてはいる。その声を聴くために、指を膣内に入れたまま掌で肉鞘を潰す。 「ああそれだめだってっ、気持ちいいっ、もっと、それぇ、それえぇっ♪」 ぐりぐりとクリトリスを押し転がしながらGスポットを虐めてやると、デジタルが面白いようにのけぞる。 「でも、ダメ、もう、来ちゃうっ!」 4 絶頂に至る前、ずぼっと乱暴に肉壺から指を引き抜く。 「あはんっ!」 デジタルの体がびくっ!っと大きく震えた。 「はーっ、はーっ、ふー、ふー♥」 こちらに向き直ったデジタルの目は、物足りなさそうな、激しく何かを求めるような、潤んだ瞳でこちらを見つめて来る。 「準備できたみたいだね…♪」 「ああ。」 5 いつのまにか俺のチンポも完全に勃ち上がっていた。 デジタルが四つん這いになってこちらににじり寄ってくる。俺は両手を広げて彼女を待ち受ける。 胡坐をかいた俺の上にデジタルが乗りかかる。狙いを定めるためにそっと手が触れると、俺の陰茎はびくりと震えた。 「んふっ♪気持ちよさそうだねっ♪」 嬉しそうな、得意げな顔。 「えーいっ♪」 ズブブブブッ、と肉槍が根元まで挿入された。俺の歪んだ顔を見てまた嬉しそうにデジタルが笑う。 「んっふふ~♪」 腹と腹が密着し、その隙間を接着剤のように汗が埋める。 互いの背中に手を回し合いぎゅっと抱き合う。ぴったりよりももっと近くにいられるように。 6 「ちょっと太った今のお腹、好き。ぴちっとくっつくから。」 荒い息を吐きながらそんなことを言うデジタルに、少しカチンときた。 デジタルの軽い体を持ち上げて、上下に振った。 「ああっ!?」 驚くデジタルを意に介さず、お互いの胴体を汗でぬめらせながらデジタルの陰部に俺のチンポをこすらせる。 「ダメ、それ、すぐ、イっちゃっ、からぁっ、はぁっ♥」 こんな自分勝手なセックスでも、奥を突きこむとタダでさえ狭い膣肉がぎゅっ、ぎゅっとチンポを絞ってくる。 子宮口も一緒になって鈴口に吸いついてくる。 「イけっ、イけっ!」 細く柔らかく華奢そうなデジタルの体、 その体の一番大事なところを道具のように使う、その背徳感にどんどん睾丸の中身がせりあがってくる。 7 「あっ、はっ、ダメッ、もう、もう、イっちゃう、イっちゃうううっ♥♥」 「俺も、イくっ!」 デジタルの体を思い切り下に押し込み、俺自身を根元まで包ませる。 どびゅっ、どびゅぅっ、と快楽が迸るのに合わせて、デジタルのおまんこも思い切り痙攣し、愛しい陰茎に絶頂を訴えかけた。 「がっ、はっ、ちょっ♥とっ♥」 射精中のチンポをデジタルでしごいて、最後の一滴まで出し切る。 子宮を殴りつけられて目を白黒させるデジタル。こみ上げる征服感。 「「ふーっ。」」 互いに長い息をつく。 8 デジタルが俺の腰から手を放し、後ろにのけぞって倒れた。その勢いでデジタルの膣から俺の陰茎が抜ける。 「っはぁ~~♪ノリ気じゃないみたいなこと言いながら、毎回鬼調教なんだからぁ~♥」 「嫌じゃないだろ?」 「ヤじゃないけどさぁ~?」 デジタルはくるりとうつ伏せになり、四つん這いでベッドボードのティッシュを取りに向かう。 フリフリと降られる小さな尻。白く泡立った膣口からは先ほど俺が射精した毒液がどろりと溢れている。 「おふっ!?」 9 デジタルがあられもない声を上げた。 俺は彼女の細い腰を掴んで、収まらない勃起を再び彼女の膣の中へと押し込んでいた。 「ちょっとぉ~。」 抗議の声とは裏腹に、彼女の膣襞は彼女自身の性格に似て真面目に忠実に雄を迎え入れる。 上から覆い被さると、デジタルの小柄な体はすっぽり俺の陰に隠れてしまった。 デジタルの背中と俺の腹をくっつけると、さっきとは逆に丁寧にチンポを動かす。 「そんなっ、探すっ、みったいっ、にっ、あっ、スケベっ!」 角度や速度に緩急をつけ、弱いところを探していく。 Gスポットや子宮口だけでなく、膣内を丹念に突きほぐし、弱みを探索する。 10 「ん、もっ、しょうがなっ、あはんっ?!」 ポルチオの右側に亀頭をひっかけるようにすると、デジタルが艶っぽい顔を上げた。確認するように突き込んでいく。 「そ、そこ、そこばっかり、だめ、そこ、知らないっ知らないからぁっ!」 追撃とばかりに俺は片手をデジタルの腹に伸ばす。 子宮マッサージ、というにはあまりにも乱暴に、下腹を握りつぶす。 「あぁっ♥」 痛みだけじゃない悶え。 「スケベだなあ、こんなのが好きだなんて。」 11 「キミが調教したんじゃないっ、あっ、あっ、はっ、だっ、めっ♪」 「ダメ?ダメか?」 「うそっ、うそっだからっ、意地悪っ、やめないでっ♥」 体重を完全にデジタルに預け、もう片方の手で乳房を揉みしだく。 決して豊かとは言えないが、『アグネスデジタルの乳房を揉む』という行為だけで俺には十分に刺激的だ。 「だからそこばっかりやめて、うそっ、やめないでっ、もっとぉっ♥」 見つけたばかりの弱点に強く強く陰茎をめり込ませる。その度にデジタルの体が壊れた車のように軋んで揺れる。 12 …… ぱんっぱんっぱんっ 俺の腰とデジタルの尻がぶつかり合うはしたない音。交尾の音としか言いようのない下品な音。 「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……」 もう言葉を交わす余裕もない。 お互いの肉に深く深く潜り合うような一体感と、貪り貪られるような快感をただ一途に追いかける。 「あうぅぅぅーっ♥♥♥」 デジタルが嘶いた。俺もその最奥に精液を放った。 13 「デジたん、満足でぇ~~っす♥♥」 俺の体の上にアグネスデジタルが更に仰向けで寝転ぶ。 「ごめんねぇ、実は新バちゃんでフケちゃった子がいてさあ。」 「ああ伝染っちゃったのか。」 デジタルは今、トレセン学園のスタッフとして働いている。 学園の雑用や、トレーナーやサブトレーナーに付き従って訓練の補助をしたりしているのだが、時には元競走バだった経験を買われて新バとごく近い距離で一緒に指導を行ったりもする。 「医務室に連れて行ったんだけど、それが良くなかったみたい。」 「まあしょうがないなぁ。」 14 ウマ娘には野生動物と同じく発情というものがあるらしい。 競バ用語で「フケる」などというのだが、厄介なことにこの「フケ」は伝染する。 フケたウマ娘から発せられるフェロモンには、ウマ娘をフケさせる効果があるそうだ。 全てのウマ娘を深く愛するデジタルが不調なウマ娘にいち早く駆け寄る様は手に取るようにわかる。 それ故にフケにも誰より早く感染してしまう。 ……それにしても。 「薬出してもらわなかったのかよ。」 こうした事態に対応する薬剤は当然トレセン学園にも用意がある。フケるたびに性処理するなんてナンセンスだからだ。 「いやあ~っ……えっへへっ……♪……キミのチンポの事考えだしたら、止まらなくなっちゃって……♪」 「お前それでよく定時まで働けたな。」 呆れかえる。 15 だがデジタルの方も呆れてしまったようだ。 うつ伏せに寝返って抗議する。 「何その反応。このデジたんがキミを欲しがってたって事をもっと大切にしてほしいですっ!」 「そりゃあごめんなさい。」 ため息をつくとデジタルは俺の胸を人差し指でカリカリと掻いた。 「デジたんはいつでもいいんですよっ?繁殖するの。」 「俺も。」 「……んふーっ♪」 満面の笑みでべたりと抱き着いてきた。 俺はその背を優しく、できる限り優しく、抱き返した。 -- 海です。 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスぅ~~~~? (間) デジタルですっ! サマーシーズン到来っ!というわけで、先日トレセン学園の生徒やOGで海に行って来ましたぁあ~~っ!! 海に行くちょっと前にですね、同窓会のような集まりがありまして。 そこで約束をしたのです。 数え上げるときりがありませんが、アタシが逢うのを楽しみにしていたのは、やっぱりメイショウドトウさんっ! テイエムオペラオーさんと一時代を気づいた強豪バの一角ですっ! 2 テイエムオペラオーさんもお誘いしたのですがこの時期はバチクソ忙しいそうで、どうしても予定が取れないとのこと。 少し残念ですが仕方ありません。今大人気芸能人ですもんねっ! 関係ないですけどちょっとした奇縁で劇団キャラメルボックスの芝居を見に行ったのですが、開演前のアナウンスで上川隆也さんに「芸能人」というあだ名がついていることを知った時は噴き出してしまいましたっ! かなり前のことですけどっ! 海を泳いだり砂浜を走ったりビーチバレーに興じたりするウマ娘ちゃん達を見るだけで、ああ、デジたん、幸せ…♥ シーサイドカフェでドトウさんとデートしながら、浜辺のエンジェルちゃん達に熱い視線を送っておりました。 「…変わりませんねぇ。」 特徴的な口調で話しかけられてデジたんはひっ!と居住まいを正しまして、涎を拭きました。 目の前に友人がいるのに失礼ですよね、ごめんなさい、と謝ると、いえいえ~と困ったような顔で許していただきました。 デートと言ってもお互い夫がいる身です。 「ウマ娘同士積もる話もあるだろうし」とダンナ達が気を利かせて席を外してくれたんですね。 3 デジたんとドトウさんと言えばやっぱり秋のG1です。 デジたん競走バ時代には、ドトウさんには割と恨まれてもしょうがないことをやったのですが、そこは勝負の世界。ターフを降りたらノーサイド。 オペラオーさんともドトウさんとも笑って話ができる仲であります。 お互いそのG1の話から始まって、うちの旦那はどうだ、うちのはこうだ、という家庭の話で盛り上がりました。 やっぱり一番身近にいる人の話が一番口から出てくるようです。 昼下がりになったころ互いの夫が戻ってきたのでお会計をして、それぞれ分かれて自分の夫と行動することになりました。 「どうだった、メイショウドトウは?」 「おっぱいでかくて童顔で超かわいい♪」 「俺もそう思う。」 趣味が合うって素晴らしい!いやーこの人と結婚して本当に良かったですっ! でもビンタはしました。 4 互いに泳いだり、子供っぽく砂のお城を作ったり、観光客にお写真をねだられたりしました。 昼下がりとはいえ日差しも強いのでサンオイル塗り合ったりもしましたようふふ♪ そうそう、サンオイル塗り合うウマ娘ちゃんを見て尊さに大興奮したりもしましたっ! やっぱりウマ娘ちゃんって体のラインが美しい!それを際立たせる水着とオイルのテカり…。 衆目の中でフケちゃいそうになりましたっ! さて二人して当て所もなく歩いているとビーチの端の岩場まで到着。 潮溜まりでもみようか、という夫の提案に足を進ませると奥から人の声が。 足を止めてよく聞いてみると、悶えるような苦しむような荒い吐息。なのに何だか甘く切ない声で…。 夫と顔を見合わせて、そっと近づきます。 青ぴょいでした。 5 詳細はお話致しかねますがぁ~…。 青ぴょい事案とは関係ありませんがテイエムオペラオーさんはこの日はどうしても予定が合わない、一緒に行くことはできないと仰っておられたんですっ! 一緒には当然来ていませんし、個人でこちらにいらっしゃることもできなかったはずですっ!!絶対にっ!!! 愛を間近に目撃したデジたんはすっかりほくほくです。やっぱり愛し合うってイイモノですねっ! 『デジたんはしたの?』 デジたんは青ぴょいしてませんよっ!デジたんの教え子も来てるのにそんな破廉恥なことできませんっ! これでもトレセン学園のスタッフなんですからねっ!! ホテルでしました。 翌日は生徒たちに囲まれて「凄かったですぅ~~♪」とか言われました超怖い。 まさか…ウララたん…とうめいの術を使って…? 6 話を聞いてみるとウララたんではなくて単にホテルに古くから住む幽霊が教えてくれたんだそうです。なーんだ、幽霊じゃしょうがないなっ! この配信を見ていたら今度ツラ貸してくださいねくたばり損ないさんっ♪ そんな訳で夏の海はもうサイッコーに楽しかったですっ! 暑くてバテたりもしちゃいますが、だからこその海はとっても気持ちがいい! もし機会があれば、夏が去る前に一回だけでも行ってみてほしい物です。 さてそろそろお時間です。ここまでみてくださってありがとうございました。 この後はツインターボチャンネルでASMRの配信があるんですって。 氷をかみ砕く音を一時間やるそうです。 楽しみですねっ!それじゃあバイデジ~♪ -- ささやかなことが 1 内緒だけど、お寿司を食べに行った時にはいつも幸せを感じることができる。 「~~~っ!」 「ツラいならワサビ抜き頼んでいいんだぞ?」 「いいの、良さがわかってきたから。」 嘘じゃない。 ネタの脂分とシャリの甘さに、ワサビが味を引き締める意味が分かってきたから。 ワサビがあってこそ、とまではまだ言えないけど、 そういう美味しさがあるってことが分かった。 ツラい、カラい、好きじゃない、ってだけではわからないことがあるって、わかった。 2 「ならいいけど。」 寿司屋に行くと夫はいつも心配そうな目で見つめる。ありがとう、その心遣い伝わってる。 でもカラいけど、ツラいだけじゃないだよ。 キミだって最初はそうだったんでしょ? 3 ワサビだけじゃないよ。 ブラックコーヒーとか、緩めのファッションとか、アタシもよさが分かるようになってきた。 無理なんかしてない。キミを見てたら自然とそうなったんだ。 キミだってデジたんみたいな派手な柄の服を着るようになったじゃない?甘いお菓子を食べるようになったじゃない? 最初は「こんな派手なのは俺には……」なんて言ってたくせに。 「甘ったるくてちょっと……」なんて言ってたくせに。 今は何も言わなくてもちょっと派手な服を着てる。 何も言わなくてもクリーム入りのケーキとか食べてる。 永遠の愛とか、変わらぬ絆とか、そんな仰々しい言葉はいいんだ。 今、ちょっとでも嬉しければさ。 今、少しでも一つになれるかもって信じられたらさ。 その気持ちだけで、いつまでも生きられる気がするんだよ。 4 「マグロ、ワサビ盛々でっ!」 「おいおい。」 未来なんかわからないよ。過去なんて変えられないよ。 今は、今は。少しでもキミと同じになりたい。 「からーいっ!!」 背伸びしたアタシの舌をそっと手拭いで拭いてくれる。 しくじったはずなのに、なんだかとてもうれしい一瞬でした。 (オープニングテーマ) こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊のアグネスデジタルですっ! -- 走れ走れ 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネス!変身!!デジタルですっ!(特に変身はしていない) 今日は最初にお便りを紹介します。ペンネーム工業デジタルさんより。 「G1六冠の穴ウマ娘ことアグネスデジタルさんこんにちは。」 おまえーっ! 人間がなーっ!ウマ娘をなーっ!ゆるさーん! はいこんにちは。 「いつも配信楽しみにしています。」 ありがとうございます。 「どうしてデジたんの競争成績はあんなにクチャクチャなんですか?」 アハハハハハハハハハッ!!! こいつっ!こいつぅー!アハハハハハッ!!!!! 2 あのねー…。 デジたんにもわかんない。わかんないんですっ!アハハッ! 放送前に夫にも聞いたんですよ、そしたら 「それが分かればG1十冠ぐらい取らせてやったのにな…。」 ってしんみりしちゃって。 おいおいしんみりするなよ! デジたんのことでしんみりするのは禁止!禁止です!! 「お前は本当にムラっけのある奴だったよガハハ!」 ぐらいのことを言ってくれると思ったんですよっ! 3 で、もしかしたら、ぐらいの話で、 「お前は無意識レベルの心理がほかのウマ娘より10倍ぐらいレースに出やすいのかもとは思った」 って。 何で現役時代に言ってくれなかったの?って訊いたら、 「『お前はメンタルがレースにとても反映されやすいウマ娘なのだ!!ババーン!!!』って言ってもお前の調子は上がらないと思った」そうで。 そりゃそうですよね。 デジたんいつもレースの時はほかのウマ娘ちゃんと一緒に走れる幸せでいつもテンション爆上げなのに、 実は無意識の心理があってそれが調子を上下しているのだ、って言われてもピンときません。 それに、この見立てがあっているのかどうかも検証しようがないと。 なので治る見込みがあるかどうかもわからんムラっ気の事は置いておいて、調子がいい時に必ず勝てるようにトレーニングした、とのことでした。 4 言われてみれば、デジたん大敗した時もあんまりトレーナーには叱られなかったんですよ。 11着とかやらかした時も「そっかじゃあ次のレースな」って。さっぱりしたもんでした。 そこは叱っても治るもんじゃない、と割り切っていたんでしょうね。 大敗をやらかした上に芝もダート節操なく走るもんだから、当時は「あのトレーナーはデジたんをどうしたいんだ」って声もありました。 黙らせてやりましたけどねっ! どうしたいんだも何も、デジたんはそういうウマ娘だったのです。 何故あんな感じのレースになったのか、未だに自分でもわからないのですもの。 5 当時は皆様に本当にご迷惑をおかけしました。 でもでも競走バとしては本当に好きに走らせてもらえて幸せだったと思っています。 ありがとうございますおっとこれはしんみり警報?! だめですよっデジたんでしんみりしてはいけませんっ! 明るい話題を、明るい話題をっ! デジたんがトレーニングを手伝わせていただいているウマ娘が見事URAレース一着になりましためでたいっ! パチパチパチパチ! G3でがつっとリードして勝ちましたよトレーナーさんとガッツポーズし合う様は輝いていました。 その後で記念のお写真も撮らせてもらいました。 これからも頑張ってくださいねぇ~♪ 6 この写真がねえまた…。 …。 …うへへ♥ …。 ああっ、すみません!やべえ放送事故寸前だった。 今日お便りご紹介させていただいた工業デジタルさんにはデジたんステッカーをお送りします。 そろそろエンディングトークのお時間ですね。 前回トレセン学園のメンツで海に行った時の話で、デジたんと夫がホテルでウマぴょいしてたのが幽霊経由で生徒にバレたって言いましたけど、 ウマぴょい見てた幽霊もイカれてるしそれをウマ娘ちゃん達に話すのもイカれてるしその話を聞くウマ娘ちゃん達もイカれてるし翌朝デジたんに凄かったとか感想伝えに来たのもイカれてます。 あのエピソード出て来た奴全員頭イカれてる。 夏ですねぇ~。 それではバイデジ~♪ -- Digipedia 1 「事実をただ書くってだけでも文章力っているんだねぇ。」 「レポートの話か?…Wikipediaかよ!」 「頑張って書いたはずなのに後から読み返すとバ鹿が書いた文章みたいになるの。」 「仕事しろ仕事!」 アグネスデジタルがパソコンに向かって唸っているから明日教えるトレーニングメニューでもまとめているのかと思ったら、ブラウザを開いていた。 「こんな時間に。眠れなくなるぞ。」 「大事なことなんです。」 「言い分を聞こうか?」 「ウマ娘ちゃんの名前で検索したらちゃんとヒットして欲しいの。」 「URA公式に任せておけよ…。」 「競走成績とか走りの特徴とか美しさとか萌えポイントとかも網羅するにはWikipediaじゃないと。」 「美しさと萌えポイントは書いちゃダメだろ。」 2 「特にデビューしたての子たちは記事自体無いことが多いしさあ。」 引退して教える側に転向したデジタルには、単にウマ娘に萌えるだけでなく親心のようなものも芽生えているらしい。 それはそれでいいことだが…。 「…うわあ文章量えぐいな…。 あ!お前もしかして自分の記事とか推しウマ娘の記事に良い事ばっかり書こうとしてる?」 「そんなことしないよっ。ちゃんと競バ新聞とか雑誌とか書籍とかURA公式サイトの記事とかで裏付けのあることだけだよ。」 「なんて厄介なんだ。」 いい加減にしとけよ、と言い置いて寝室にベッドメイクへ。 戻ってくるとまだデジタルは画面を見つめてうんうん唸っていた。 3 「お前さあ、また夏うつになるぞ?」 「てにをはって難しいんだねー。」 「寝ろっつってんだろ。」 「トレーニングレポート書く時もさ、後から読み返すと変だったりするんだよ。 てにをはだけじゃなくて『しかし』とか『でも』とか一文の中に二つあってうへぇーってなったり。」 「ああわかるわかる。」 「だからっ!こうしてWikipedia記事を読んだり書いたりして文章力を磨いているのですっ!」 「寝ーろっ!」 だがデジタルは懲りずにぶーっとむくれる。 4 「だってさぁ、Wikipediaにウマ娘ちゃんの根も葉もない話とか書いてあったり変な日本語で記事書かれてたりしたら嫌じゃん!」 「嫌かもしれないけどキリがないぜ。」 「そう!だからせめて1日10記事は編集するように決めたの。」 「多いぃー!」 何なら記事1つでさえ、資料の裏取りまでしていたら1時間では済まないだろうに。 「何ですか!キミは自分が育てたウマ娘の嘘が流布されていて平気でいられるんですかっ!?」 「そういうのを色んな人が修正して正しくなっていくからWikipediaなんであってさ。 いいから今日のところは休め。」 「うーん…。じゃあ寄付だけしとく。」 「そうしとけ。」 デジたんの思い、ジミー・ウェールズさんに届けっ! という声を尻目に、歯を磨きに洗面所へと向かう。 5 ベッドに横たわってから30分後、ようやくデジタルが寝室に入ってきた。 「随分かかったな。」 「うん、ちょっとね。」 アイマスクを手に取りながら、デジタルが隣のベッドに入った。 「ちょっと、何だよ。」 「うん、Wikipediaじゃあんまりwikiwiki(※ハワイ語で「速い」の意)してないから、自前でWiki作ってた。」 「お前…。」 「Wikipediaにとっての外部ソースにもなるし。」 「狡猾…。 いや、やめておいた方がいいよ。」 「何で?」 6 「その自分で作ったWiki、自分で編集するんだろ?」「そだよ。」 「それをソースにWikipediaに書くんだろ?」「うん。」 「絶対炎上するぞ。」「……あー……。」 ネットの捜査力を侮ってはいけない。 『元六冠バアグネスデジタルが、Wikipediaの記事を編集するために自分でサイトを作成しそこから引用』なんてすぐバレる。 Wikipediaの精神としても恐らくアウトの行為だろうし。 「さっき作ったWiki削除してくる。」「明日にしろって。」 歩き出したデジタルの手首を掴んで止める。デジタルの青い瞳が暗い部屋の中で輝いて、寝そべる俺の顔を見下ろす。 「…スる?」 「しない。」 「しないかー。」 -- 夢見た未来 1 「よう、差し入れ。」「おっ、サンキュー♪」 「「「「「ありがとうございますっ!」」」」」 アグネスデジタルが夫に笑顔を向けると、彼女の前で整列していたトレセン学園生徒たちが奇麗に礼をした。 「つってもスポーツドリンクだけどな。」「いや、助かるよ。今絞り込みしてたからお菓子はちょっと危ないんだぁ。」 「ならよかった。 お前ら、ゴミはデジタルに持たせてやってくれ。」 「えぇ~~?!アタシぃ?」「学園に捨てていくわけにいかないだろ。」 そう言って男がデジタルに透明なポリ袋を一枚差し出した。 デジタルは不満そうな顔でそれを受け取る。 「あ、あの~。」 「ん?」 2 一人の生徒がデジタルの夫に歩み寄っていた。 「トレーナーに戻るつもりって、無いんですか?」 デジタルと夫が顔を見合わせる。それを見てその生徒は、ばつが悪そうな顔をした。 「あ、すみません。」 「いやいいんだいいんだ。…デジタル、話していいか?」 「練習中なので、手短にお願いします。」 「はいはいっと。」 男が進み出ると、生徒たち計5人が全員居住まいを正した。 そんなに改まった話じゃないよ、と苦笑する。 3 ―――― 「キミはそれでいいの?」 プロポーズの返事はYESでもNOでもなく、質問だった。 「もっとトレーナーの仕事したくないの?」 「そりゃあしたいに決まってるよ。」 デジタルが目を丸くする。 「じゃあどうして…。」 「俺の体は一つしかないから。」 「…どゆこと?」 「俺は、お前の夢も支えたいし、トレーナーもやりたい。その二択でお前を選んだんだ。」 4 「じゃ…未練あるんだ。」 「まあそりゃ。お前だって、引退したくて引退したわけじゃないだろ?」 「…。」 「悪かった。例えが意地悪だったな。謝る。 …今度こそG1七冠バを育て上げる!って夢も見たさ。 でもどうしてもお前の傍にいたいという気持ちも同じくらいある。 だから、お前を選んだ。」 「…? 何で?」 「これは受け売りだけどな。迷ってる時間って無駄なんだよ。 迷うってことは、その2つだか3つだかの選択肢は大体同じ価値だ。 ってことは、選ぶことに時間を使うより、とっとと決めちまって、選んだ選択を少しでもマシにするのに時間を使った方がいい。」 デジタルの頭の中では彼の言葉が雑然と置かれて、整理がされないままだ。 5 「答えになってないよ。」 「…結婚したいぐらい好きなウマ娘をたかが夢の為に諦められるか。」 「…ぷっ!」 デジタルが噴き出す。 「あはははははは!」 「笑うと思ったよ。」 6 「罪深いトレーナーですねぇキミはぁ~?キミに育てられたいウマ娘って結構いるんだよ?」 「知ってる。」 六冠バのトレーナー、という実績は伊達ではない。その看板だけで少なくとも10年は仕事に困るまい。 「デジたん、これでもファンが多いんだよ?」 「知ってる。」 「本当にわかってるぅ?ウマ娘ちゃんやアタシのファンをズバっと裏切ってアタシを攫っちゃうんだよ?刺されたって知らないんだから♪」 そう言いながら、デジタルは嬉しそうににんまりと笑っていた。 「俺は担当に結婚申し込むほどには公私の区別のつかねえ男なんだ。向いてないっちゃ向いてなかったのさ、トレーナーって仕事は。」 デジタルの表情が俄かに曇った。 「…向いてなかった?」 7 「G1六冠バを育てておきながらよく言うねっ!」 「お前は勝手に育った。」 デジタルの気持ちが冷たくなるのを痛いほどに感じた。だがこれは言わなければならないことだった。 「お前の才能なら、誰がトレーナーをやっても名バになれたよ。胸を張って言える。」 「バカっ!」 「お前は類稀な力を持って生まれた、俺には勿体ないぐらいのウマ娘だ。」 「バカバカバカ黙ってっ!」 走り寄ったデジタルの細い指が、男の胸元を掴んだ。 「何が『勝手に育った』ですか!アナタに拾ってもらわなきゃ、アタシはいつまでも『変なウマ娘』のままでしたっ! 胸を張って言いますっ!アナタがいなきゃ!アタシはダメなウマ娘のままでしたっ!」 8 出会った当時の敬語で話す癖が戻ってしまっている。気に留めない。そんな場合じゃない。事は一刻を争う。このバカトレーナーを暗黒の淵から救わねば。 「勘弁してください!今まで一緒に戦ってきたのをなかったことみたいに言わないでください頼みますから! 誰でもよかったなんてことはありません! ムラっ気の多いアタシを、『いつでもどこでも勝てるウマ娘だ』って言ってくれたのはアナタでしたっ! その言葉があったから、ひっどい負け方した後だって、ダートだって芝だって走れたんですっ! だから、そんな…卑屈な、小さなことを…言わないで…。」 男の胸に顔をうずめて、すすり泣く。男はその背にそっと手を回した。 「こんな話をするつもりじゃなかった。」 ぽん、ぽん、と、子をあやすように背中を優しく叩く。 9 「…プロポーズはまた改めて、」 「結婚しますっ!」 くわっと上を向いてデジタルは宣言した。 ―――― 「ずっと先のことはわからないが、暫くはこいつの夢を支えることを選んだのさ。 幸い此奴の稼いでくれた賞金がまだまだたんまりあるからな。」 5人のウマ娘はある者はにやにや笑いながら、ある者は興味なさげに、それぞれの態度で男の話を聞いていたが。 「はい休憩終了!終了ですっ!飲み終わったペットボトルはこの袋に入れてくださいねっ! 次はスパート練習!流して一周して、最後の直線で一気にスパートですよっ。ほら行った行ったっ!!」 パンパンと手を叩いてデジタルが生徒たちを散らした。 10 「うふふっ。照れくさい話をしたねえ、ガラにもなく。」 「照れくさいことは恥ずかしい事じゃない。」 遠くに走り去る生徒たちを見ながら、男が言う。 「あ、なんか少女漫画で読んだことあるセリフ~。」 デジタルはニマニマと笑って言った。 「で、さ。」 「うん?」 「少しは、マシにできたのかな?この選択肢。」 「勿論。」 男が笑って拳を作ると、デジタルも笑って、拳で小突いた。 -- あの頃に待ち合わせよう 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! 今日は高知競バに行ってきた話をします。 高知競バはURA管轄ではないのですが、今後トレセン学園に入ってくるかもしれない俊英ウマ娘ちゃんを偵察に…。 というのは建前で、ハルウララちゃんに会いにいったのですっ。 2 ハルウララちゃんは引退後は実家の高知に戻ってのんびり暮らしておられる、とは皆さん聞いていることと思います。 一方その後のメディア露出は多くはなく、実際にどのような暮らしぶりなのかは、デジたん少し心配もしていたのです。 久しぶりにお会いするウララちゃんは昔と変わらずニコニコ笑顔で天真爛漫でした。 「とうめいの術やってやって!」とせがむと、「あれは、もう、ちょっと……えへへ。」なんてはにかんじゃったりしてっ! 可愛い!! この笑顔を見られただけでも交通費の元を取れたというものですっ! 今日のレースではハルウララちゃんがご挨拶をされるそうで。 「ハルウララです。このような機会をいただけたこと、本当に嬉しいです。」 引退前とは打って変わった落ち着いた口調で、郷土愛と、今後のウマ娘ちゃん達への期待を述べるハルウララさん。 普段アゲアゲなウマ娘ちゃんがキリっとしていると、ギャップで萌えちゃいますよねぇ~。カメ子さんたちに混ざって一眼レフのシャッターを切りまくりました! 3 「すごくよかったですぅ…♥」と告げると、えへへ、とまたまた可愛いはにかみ笑顔でしっぽパタパタお耳ぴくぴく。 デジたんのハートはもう発作寸前です。 話を聞いてみると、地方から中央に羽ばたいた偉大なウマ娘として、ここ高知競バ場では半ば現ウマ神のような扱いを受けているのだそう。 …ウララちゃんは実はトレセン学園に入学してから暫くはかなり苦しい時期が続いておりまして。 勝てないウマ娘、勝たないウマ娘、と揶揄されておりました。 本人はマイペースでいつもニコニコ輝く笑顔を見せていましたけど、内に何を秘めていたのかまではわかりません。 しかし長い長いトンネルを抜けて。ある重賞レースにて、ついに一着を手にするのです。 高知競バにとっても、地方から登竜門へ挑んだウマ娘ちゃんが努力に努力を重ねて遂に結果をものにするというストーリーは非常にありがたいものでした。 「高知競バ出身のハルウララが遂に開花!」と、当時は沸きに沸いたものです。グッズもたくさん発売され、イベントも多数開催されました。 デジたんもサイン色紙持ってます。家宝の一つ。 4 その後の成績は残念ながら…、といった感じなのですが、それ以上に「負けても負けても戦い続けたハルウララ」というキャラクターは非常に強烈なものでして。 大敗と勝利を繰り返していたデジたんにとっても、「そんなあり方があるんだな」って目から鱗が落ちた思いでした。 努力するウマ娘ちゃんは美しい。 行ってみればハルウララは、その努力の美しさそのものの結晶と言ってもいいかもしれません。 結果だけが全てのはずの勝負の世界で、「負けてもいいんだ」「走る姿が好きなんだ」と言ってもらえるウマ娘ちゃんは本当に貴重です。 スター性、っていうんでしょうか? 結果で何もかもねじ伏せる強いウマ娘ちゃんの在り方とは対照的に、「挑む姿こそが大事なんだ」と応援されるのは、ハルウララちゃんのウマ徳あってこその事だと思います。 可愛いし。でへへ♪ 勿論、成績の芳しくないウマ娘なのに贔屓されすぎでは?という声も当時はありました。 でもでもデジたんは思うのです。 ヒトを魅了するために生まれてきたウマ娘として、ウララちゃんは全身全霊でその使命を果たし切ったのだと。 5 勝負の世界は厳しい。 極端な例だと、デビュー直後に酷い怪我をしてそのまま登録抹消ということもザラにある世界です。 報われない努力の方がずっと多いんです。 1レースに何頭も走って勝つのは一頭だけ、という競技ですから、レースに出れば出ただけ負けが込む、というのも事実としてあります。 ウララちゃんはそうした厳しい勝負の世界で、決して心から負けることがなかった、ということが評価されたのではないでしょうか? 負けたら何度でもチャレンジすればいい。だって負けるのは当たり前のことなのだから。 これって、ヒトの世界でも通じることみたいに思うんです。 それが成績だけでは説明できないファンを獲得したのかなって、デジたん思うのです。 6 そうそう、ウララちゃんのトレーナーさんにも逢ってきましたよっ! 「当時は、だいぶ突き上げがきつかったんじゃないですか?」 「いや、こういうのは何だけど、ウララはあまり期待されていなかったからね。 負けても『まあそんなもんか』って感じだった。 だからこそ後に引きずらずに何度もチャレンジできた。 勝負の世界でこういうことを言うのはよくないかもしれないけど、勝敗に関係なくウララの生き様は輝いていた。 諦めさせる気になんかちっともならなかった。」 「わかりますぅ~~~♪」 「それに…」 「はい?」 「ウララがこけたり、負けたりするたび、その… ボクはとてもドキドキして (エンディングテーマ) -- 同好の士と書いてライバルと読む 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! んんんんーーーーっ!!眠いっ!!!! あははははは、冒頭から何だって話ですよねっ! 最近デジたんは朝帰りが多いのですっ! 浮気ではありませんがやましいことではありますぅ~。うふふふふっ! …あんまり引っ張って意図しない形に切り抜きされてもあれなのでっサクっと申し上げます。 お世話させてもらっている子にですね、同志が。ウマヲタがいるんですよおぉ♪ そんなもん夜通しお話するに決まってるじゃありませんかっ! 2 このウマ娘ちゃんのモチベーションを上げるのにどうしても必要なのだと、寮長にはお話を通す訳です。 まあ寮長もわかってるんでしょうね。「ああはいはい、しょうがねえな」みたいな顔で入れさせてくれるんですよ。 そこから先はそのウマ娘ちゃんと血と汗と火花散る家宝のぶつけ合いですっ! こちらがサイン色紙を繰り出せば向こうはサイン入りブロマイドで応戦、 何の!とバ券と生写真のセットで応じると、使い古しの破れたサイン入りメンコ(※耳当て)で見事に切り返します! <きゃぁ~! きゃあ~~!!>と悲鳴を上げながら、相手の急所めがけて切り札を切り奥の手を繰り出す。 これはもうセックス以上の快楽だッ!! <ピンポーン まあ叱られましたよね。うるせえから。 3 デジタルさんはもう教える立場なのですから… などなどぐうの音も出ない正論でやり込められ、一言もお返しできず、失意の午前様帰宅です。 夫もとっくに寝ており、テーブルの上には「青椒肉絲を作ってみた 冷蔵庫にあるから味見してみてくれ」と置手紙。 いつまで経っても帰らぬデジたんに呆れて夕食を作り置きしただけだろうに、「味見してみてくれ」、だなんて…。 デジたんは気遣いに泣きました。 翌日、件のウマ娘ちゃんにこの話をすると「わたしの負けです。それ以上尊いモノはわたしのコレクションにはございません。」と投了されました。 デジたんはまた泣きました。 4 趣味に全力投球する生き方に、後悔があるわけではありません。 しかしザ・マンも言っていたように「心は正しくても力は暴走する」のです。 暴走していたのはアタシも同じだった 元六冠バと言えど、こんなものだ というわけで同居人の有無で趣味のありようは変わってきてしまうというお話です。 一人の時は、自分の暮らしとだけ折り合いをつけていればよかった。 …あー、厳密には現役時代はタキオンさんと同室だったのですが…。 あの方とはお互いに干渉しない、という不文律があった感じなので…。 しかし結婚してからだと、衣食住に同居人の干渉は不可避になります。 寧ろ夫はアタシを積極的に支えようとしてくれているし、助けられています。 生活という一点ではかなり負い目があるんですよねデジたん。本人に言うとしょぼくれるでしょうけど。 5 でもデジたん嘘が吐けないタチなのでこれらのことを全部夫にゲロりました! 趣味で話ができる相手がいるの超楽しい!そのせいであなたに負担をかけるの超心苦しい! ごめんなさい、でもすごく楽しくて、どうしていいかわかんないっ!て。 そしたらですね。 「報連相だけしっかりしてくれりゃいい」とのこと。 お前がウマ娘の重度のヲタクなのはとっくに知ってるから、食べ物と洗濯の都合だけ教えてくれりゃいい、ですって。 それじゃあデジたんはダメな嫁さんじゃないですかっ!って言ったら 「お前がダメな嫁なら、世の中の殆どの夫はダメな夫だ」って。 自分勝手に幸せになってくれればいいんだと。それが嫌になったら俺もお前に「いい加減にしろ」って言うからと。 だから余計な心配はいらない、揉めもしないうちに、ケンカの心配をしなくていい、って。 6 その話をさっきのウマ娘ちゃんに話したら死にました。すげえデジたん以外にも尊死できるウマ娘いるんだ。 将来を楽しみに思いながら医務室に運んだ次第です。 そしたらそのウマ娘ちゃん、わずかながらフケ(※発情)が出ててですね、 デジたんも今、そのフェロモンに当てられて色々びしょぬれにしながら配信をしております。 …うわースパチャめっちゃくる! ちょっとちょっと!えっちなところを匂わせただけでこれはリスナーさん!ちょっと下半身に正直すぎじゃありませんかっ!? そろそろ終わりのお時間なんですけどっ! この後はシンボリルドルフちゃんのチャンネルで「尻尾が濡れてテンションがた落ちASMR」を2時間ほどするそうです。 楽しみですねっ!それじゃあバイデジ~♪ -- 新世代へ 1 「ただいまぁ~…。」 「おかえり…何だい?その顔は。」 帰ってきたアグネスデジタルは、眉毛を八の字に顰めて泣きそうな目をしていた。しかし口元は悦びが溢れんばかりに緩く開いて笑っている。 「凄いウマ娘ちゃんがいたのぉ~。」 「…まぁ、飯にしようか。」 「うん~…。」 トボトボとキッチンへ向かいつつも肩は嬉しそうにウキウキと弾んでいる。 …何かの病気なのか? 2 今日の夕食はトンテキにキャベツサラダ、お揚げと小松菜のお味噌汁。 デジタルの箸運びはいつもと変わらないので、別に体調が悪いわけではなさそうだ。 「その凄いウマ娘ってのはどう凄かったの。」 「負けたのぉ~…。」 「何メートル?」 「2000…。」 「2000かぁ…。」 デジタルが得意とする距離だ。かなりの強敵だったと見える。しかし負けただけでにしては様子がおかしい、もう少し何かありそうだ。 「相手はどんな奴だったんだ?」 「今年入学した黒髪がキレ~な新バちゃん。」 「マジかよ。」 3 それは話が違ってくる。 引退した身とは言え、走って見せるコーチングも行っている彼女の走りはまだまだ速い。 教えるために自分の走りを見直し続けているから、スパートのキレやペース配分、フォームの安定性などの技術面は現役時代より優れてさえいる。 碌に鍛錬を積んでいない新バなど軽く捻りつぶせる位には強いはずなのだが…。 「…ビデオ撮ってるよな?」 「あ、見たい?やっぱり見たい?見たいよねっ!?」 急にデジタルのテンションが上がる。 未だに俺はこいつの事はよくわかっていないのかもしれない。 4 夕餉を終え風呂から上がり、二人でリビングに移動する。 モニタの前に胡坐をかけば俺の脚を座椅子代わりにデジタルが座り、リモコンをモニタに向ける。 「手前の黒髪か。」 「うん。」 右回りのU字型コース、スタート地点にて準備運動をするジャージ姿のウマ娘が目に入る。 髪の色はよく見るとシンボリルドルフにも似た茶褐色。顔つきはかなり違うが。 その内側にデジタルが同じくジャージを着て準備運動をしている。 コースの内側では生徒らしきウマ娘たちが各々の立ち位置で双眼鏡を持ってレースの始まりを待っている。 教官らしい人物が旗を振ると、二人は一斉に駆け出した。 5 ―――― 「…凄いウマ娘がいたもんだな。」 「ねー。」 コーナーに入るまでは両者併走、お互いに探り合いといった感じ。 コーナーを曲がり切って先に脚を使ったのはデジタル。スパートの手本を見せてやろうと行ったところか。 ところが長い直線を半分ほど切ったあたりで新バが加速し始めた。 あっという間にデジタルに追いつき、彼女のお株を奪う大外からの差し切りで1~2バ身ほど着けてゴールイン。 なるほどデジタルが複雑な感情に取りつかれたのも理解できる。 萌えるのを我慢してコーチ役として手本を見せてやろうとしたら見惚れるような走りで負かされたのだ。そりゃ感情も行方不明になるというものだ。 …だがデジタルはただのウマ娘ではない。 6 「もっかい見る。」 何度も何度もレースを見ているうち、デジタルの悔しげな表情は消え去り純然たるウマ娘ヲタクの顔になり果てた。 新バの走りに見入って魅入られ、満面の笑みでその美しい走りを見返している。 『変態』アグネスデジタルは、まだまだ現役だ。 「…並んで走りたくなったか?」 「…意地悪っ!」 こちらを振り向いてキッとにらんだ。 そう、それが出来れば引退などしていない。 まさにこんな素晴らしいウマ娘たちが台頭してきたことこそが彼女の引退の理由なのだから。 強く美しいウマ娘と並んで走る。それがデジタルの最大のモチベーションだった。 だが、現在のトップレベルはデジタルにそれを許さない。 7 正直俺は今でも、彼女が望めば復帰させてやりたいと思っている。 アグネスデジタルは世界最強のウマ娘だとどこかでまだ信じている。 …そうではないのだということを理解しているのに。 画面に映る新バが、現役時代のデジタルをさえ凌ぐ走りをしているとわかっているのに。 膝の上の妻を見下ろす。成人しているのにまるで思春期の少女のような体躯だ。 この体で日本のトップ、世界のトップと走り合ってきた。 ピークを越えてもこうして後進の指導に当たっている。 俺はそれがとても誇らしいし、愛おしいし、いじらしい。 画面に見入るデジタルに気づかれないように、そっと明るい色の髪をなでる。 …が、気づかれたらしい。 「…後でねっ!」 後で、か。 これを幸せと、いうのだろう。 -- [余談]このデジたんを負かした新バはアーモンドアイをイメージしています。 -- ※「ツインターボの「クリアするまでマインドシーカーをあきらめない!」」は6時間でギブアップとなりました。 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! いや~ステイヤーって凄いな~というお話です。 何かというと、メジロマックイーンさんと併せウマをしてきたのですよっ! ステイヤーとはどういうものか、というのをトレセン学園の生徒たちにお見せするため、アタシは当てウマになったわけです。 3000メートルのコースを8割ぐらいの力で走る、という話だったのですがー…。 まぁ~お強いことお強いこと。 第二コーナーを回った後はそのご尊顔を拝むことすらままなりませんでした。 もうどこでスパートを切っていいやらわからないぐらい差をつけられての大敗でした。 「御美事でございました。」と頭を垂れると 「それほどでもありませんわ。」とマックイーンさんは白い髪を払いました。 匂いでシャンプーを特定できたので帰りに買いました。 2 強いステイヤーのトレーナーさんはこぞって「自分のウマ娘こそがオールラウンダーだ」とよく仰ります。 その理由がよくわかりました。 スタミナと最高速度、加速力は必ずしも競合する能力というわけではありません。 全てを高いバランスで持っているのであれば、短距離だろうと長距離だろうと勝てる。 そしてトップレベルのステイヤーは実際にその能力を持っている。 ライスシャワーさんと走らせてもらった時も舌を巻いたものですが、改めてステイヤーウマ娘ちゃんの強さを思い知った次第でありました。 印象的な負け方をしたときは悔しさよりも「そんな強さがあるのかよぉ~っ!」ってキラキラする方が勝ります。自分の視界が開ける感じ。 と言ってもデジたんにはもうそれを生かす機会はないのですが。 それでも脳の使っていない所を刺激されるようで、とても刺激的な体験でしたっ! 生徒のウマ娘ちゃん達にもいいお手本になっていただけたと思いますっ!この場で改めてお礼申し上げますねっ! 3 それとマックイーンさんのサイン色紙も貰ったので、リスナーさんにプレゼントしたいと思います。 詳しいことは後ほど告知しますのでよろしくお願いしますっ! (ごくっごくっ) 「何飲んでるの」って?七冠バ。(http://ssl.web-sanin.jp/~shop-hikami/cgi-bin/shop/view.cgi?v=2&ctg=1200) 「自虐」「自虐」 うるさいよっ! シンボリルドルフさんやテイエムオペラオーさんを思いながら飲むといい気持になれるんですよっ! 「気持ち悪い」 ダハハハッ!だってデジたんだもんしょうがないもーん♪ 「八冠バは無いの?」 それ凄い微妙な話になるからやめよう。 4 (ぐびぐび) っぷえーい♪ マックイーンさんとはねぇー、サイン貰った後一緒にお茶でも飲もうと思ったんだけどお忙しいそうでお帰りになられましたぁー。 なんだよぉーデジたんと茶ぁしばくより大事な用事なんかあるのかよぉー。なんて思ってませんよアハハハッ! 名家のご令嬢様ですものっ!色々ご都合があるんでしょう。 「嫌われてるんじゃないの?」 怖いことを言わないでくださいよう。 だったら一緒に走ってくれませんよそもそも。 …うーん。でも仲がいいかっていうとそうでもないのかなぁ~? というのも、得意な距離やバ場が違うと、会う機会がぐっと減っちゃうんですよねぇ。 5 デジたんはウマ娘ちゃんが大好きで、一緒に走りたくて競走バになりました。 でも好きなウマ娘ちゃんすべてと一緒に走るというのは、どうしても不可能でして。 それぞれの得意なレースに、当たり前ですけど出走するわけです。 スプリンターはスプリンターと、マイラーはマイラーと、ステイヤーはステイヤーと、親しくなるものでございます。 デジたんもスタミナ調教されたら、ステイヤーと走れたのかしらっ!? ああでもそうしたらオペラオーさんともドトウさんとも走れなかったでしょう、デジたんの体は一つでは足りません、ありとあらゆる距離で走れる複数のデジたんが同時に全ての時代に存在しなくてはっ! 「なんと傲慢なのであろう デジたんは神にでもなったつもりなのであろうか」 なれるもんならなりたいですっ! 皆だって人生一度きりじゃ足りないでしょう?そうでもない? 6 おっとそんなわけでそろそろエンディングのお時間ですっ。 いやはぁ~♪いい感じに酔いが回って眠くなってきまひたぁ~♪ 「マックイーンの使ってたシャンプー教えて」 ダメダメェ~教えてあげませーん でもでも今デジたんの髪はマックイーンさんと同じシャンプーの匂いなので、まるで背中から抱かれているみたいですいいでしょー♪ 「じゃあデジたんのシャンプーでいいや」 じゃあじゃねえんですよっ! 妥協するんじゃないっ。妥協でデジたんの髪の匂いを探るなっ!もっと真剣に愛してっ! デジたんのシャンプーはねえ、なんだっけぇ…あのCMでやってるやつ…うーんと… う~んくらくらしてきました。この後はぁ、ツインターボちゃんのチャンネルでぇ…マインドシーカー… …zzz (1時間後)…あっ!?あっ!!ごめ -- 俺たちゃ 裸がユニホーム 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! 突然ですが皆さんはコスプレって知ってますか?やってますか?? 正しくはコスチュームプレイと言って、文字通り色んなコスチュームを着てセックスをすることなんですけど ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ ああ~っ。そうでしたセックスはNGワー ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ ……大変失礼いたしました。 コスチュームを着て、その~。大人の、楽しみをね。交尾を ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ 2 ええ~?交……もダメなの?学術的用語ですよ?? 何ならセッ……も学術的用語ですけど?? まあいいやとにかくいやらしい意味の……えっ嘘? ……へぇ~~!! コスチュームプレイって演劇の事なんだって! 昔の時代を再現した衣装を着て演じる、時代劇とか歴史劇の事なんだって!初めて知った!プレイってそういう!! はぁ~~!オープニングトークで無知を晒し鞭を入れられたデジたんでしたっ! 「は?」「は?」「え?」 何なのダジャレに対して冷淡にリアクションするの流行ってるの? とにかく現代でいうコスプレの話ですっ! 3 仲良くなったトレセン学園生徒には我が同志も何人かおりまして、今を時めくウマ娘ちゃんや過去の名バの勝負服のレプリカを持っている方もいます。 トレーニングお休みの日とかに同志での会合を持つと、きゃいきゃい言いながら着たり着られたりする訳です。 レプリカと言ってもなかなかどうして、特徴を捉えた作りになっていまして。 デジたんもスペシャルウィークちゃんになったりゴールドシップ様になったりマルゼンスキーさんになったりしましたよっ! とくにマチカネフクキタルちゃんは小物が本当によくできていましたっ! 細かいところに気配りがあるとヲタク心は萌え盛ってしまうのですっ! そんで夢中になってるところにですね。こんなふうに言われたのです。 「別のウマ娘の勝負服着てるデジタルさん尊い……。」 「コスプレに耽るデジたん尊い……。」 しまったっ!このデジたんも往年の名バであった!アハハハハハ! 4 「教え子からデジたんって呼ばれてんのw?」 プライベートではねっ!同志ですから上下はありませんっ! そんなに意識はしてなかったのですが、生徒にしてみれば確かに自分も憧れの一人。 目の前で憧れのウマ娘が憧れのウマ娘のコスプレを楽しんでいる……これは事件だ!! このアタシは知らぬ間に同志の杯に劇薬を盛ってしまっていたのです……。 そうと決まればあれ着てこれ着てのラッシュ。 デジたんも楽しいのでバッチコイで色々着ます。 小柄なデジたんには大体大き目の服なのですが、それがまた「あの名バの体格」を肌で感じるようでドキドキしましたっ! デジたんの勝負服のレプリカもありましたよっ! 胸がブカブカだったのでちょっとカチンと来ました。 自分で着る用だからサイズは少しいじってるんですって。 聴きたくなかったなぁその情報!余計にカチンと来ましたっ!! 5 「写真は撮った?」 撮った!だってピッチピチの後輩ウマ娘ちゃん達がキラキラ笑顔で綺羅、星の如き名バのコス着てるんですよっ!? 撮るか撮らざるかそれが問題だ。撮る。 もうね、ちょー可愛いかったっ!! 「デジたんの写真の事聞いてると思う。」 ああ、アタシの? うーん、確かに撮ってもらいましたけどそれはその子が楽しむものですし別に。 「鈍感!」「クソボケがーーーーっ」 何ですか!何なんですか!! デジたん自分が萌えられるの慣れてないんですっ! 「抱いてやれ」 バカッ!バカモノーッ!!そういうんじゃないんですよっ! 6 全く誰も彼も恋愛脳なんですから……。 憧れや萌えは太陽に向かって礼拝するような気持ちなのです。 傍にいたいとか手に入れたいとかじゃぁねーのですっ。 そこら辺の気持ちについて語るには残りの時間が足りません。 その代わり恋愛大好きな皆さんに、誰にでもできて最高に魅力的なコスをお教えしましょう。 まずトップスを脱いでください。下着も。 ボトムスも脱いで。下着も。 ソックスも脱いで。 肉体の美しさも醜さも全てを曝け出せばその覚悟と心意気に相手はメロメロですよ昨夜もそうでしたっ! それじゃあバイデジ~♪ -- Living with joy 3 1 「んう?何ぃ?」 ぽんぽんと頭を撫でた手に、アグネスデジタルが顔を上げる。 「こうして一緒に買い物って久しぶりだと思ってな。」 「子ども扱いしないでよっ!」 口を尖らせるデジタルの頭にまた手を載せる。 「もぉっ!」 パッと手で払う仕草に、口調ほど強い嫌悪は感じない。 「悪い悪い。最近はお前、帰りが遅いからな。」 2 バツが悪そうにデジタルが俯いた。そういう所がいつまでも子供っぽい。 「それは、ごめん。」 伏せたままの顔から謝罪の声が聞こえた。 「でもそれとこれとは別でしょっ!」 「わかってるって。悪かった。」 スーパーマーケットの往来で痴話喧嘩もないもんだ。 でもこちらだって意地悪したいぐらいには言いたいことがあるのだから、家に帰るまでは感情を抑えておいてもらいたい。 「あっお刺身安いよっ!」「食べるか?」「食べるっ!」 3 カートを押して鮮魚コーナ―へと向かう。 ウマ娘であるデジタルは引退した後もまだまだ沢山食べる。 「安くて多い」という言葉には、彼女も、元トレーナーである俺も惹かれてしまう。 「七種盛だって!」 「一つで足りるか?」 「二つ!欲しいです!」 「よろしい。」 斯くしてスチロールの大皿二枚が折り重なってカゴにエントリーした。 「ほかに食べたい刺身はあるか?」 「いいの!?」 「ついでだ。」 4 言うが速いか速足で冷蔵ケースをぐるぐる見て回りながら刺身の選別をしている。 犇めく人の群れを縫うのも慣れたものだ。あっという間に戻ってきて4パックを追加した。 「ハマチ好きだね。」「好き!」 脂の載った魚を好むのは、彼女が若いからだろう。年頃にも似合わずはしゃぐのは…… 俺が相手だからだ、と自惚れてもいいだろう。 ―――― 帰りの車を運転しながら、助手席のデジタルに意地悪の続きを再開する。 「最近夜遅いよな。」 「……ごめん。」 5 「浮気?」「バカッ!」 デジタルが肩をはたく。突っ込みにしては力が籠っていて痛い。 「んん……。学園の生徒とウマ娘ちゃんのことで盛り上がってたんです、前に言ったでしょっ。 これは趣味の事だから許してくれると思ってました……。甘えていたのはその通りですっ! でも嫌だったら嫌だって言うって言ったじゃんっ!」 「そうだな。」 「嫌なの?嫌じゃないの?」 「半々。」 「そんなの分かる訳ないだろっ!!」 また肩をはたかれた。さっきよりも更に痛い。 「そうだな。」 6 俺にも子供っぽいところはまだあるってことだ。 「こうして二人で買い物してるとさ。思った以上に楽しくて。割と寂しかったんだな俺、って自覚して。だから意地悪した。」 「ええ~?」 だよなあ、お前が悪いところは一つもないのだもの。 「そんな意地悪されたって嫌なだけだよぉ、さっきも言ったけど嫌なら嫌っていうって言ったじゃん!」 「……難しいな。」 「何が?!」 「心が二つあるんだよ、お前のすることなら何でも許したい気持ちと、いつでも傍にいたい気持ちと。」 「ズルーい!デジたんだってそうですよっ! ウマ娘ちゃんに萌え尽きたい気持ちとキミの傍にいたい気持ちと、いつだって二つありますっ!」 7 「ふっ……ふふふふふふっ……。」「こっわ。何がおかしいの?」 「いや、二人して傍にいたいと思ってる夫婦なんて超貴重じゃん、って思ってさ。」「……っあ。」 デジタルの顔が耳まで赤くなる。全く俺たちはいつまで新婚気分でいるんだか。 このいつ消えてもおかしくない恋の火を頼りに、しわくちゃになるまでやっていこうというのだから正気じゃねえ。 手慰みにラジオをチューニングすると聴きなじみのある歌が聴こえてきた。 ねぇ 明日よりも想い出よりも 今を信じてる そう あなたとなら生きる全てを 喜びに変えてゆける 「……神の嫌な意思を感じる。」 「嫌か?」「……嫌じゃない。だから嫌。」「俺も。」 申し合わせたような赤信号。今日は、俺の傍にいたい方のお前と一緒に居させてくれよ。 顔を向けると、デジタルはキスで応えた。 -- 心に触ろう 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! 今日ねえ、ノープラン!アハハハハッ! なんかねえ、配信したくなったからします。皆とお話したくなったの。 皆、おる~? 「おるよ。」「おるよ~」「おるおる」「おらん」 大体おるね。 何の話をしようかなあ この夏もう一回海行きたいな。 2 今年はもう、一度トレセンのOGさんや生徒たちと行ったんですけど、いやはやあの友達と話をする快感って凄くてねっ! 友達と言ってもデジたんにとってはウマ娘ちゃんの皆さんは誰も彼も天上の存在なんですけど。 普段逢えない素敵なウマ娘ちゃん達とお話を交わすのって本当に本当に心が洗われる気持ちになります。 勿論トレーナーさんとかスタッフさんとかとお話するのもとっても楽しいっ! 一人では生きていけないとよく言われますけど、実感しちゃいます。 ……思い出したからちょっと暗い話するけどいい?体験談とかじゃないんだけどさ。 ドラッグとかお酒の依存症のお話。 ヒトとヒトの関係に依存できないとそうしたお薬やお酒に依存しやすいって話があります。 3 マウス……ラットだっけ?を使った実験でも、コカイン入り?だっけ?の水と普通の水を用意するとマウスはコカイン入りの水を飲むんだって。 確かに薬には依存症があるねって話になったんですけど、何十年か後に条件を変えてやってみたんだって。 当時の実験に使った簡素な檻じゃなくて、遊び道具とかマウス仲間とか充実させて楽しい設備にして、 それでまたコカイン入りの水とそうでない水を用意すると、マウスはコカイン入りの水に見向きもしなくなったと。 薬物には依存性があるけれど、生き物が依存症になるのは薬の成分だけじゃない。 というか充実した生活をしていれば薬物の依存性なんて大したことじゃないんだ、という実験結果なのでありました。 何が言いたいかって言うと、デジたん達はコミュニケーションしないとぶっ壊れるようにできている生き物だということです。 人に会って話すのはストレスもたまるかもだけど、でも大事な心の栄養なんですね~。 4 そう思うとみんなで海に行ったのは心のご馳走だったのかなって思います。 つっても学園でいっつも生徒のウマ娘ちゃん達に尊さと輝きをもらっているんですけど。 たまにはステーキばかりじゃなくフレンチフルコースも心に食べさせてやるべきなんだなあ~って。 「真面目な話だ…」 うん、真面目な話になってしまった。 今日は引き出しがないっ!アハハハハッ! 真面目ついでに、ドラッグやお酒の話を続けるとですね。 確かに依存症になるかもしれないけれど、その人たちは別に病気になりたくてキめてるワケじゃないんですよね。 少しでも人生をマシにする為に、今を楽しく過ごすために、そうしている訳で。 難しい問題だよなぁ~って思います。 人と接するのが多分一番なんですけど、社会全体から見ると人と人は先進国ほど物理的に遠ざかる傾向にあるそうで。 5 でさ。ちょっと今考えたのがぁ。 アタシ達みたいな引退ウマ娘のライブって、見たくない? ウマ娘としてできることって、ファンを集めて出会う機会を増やすことかなって今思った。今っ! ウマ娘に興味ない子たちは後で考えるとしましてぇ、オペラオーさんとかドトウさんとかスペシャルウィークちゃんとかダイワスカーレットさんとかウオッカさんとかタキオンさんとかメジロマックイーンさんとかえへへへうへへへへへじゅるりら♪ 「デジたんが見たいだけじゃん」 バレたっ!!! でもいいと思わない?ウマ娘ファンが集まる機会を少しでもつくれればさあ、何か、心の栄養をあげられる気がする。 「公開録画やれば?」 ……天才っ!! 6 そうだ公開録画ならほかのウマ娘ちゃんのスケジュール問わないね。 ちょっとマネちゃんに聞いてみます。 ……すぐは無理だけど考えてみるって。 でもさあ、デジたん如きの公開録画で人って集まってくれるのかしら? 「オイオイオイ俺たちいないことになってるわ」「デジたん好き」「デジ民(たみ)なめんな」 わぁ……。マジ嬉しい……。ごめんね。少し鳴く。ヒヒーン。 じゃあさ、皆さんの心の栄養になれるように企画を練って、決まったらまた告知しますんでっ!よろしくなデジ民の皆さんっ! 「旦那とトークしてよ」「旦那とお話いいね」「旦那顔見てみたい」 それはちょっと……辛いかな。 7 「旦那と不仲なのかな?」「他人に見せたくない感じ?」「でもデジトレってそこそこ現役時代に露出あったような」 あー……。公開録画はできればデジ民とデジたんのコミュニケーションの場にしたいんですよ。 ダンナが来るとねー。内輪の話ばっかりするからさあ。 「夫婦事情聴きたい」「ノロケ話しろ」「愛してるって言ってくれたら赤スパ5000兆回入れる」 ええ~いやめろやめろっ!プライベートっ!プライベートですっ!! そろそろ〆ですからドバっと頼んじゃいますよっ!! エンディングテーマはダブルバインド ザ・ルッキンググラスオブパーフェクトブルー全編です。 ヘッドホンをしてお聞きくださいそれではバイデジ~♪ -- 参考:https://www.ted.com/talks/johann_hari_everything_you_think_you_know_about_addiction_is_wrong?language=ja -- 浮ついた気持ちを 1 実はこのアグネスデジタルは男友達が多い。 というのも、ウマ娘ちゃんというのはアタシにとって崇拝尊敬の対象であって、親しく話しかけるべき相手では本当はないからだ。 そういう事が出来るのは、付き合いの流さで親しくなって少しずつ垣根無く話せるようになったウマ娘ちゃんや 立場上強く出ることができる後輩ウマ娘ちゃんだけ。 一方、『同志』は圧倒的に一般人男性が多い。 だから親しい人の中では男性の割合が圧倒的に多い。 それが女として危ないことだということはわかっている。 けれど『同志』は異常なまでに真摯でもある。二人きりでウマ娘博物館に行って喫茶店で閉店まで語ってそのままさようならしたこともある。 『同志』というのは、そういう生き物なのだ。 アタシの事を『そういう目』で見る同志は居るには居たけど、結婚するまで純潔は守ったままだった。 2 そう、結婚した後はそうもいかないのだ。 法的に婚姻関係のある女性が単身男性の集団に身を投じるのは余程でなければアウトだろう。 結婚してからは『同志』の集いには決まって夫を連れていく。 というわけで大変詰まらなそうに枝豆を摘まんでジョッキを傾けているのがアタシの夫である。 「……ウマ娘ちゃんの話に興味ないの?」 「視点が違うんだよ。」 元トレーナーだから多少は話が合う所もあろうと思ったのだが。 ウマ娘ちゃんの話に花を咲かせる同志たちをどこか冷ややかに見ている。 ……まるで『極まった』同志のように。 3 「これ毎回話してるけど、デジたんがいるとどうしてもドトウちゃんの話がしたくなる。」 夫がピクリ、と反応した。 「ああ、やっぱり秋の重賞ねー。」「それもあるけどオペラオーとのライバル関係よやっぱり。」 夫の口がむずむずと動いた。 「ライバルというか…。」 「いいんだよ、ライバルってのは対等じゃないほうが燃えるから。」 「わかる。勝ったり負けたりよりも格付けが終わった上での関係性がいいんだよ。」 夫が遂に、ぐっと身を乗り出した。 「格付けは…。」 4 同志一同が、夫の初めての自発的な発言に注目した。 「終わったとは言い難いんじゃないかな。」 「……というと。」 「ドトウはオペラオーに勝っている。」 「勿論。」「勿論です勿論です!」 同志一同がわっと沸いた。アタシはニヤニヤしながら少し身を下げる。 「勝ち数では及ばなかったが、決して劣るわけではないんだと示したのがいいんですよ!」 「いいかどうかは知らないけど。本当に二頭の差はわずかだったと思う。大きく勝ち越したオペラオーが凄いのは間違いないんだけど。」 「そうですそうです!戦績だけだとオペラオーちゃんに劣るというしかないけど、じゃあドトウちゃんが弱かったのかというとそうじゃないという。」 「あの頃のオペラオーはキレッキレだったもんな。」 「『出たら勝つ』って言われてたんですもの、ちょっとしたモンスターですよね。」 5 「ちょっとしたどころじゃないよ、当時は最優先抹殺対象だった。」 「マーク凄かったですもんね当時。」 「それでぶち抜いて勝つんだもんな、でその後ろにドトウがいるっていう。競バというよりちょっとしたショーになってた。」 「ショーかぁ……。でもショーじゃダメなんですよね、競バ。」 「ショーの一面もあるけど、筋書きはあっちゃだめだからな。」 「その筋書きをぶち破ったのが奥さんですもんねー。」 「まあそうだけど……。」 んむむ?何やら嬉しそうな、しかしそれだけじゃない複雑な顔をしていますな? 「バリバリにマークのついてたオペラオーやドトウに対して20倍バ券だったからな。運だけで勝ったとは言わないけど、時の運がなかったとは言えないよ。」 「それってトレーナーが言っていいんですか?」 「だって当時のオペドトウだぜ?勝って欲しいとは思ったが勝てるかどうかは別だ。」 6 「奥さん聞いてますけど。」 夫がくるりとこちらを振り向く。ニコニコと笑って手を振ってあげる。 「あ、意味深な笑いですよ今の。」 「わかってるよこれでも付き合い長いんだから。」 「惚気ちゃって!」 「うるさい!」 言い捨てて、体ごとこちらに向いて居直った。 「悪かった。正直あの二頭に勝てるって確信はなかった。でも勝てる可能性があると信じたのは本当だ。」 「アハハハハッ!」 笑って斬り捨ててやる。アタシは身を乗り出す。 7 「あのねえこの人、あの時観客席に向かって走れって言ったんだよ?」 「知ってます知ってます!バ場のいいところを走る作戦だったってインタビューで言ってましたよね。」 「……伸び伸び走らせれば速いのはわかってたからな。」 バツが悪そうに夫が言う。それはアタシに対する弁明かな? 「でも競バに絶対はない。オペラオーやドトウが、特にオペラオーを意識してたであろうドトウが何か作戦を練ってきてはいないかとは思ったよ。」 「仮想敵ドトウちゃんだったんですか!」 「追う側の立場の方が目標を明確にしやすいからな。過去の戦績から想定タイムを出してそれをぶち抜ければ一先ず一段落になる。 一方で追われる側は相手がどれぐらい成長してくるか想像もつかない。」 「なるほどですねぇ~。」 「まあドトウは一回オペラオーに勝ってはいたんだが。」 そう。アタシと戦う前、ドトウちゃんはオペラオーちゃんに一矢報いていた。けれど、悲しいかな格付けはもう既に終わっていたのだ。 8 「1勝5敗じゃあな。」 「ドトウがオペラオーを超えた、とは言いづらいですよね。」 「依然ドトウが追う立場だ、と考えた。でなければオペラオーに対する勝ち方を体得したんじゃないかと。」 「だからドトウが仮想敵だと。」 「オペラオーが雪辱に燃えるのは百も承知だが、ドトウはその前に5回も泥を舐めさせられたんだ。格付けごとひっくり返したいだろう。さらにパワーアップしてきてもおかしくない。 だから、オペラオーとドトウの想定ベストタイムを大きく超えられるレベルまで育てた。」 チラとこちらを見る。わかりやすい加点アピールだこん畜生。変わらぬ笑顔でひらひら手を振ってやる。眉を顰めやがった。ザマミロ。 「……そんなことが。」 「正直怖かったよ。当時のオペドトウはまさに鉄壁だったからな。デジタルももう少し警戒されてたらどうなってたか。」 「ブロックされてたら……。」 「想像もしたくないね。」 9 気が付けばアタシの頬は緩んでいた。我が同志と親しげに語らう夫の姿は、まるで友達の輪に入ることに成功したペットか我が子みたいだ。 デジたんペットも我が子もいませんけど。 そうして話を弾ませているうち、店員さんがラストオーダーを取りに来た。 ―――― 今日はいい勉強になったからと奢ろうとする夫を強く制止して割り勘にする。 同志には負い目があってはいけないのだ。知識や意見の交流はインプット側もアウトプット側も等価であり、一方が『いい勉強』ということはない。それが同志を同志たらしめる。 「んふふ、どうでしたか♪?」 「……悪くないな。」 許容(ゆる)してはくれても理解(わか)ってはくれなかったキミ。 どうだねヲタクもなかなか捨てたものではないでしょう。 10 「……服のセンスだけは……。」 「それは今後デジたんが指導しますっ!」 顔を見上げて宣言する。 ウマ娘ヲタク男子をおしゃれヲタクに染める楽しみに背徳的な期待が背筋を走る。 「……涎出る要素あるかあ?」 「えっ?……はっ!」 手で拭えばそれは確かに涎。 「……こりゃあやっぱり浮気を」 「してないって!」 ニヤニヤ笑いのいけ好かない顔をするから、肩を平手でひっぱたいた。 -- [余談]純潔を守ったという表現をついしてしまいましたが、結婚する前に今の夫とゴムックスくらいはしてたんじゃねえかなとは今は思います -- 第二の夢への道 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! 『ウマ娘 浜の真砂は尽くるとも 世に尊みの 種は尽きまじ』 いやぁ~デジたんも俳句を嗜んでみようかと思いましてねっ! 「短歌だろ」「パロディだし」 はい。 今日もトレーナー見習いとしてご指導のお手伝いをしてきたんですけど、やっぱりトレーナーって天職だわって思いましたっ!いつも思ってますっ! 頑張るウマ娘ちゃん、悩むウマ娘ちゃん、休むウマ娘ちゃん、喜ぶウマ娘ちゃん、その直向きな美しさを傍で見て支えることができる。 こんなに嬉しいことはないっ! 2 だから今はトレーナー資格取るために勉強もしてるんです。 デジたん2回落ちてるんですよね。今度こそ! 「デジたん勉強できないの?」 もうちょっとオブラートに包んで欲しいんですけど。 まあ、はい。 言い訳になるかもですけどトレーナー資格試験ってマジで難しいんですよ?! 知らない専門用語もどかどか出て来るし、育成理論とか競バの歴史とかも知らないといけないし。 ウイニングライブの手配とかダンスの知識とかも問題に出ます! 脳の今まで使っていなかったところを開拓してる気分です。 そう、開拓。畑を作るために森の木を刈るところから始める感じ。 変な例えだな。 キミらも本屋でトレーナー資格試験の本読んでみ読んでみ?すっごいから。 3 本当なら毎日毎日勉強漬けしないといけないみたいなことも言われるんですけど、デジたんウマ娘ちゃんの顔を見ないまま過ごすと多分一か月くらいでぶっ壊れるので。 だから今学園のスタッフやらせてもらってます。 ……いやあのねえ、本当は。スタッフとしてトレーナーっぽいことをすればトレーナー資格の知識も身につくしウマ娘ちゃんの輝くお姿も間近で見られるし良い事づくめじゃないっ!? って単純な考えで就職したんですよ。 それで暫く仕事してからデジたん元競走バだしだったらイケるぜ!ってトレーナー試験受けたんですけどもぅ~コテンパンでした。 問題文に何書いてるかすら理解できなかった。 そうそう、良い事もありましたよっ! 勉強していく中で「ああ、これがあの時のトレーニングの元になった理論かぁ!」とか。 ちょっと嬉しくなっちゃいますよね、答え合わせしたみたいで。 4 今のままスタッフしてるのも幸せなんですけど、学園の温情でやらせてもらってるみたいなところあるんでねぇ~。 正式な資格は欲しい!です!! そして負い目無く憂い無くウマ娘ちゃんを支えたい! ウマ娘ちゃんの青春を!喜びを!!悲しみまでも!!!味わい尽くしたいっ!!!!! 「マッドサイエンティストのセリフ」「ラスボス」「終盤で印象残して死ぬ幹部」 失礼しました。取り乱しました。 という訳で今デジタンは勉強中ですっ! 次の試験で受かるかどうかはわかりませんが、育てたウマ娘ちゃんが勝つ姿をいつか拝みたいのですっ! 5 「デジたんならできるよ(笑)」 カッコワライをつけるなっ! 「ほら、しっかり(笑)」 やめろっ! あのねえそのネタわからない人もいるんですから。 じゃあ拾うなって?そうですね。 でもまあ、走るよりは楽かと思えばやる気も出てきました。 だって競走バの世界は上には上がいますから。 日本最強の上に世界最強、世界最強の上に史上最強が居て、それに挑戦することを諦めた瞬間競走バ人生は終わるのですから。 それに比べればトレーナー試験の一つや二つ!超えられなくてどうしますっ! 6 なんだかすっきりしましたよっ!こうして話すだけでも気持ちが軽くなるもんなんですねっ! なかなかね~、家で弱音は吐けませんから。 「ダンナ愚痴聞いてくれないの?」 聴かせたくないんですよ。 励ましてもらいたくて愚痴を吐く、みたいな下心がどうしても発生しちゃいますし。 それにやっぱり負担をかけたくないじゃないですか。 「俺達には負担かけていいのか」 何を今更♪好き好んでアクセスして見てくれているのに嫌とは言わせませんよっ! ファンにしか甘えられない事柄もあるのですっ!いやマジで支えられてる、ありがとうございます。 それではそろそろ終わりのお時間です。最後に少しおもしろいを少し。 ペンネーム「阪大卒マチカネワニ」さんから 「マチカネ服着てるようで着てないちょっと着てるタンホイザ」 ではバイデジ~♪ -- 第二の夢への寄り道 1 トレーナー試験対策の成果が芳しくない。 我が妻アグネスデジタルは正規トレーナー資格を目指して現在勉強中なのだが、特定分野の正答率が低い。 具体的には手続きや法律関連の問題だ。 この辺りは専門用語や紛らわしい文言が多く、コツを掴まないと覚えるのはかなり難しい。 デジタルにとっては、ウマ娘の走りやライブから遠い分野であるという所もハンディになっているようだ。 「ウマ娘ちゃんがこの手続きとかやってる姿が想像つかない……。」 テーブルに突っ伏して力無く嘆くデジタル。 そりゃそうである。こうした面倒な事務作業からウマ娘を遠ざけることが、正にトレーナーの仕事の一つだからだ。 2 今にして考えれば、デジタルが現役時代から将来トレーナーを志望していることには薄々感づいては居た訳で、当時少しでもこうした作業を見せてやれていればと思うが、後の祭りである。 こういうのは実際にやってみると案外すっと腑に落ちたりするのだが……。 「ふむ。」 実際にやってみる、か。 携帯を取り出しSNSでメッセージを打ってみる。 連絡先は、知り合いの後輩トレーナーだ。 彼は今専属の担当を持ったばかり。 そのウマ娘は、併せウマでデジタルをぶっちぎった期待の新バである。 名前は……一先ずは伏せておこう。 兎に角その時の走りが話題になり異例の早さで専属トレーナーが付くことになったのだ。 3 メッセージの返信を確認し電話を掛ける。 「急に済まないな。そろそろ出走登録の時期だろ? その登録作業にうちのデジタルを付き添わせてやって欲しいんだけど……。 試験対策の勉強でどうもそこの覚えが悪くてな。 実際の作業と合わせてみれば身につくんじゃないかと……どうした?」 最初はいいですよどうぞどうぞという感じの返事だったのだが、その後ろから女性の声が挟まって来た。 よく聞こえないが、嫌だとかやめてとか、そう言ったニュアンスだ。 デジタルが頭を擡げてきたのでスピーカーをオンにする。 ――――……勉強だからって別のウマ娘と…… ――――……たとえデジタル先輩でも…… 4 妻がにやついた顔でこちらを見た。きっと俺も同じ顔をしている。 「デジタルさん、これは……♪」 「少し掛かり気味ではないでしょうか……♥」 また連絡する、と一方的に告げて通話を切った。 「ごめんデジタル、ダメそうだ。」 「いえいえ、美味しい栄養をいただきましたぁ♪」 「別の知り合いに声をかけてみる。」 「いやいや、いーっていーって、ありがとう。」 ふむ。 5 「……あの二人の様子、見に行きたくないか?」 「何を考えているのかな?」 「二人の邪魔をせずに、且つ二人の親交を深めつつ、あわよくば事務手続きに同行できる妙案がある。」 「聞かせてもらおうか陳宮。」 「は、我が殿。」 献策を告げると我が家の呂布は赤兎バの如く嘶いた。 「だぶるでえとおおぉぉぉ!?」 「然様でございます。」 6 「これならば向こうのウマ娘も、トレーナーの浮気を疑うことはありますまい。」 「なるほど。寧ろこちらからお膳立てした訳だから恩を売る形になる。」 「然様然様。そうなればウマ娘も、殿の事務手続きへの同行を断りづらくなりましょう。」 「お主も悪よのう♪」 二人していやらしく笑う。 「それにしても陳宮。」 「は?」 「出て来る案がダブルデートとか、お主アタシの事好きすぎない?」 「……。」 「黙るなよぉ、何だよ。でえとしてやらないぞこの野郎。」 「それは困る。さあプランを決めないとな。」 「そうだそうだ!恩を売ったと言える素敵なおでえとにしてあげませんとねっ!」 この後再度電話をかけ案を持ちかけると、スピーカーから向こうの赤兎バの嘶きが轟いた。 -- [余談]このデジたんを負かした新バはアーモンドアイをイメージしています。 -- 水も滴る 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! 夏本番っ!近所のプール全部出禁になったデジたんですがめげずに遠出してウマ娘ちゃんの水着姿を拝んで出禁になっております。 出禁になっても髪色とかメイクとか変えていくと一回は通るので頑張ってます! プールは夏場のトレーニングにも最適なんですよっ! 暑さ対策は勿論、心肺機能が強化されて、脚にも負担が軽いトレーニング方法なんですっ! 何より美しい! 水に濡れた肌と懸命さに輝くご尊顔、夏の風物詩ですねぇ~。ご飯幾らでも行けそう。 デジたんプールサイドにジャーを持ち込む方法を全力で探しましたが、残念ながら「無い」という結論に至りました。 ので、市民プールの客席で双眼鏡片手にほかほかご飯を食べているウマ娘を見つけたらデジたんですのでそっとしておいてくださいっ! 話しかけられるとびっくりしますし、実際、おっファンかな?サイン書いてあげなきゃと思ったら重装備の警備員お二方だったりしましたからっ! 2 夏はお肌が艶めく季節ですが、お肌にダメージを与える季節でもありますっ! 日光を浴びるのは体にいいけれど過剰に浴びるとシミになったりしてよろしくありません。 だからUVケアをしっかりと! ウマ娘ちゃんだけではなく、ヒト息子ちゃん達も他人事ではありませんよっ! 肌を守り日焼けも避けたい方はSPFとPA両方の効果のあるものを、 日焼けはしたいという方はPA弱めのものを選びましょうっ! SPFとPAが何なのかはググってくださいっ! デジたんはですねえ、日焼けも素の肌の色も大好きですっ! でも日焼け肌はこの季節しか見られないものですから、プレミア感がありますよねっ! 3 肌の色と言えば、ヒシアマゾンさんが浮かびます。 あの健康的な小麦色の肌に、勝気な性格。 勝負服もそのお肌を存分に生かすまさに南国と言った素敵なデザイン♪ あれで家事が得意という一面もあるんですからもう~~~~♪ 属性カンカンが過積載ですよっ!!日差しに当てられたみたいにクラクラしちゃうっ! 引退後はアメリカでゆっくり暮らしておられると伺っています。 アメリカのでっかいキッチンでご家族に料理を振舞うお姿が目に浮かぶようです。じゅるりら。 お幸せに過ごしておられることを祈っておりますっ! 4 ふうぅ~。ちょっと休憩です。 (ごくごく) 「何飲んでるの?」 今日はですねぇ、ホワイトホースのハイボールです。 前は日本酒で寝落ちちゃいましたからね、薄めに作っております。 「喉を労われ」「というか酒とは思わなかった」「もっといい酒飲め」 アハハハ、さっきちょっと近くのコンビニで買って来た奴なので許してください。 いいお酒もねぇ~。いいんですけど、しっとりしちゃうんですよね。味わっちゃうから。 こういう言い方はよくないかもですけど、美味しすぎないほうがいいんですよ酔うためのお酒って。 惜しみなくぐびぐび行きたいので。 まあまあまあ、デジたんのお酒事情はいいじゃあありませんか。 5 おっスパチャ来た。 ありがとうございますっ! 「引退レースのウイニングライブを欠席して客席に居たってエピソードを最近知りました。 やっぱりアグネスデジタルは頭がおかしい。」 スパチャで罵倒するのやめてくださいっ! 罵倒されてありがとうって言ってるみたいじゃないですかっ! 「デジたんはレースもおかしい」「いい歳してデカリボン」「この変態競走バ」「モナリザ」 やめろやめろありがとうございますありがとうございますっ! 情緒が行方不明になるからほどほどにしてくださいっ! 6 さてそろそろお別れのお時間です。 暦の上ではもう秋。 涼しくなるのは来月以降ですが、その頃にはウマ娘ちゃんも秋の装いに変わりますね。 秋は大きなレースも控えていますし、夏の間に養った英気を炸裂させてほしい物です。 んん? 「変態勇者ローテ」「バ場適性の破壊者」 まだやってんのか!! 「安酒飲み女」「G2でやる気出さない女」 ひどっ、ひーどーいっ! ほどほどにしてくださいって言ったでしょ(台パン) ああああああっ!瓶倒れ (この配信は終了しました) -- Living with joy 4 1 「邪魔するぜぇ。これ差し入れ。」「おう苦しゅうない。」 「「「「「ありがとうございますっ!」」」」」 アグネスデジタルが夫に見下すように胸を張ると、彼女の前で整列していたトレセン学園生徒たちが奇麗に礼をした。 「またスポドリか、そちにしてはよく気が利くな。」 「恐れ入ります我が殿。……こいついっつもこんなノリなの?」 「いや、旦那さんが来て嬉しいんだと思いますよ。」 「ちょっとぉー!?」 生徒の言葉にデジタルが嘶いた。 2 「いつもありがとうございます。」 生徒たちを監督している正トレーナーの女性もやってきて、夫に挨拶した。 「いやいや、こちらも妻が世話になっております。」 「とんでもない、デジタルさんの観察眼とアドバイスにはいつも助けられてますよ。」 「そう言ってもらえると幸いです。」 頭を下げる夫の腰にデジタルが両手を当てぐいぐいと押した。 「はいはい、もういいから。帰った帰った!」 「何だよ、言われなくても帰るよ。今日は冷たいな。」 「いつもはあったかいみたいに言わないでよ。」 「いつもはあったかいじゃん。」 「ああーーーもおっ!」 3 「じゃあな、後でビデオ見ようぜ。」 「はい!バイバーイ!」 ウインドウ越しに話すと、デジタルの夫は車のアクセルを踏み、去っていった。 「デジタル先輩今日冷たくありません?」 「そんなことないよ。」 生徒の追求に顔も向けず反論する。 「あ!もしかしてこっちのトレーナーが女性だから……。」 「あんなおっさんと不倫する人なんていないって。」 「そのおっさんと結婚したのは……。」 「ええーい生意気言うのはこの口かっ!」 4 唇をぐにぐにとつねられた生徒は、にやにやと笑いながら仲間の元へと駆けていった。 「別にそういうんじゃないもん……。」 デジタルも正トレーナーの元へと戻ると指導が再開される。 正トレーナーの指示に従いそれぞれの生徒が走ったり、フォームの調整を行ったりする。 そのそれぞれの訓練模様をデジタルが用意した複数のビデオカメラに逐一収める。 ちなみにこれらのカメラはデジタルの私物で、『競走バ生涯で稼いだ賞金の数パーセントが消えた』ともいわれる超高級品だがその詳細を知る者はここにはいない。 仕上げの走り込みで全生徒がトラックを回り始めると、正トレーナーはその場を離れデジタルを呼んだ。 「何でしょっ!」 デジタルは愛らしくビシっと敬礼。こうしたあざとさはウイニングライブを踊る上での『アイドルらしさ』として磨いたものだ。 5 「あまり立ち入った事を訊くのはよくないと思うけど……。 ……旦那さんとうまく行ってないの?」 「はえっ!?」 デジタルの目が点になる。 「いつもはもっと仲良さそうにするって聞いてたから。」 「いやいやいやいやいや!そんなんじゃないですよっ!あのっ、何だ、何ですかっ、ごめんなさい心配かけてっ! そういうんじゃないんですほんと!身内が見られて恥ずかしいっていうかそういう感覚なんです 今日はなんかちょっとそれが強いかなって今にして思いますしあんな風に急いで追い返さなくてもよかったかなって。 あいつも元トレーナーだしトレーナーさんに意見できるところもあるはずでっ! 力になれた筈なのに帰らせちゃって、いやそうじゃないなっ!さっき言ったように身内が見られて恥ずかしいみたいな感じ!」 6 「それだけ!それだけなんですよっ!……どうしたんだろ、今日のデジたんおかしいですねっ。」 「今日は旦那さんに来てもらわないほうがよかったかな?」 「いやそれは……それだっ!」「どれ?」 デジタルがビシっと指さすもトレーナーは首を傾げるほかない。 「『旦那さんが来て嬉しいんだと思います』って言われたんですよ、あの子に。」 そう言ってトラックの3番手を走るウマ娘を指さす。 「それを言われて、急にカーッ!ってっ!恥ずかしくなっちゃって!」 そこまで喋って、デジタルはやっとその表情を穏やかにした。 「……照れくさいことは恥ずかしい事じゃない。」 7 「ん?」 「夫がね、言ってたことなんですよ。漫画の受け売りですけど。 照れくさかっただけです。夫と逢えて嬉しいって見抜かれたのが。」 「そっか。」 トレーナーがにっこりと笑った。 「いい結婚をしたんだね。」 「……はいっ♪」 デジタルもにっこりと笑った。 そうして問題は解決した。だからそろそろ仕事の時間だ。 訓練の総括と終了を告げるため、二人は歩き出した。 -- 笑う門には 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! 皆さんはフルアーマー・フクキタルさんに出会ったらどうしますか? その日のデジたんもまたフルアーマーでした。 帽子をかぶりグラサンかけてマスクも装着。地方の即売会からの帰りにもう少し買い物をしていこうと町中の喫茶店を探していた時でした。 視界の端に見慣れたシルエット。目を向けるとそこにはお懐かしい、しかしメイショウドトウさんと雌雄を競った時よりも何倍も光り輝くマチカネフクキタル様のお姿でしたっ! とは言え今はお互いにオフ。声をかけるわけにはいくまい、せめて網膜に焼き付けておこうと凝視していると 「あ、デジタルさぁ~~~~ん♪」 おっっふっっって。 おっっふっっってなりました。 めっちゃ手ぇ振って走って来たんです。超かわいい。 2 お召し物の情報量も相変わらず多くて、まともな反応もできず。 「お久しぶりですデジタルさんっ!」 と握手ぶんぶん。 おほっフクキタルちゃんと握手、しかも向こうから求められてなんてデジたんこのまま自分の手を切り落としてショーケースに飾りたい。 「おっほっ、はいっ、はいっ!!!」って。 もうね、訳わかんなくなりまして。 自分の身バレしてはいけないとかフクキタルさんもオフだからバレてはダメなのでは?とか紙袋の中身を知られてはいけないとか あの時のフルアーマーよりずっとパワーアップしててかわいいかわいいこれがかみのちから、とくとめにやきつけましたとか 凄い本物のフクキタルさんすんごいいい匂いするこの香りの香水だしたらデジたん全部買い占めるのにとか 完全にデジメモリはオーバーフロー。 3 もうめーちゃめちゃテンパってて、はいっ!はいっ!ていうマシーンになってました。 じゃあそろそろお別れというギリギリのところで漸く正気を取り戻しまして。 よろしければ写真を一枚、と申し出たところ快諾いただきました。 鞄の中からカメラを取り出すとフクキタルさんが「うわーすごーい!」って言ってくれたんです。あのフクキタルさんが言ってくれたんですよっ! 最高の……音楽(ミュージック)だ…… 自慢のデジタル一眼レフで二百枚ぐらい撮りました。まんぞく… 「そのカメラ、すごくいいものっぽいですね!」 「はい!」 値段を言ったら目を回していました。 うーんやっぱり神を下賤な話題に触れさせるべきではありませんでした。ごめんなさい。 4 「実際おいくらぐらいなの?」 言うとね、スタッフからピー音入る。 アハハハハ。だから教えられません! いやしかしあの明るさには癒されますねぇ~。 めげないという言葉はマチカネフクキタルさんの為にある言葉だと思いましたっ! そんな訳でわずかな時間でしたが非常にいい時を過ごさせてもらいましたよっ! 「フルアーマー・フクキタル改ってどんなだったの?」 ベースはあの時のレースの黄色いワンピなんですけど、小物が全部凝ってて。 前よりも更に派手派手に舵を切った感じ。それでもいやらしくはない着こなしになってたのが凄かった……。 うろ覚えの会話から聞いたところによると、ウイニングライブの時にお世話になったメイクさんや衣装さんからのアドバイスを聞いたそう。 プロって凄いですね! 5 「即売会どこ行ってきたの?」 それ言ったら何のために変装してたかわかんないから! 言いませんっ! 「何の即売会?」 訊く?それを。 俗に言う薄い本ですよ。言わなくてもわかってるだろうに。 あとカラオケも歌った。 あのねえ地方の即売会のいいところって結構サイドイベントがあったりするんですよ。 コスプレしたお姉さんとカラオケとか、ゲーム大会とか。 「デジたん歌ったらバレるのでは?」 ……。 バレてたかもしれん。 6 そんな訳で非常に有意義でラッキーなお休みを過ごさせてもらいましたっ! フクキタルさんは幸運の化身と言って差し支えない! フクキタルさんに会えること自体がもう福来たるですもの! お名残り惜しいですがそろそろお時間でございます。 最後はマチカネフクキタルさん未承認の超レア同人CD、「フンギャロ100連発」をお聴きしながらお別れです。 それではバイデジ~♪ -- 正論で性論 1 「子どもが欲しい。」 そう切り出された俺は、両手でちょっと待て、とジェスチャーするしかなかった。 「嫌なの?」 「嫌とは言ってない。」 ていうかいつでもいいとは思っているし特に避妊はしていないし妻もそのつもりだと思っていた。 「じゃあ何?」 「何って言うか。……普段別に避妊とかしてないじゃん。」 「……ああー。」 やっと認識が合致したらしい。 2 「急な話でごめん。」 「急って言うか、いつでもオッケーだったから改めて言われてどうした?!ってなった。」 「そうだよね……。」 妻がうーんと首を傾げて言葉を選んでいる。 「色々考えたのよ。 このままトレーナーを目指して、めでたくトレーナーになって、トレーナーとして担当のウマ娘ちゃんを見つけて、 って全部順風満帆に行ったとしても恐らく子を産むチャンスは無いなと。」 「うーん。」 否定はできない。元トレーナーである俺の経験からも、トレーナーの仕事は出産と並行して行えるほど楽な稼業ではない。 3 「で、アタシ体小さいじゃない?そうなると余計に体力のある若い内に産んでおかないと厳しいんじゃないかって。」 「……なるほど。」 我が妻アグネスデジタルは確かに、ほかのウマ娘に比べてかなり小柄だ。 ヒトに比べて頑丈であるとはいえ、出産の苦しみがヒトより楽であるという話は聞かない。 「とは言え、急げばすぐ産めるというものでもあるまい。」 「そうなんだよねえ……。」 出産の苦しみがヒトと同じであったとしても、ウマ娘はヒトより頑丈だ。 嫌な言い方だが、流産死産はヒトと変わらずとも、母体の危険度はヒトよりずっと低い。 デジタルの身だけを思えば、急ぐことではない。 4 「でも……キミの方もさ。」 そう。ウマ娘の肉体に心配はなくとも、ヒトの肉体には懸念がある。 それには俺も含まれる。 余り知られていないことだが、精子も加齢により劣化するのだ。 年を経るごとに遺伝子は傷つく。精子も例外ではない。 それは生まれる子に生涯背負わせることになる傷でもある。 トレーナー資格を得てある程度キャリアを積んだ俺。 そんな俺と出会ったトレセン学園生徒のデジタル。 ……年の差については語りたくもない。 『若い内』を切実に求めるべきなのはデジタルではなく俺なのだ。 5 「そっちがいいというなら、俺はいつでも。」 デジタルの顔がパッと明るくなる。 普段からそう言ってるじゃないか。 授かりものを拒んだりしない。それは二人の合意だったじゃないか。 これ以上、どうしたらいいんだ? 「今日!作りましょう!!!」 ……気合の底なし具合は現役のままだ。 「いつでもとは言ったが、いくらでもとは言ってないぞ。」 そんな俺の反論を聞けるほどの理性は、もう妻には残っていなかった。 6 ……結果として、その日の『うまぴょい』では残念ながら子をなすことはできなかった。 しかし変化もある。 「たっだいまー♪スッポン買ってきちゃった!料理できるよね!?」 「たっだいまー♪赤ひげさんとこで効果あるって言われたの全部買ってきちゃったー♪」 「たっだいまー♪お医者さん結果でたよー!アタシもキミも卵子精子問題ないんだって!!よかったねー!!!」 急ぐ必要があるのは俺の方だ。俺のせいでデジタルに負担をかけている。それは分かっている。 分かっているが……! 「じゃ、今日もシようねー!!」 「休ませてくれぇー!!!」 夫婦の愛も。愛の営みも。その快感も。産めよ増やせよも。全部正しい。 ……でも、正しさにげっぷが出る時だって、あるんだよお……。 -- デジたん狂気を語るの巻 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! 狂気とは不合理ではなく過剰に理屈に従う事なのだという名言を知らないのかよ。 何の事かと言いますとね、デジたんの学生時代は狂っていたな、というお話です。 ご存じの方も多いかと思いますが、デジたんはウマ娘ちゃんと一緒に走るためにトレセン学園に入りました。 そしてトレセン学園生徒として、大好きなウマ娘ちゃん達の足枷にならないためにトレーニングに励んできました。 強く美しいウマ娘ちゃんといつまでも走り続けるために勝利を求めました。 ウマ娘とは美しく強い生き物であり、それをウマ娘ちゃん全てを愛するデジたんが汚す訳にはいかないからです。 ……この時点で、ピンとくる人はいるかもしれません。 この考え方には、勝ちたいとか走りたいとか自分の走りを知らしめたいとか、そういう欲望が全然ないのです。 これがウマ娘としてかなり異質だと気付いたのは……いや、実は入学当初からだったかもしれません。 2 ウマ娘ちゃんは強く美しいものでなければならない。 その為の努力を怠ってはならない。 そう思って現役時代はトレーニングに励んできました。 このですね、「ねばならない」というのは狂気の入り口であると。トレーナーにぼそっと言われたことがあるんですね。 その時は努力する理由があるに越したことはないってんでそんなに追及されなかったし、デジたん自身もあまり疑問に思わないようにしてたんですけど。 でも、「ウマ娘ちゃんが強くて美しい」ってことと、「だからデジたんも強く美しい」ってことが結びついていたというかいなかったというか。 「ウマ娘ちゃん全体が強く美しくある」その事実を保つために自分も強く美しくなければいけないとは思っていました。 でも「だからデジたんも強くて美しいのだ」とは思わなかったのです。 うーん、この感じ伝わりますかね? ウマ娘ちゃん、という総体があったとして、デジたんはその一部だと思っていたのです。 ウマ娘ちゃんの集団が尊い生命体なのだからそれに属する自分という部品もまた尊くなければいけない。 その為に努力をしました。 一方でデジたんというウマ娘個人は別に尊くないとも思っていた。 3 ……話してみると本当に難しいなあ。 「自分」と「他人」ってどうしようもなく垣根があって。 例えばさ、「されて嫌なことはしないようにしましょう」って教訓がありますけど。 自分が嫌なことをされるのと他人が嫌な思いをするのって、全然全く別の事じゃないですか。 自分ってのはどうしようもなく自分だし、他人ではありえない。 ……これで伝わるかなあ? 兎に角当時のデジたんは自分の事を「強くて美しいウマ娘」だとは思っていなかったんです。 一方で、ウマ娘であるデジたんは「強くて気高い生き物であるよう努力し続けなければならない」とも思っていた。 ……うーん。うーん。……伝わらなかったらそれでいいです。その伝わらなさが「デジたんの狂気」だったのです。 4 他のウマ娘ちゃんは、勝つために走っていました。走りたいから、負けたくないから、もっと強くなりたいから、走り続けていました。 デジたんだけが、欲望じゃなく義務で走っていた。 勝たなければいけないから、走らなければウマ娘じゃないから、強くなければトレセン学園の格を下げちゃうから。 そういう理由で走っていたんです。 「ウマ娘と並んで走りたいって言ったじゃん」 言った!言ったね! 勿論それも一番大きな動機なんです。 でもなんていうんだろ。並んで走る権利を得るためには、強くなくちゃいけない、みたいな。 デビューして暫くはそうした欲望も狂った理屈もひっくるめて全部走る動機にしてたんですけど。 5 ある時ね、初めて一着をとって。やったこれで自分もヒト並みにウマ娘だっ!って思ったんです。ヒト並みのウマ娘って何だよって話ですけど。 でウイニングライブでセンターで踊ったんです。 練習勿論たくさんしましたっ!でもデジたんは、さっき言ったようなその……自分をウマ娘だとは思ってないようなウマ娘だったので。 一着でライブ踊ることなんて全然考えていなかったのです。 だからいざ舞台に出るととちったり間違えたりで。泣きそうだったんです。 こんなのはウマ娘じゃあないっ!て。 でも客席から「デジたーん!」て。「アグネスデジタルーっ!」って。声が、微かに聞こえたんですね。 見るとアタシのグッズ持ったお客様が居るんです。サイリウム振って名前を叫んでるんです。 泣いちゃいましたよね。 もうね、生まれてから今までの承認欲求が全部満たされた感じ。 ああ、そうだ。アタシはアグネスデジタルなんだ。アグネスデジタルとしてこの世に居ていいんだ、って ボッロボロに泣きながら踊りました。 6 涙と共に鱗が目からボロボロ落ちたんです。 これがウマ娘ちゃん達が戦ってた、勝ちたがってた理由なんだって。 おっともうお時間ですねっ! いい話だけで終わる訳にはいきません多少の笑いを取らなくてはデジたんチャンネルではない、 デジたんチャンネルは笑いを取らなければならない!それがこの配信が信奉する狂気であります!!! 「初めて知った」 そうなのです!デジたんチャンネルはそれなりに受け狙いでやっていたのです遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ! デジたん一世一代の……(ごそごそ)ひっ。ひっ…… ひくちっ!! ……。 (ブツッ)(この配信は終了いたしました) -- 一緒に眠って夢を見よう 1 倒すべき敵などいない。 完全な平和など訪れない。 絶対の正義など存在しない。 目指すべきゴールなどない。 目標を自分で決めて、正しいかどうか疑いながらおっかなびっくり進んでいくこと以外、許されていない。 見つめ合っているより同じ方向を向いている二人の方が強い絆で結ばれているという。 このデジたんの「トレーナーになりたい」という夢の為に夫は力を尽くしてくれている。 でも……デジたんの本当の夢は「ウマ娘ちゃんのハーレム」だ。 トレーナーになるのはその手段でしかない。 2 そりゃあ、ウマ娘ちゃん大好きアグネスデジタルにとってトレーナーになることはウマ娘ちゃんに囲まれて生きるという夢に近づくものではある。 あるけれど。 トレーナー業がそんな気楽なものでないことはとっくに知っている。 近づきはすれど、辿り着けない。トレーナーになっても夢は叶わないのだ。 口元に運んだ茶色い液体はもう大分薄まっていて、角が取れて小さくなった氷が浮かんでいた。 冷凍庫のケースから氷を掴んでグラスに放り込む。 自室のPCの前に戻り、グラスにウイスキーを追加する。 酒量が増えたのは、お酒が美味しいと思えるようになったのだけが理由じゃない。 3 目指す意味のない夢。そこに意味を見出そうとしている。 ウマ娘ちゃんを支えるのが嬉しいと、その努力や喜びや悲しみに寄り添えるのが嬉しいと、思い込もうとしている。 いや、確かにそれは愉悦なのだ。同志にしてみれば垂涎の夢には違いない。アタシにとってだって素晴らしい夢だ。 でも……。 無邪気にウマ娘ちゃんに囲まれて生きる事を夢見ていたあの頃の自分が、「アタシを忘れないで」と言っている。 剥き出しで下品で純粋なアタシの夢を忘れないでと。 幹を太くし枝葉を伸ばしても、根っこを失ったらそれは幻だろう。 どんなに美しく花開いても、歪んで育った結果でしかないだろう。 このままトレーナーになったところで、そこから先には「夢」は無い。 いや、夢はもう叶っていたんだ。 4 トレセン学園の生徒であったころ。それこそがウマ娘ちゃんに囲まれ共に生きた夢の世界だろう。 あの幸福はもう戻ってはこない。今のアタシは夢の残骸だ。 「アハハハハッ!」 求めていたのは青春だ。夢見ていたのは青春だ。アタシは「青春が欲しい」と夢見ながら青春に浸っていたんだ。 両手で顔を覆う。泣きたい訳じゃない。悲しい訳じゃない。何だかそうしたくなったから。 空しい、悲しい、そんな素振りをしたくなったから。 じゃあ、答えはもう出ている。 「トレーナーになる」。そうして外面を維持し、ウマ娘ちゃんを支える立場になる。 誰も不幸にならないじゃないか。この夢こそが誰もが幸せになる帰結じゃないか。 ここまで歩んできた道筋を、裏切らない……。 5 自室を駆け出す。 寝室の扉を酔っぱらい特有の無遠慮さで乱暴に開ける。 目をしばたたかせる夫の上にうつ伏せで乗る。 「……悪い夢でも見たか。」 そう、悪い「夢」を見ていた。 ああ、その声に胸がいっぱいになる、この現象も。思い込みじゃあないか。 付き合いたいといったのはこの男から。結婚したいと言ったのもこの男から。 恋していたわけじゃあない。愛するようになっただけだ。愛さなければいけないかもと思い込んでここまで来ただけだ。そうして自分の心を歪めて、本当に愛するようになっただけだ。 最初の気持ちなんて、何だっていうんだ。いつだってアタシたちは、今の幻を見ながら。望んで生み出しながら。生きているんじゃないか。 「えへへぇ。」 そう笑うアタシを、夫はただ黙って抱きしめた。 6 「酷い夢だったな。」 頭を撫でられる。ああ、酷い笑顔をしていたんだろう。 ボロボロと涙がこぼれた。この人はアタシの歪みを知らない。本当に夢見ていたことと、夢だと公言していたことのズレを知らない。 知らないままアタシをわかったつもりで慰めているんだ。それなのにこの胸はとても暖かくなるんだ。 そんなの、いけないことなのに。お互いに理解できていなくたって、愛が成り立ってしまうだなんて。 「お前は、よくぐちゃぐちゃになるからな。」 はっ目を見開く。彼の胸を押すようにして上体を起こして顔を見る。 「お前がおかしいのなんて、とっくに知ってるよ。」 困ったような笑顔。アタシはその胸に顔を押し付けて泣いた。明日からはちゃんとする、ちゃんとするから。 アタシが泣き疲れて眠るまで、夫は背中にぽん、ぽんと手を当ててくれていた。 -- ネタがないことをネタにするのって昭和のギャグマンガ感がある。 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! どうする?どうするって何だよ。というのがですね、直前まで会話デッキ組んでたんだけど。 「夫婦の話」「馴れ初めの話」「結婚に至るまで」「結婚記念日」 「配信ン周年」「ぱかチューブっ」「ぱかライブTV」 「ドトウのドトっとしたところ」「架空のドラマ」「ラジオドラマ」 「胃がめっちゃ痛いの」「のどが痛いの」「体調不良」 「ゲーム実況」「浴衣」「花火」「水着」 ってメモに書いてあってさ。 どれもダメじゃんってなったからぁー。とりあえずもうダメさ加減だけ開陳しようかと思いまして。 デッキ公開です。 2 まず結婚の話が多い! 最初の4つが全部夫婦の話。デジたんのファンに向けてデジたんの男の話をするのはどうなんだと。 なのでこれは伏せようと。 「配信ン周年」 これはまず時期を選ぶ奴じゃん。少なくとも今日じゃないのでボツ。 「ぱかチューブっ」「ぱかライブTV」 見ましたか~?の話をするにあたってみてない人は置いてけぼりになるな~って思いますし、 今日そもそも配信無かったから最新の話題にならないし、没。 「ドトウのドトっとしたところ」 もう完全にちょっと面白いことを言おうとしているだけっ!全く意味が分かりませんっ!! ブレインがストームされてます。 3 「架空のドラマ」「ラジオドラマ」 これはねえ、この配信で連続配信ドラマをやっていた、という体でオープニングトークを進めるとかそういう発想でした。 でも超難しい。 Cafe de 鬼(顔と科学)のイントロとか「近未来犯罪都市デトロイト。警察の業務を請け負う民間企業オムニ社は殉職した警察官マーフィーをサイボーグ化し(※落語『饅頭怖い』のあらすじ)」とかあのレベルにならないと面白くありませんっ! 考えつかなかったのでボツ。 芸人かぶれで滑るの一番痛いからね。 「胃がめっちゃ痛いの」「のどが痛いの」「体調不良」 胃は痛くないし喉も痛くないしデジたんめっちゃ調子いいのでボツ。 4 「ゲーム実況」「浴衣」「花火」「水着」 ゲーム実況は実は割といいかなっと思ってるんですけど、今のところ何やるかまだ決まってないので今日は無理。 浴衣、花火、水着。 あー、水着は着たけど浴衣は着てないし花火は今年やってないなあ。 そんな訳でっ! デッキ組んだけどどのカードにも効果が書いてないって状態で大変惨めだったのでせめてお焚き上げで興を添えようかとっ。思いましたっ! 成仏しろよ~!! 「浴衣」はもうちょっと話ができるかなあ。 今年着てないんですよ。というか着る機会がなかった。夏祭りとか行ってないんです。 ちょっと仕事と嚙み合わなくて。 デジたんの浴衣はねぇ。ピンク。どピンクです。買ったのは去年なんだけど。 スタイリストの人と相談して。「デジタルさんは小さくて子供っぽいからブリッブリの子供趣味な浴衣が似合いますよっ!」って言われたの。 5 そこまで失礼な言い方じゃありませんでしたけど。実際ね、自分で言うのもなんだけどかなり似合いますよっ!どのSNSか忘れたけどネットにも写真上げたんじゃなかったっけ。 「見た見た」「去年ニュースになった奴?」「似合ってた。」 そうそう! アレをねー。今年着てないんだねぇ~。折角プロに見繕って貰ったのに勿体ない。 「公開録画で着たら?」 あ~。いつやるかまだ決まってないんですよ。だから早くても秋かな~。浴衣の季節じゃなくなっちゃうので。 「抜いた。」 ありがとー!そんな報告にスパチャを使うなっ! 「俺も抜いた。」 スパチャやめろありがとうございますっ! 6 こんなに盛り上がるなら初めから浴衣の話すればよかったじゃんっ! ですが時は戻らないしそろそろお別れのお時間です。 折角だから次回の配信で話してもらいたい話題を最後に聞きたいな。 「夫婦生活」「夫婦生活」「夫婦性活」「夫婦性活」「夫婦性活」「夫婦性活」「夫婦性活」「夫婦性活」「夫婦性活」 バカタレー!!BANなるわ! 「馴れ初めは聞きたい。」 ……何で? デジたんのファンは夫からアタシを奪いたいとか思ったりはしないの?夫が憎かったりしないの? 「ダンナの話してるデジたん生き生きしてる」「ラブラブエピソード聞かされると幸せになる」 そっか、君らは同志か。推しの幸せを自分の幸せにできるのか。いい人たちだね。恵まれてますアタシ。 ああっ!しんみりしちゃったので最後はペンネーム「紅大和」さんからのメールで〆ますっ! 「自作の歌詞を朗読してもらいたくてメールします。タイトルは『素敵よね』です。」 -- 氷の女王 1 「ウワーッ!かき氷機ダアアァーッッッツツツ!!!!」 ウオッカではなく我が妻アグネスデジタルの嘶きである。 予め理事長には話を通した上でレンタルした業務用かき氷機だ。 今年は雨が多かったため自治体も夏祭りを開催できなかった。せめて気分だけでもと頭を下げると「許可っ!」の声が快く頭上を飛んだ。 そんな訳でトレーナー率いるトレセン学園生徒複数名、及び学園スタッフであるデジタルに対しかき氷を振舞う事になったのである。 2 「いちごメロンレモンブルーハワイみぞれに宇治金時と練乳の用意がある。」 「ブドウは!?」「ピーチが食べたいですっ!!」「マンゴー!マンゴーはありますよねっ!?!?」「黒蜜とか……。」 「ねえっつってんだろっ!」 最近のウマ娘は舌が肥えてていけねえ。 「デジたんが買ってきますっ!!」「やめろっ!」 気遣いは嬉しいが興奮したデジタルは車道を突っ走りかねない。歩道なら尚まずい。 生徒に奉仕したい気持ちは汲むが我慢してくれ。 「でもでも~、望みに応えてあげないとウマ娘ちゃんのメンタルに支障が出る可能性がありますぅ~。」 「かき氷機用意しただけでもありがたいと思ってくれよ……。」 こっちはプロのテキヤではないのだ。 3 残念がっていたウマ娘たちも、ブロック氷を昔ながらのかき氷機でゴリゴリと削る様を見ると興味津々の表情に変わった。 俺もこの手のかき氷機は長らく見たことがない。ハンドルを回す手にも力が籠る。 「ほい。練乳のみ。」「ありがとうございますっ!!」 頭を深々と下げて生徒の生徒が発泡スチロールの器を受け取る。何だかここまで恭しくされると嬉しくなっちまうな。 「練乳のみとか絶対太るよ。」「ほっといてよその分走るし。」「甘ったるくない?」「甘いのが好きなのっ!」 黄色い声が交わされるのを聞くと、現役時代のデジタルを思い出して少し懐かしい気持ちになる。 あの時も複数人でトレーニングした時はこんな風に仲良く口喧嘩するひと時があったっけ。 「全部乗せで。」 その声に目を剝くと、声の主はアグネスデジタルであった。 4 「……ほい、全部乗せ。」 「ありがとっ!……まずっ……。」 いちごメロンレモンブルーハワイみぞれに宇治金時と練乳を全部混ぜて美味しい訳がなかろう。 「ここでしか味わえなさそうだったし。」 まあテキヤなら嫌がるだろうねその注文。デジタルはガツガツとかき込んで瞬く間に黒歴史を消滅させた。 「わざわざありがとうございます。」 「いや、驚かせて楽しんでるだけですから。」 トレーニングを指揮している正トレーナーから頭を下げられ、俺も恐縮して応じる。 妻の様子見と称して予定に割り込んでいるのだから、いくら頭を下げても足りないほどだ。 5 正トレーナー自身はみぞれを選択していた。何となく人格が窺えるような、窺えないような。 「邪魔して悪かったな。」 そう生徒たちに告げつつ、デジタルにビオフェルミンの瓶を手渡す。 デジタルはうん、と頷いて真っ先に自分が3錠飲んだ。 お腹痛くなったらデジタルに薬を渡してあるから、と言い置いて、かき氷機を撤収する。 と、その手を生徒が止めた。 「それ、学園でレンタルしたんですよね?」 「そうだけど。」 「今日一日は自由に使っていいんですよね?」 「……明日の18時までだからな?返却手続きは理事長に聞け。」 6 生徒たちの快哉を背に、俺は学園を後にした。 翌日、近隣のドラッグストアから止瀉薬が消えたという話を聞き、俺は深く後悔した。 後日、理事長室で理事長と俺は頭を下げ合うのであった。 「……まさかこんなにウマ娘達が娯楽に飢えているとは。」 「悔恨っ!……同じ思いである。」 その後学食の夏季限定メニューとしてかき氷が追加された、という噂を聞いたが……。 確かめる気にはならなかった。 -- かくしごと 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! ヤバいっ!何がヤバいかというと締め切りがヤバい。 お世話しているウマ娘ちゃんについてレポート書いてトレーナーさんに渡さないといけないんですけど筆が載り過ぎて全然終わりません。 走りっぷりフォーム適性距離適性バ場毛並み肌艶体重プロポーション今後の育成方針案をまとめてお出しするんです。 ですがデジたんがウマ娘ちゃんについて語ると止まらないんですよっ! 何もかも語りつくして灰になるまで手を止める気にならないっ!! 前回提出した時は「論文じゃん」って言われました。 デジたん論文は詳しくないんですけど多分同じぐらいには頑張ったとは思います。 そして今回も同じぐらい頑張らないといけないんです。 2 「そういうのってトレーナーがやるもんじゃないの?」 勿論トレーナーさんのお仕事です。 だからこそトレーナー志望のデジたんが実際にやってみてコツを掴んでみたらとお勧めされまして。 やってみたらこれがまぁ~~~楽しいんですよっ! 育ち盛りのウマ娘ちゃん達の輝き、長所、お悩み、友情、愛憎、もっとこうしたら美しくなれるのにという妄想、妄想にリアリティを齎すための文献探し、文献から得た新たな知見とそこから湧き出す新たなアイディア……。 それらが全てデジたんの脳内から吐き出されるまで執筆は終わりません。 デジたんもしかしたら研究職の方が向いているのかもです。 締め切りがマジマジのヤッバヤバなんですけど、こうしてガス抜きをしないとデジたんがヤバヤバになるので許してください。 こうやって気分転換しているときに新たなアイディアが降ってきたりしますしねっ! 3 「レポートを出せと言われて論文渡されたトレーナーの気持ち考えろよ」 わかってますよっ!!デジたんが未熟なのは正にそこで、要点を短くまとめる、というのが本当にできなくて。 だってウマ娘ちゃんの顔も形も心も仕草も、どれも等しく尊く輝いているのですもの。 どれが大事だなんて言えませんっ!! 「あれもある、これもある、をズラズラと並べるだけでは資料と言えない」と散々注意されてはいるんですけど……。 「走りに関することだけまとめたら?」 うーん……。 言いたいことはわかります。わかるんですけど……。 走りというのは単に何メートルを何秒で走ったか、というだけではなく、ウマ娘ちゃんの体系、体質、フォームも関わってきます。 それだけじゃなく「どう走りたいと願っているのか」「誰を目指して走っているのか」などなどメンタルだって大事な側面。 ウマ娘ちゃんにとって走りとは人生の表現なのですっ! 4 ウマ娘ちゃんの人生を軽々しく扱うわけにはいきませんっ! 増してやその可能性を潰すようなことを書くなどデジたんにはとてもとてもっ!! デジたんだって芝もダートも走りましたし、あの名ステイヤーと名高いキタサンブラックさんだって2000mを走ったりしています。 「正しいウマ娘ちゃんの育て方」なんてありませんっ! 走ったその道を正しいと信じるしかないんですっ!! そんな訳でどうしても執筆には熱が籠っちゃって、いまテキストで200KBとかになってます助けてください。 このあとTeXにしないといけないんです死にます。 「TeXってマジ論文じゃん」 数式とか書くのはTeXが一番洗練されてますからね。 「数式書くの!?」 そんな大したもんじゃありませんが、成長曲線とか書きますし。 5 そんな訳で、テキストで書き上げた後まとめたデータをグラフにして、グラフと文章に矛盾があれば文章直して、とかあるのです。 グラフにしてみると自分の思ってたのと違うなってなること本当に多いので……。 伸び悩んでるなこの子、と思ったらデータ取るとめきめき成長してたり、その逆だったり。 デジたんは観察眼があるとよく言われるのですが、そんなことありません。思い込みとだいしゅきの気持ちでウマ娘ちゃんを見ているだけです。 ちゃんとデータを取るのが一番大事です。 そう!だいしゅきっ!!てだけでは全然ダメだな~って思い知っているところです今! 好きだと贔屓目でみちゃうというか認知バイアス?バイアスヴラド?ヴラドプラズマ?そういうのがありまして。 それがウマ娘ちゃんの真の姿を見る目を曇らせるのです。 トレーナーを目指す身として、そうした過ちは今のうちに自覚して、直しておきたいっ! とっても勉強になります。そしてとっても辛いです。 6 そんな訳で今日もお時間ですねぇ~。 「がんばれデジたん」 スパチャありがとうございますっ!頑張るよぉ~!!元気元気! 好きでやってることだしね!体力は消耗するけど、気力は充実しているんです。 好きでやってるからこそ妥協できないってのもあってそれで疲れ果てたりするのですけど……。 やっぱりウマ娘ちゃんを預かるトレーナーさんにはデジたんのウマ娘ちゃんへの思い全てを受け止めて欲しいという気持ちがありますのでっ!! 「デジたん絶対チームトレーナーとかできないよね」 あ~自覚あるわ~。絶対無理。ギリ2人までかな。3人以上は到底把握しきれません。3人ウマ娘ちゃんが居たら宇宙だもん。 3。不安定な数字。世界が安定を求める以上早くどれか一つを引かなければ……。 ……実はねえ、締め切りきついのもう一つありまして。薄い本が今マジでワシは今からようやくネーム作業やけどもってところでして。 ……。 即売会には笑って参加しような!!バイデジ~!!!! -- どちらが枕なのか? 1 「動画の配信に出て欲しい。」 「絶対イヤ。」 ピロートークでこれを聞かされる側の気持ちを少しは考えて欲しい。 我が妻アグネスデジタルは引退後もトレーナーを目指して勉強しつつトレセン学園スタッフとして生徒を支え、それだけに飽き足らず動画サイトにチャンネル?を拵えて配信を行っている。らしい。 ひとしきり濃厚な夫婦の時間を過ごした後で、熱を持った体を重ねながらこんなことを言われたら心までもシナシナになる。 「ちぇっ、折角枕営業したのに。」 「営業だってバラされたら尚イヤだわ。」 夫婦の間でだってロマンの不文律はあると思っていた。 2 「俺が出てどうするって言うんだ。」 「視聴者さんがさぁ、夫婦生活に興味あるっていうからぁ。」 「金輪際イヤだわ。」 何が悲しくてデジタルのファン相手に夫婦生活を暴露せねばならんのだ。 殺されてしまう。いや、刺されるだけならまだマシかもしれん。 「なんでぇ?ウマ娘の夫ならさあ、ファンサービスに協力してくれてもいいんじゃない?」 「裏方なら喜んでやるけど、出演は断る。」 「生配信じゃなくてもいいからぁ。収録ならうまく喋れてない所はカットできるし。」 「……そんなに需要あんの?」 「あるの。」 デジタルの薄青色の瞳が俺を見下ろす。 3 俺の上にうつ伏せになるデジタルとの肉の間が汗でぬめる。 「アイドルのプライベートはいつだって興味の的。」 「……わからないわけじゃない。」 「じゃあいいねっ!」 「よくねえっつってんだろっ!」 発育の悪い体をしていながら、時折見せる表情は蠱惑的だ。 だがこちらだって年単位でその誘惑と向き合ってきたのだから、簡単には吞まれてやらない。 「……どうしてもだめぇ?」「だめ。」 「なんでぇ?人に見られるの嫌い?」「そうじゃねえけど。」 ああ、これはまずい。俺の直感が警鐘を鳴らす。 4 デジタルに理屈を語らせると俺は不利になるのだ。経験が俺の脳裏にサイレンを鳴らし続けている。 「だよねぇ。オペラオーさんに勝った時も楽しそうにインタビュー受けてたしぃ。」 「それは関係ねえだろ。」 「まあ関係ないかぁ。でもカメラに映ったりするのは別に抵抗ないでしょ?」 「でもイヤだ。」 「何がイヤなの?ネットだから?」 「そうだな、知らねえ奴にコメントされるのは腹立つ。」 「ええ?でもみんなデジたんのファンだよぉ?よくぞ育ててくれたっ!って褒めてくれるんだよ?」 「見も知らない奴らに褒められたって嬉しくねえ。」 「トレーナーの頃だって取材されて褒められてたじゃん。知らない人に褒められるのイヤなの?本当に?」 「目の前に相手がいるのといないのとじゃ違う。」 「その記事何万人が読んでるんだよ?知らない人に褒められたりけなされたりしたんだよ?」 「でもイヤだ。」 「ねえぇ~。キミぃ、アタシよりずっと年上なんだからさぁ。そんな子供みたいな嫌がり方やめてよ嫌いになっちゃうよぉ。」 5 「嫌われても、俺は動画に出たくない。」 「出たくないじゃないんだよ。キミやアタシの歳じゃあさーあ?ファンが求めてるのに「嫌だから」じゃあ通らないよ。 デジたんを助けると思ってさあ。ねぇ、少しの時間でもいいからさあ、出てくれない?収録でもいいしさあ。」 デジタルの吐息と目線が、発情(フ)けたときのそれになりつつある。 「俺はもう一般人になったんだ。静かに過ごさせてくれよ。」 「デジたんだって一般人だよぉ?」 或いはそれも演技なのか。 「お前は六冠バのウマ娘だろ。」 「でも今は一般人だよ。六冠バのウマ娘を育てたキミと同じでさ。」 顔をぐっと近づけてくる。自分の美貌を自覚しているデジタルは、現役時代に比べてずっと強かだ。……単に惚れた弱みかもしれないが。 6 「兎に角、俺はもう表舞台に出ないって決めたんだ。」 「うっそだあ、本当はネットに抵抗があるだけでしょ?オ・ジ・サン♪」 その通りだ。妻がネット配信をしていることだって俺は本当は許したくない。でもその理由はとても曖昧なものだ。 言語化に苦しんだその一瞬の沈黙から、デジタルは俺の偏見を見抜いたらしい。彼女は妖艶な、勝ち誇った笑みを浮かべた。 「じゃあ収録だけしよ?収録だけっ!それで使うかどうかは後で決めていいからさ。」 「だから嫌だって」 妻の体がぐるりと回りこちらに尻を向ける。そして俺の俺自身が妻の口の中にしゃぶりこまれてしまった。 「ズルいぞてめえ!」「先払いでぇ~す♪」「このどスケベが!」 それはそっちもでしょ、と言いたげに下品な水音が大きくなる。本当にオタクって奴は理論と欲望の制御に関しては手に負えねえ生き物だ。 7 ……そんなデジタルに結婚を申し込んだのはどこの誰だというのだ。 初めから勝ち目のない抵抗であった。抵抗感があるということを示す為だけの抵抗。 はいはい、どこまでもお供しますともお姫様。 だからご尊顔をお見せください。 デジタルの体を抱えて力づくでこちらを向かせると、きょとんとした顔にキスの不意打ちを浴びせた。 -- The race must go on. 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! いやぁ~凄かったですねファル子様の生ライブ配信! 歌声もダンスもキレッキレで、最後までピカピカ笑顔で手を振ってくれるあのサービス精神と来たら! レースから離れたウマ娘ちゃんとは到底思えない輝きでしたっ!! もう思い出すだけで気が遠くなっちゃいそうなくらい眩い……。 一緒にトレセン学園に通っていた頃も凄いオーラを放っていましたが、比べ物にならないぐらい磨きがかかっていましたっ!! なれたんだね、究極の力を持つアイドルに。 あんなスゴいウマ娘ちゃんと同窓生だったと思うと何だかそれだけでデジたん誇らしくなってしまいます。 デジたんが凄い訳じゃないんですけどっ! 2 同窓生がヤバいとなるとやっぱりオペラオーさんは外せませんよねぇ~。 今もドラマに舞台に歌にダンスにと活躍中ですっ! 一か月ぐらい前ですけど舞台見に行きましたっ! 実は初めてですやっとチケット取れたのっ!! オペラオー様はファル子様とは別の方向でギラギラ輝いておりました。 競走バだったころは鷹揚な王子様と言った感じでしたが、舞台の上では一流の役者。 余裕も焦りも喜びも悲しみも全身で全力でっ!しかし精緻に繊細に表現するグレートアクターですっ! アタシもウマ娘なワケだから女優オペラオーの伝説は当然耳にはしています。 しかし見ると聞くとではねぇ…………。鬼気迫るっていうか……。 オペラオーさんも、あの方が自分の同窓生だったんだゾって胸を張りたいぐらいすんごいすんごいお方になっておりましたっ!! 3 ファル子さんの凄さもオペラオーさんの凄さもファンの方に言わせれば今更も今更だとは思いますがっ! でもでも目撃しちゃうと喋らずにはいられないっ! そのぐらいの強烈なインプットを刻み込むんですよあの方々っ!! アウトプットせずにはいられないぐらい湧き上がる情動!膨れ上がる情報量!! それはまるでmRNAワクチンのように、デジたん自身の中でぐつぐつと生成されてゆくのです。 語りたくてたまらない!これをため込んだままではいられない!!楽しすぎて嬉しすぎて凄すぎてストレスにすらなってしまうその圧力っ!! 本当ならファル子さんの踊りのキレやそこに込められた力強さ歌声の抑揚の細かな調整とタイミング、ファンサービスの心遣い。 そしてオペラオーさんの演技の迫真さ、表現力、ほんの少しの仕草にまで行き渡る役の憑依っぷり、その中に強烈に残るオペラオーさんらしさ。 語って語って語りつくしたいのですがっ!時間の限られた配信では到底不可能なので、お二方ともとてつもなく凄かった、凄くなっていたとだけ申し上げておきますっ! 4 ちょっと考えさせられちゃいますよね。 デジたんもウマ娘ですから、引退した今でも走りたい勝ちたいという気持ちはあります。 だからね「走ることから離れても滅茶苦茶凄い」ウマ娘ちゃんを見ちゃうと。 走ることに未練がある自分がなんだかちっちゃい気がしてさあ。 デジたんと言えば今は学園スタッフとして働いていますけれど、併せウマなんかもチャンスがあればやりますやりますぅ~っ!って手を挙げてますし。 新バちゃんのトレーニングの筈なのに、ブチ抜かして勝ちてぇ~~っ!!って気持ちはとってもあるんです。 一緒に走れるだけでも幸せな筈なのに、それとはまた別の自分が、負けたくないって思っちゃう。 ヲタクのアグネスデジタルが幸せを感じながら、競走バアグネスデジタルが走って勝ちたいって思っちゃうんです。 5 「本能だからな」 そうなんだけどね。だから走って勝ちたいって思う競走バアグネスデジタルの人格も間違ってるわけではないの。 でも競走バデジたんの人格は、もう出てこなくていいよって。 もう十分に戦ったじゃんって。 今こうして新しい才能を育てることが幸せじゃんって。 言い聞かせたい気持ちがある。 ファル子さんやオペラオーさんほどではなくても、ちゃんとセカンドライフを幸せに生きたいよって。 走る以外の事だって凄く凄く大事だし、そういう所でデジたんも立派なウマ娘になりたいなって。思っています。 「教える側なら走りたいデジたんの人格も大事じゃないの?」 そっかぁ、そうだねえ。ありがとう。 この競争心を教えるのが、やるべきことなのかなあ? 6 そもそもあれだよね、デジたんまだトレーナーにもなれてないんですよ。 一方でファル子さんやオペラオーさんはアイドル、タレントとしてキラキラしてる。 夢の途上のデジたんと夢の先にいるお二人とを比べるのは、健康的でもフェアでもないよねぇ~。 ああっ!しんみりしてしまったっ! 凄いお二方の話をすればデジたんもテンションが上がってアゲアゲ配信できると思ったのにっ!! これが加齢の力なのかっ!?寄る年波って奴なのかっ!?!? もうそろそろお別れのお時間です。 この後はfc2のチャンネルでマルゼンスキーさんとシーキングザパールさんのコラボ企画 『オ・ト・ナの♪ナウでヤングなハッカーインターナショナルのPICOPICOで本気勝負♥(罰ゲームあり)』配信があるそうですっ!楽しみですねっ! それではバイデジ~♪ -- 幸福と幸運と運命論について 1 「おあよぉ~。」 「おう。」 香ばしい匂いに導かれダイニングに入ると、夫はいつも通りフライパンを手にグリルに向かっていた。 今日のメニューはベーコンエッグとトーストにコーヒー。 現役時代の定番メニューの一つ。 朝はまず炭水化物と蛋白質が最優先で、お野菜は控えめ。 野菜がダメってワケじゃないのだけど、生野菜は水分で体が冷えがちだから朝食には向いていない。 ……と何年か前に夫に聞いた。 トーストにベーコンエッグを載せて豪快に齧ると、眠気に変わって油分がアタシを幸せにしてくれる。 あ、申し遅れました。アタシウマ娘のアグネスデジタルと申します。 2 トースト3枚に目玉焼き3つ、ベーコン3枚を平らげてミルクたっぷりのアイスコーヒーで洗い流す。 歯磨きして顔洗ってメイクして行ってきまーす! アタシの職場はトレセン学園こと日本ウマ娘トレーニングセンター学園。 教師でもトレーナーでもなく、競走バのコーチングスタッフとして働いている。 まあ、用務員さんみたいなもので。 でも学園側のご厚意は文字通り厚く、ウマ娘ちゃんを育てるためのお仕事を色々と振っていただいている。 「芝もダートも走れる六冠バのコーチングなんて願ってもない」と言ってもらえるのはとっても嬉しい。 けれどやっぱり、正式なトレーナー資格が欲しいところ。 善意で仕事を回してもらっているだけじゃあ、社会人としてはどうかと思うし。 3 トレーナーさん率いるウマ娘ちゃん達の走りを見て、時には併せウマの相手になり、彼女らの走りを分析する。 トレーナーさんに自分の所見をお伝えし、それに対してプロの目線で意見をもらう。 その後のトレーニングでも器具を出したり片づけたり、柔軟運動の相手になったり、資格が無いなりに出来ることを全部やる。 「デジタルさんに雑用をやらせるなんて」と言ってくれる後輩たちもいるけれど、雑用しか出来ない立場なのだからしょうがない。 大体自分はもうターフを降りた身なのだ。 それなのにウマ娘ちゃんの傍に居たくて無理に仕事をさせてもらっている。 若々しいウマ娘ちゃんの夢と希望と熱気を毎日存分に浴びている。 これがこのアグネスデジタルの幸せでなくて何であろう。 だからこそ、負い目無くこの幸せを味わうためにトレーナー資格が必要なのだ。 4 「邪魔するぜ。」 夫は頻繁にトレセン学園にやってきては差し入れをしてくれる。 最初は後輩トレーナーにマウンティングしたいのかしら?などと穿って見ていたけれど。 「いつもありがとうございます。」「こちらこそ毎度妻が世話になってます。」 敬語まで使う腰の低さにその疑いは晴れた。単に、アタシが心配なのだ。 「迷惑かけてないだろな?」「アタシを誰だと思ってるの?」 「ド変態ウマコン(※ウマ娘コンプレックス)でドヲタの引退ウマ娘。」「おまえーっ!」 軽口のやり取りでウマ娘ちゃん達に笑ってもらえると、心底からほっとする。 5 「では、お先に失礼しまーすっ!」 定時になるとスタッフルームにビッと敬礼、帰路に就く。公道のウマ娘専用レーンをひた走る……と言いたいところだが、この時間は混雑するので素直にバスに乗る。 ウマ娘の速力も渋滞には勝てない。 家路はいつもウキウキだ。 預かったトレーニングデータの解析がしたい。美味しいご飯が食べたい。疲れた体を休ませたい。 スマホで今から帰るとメッセージを送り、わかったと返されるいつものやり取り。 今日の夕飯は何?とは聞かなくなった。 家から漂う匂いで献立を想像するのが楽しいとわかったから。 「ただいまっ!」 「おう、お帰り。」 エプロンで手を拭きながら夫が出迎える。 6 今日のメニューは牛肉生姜焼きに千切りキャベツ、ナスとオクラのつゆ浸しに味噌汁。 主食は勿論白米ごはん。 実は夫は初めはあまり料理が得意なほうではなかった。 でもアタシの引退後、結婚を前提に付き合うようになってからは時間が出来たからなのかメキメキとその腕を上げ、 結果毎回の夕食がアタシの毎日の楽しみになるほどにまで成長した。現役時代からこうだったらよかったのに……。 「何だよ?」 「何でもない。」 『成長』が思い通りいかないってのは、アタシもまたこの人に味わわせている。 勝つときには強い勝ち方をするけれど、負ける時は訳が分からないほどの凡走をする。 それがこのアグネスデジタルちゃんの競走成績だ。 7 似た者同士なんだな、と思ってふふって笑うこともある。 小柄なアタシと比較的大柄な夫で何が似ているかと思うけれど。 凝り性でムラっ気があって意固地で理屈屋。 好きなものには嘘が吐けない。 理屈屋の癖に考えるより先に気持ちで動いてしまう。 そんなお互いが大好き。 でも、フクキタルちゃんには呆れられるかもだけど、これって運命とかじゃあ無いと思うんだ。 『アタシみたいなウマ娘』は『こいつみたいなトレーナー』にどこかで出会ってこうなっていた。 『こいつみたいなトレーナー』は『アタシみたいなウマ娘』にどこかで出会ってこうなっていた。 それって必然でしょ。 8 ……そんな二人の出会いこそ運命と言うんだって? アタシ達は、誰かに運ばれるほど価値がある生き物じゃあない。 運命なんて歴史上の出来事だけやってりゃいいんです。アタシ達のささやかな必然に干渉する意味も必要もないでしょう。 アタシ達は二人で一つ。見つめ合って、同じ景色を夢見て、笑って。それで人生万事OKの矮小な生き物だ。 用事があったら直接言ってくれよ、神様。 特に無ければ、アタシたちは自力で論理的(デジタル)に幸せ探し続けるからさ。 -- Il faut casser le noyau pour avoir l'amande. 1 「ねぇ~███████ちゃんさぁ~今時間あるぅ~?」 「で、デジタル先輩……。何ですか……?」 「併せウマしようよぉ~。」 「わたしはこれから授業なんで……。放課後でもいいですか?」 「放課後、わかったぁ~。前にやったあのコースで待ってるねぇ~。」 「……はい……。」 怖かった。頬がこけて虚ろな目をしたデジタル先輩はまるで幽鬼のようだった。 放課後、約束のスタート地点に行くと、デジタル先輩は既にスタートラインについて柔軟をしていた。 「お待たせしました。」 「今来たところだからぁ~♪」 2 汗ばんだTシャツが嘘だと告げている。透けて見えるのはスポブラと、筋肉の隆起。 窶れて見えた顔は絞り込んだ結果だったと理解した。それ以外の全ても理解した。 リベンジだ。デジタル先輩はわたしにリベンジをしたいのだ。 2000mターフにはわたしとデジタル先輩以外誰もいない。スタートを告げる者も。 「……合図は。」 「キミが走り出したらアタシも出るよぉ。」 焦点の定まらない瞳。朗らかな笑みが悪魔のそれのようにしか見えない。ごくりと唾を呑む。 調子に乗って抜き去らなければよかったという後悔が薄く脳裏をよぎる。 3 「……じゃあ。」 位置につき、息を整える。隣では極限まで絞り込んだデジタル先輩が伸びをしている。 緩んだ笑顔と緩んだ態度なのに、一度負かせた相手とは思えない途轍も無いプレッシャーを放っている。 これが六冠バの本気なのか……。 息を大きく吸い、覚悟を決めて地面を蹴ると、ほぼ同時にデジタル先輩も走り出した。 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! ラジオドラマ『ホースとハント』第二弾、「オタクはそこにいる」第841話をお送りしましたっ! いやあ怖かったですねっ!新バに苦汁を飲まされたデジたんの逆襲は成るのか!? それとも妄執に囚われた老害に新世代が引導を渡すのか!? 誰が老害だ!!!!!?????? 4 「根に持ちすぎ」 あははははっ! そうですそうですあのねえ、前に多分お話したと思うんだけど、新バちゃん、つまりレースに一回も出てないウマ娘ちゃんに負けたんですよ結構前ですけどっ! 併せウマの訓練中だから本気ではないとは言えずばあぁーっと見惚れちゃうような差し足でぶち抜かれたんですよねえ。 そんでその子は今専属トレーナー付いたんです。だって引退したとは言えこのデジたんを抜き去る実力ですからね。 後生畏るべしとはよく言ったもので、記録や偉業は塗り替えられる定めにあるのだと思い知ったのです。 しかしデジたんも引退したとはいえウマ娘ですから、そう、このコメントの通り根に持ったのです。 走りでは到底勝てないので架空のラジオドラマで凄みを出してみましたどうですかっ!!!!! 5 「浅ましい」「走れ」「戦わなきゃ現実と」 はい。 「かっこよかった」「ラスボスデジたんwwww」「これデジたん酷い負け方する奴では?」 はい!! もうね、自分で脚本書いてて悪役やる自分に酔いすぎて困った困ったっ!! 凄いウマ娘ちゃんに踏み台にされたいって気持ちがあるなあぁって思いながらキーボード叩いてましたっ! 「デジたんの脚本かよwwww」「回りくどい死に隊じゃねえかwwww」 はい。 理解度の高いファンを持つと幸せですねっ! 6 おっともうお別れのお時間です。 次回も架空のラジオドラマをやるかどうかはわかりませんが、話のタネにするだけのつもりだったネタで時間切れまで持つとはね。 ちなみにネタの語源はタネなので『話のタネにするだけのつもりだったネタ』というのははある意味循環参照循環論法が発生しており死にます。 おっとスパチャありがとうございますっ! 「そんなに根に持っていたとは知りませんでしたすみません。」 ……えーとハンドルネームが扁桃愛子さん……ありがとうございます……。 ……バイデジっ!(ぶつっ) -- 自信は自身だけでは成しえない 1 デジタルと付き合うようになってからウマ娘のニュースやレース情報は見なくなった。 浮気するかもしれないからだ。 というのも、俺自身が担当していたウマ娘、アグネスデジタルに結婚するほど惚れ込んでしまったからだ。 俺はウマ娘の才能に惚れ込むと恋愛感情とごっちゃになっちまう輩……なのかもしれない。 妻自身には秘密にしているが、感づいてはいるのだろう。 それでもいいと思っていた。 恋人を持つ身として、そして妻を持つ身として、浮気のタネなどない方がいい。 自分の態度はデジタルに誠実さを示す行動なのだ。 そう、誇ってすらいた。 2 「ウマ娘ちゃんの話、しないよね。」 晩酌の席でデジタルにそう振られた。 「そうかな。」 「そうだよ。」 自分のグラスに瓶ビールを注ぎながらデジタルが言う。 「トレーナーの頃はどのレースで誰が何着だったとかデータ取ってたじゃん。」 「よく見てんな。」 「最近はレースの話すら聞かない。」 「そりゃあ、今はトレーナーじゃないもの。」 「そっか。」 3 「トレーナー志望のデジたんとしては、最近のトレンドは押さえててもらえると助かるんだけど。」 「そうだな。」 声には出さないが、デジタルが、む。と不満そうな顔をする。 「そりゃあ家事忙しいかもだけどさ。ニュース見る時間ぐらいあるじゃない? そういう時に少しでも情報拾っててくれると嬉しいなって。」 「そうだな。」 「そうだなって……。」 気のない返事と見抜かれている。 でもなあ。 4 デジタルには負けるが、俺だってウマ娘の事は大好きなのだ。トレーナー資格を取った挙句こうして担当バと結婚しちまうくらいには。 他のウマ娘の競走成績や走る姿を見れば楽しんで悔しがって興奮して……惚れ込んでしまうに違いない。 俺はデジタルと違って『萌え』を理解しない。俺の『好き』は『恋愛』や『性欲』と密接にかかわっていて切り離せない。 不満そうなデジタルのグラスにお代わりを注いでやる。 が、当然その程度で表情は和らがない。 「……気を遣ってる?」 「何?」 「アタシに。」 ああ、俺はもう此奴の尻に敷かれるしかないんだろうな、と確信した。 「……うん。」 5 「まぁー、気づいてましたけどねぇーっ!」 デジタルはフライドポテトを3つ一度に摘まむとたっぷりとケチャップをつけてモリモリと食べる。 「そうか。」 「別にウマ娘ちゃんのレース成績ぐらいチェックしてたって嫉妬したりしないよぉ。ちゃんと言わなかったアタシも悪いけどさぁ。」 「すまん。」 「寧ろ一緒にウマ娘ちゃん達の話をしたいのにって、思ってましたっ!」 「そうだな。」 「何だいそのやる気のない返事は。」 「……。」 「何か後ろめたい事でもある?」 「……。」 「おいおい、この質問に沈黙で返すのはまずいですよっ!?わかってる!?!?」 6 「……浮気してる?……とか?」 心配そうな顔でデジタルが俺の顔を覗き込み。外れだが外れじゃない。 「……違う。」 「即答しなさいよそこはぁっ!!」 「すまん。」 「すまんじゃないんですよぉっ!!!」 デジタルが泣きそうな顔で立ち上がった。 「何を隠してるんですかっ!デジたんとウマ娘ちゃんの話をしたくない理由ってなんですかっ! 浮気本当にしてないんですかっ!?してるなら今のうちに言った方がいいですよ今なら許してあげ……あげませんけどっ!! 言い訳の余地は与えてあげますっ!!!!」 7 「……そうだな。悪かった。」 俺は観念して、「俺はウマ娘の素晴らしい姿を見たら浮気するかもしれない」という心配を白状した。 「……なんだよぉ~~。」 全てを伝えきると、デジタルは脱力したようにその場にぺたんと座り込んだ。 「気遣いは感謝するけどっ!するけどさぁ~……。それ以外がダメすぎるっ!」 「すまん。」 「大体『浮気しちゃうかもしれない』って何ですか!デジたんに注ぐ愛はその程度だったのかねトレーナー君!」 「そんなことはないよ。だからこそ同じぐらい好きになっちまうかもって」 「シャーラーップ!!!」 グラスの中身をデジタルは一気に干した。 8 「『ああ 男の人っていくつも愛を持っているのね』って格言をアタシも知ってますっ! でも「いくつも愛を持っちゃうかも」なんて心配するヤワな男と結婚したつもりはありませんっ!」 テーブルにどん、と足をかけて宣言する。 「浮気がしたくなったら事前に書面にして配布してくださいっ!それが裏切る前のお作法ですっ!!」 「そんな無茶な。」 「それにね、浮気の恐れがあるのはキミだけではありませんよ?」 ぞくりと背筋を冷たい物が走った。 その表情を見て、デジタルがにんまりと笑う。 「ああー……だからこその気遣いだったんでしょうけどさ? キミ自身がそうだからこそ『浮気の恐れがある』ってだけで心配になっちまったんでしょうけど?」 9 「俺はお前の浮気なんて疑ってない。」 「なのに自分の浮気は可能性があるってだけで怖がった。」 「ああそうだよ何が悪い。」 「相談しないのが悪い。あと『何が悪い』って言った時点で態度が悪い。」 こいつと口喧嘩になるともう俺には勝ち目はない。全ての非を認める以外に収め方がない。 「これからはちゃんと最新のウマ娘ちゃんのレースもチェックしてよ。暇な時でいいからさ。 それで、その……。デジたん以上に付き合いたいウマ娘ちゃんが出来たら、浮気する前に言って。」 「……お前もな。」 「勿論。」 勿論とは。 10 「お互い、より好きなパートナーと付き合う方がいいに決まってるじゃん?」 そう見下ろす彼女の笑顔は、『お互いにお互い以外いないだろ』と告げていた。割れ鍋に綴じ蓋、蓼食う虫も好き好きだと。 「そうだな。」 俺は苦笑いした。 アグネスデジタルなんて言うクセウマを選んで結婚しちまった俺なんだ。ロリコンなのかという声さえ押し切って。 全く何を心配してたんだか。 「悪かった、仲直りしよう。」 「そうだね、早速今夜シましょう。」 ……長い夜になりそうだ。 長くて、熱い夜に。 -- ベルセルク 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! 無事原稿も脱稿しましてっ!久々にサークル側で即売会に参加して来ましたっ! ブランクがあるということで部数はあまり用意しなかったのもありめでたく完売、ありがとうございましたっ! 買えなかった人はごめんなさいっ! 余った時間でサークルを回って挨拶したり本やグッズを買ったりイベントに参加したり。 充実した時間でしたっ!! お世話になった方々、誠にありがとうございますっ! とてもとても素晴らしい日でしたね、帰りの電車で鞄がぶち壊れたこと以外は。 2 グリフィイイイイイス!!!! あぎゃあと叫んで散らばった本を回収、両手で抱えて何とか保持、ほぼ直後に目的の駅に停車してしまったのでワタワタと降りまして。 手伝ってくださった方、ありがとうございます。ご迷惑をおかけして本当に申し訳ございません。 「紙袋やらかしたか」 それがねぇ……革のバッグだったんですよ。 持ち手を縫い付けているところが千切れて落ちたんです。 結構高かったのに……。 「マジで?」「不良品では?」「買いすぎ」 はい。 久々に持ち出した鞄だったので、タンスの中で傷んでいたのかもです。 3 バッグはまあ、壊れたモノはしょうがないんですが本はこのまま抱えて帰る訳にもいきませんし。 駅ナカのコンビニに頼んで飲み物を買いつつ特大レジ袋を4枚頂戴しました。勿論お金払いましたよ! 凄いインパクトだったでしょうね?両手で本抱えた女がペットボトルの水一つ買ってレジ袋4下さいっ!て叫ぶ有様は。 壊れた鞄も片手に提げていましたし何が起こったのかはわかってもらえたらしく快く応じてもらえました。 恥ずかしかったぁ~!! ……しかもねえ、落とした時にどうも本が全部回収できてなかったらしくて、うちに帰ると幾つか無くなってて……。 皆さんも気をつけましょうね。何をどう気を付けるかわかんねーけど。 「今度から布のバッグで」「キャリーケースにしよう」 そうですねぇ~……。 「アウトドアメーカーのバッグ滅茶苦茶頑丈だよ。」「メーカード忘れしたけど海外製の布リュック、学生時代から10年以上使ってついぞ穴一つ空いてない」 はぁ~!!そんなのがあるんですね。それにすればよかったなあ、今度からそう言うの調べて買います。 4 今は戦利品は一旦本棚に収めてですね。 こうして配信をしております。 「本紹介してくれないの?」 サークルさんに迷惑掛かっちゃうかもなので……。 許可出た奴は後でSNSとかで紹介しようかなと。まだ読めてませんし。 折角買わせていただいたのに無くしてしまった本については、サークルさんに本当に申し訳なく。 「それもしかしたら拾ってるかも。」 ……はい? 5 「京王線ですよね?」 ここから先は 慎重に 言葉を選べ いいですか、どの駅で何時ごろという事は書かないでください。 拾った本のお名前やサークル名もダメですよ。 「わかりました何も言いません。今は鉄道警察さんに預けてます。」 わぁーありがとうー!!明日連絡してみる!!! いやぁ捧げるグリフィスあれば転生するグリフィスありですねっ! 「どっちも同じ鷹では…?」 そうかもしれん。 6 おお、そんなこんなでお時間です。 いやぁ憂いが一つ取り除かれて晴れ晴れとした気分です。 ファンがいることに感謝。いや、いつも感謝してますけどっ! こんなに具体的にお世話になることってなかなかありませんよっ! 何とか恩返しができたらいいんですが……。 「じゃあ一割ください」 どうやって……? ……わかった!本の一割は物理的に無理ですから愛をあげましょう!! ん~~……ちゅっ♥ なんてでへへ。 ……ウワーッ!?スパチャ止まらねえ待て待てお前たちじゃないやめろやめないでありがとうございますそれではっ!!! [余談]話の中で出てきた「海外製の頑丈な布リュック」はAIGLEのものがモデルです 今はお役御免ですが信じられないぐらい長持ちしました グリフィス https://db.netkeiba.com/horse/2005102610/ -- 眩いものにひれ伏したい 1 正直な話、俺はデジタルの小柄な体が好きだし、 ウマ娘の話をすると調子に乗り過ぎて止まらなくなってしまう所も好きだし、 それを指摘すると真っ赤になって恥じ入るところも好きだし、 競バが強いところも勿論好きだし、 行き過ぎた謙虚が卑屈になってしまう所も好きだ。 ……正直に言ってしまおう。デジタルが「好き」という気持ちを発散するのを見るのが、とても好きなんだ。 2 俺はあまり人に好かれるような人生は送っていない。 にもかかわらず、誰にも嫌われたくないと思い続けていた。 嫌われないように努めることこそ好かれることだと勘違いしていたんだ。 ファンの多い人にこそアンチも多いという事実を知っていながら。 でもアイツはオタクだった。俺とは違う。 自分が『存在してはならない穢れ』であることを理解しつつ、『存在してはならない穢れ』であることを全うしようとしていた。 3 ウマ娘ヲタクとは、所謂『ナマモノ』のヲタクだ。 この世に存在することを知られてはいけない。ナマモノ側も認知してはならない。それは直接的に実社会に影響を与えるから。 だがアグネスデジタルはその難題を力技で解決する。 「ウマ娘が好きなウマ娘だっているのだ!」という抗い難い正論と、 「ウマ娘好きのウマ娘が競走バとして活躍しているぞ!」という事実で。 ウマ娘が強く美しいウマ娘に憧れ敬うのは当然のことだ。 ウマ娘に焦がれるウマ娘が競走バとして結果を残して何が悪い。 動機の不純さを非難する声など、それを上回る賞賛で覆してやる!! 4 『愛して何が悪い』と実力で捻じ伏せられる者は、ウマ娘にもヒトにも多くはない。 アグネスデジタルはそれが出来た。しかも自身すら半ば無自覚なままに。 デジタルは過剰なほどに他のウマ娘に惚れ込む。対面するたび赤面する程興奮し、しどろもどろになり昇天する。 だが対面していない所では文字通り血の滲むような鍛錬を繰り返している。 全ては、『ウマ娘』という種族そのものの瑕疵とならないように。 強迫観念で鍛え上げられたアグネスデジタルの脚が生半可な訳はない。 『強い』か『ウマ娘をやめる』かの二択の中で磨き上げられた足は、どこまでも鋭くなり続ける。 彼女はほとんど無意識で、自分の『好き』に命を賭け続けているのだ。 5 『嫌われたくない』『誰にでも好かれていたい』などとヌルく願っていた俺が彼女に惹かれたのは当然の成り行きだろう。 失敗しないことを信条にトレーナーをやっていた俺が、足裏から血をにじませて尚足りないと飢(かつ)え続けるデジタルの姿を見て嫉妬したのは言うまでもない。 コイツの本気に付き合えなければトレーナーじゃない。 アグネスデジタルこそ、競走バにもトレーナーにもなくてはならない『愛』の極北なのだ。 ウマ娘に憧れるが故に自信を高め、ウマ娘に満たないと思うが故に心身を削る。 努力する星の下に生まれたこの幸福で哀れなウマ娘を一刻も早く抱きしめてやらねばならない。 お前は一人じゃない。こんな老いぼれで良ければ傍に居させてくれと。半身を見つけた気にさえなったのだ。 6 デジタルの引退と同時に学園を辞め、結婚を前提にデジタルに交際を申しこんだ。 俺の愛バはアグネスデジタルだけだからな。 と告げると バーカ。 と言ってはにかんで笑った。 いつまでも生きていける気がした。 これは多分、理解してもらえないことだとは思う。 だが……そうだな。 イカロスでなくとも太陽に焦がれ続けることだけはできるのだ、と。 言うに、留めておこうか。 -- 晴れ空に虫鳴き競い秋湿り 1 「風が気持ちいいねぇ~。」 吹き抜ける風にアグネスデジタルが両腕を広げる。 公園に続くアスファルトの道を荷物片手に夫と共に歩いている。 「少し前までは大分蒸してたからな。」 「ねぇ~♪」 ウキウキとしたステップでデジタルが進む。 小柄な彼女のペタペタ地面を踏む大股歩きに、大柄な夫の落ち着いた足取りが並ぶ。 緩急のある風が絶えず毛をそよがせ、涼気と解放感を齎す。 「いい季節ですっ!」 2 公園に入るとデジタルは唐突に駆け出した。 「おいおい。」 あっという間に木々の向こうへと消えてしまった。 ヒトの脚で追いつけるはずもなく、夫は呆れながら歩いてその後を追う。 「わっはっは~!きんもちいぃ~♪」 木々の向こうに見つけた彼女は、芝生の上でゴロゴロと転がっていた。 「汚れるぞ。」 「平気でーす♪」 構わずゴロゴロ。夫はまた呆れた。 3 「ふぅ~っ。堪能しましたっ♪」「はいはい。」 鞄からタオルを取り出し、芝の切れ端だらけの背中を拭いてやる。 「ありがとっ!トイレ行きましょうっ!」 言うが早いか立ち上がり、広場の端に見えるトイレに向かって駆けていく。 「子供かよ……。」 引退してもう数年経つというのに、調子に乗ると手が付けられない所は変わらない。 と、トイレに駆け込んだデジタルはすぐに出てきて夫の元に戻って来た。 「使用中でした。」 「じゃあしょうがねえな。」 4 芝の上にシートを敷き、その上に座る。鞄からはサンドイッチと水筒。 「いただきまーす!」 「いただきます。」 野菜と卵とマヨネーズの、手間のかからないサンドイッチ。 今日の散歩は急に強請られたから、揚げ物などは用意できなかった。 それにこれからの運動を考えると、カツサンドは夫の胃には少々厳しい。 歯ごたえの無い素材ばかりで出来たサンドイッチをペロリと平らげると、デジタルは夫の口元をニコニコしながら見つめている。 早く食べて。食べ終わっちゃって。 わかったわかった。 口の中に無理くり押し込んだのを見届けて、デジタルは夫の手を取ってぐいぐいと引っ張った。 5 「よぉーし、やっるぞぉーーー!!」 デジタルが高々と腕を掲げて叫ぶと、茂みでがさがさと音がした。 「ネコかなっ!?」 「大きそうだな。」 二人が目線を向けた時には既に音は止んでいた。どこかへ行ったか、その場に留まったか。 夫が鞄から道具を取り出す。デジタルも一緒に手を突っ込んでボトルを取り出し、中身を手に取って塗りつけた。 「お肌は大切にしないとねっ!」 「芝生で転がってた奴が今更よく言うぜ。」 「それはそれ、これはこれです。」 6 ―― 一時間後、二人はシートの上で大の字になっていた。 汗ばんだ体を並べて息を弾ませている。 「いやぁ~~、一杯動いたから気持ちいい~!」 「そりゃよかった。」 「現役時代を思い出しました!」 「そうか?」 「あの頃は皆してこうやって親睦を深めてたもんです。」 「今は?」 「今もあんまり……変わんないかな?」 気づけば辺りの草むらからは鳴き声が騒がしい。トレセン学園の息がかかっていればこそ、欲求体力有り余るウマ娘達もここで羽を伸ばせるのだ。 7 「じゃあ、帰るか。」 「はいっ!」 タオルで汗を拭うと鞄から取り出した衣服を着て、二人は公園を後にした。 「夜食食うだろ?」 「食べる食べるっ!」 「ご飯は冷凍がまだあるから、野菜炒め丼とかならすぐできるぞ。」 「それそれっ!それがいいのぉ♪」 「何で色っぽく言うんだ。」 二人の帰る道を啼声がいつまでも時雨れて、乾いた空気を濡らしていた。 -- 行き止まり 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! すみません今日もノープランなんですよ許してくださいっ! 今日はねえ、ちょっと幸せなことがあって気持ちが高ぶってて皆にも共有したいなって! そう思って配信を始めましたっ! 「世話してたウマ娘がG1取ったとか?」「そういや今日あのレースだっけ」 あ、ごめんその話題じゃないのそれも凄く大事なんだけど。 その子はアタシ関わってないんだよねえ顔は見たことあるし凄く凄くかっこよくて大好きだけど 凄いよねデビューして最短じゃないっけG1取るの滅茶苦茶かっこいいよね デジたん後世畏るべしってコトワザが大好きでさ、 後から生まれて来るウマ娘ちゃんはどんな才能を持ってるかわかったもんじゃないって言う。 2 あれ?何の話だったっけ?G1取った子の話だったよね? でも名前出せないから難しいなどこまで言っていいんだっけ? 「共有したいことあったんでしょ」「何で自分で言いだしたこと忘れるんだ……。」 ああ、そうだったそうでした。 今日セックスした。 ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ 3 おかしくない!?!? 正式な婚姻関係を持つこのアグネスデジタルがっ!!! 夫と性交渉をしたと言っただけで ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ ……。どうかと思うよそういうの。 そうやって繁殖の実情から遠ざけると――ああ『繁殖』はいいのね?――アタシ達はマジで何をどうしたらいいのかわからないんだから。 まあ今ある規則を今ひっくり返すことができないのは承知していますので。 今日は夫と愛し合いました。これぐらいならいいでしょ? 内容は明かしてないしキスかもしれないしペッティングかもしれないしおちんちんを ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ 4 めんどくさいっ!!!!!!!!1 いいじゃないですか愛し方愛され方を素直に話すぐらい!?!?!?!? お話が全然前に進まないんですけどおおおおおお!?!?!?!?!?!? その間にチャット欄が凄いことになってるし!!!! 「夫婦生活はちょっと」「あけっぴろげすぎる」「デジたんファンには劇薬すぎる」 ん~~~~まあそうねぇ~~~……。 ファンを持つウマ娘としては軽率だったかもしれませんごめんなさい。 でも前に話をしたときは夫との性生活聞きたいってめっちゃ回答があったんですよ。 勿論赤裸々に話すつもりはありませんが、あったかなかったかぐらいはいいだろ、ぐらいの気持ちでしたっ!! 5 「いいよ」「やめてほしい」「聞きたい」「そんなこと聞くためにチャンネル登録してるわけじゃないんだけど……」 おお賛否両論。 これについてはデジたんがShallow Grave(浅墓)でした。 じゃあこうしましょう。デジたんのチャンネルで今後色っぽい事の話題がアリかナシか、アンケートを取ります! いつもの投稿フォームからご意見をお願いします。 それを受けて、デジたんの鍵穴に夫の鍵が入った話をするかどうか ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ 6 むむむ。なるほど、婉曲な表現かどうかは問題ではなく、このデジたんに性の匂いがするかどうかが問題なのですね?? デジたん学びを得ましたっ!! それを踏まえてメールの募集をいたしますので、ご意見ある方はお願いいたしますっ!! 文章書くの難しいなって思う方は「イイ」「イヤ」って一言書くだけでもいいですよ。 文章書き上げるのってハードル高いですもんねデジたんよく知ってますっ! こういうのは多数決であって、文才の有る無しで決めちゃだめですもんねっ!! では再来週ぐらいに締め切りしますんでよろしくお願いしますっ! あれ?今日何の話したかったんだっけ?あ~そうそう、久々にめっちゃ旦那と (この配信は終了しました) -- 引退バのナレッジ 1 「デジタルちゃん?旦那さんに電話かけてもいい?」 学園内の廊下で女性トレーナーに声を掛けられたアグネスデジタルは怪訝な顔をする。 「いいですけど……何で?」 「デジタルちゃん、女性からの電話って気にするかも、と思って。」 「……ああ~っ!」 言われてやっと懸念に気づく。 トレーナー同士なのだから別に自分は関係ないだろう、と考えていた己を恥じる。 婚姻関係とは単なる家族同士の繋がりではなく、それを公にすることでもあるのだ。 2 「いいですよいいですよっ! 浮気したかったら事前に書面にしろって言ってありますしっ! それにアイツはアタシと結婚しちゃうようなウマ娘好きですからっ!」 「ありがとう。」 カラカラと笑うデジタルにホッと息をついて、トレーナーはスマホを取り出した。 「……もしもし?はい、相談したいことがありまして……。 実は担当が体調を崩しまして」 そこまで言った時点でデジタルが豹変した。 3 「どういう事ですか!?ウマ娘ちゃんに何かあったんですか!?!? 怪我!?!?!?病気!?!?!? 復帰可能な奴なんですか!?!?!?!?」 「待って待ってデジタルちゃん!大丈夫、大丈夫だからっ!!」 漏れ聞いた声から状況を察したのか、デジタルの夫は『一旦切るから、後でまたかけてくれ』と言ってくれた。 「本当に大丈夫なんですか!?!?」 涙ぐみながらトレーナーの胸倉を掴むデジタル。 その頭をトレーナーはそっと撫でながら説明する。 「大丈夫。足に炎症が出来たんだけど、回復の目途は立ってるから。」 4 「っっはぁ~~~~~……。」 デジタルが脱力してその場に膝をついた。 「よかった。それなら引退とかはなさそうですねっ!」 「ごめんね、初めから何を相談するか言っておけばよかったよね。」 「いえいえいえっ!こちらこそ慌ててしまってごめんなさいっ!!出過ぎた真似をしましたっ!!!」 深々と腰を曲げて頭を下げるデジタル。 「心配してくれてありがとう。」 トレーナーは微笑んでデジタルの頭を撫でた。 5 「折角だから、デジタルちゃんに相談しようかな。」 「……はい?」 「回復するとわかっていても、当の本人はどうしても不安らしくて。 治療している間は当然トレーニングも出来ないし、その間に追い抜かされるんじゃないかって心配なのね。 回復に専念することが一番の早道とわかっていても、気持ちは焦っちゃうみたいで……。」 「なるほど……。」 デジタルも脚の炎症に悩まされた経験がある。 トレーニングする訳にはいかないが、トレーニングしなければ競走バとしてやっていけなくなるかもしれない。 そのジレンマはよくわかる。 「……傍にいてあげるのがいいのかなって。」 「傍に?」 6 「受け売りなんですけどねっ?」 照れた笑いを見せながら話す。 「怪我とか病気とかは肉体の非常事態である。そして心も肉体の一部であるから、非常事態向けの対応が必要なんだ、って」 「それって、旦那さんの?」 「そです。」 にっこり笑って頷く。 「それに気づくまではウマ娘ちゃんと喧嘩したり怒鳴りつけたり酷い事をしたって言ってましたっ!」 「そんなことを……。」 「完全に安心させてやることは無理だけど、何かあったら自分が必ずフォローするぞって見せてやれば、少しは役に立てる、って。」 7 『少しは役に立てる』 その心許ない表現に、様々な思いがよぎる。 トレーナーはウマ娘をコントロールするものだと思っていた。けれどこの言い方からはそう言ったニュアンスは感じられない。 ウマ娘は自ら成長し、挫折し、回復するのであって、トレーナーはそれをコントロールなどできない。 ただ傍にいて、ウマ娘達の人生が少しでもマシになるようサポートすることしかできないのだ。 そんな思いが透けて見えた。 「ありがとう。そうしてみる。」 「はいっ!早く良くなるといいですねっ!!」 「うん。」 先達はあらまほしきことなり。 彼女は担当ウマ娘ののいる寮の部屋へと速足で歩いて行った。 8 「……尊い。」 デジタルはと言えば、その後姿をスマホで撮りながら悦に入っていたのであった。 -- 恋愛経験とは 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! 今日はリスナーさんからいただいたメールから始めさせていただきますっ! ペンネーム「飛鳥の浪漫」さんから。 「デジたんの旦那さんはバツイチと聞きましたが前の奥さんがどんな方だったか教えてもらえますか?」 人のダンナに勝手に離婚歴を付けないでください! 初婚!初婚です!!確かに年の差ありますけども! でもね、このメール読んで少し思い出したことがあるのでその話をします。 2 学園にいた頃、『自分の担当トレーナーに恋愛歴はあるのか』という話題が持ち上がったことがあります。 当時の自分はトレーナーの恋愛経験に興味ありませんでしたし、 デジたん自身もヲタクとして一生独身で過ごすのかな、ぐらいには自分の色事に疎かったので、話題には入れなかったんですけど。 でもそうやってやきもきしているウマ娘ちゃん達のお姿はとてもいいものでしたぁ~♪ 自分は気にしないってツンとしている子もいれば、どうしようもないことだけど許せないっ!はっきり言っちゃう子もいたり。 中にはそれがきっかけでトレーナーといい仲になっちゃうウマ娘ちゃんもいたりしてねっ! デジたんとてもとても捗ったものですっ! ……で。 メールを読んでそうしたことを思い出して。 じゃあ、ウチの夫はどうなのかしら、と。 3 ねえねえ恋人とかいたことあんの?って訊いたら、 そりゃ俺はモテなかったけどそんな言い方はねえだろって叱られました。 はい。親しさに甘え過ぎました。反省。 改めて、デジたんと付き合う前に誰かと交際経験はあったのか?と聞き直しました。 すると、学生時代に一度、と。長続きはしなかったそうですけど。 トレーナー時代は?と聞くと、ない、と。 でも担当バとイイ仲になるトレーナーって結構いるよね?というと、 俺はウマ娘に嫌われるタイプのトレーナーだったからな、って。 へぇーって。聞いてみるもんです。 4 トレーナー同士で付き合ったりもしなかったの?って訊いたらそんな暇なかったって。 デジたんと付き合い始めたのもデジたんが引退して本人もトレーナーやめてからでしたし、そこらへんあんまり器用に出来ない人なのかしら、とは思いました。 しかしね?デジたんちょっと思い出したことがあるんですよ。 休み明けのトレーニングで顔合わせると、シャンプーの匂いとか香水の匂いがほのかにしたんですよね。 当時はまあそんなもんかくらいに思ってましたが、あれってもしかして……と。 本人はそうだったっけ?ってとぼけるんですけど。 今結婚してるんだし当時誰かと付き合ってたって気にしないよ?って追求しても、いや、ほんとに誰とも付き合ってない、の一点張り。 デリケートなことですしこれ以上突っ込むのはやめようかな、って考えたところで、ふっとアイディアが頭をよぎったのです。 女性と過ごした形跡はあるのに付き合ってはいない……。 「……風俗?」 言い当てちゃったんですねー。 5 デジたん言っちゃうんですよ、思いついたことを。で夫も嘘が吐けないからそのままダンマリですよ。 アッハハハハハ!そりゃ担当に嫌われるわ! ちなみにですね、デジたん以前に夫が担当していた先輩ウマ娘さんたちに聞いてみたところ、 かなり厳しく指導はされたしゾクフー行ってるのも気づいてたけど特に嫌いではなかった、とのこと。一応夫の名誉のためにねっ! 「ゾクフー行ってるのバラされた後に残る名誉とは」 うん。 「うんじゃないが。」「今も風俗通いしてんの?」 してたら流石のデジたんもここで話題にはしませんねっ! 今はもうそんな体力無いんですって。 6 体力あったら行ってるのかよ!つったら お前が全部持ってくんだよ……ですって。 これからも浮気出来ないようにしっかり体力を奪っていくつもりですっ! 「ノロけやがったこいつ!」「お盛んなことで」「腰に気を付けてね」 はいっ!ありがとうございますっ!! ではそろそろお時間ですっ! 樫本センセーのチャンネルではそろそろリングフィットアドベンチャー実況第二回が始まるそうですよっ!! またへとへとに疲れ果てて汗まみれで荒い息を吐く姿を見せて欲しいですねっ!! それではバイデジ~♪ -- 神と贖罪 1 「おい風俗通い。」 「……悪かったって。」 胡坐をかいた俺の脚を座椅子代わりに座り、首を上に曲げて俺の顔を覗き込むデジタル。 当人の現役時代に俺が風俗の世話になっていたことを知られてからというもの、我が妻アグネスデジタルに対して肩身の狭い元トレーナーの俺である。 「聞きたいことがあるんだけど、いい?」 「……何なりと。」 休日の昼下がり、学園スタッフであるデジタルが撮影した生徒たちの練習風景のビデオを見ていた。 デジタルにとって至福の筈のこんな時にわざわざ声をかけて来るのだから、呼び方程には縁起の悪い話題ではないはず、と思う。 いや、祈る。 2 「デジたんの前にも担当してたウマ娘ちゃんいたじゃん?」 「ああ。」 「その子らには厳しく当たってたって本当?」 想定していたのとは別の急所を貫かれた。 「……。」 「どうなの?」 「厳しくしてたな。」 「どうして?」 どうしてと来たか。 3 「……。」 「……話しにくい?」 「いや、話しておかなくちゃな。」 デジタルの体を抱え上げて横のソファに据える。俺自身も背もたれ代わりにしていたソファに座る。 雰囲気を感じ取ったのかデジタルも居住まいを正しリモコンでビデオを止めてこちらを見た。 「お前以前のウマ娘には確かに厳しくしていた。」 「どうして?」 「どうして、というよりは、トレーナーはそういうもんだと思ってたんだよ。 ウマ娘の適性を見出して、そこを鍛えて。 勝てるレースに送り出す。 それが仕事だと思っていた。」 「うん。」 4 「想定したタイムが出なければ怒鳴りもしたし、追い込むトレーニングもした。 勿論体を壊さない程度にな。 俺はお前のポテンシャルを信じてるんだからお前もポテンシャルを発揮してくれよと。 幸い、俺の担当達はそれを理解してくれたのか、強く反発はされなかった。」 「うん。」 「実際にそれである程度実績も出てたしな。間違ってないと思っていたんだ。 でもお前に出会って変わったんだ。」 デジタルが目を丸くした。 「……アタシ?」 「そう、お前。」 デジタルの青い瞳を見つめ返す。 5 「お前のモチベーションはほかのウマ娘とは全然違った。 ウマ娘が好きだから走る。そんな奴は俺は今まで出会った事がない。 一目見て、こいつは絶対に強くなるぞと思った。」 初めて見たときの彼女は、おどおどとウマ娘に話しかけては赤面し興奮し、昇天していた。 その足には包帯が巻かれ、筋肉痛を抑えるための湿布が何枚も貼られていた。 ウマ娘を神格化しながら、そのウマ娘と並ぶために故障も顧みない過酷な鍛錬を己に課す。 走り競う事を本能とするはずのウマ娘としては異色の精神構造を持ちつつも、走り競う本能に忠実でもある、異形の存在。 ジレンマを抱える心には結末が二つある。諦めるか、どこまでも進み続けるか。 まるで並行する二本の直線のようだ。 決して交わらないと結論付けるか、無限の彼方では交わる奇跡があると信じるか。 6 「正直、俺が見たときからお前はほぼ完成されてた。 後は適切なトレーニングさえ……いや、適切な休みさえ与えれば強くなれると。」 「そうだったんだ……。」 はぁ~、とデジタルがため息を吐いた。 「でもぉ、」 そして会話を再開する。 「それにしたってデジたんにはかなり甘かった気がする。」 「ああ、それはな。」 ここから話すことは俺の恥だ。だが、相手は妻なのだからこのぐらいは背負ってもらってもいいだろう。 7 「トレーナーはウマ娘のモチベーションをコントロールできると思い込んでいたからだ。」 「え、どういうこと?」 「つまりだな、お前の前に担当したウマ娘たちは、確かにポテンシャルがあったがそれを生かせなかった。 俺をそれはメンタルの問題だと思って、 そしてメンタルの問題なら俺が道筋を示せば迷わず進めるようになるだろう、って思ってたんだ。」 思っていた。愚かにも。 「だがお前を見てわかったんだよ。メンタルもまたポテンシャルの一部だってことを。 ポテンシャルはトレーナーにはコントロールできない。 それを俺はコントロールしようとして、怒鳴った。ああしろこうしろと言った。メンタルトレーニングを押し付けた。 だがお前は、俺が今まで全く知らなかったモチベーションを持っていた。これは俺が口でどうこう言って何とかなるもんじゃない。 それで気づいたんだ。今まで俺が担当したウマ娘にも同じように、他人に制御されるべきじゃない心理領域があるんだと。」 8 「正直謝りたいが、謝罪してどうこうなるもんじゃない。彼女らの競走バとしての未来を潰したのは俺だし……おい?」 俺が苦しい告白をしている最中にデジタルはスマホを弄っている。 「聞いてんのか?」 「勿論。だから電話かけました。」 「電話?」 「前ご担当されていたウマ娘ちゃんにっ!」 「お前っ!?」 「もしもし?アグネスデジタルですっ!」 そういってデジタルは俺に電話を渡した。 「さあ。」 9 「……もしもし。久しぶり。」 『あ、お久しぶりですトレーナー!』 快活な、聞き覚えのある懐かしい声。 俺の心を抉る、残酷なほどに快活な声。俺が彼女の将来を潰した。俺の罪、俺の過去。取り返しのつかない俺の…… いや違う。そう思う事こそ烏滸がましい。 ウマ娘は自分で育つのだ。自分で育ち、自分で挫折し、自分で立ち直る。俺達トレーナーはそのそばで、ほんの少し手助けができるだけだ。 代わりに走ることも代わりに悩むことも、代わりに諦めることすらも出来ない俺たちができることは、本当に少しだけ。 「……久しぶりだな。」 それでも謝りたい気持ちがある。そんな俺についてきてくれたという感謝の気持ちがある。 伝えずにいられない。 10 ふと妻の顔を見る。 してやったり、存分に会話なさいと女王のような笑みを浮かべていた。 ……Yes Your Majesty. トレーナーという生き物はどこまで言っても、ウマ娘の奴隷だ。 望んで奴隷になった者として相応しい振る舞いをしなくては。 「今更で本当に悪い。謝りたいことがある。」 重い筈の罪人の心は、何故か雲一つなく晴れ晴れとしていた。 -- ウマ娘童貞 1 「おい風俗通い。」 「何だよ……。」 当人の現役時代に俺が風俗の世話になっていたことを知られてからというもの、我が妻アグネスデジタルに対して未だ肩身の狭い元トレーナーの俺である。 「デジたんの前にも担当してたウマ娘ちゃんいたじゃん?」 「ああ。」 「その子らとはセックスしてないの?」 「してない。」 してないというか、そこまでの距離に至れていないし意識もしていないというか。 「即答か。なら許してあげよう。」 ……俺は一生妻に勝てない気がする。 2 「おい風俗通い。」 「何だよ……。」 アタシの現役時代に夫が風俗の世話になっていたことを知ってからというもの、元トレーナーに対してマウントを取れるアグネスデジタルです。 「デジたんの前にも担当してたウマ娘ちゃんいたじゃん?」 「ああ。」 「その子らとはセックスしてないの?」 「してない。」 「即答か。なら許してあげよう。」 つまりウマ娘とセックスしたのはアタシとが初めて……そしてそれが最後でもあるっ! 3 「んふふっ!」 「何だよ、笑うなよ。」 「嬉しいんだもんっ♪」 デジタルは体ごと振り向くと、胡坐をかいた夫にがばっと縋り付いた。 -- alcohol alcohol わたしはげんき 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルれぇ~っす♪ 「ベロベロじゃねえか」「どうなってるの??」 はい~今日のお酒はでしゅねぇ、ワインですぅ。 ダークホースっていうブランドのビッグ レッド ブレンドって奴ですぅ。 https://www.suntory.co.jp/wine/special/darkhorse/ 「おいしそう」「いや酒の種類じゃなくて」 ああ、そうですねぇ何でいきなり酔っぱらってんのかって話ですよねぇえへへへぇ。 今日はねえ、お散歩に行ってきたんですよお。 ほら暑さも収まって今日はいい天気でしたしっ。 荷物を持って夫と一緒にピクニックしたんです。 2 えへへ、何だか子供に戻ったみたいですよねピクニックって。 でも当時の自分はあんまり外でご飯食べてのんびりするって楽しいと思わなかったんですよね。 遊んだり走ったりする方がずっと楽しいじゃんって思ってて。 今になってやっとわかる感じです。 二人してご飯食べてお茶飲んで。風吹いてるねぇ~ってどうでもいいことを話すのが幸せなんですよ。 やっぱりデジたんも歳取っちゃったんですかねぇ。 (ぐびぐび) っぷは。でも新しい幸せが見つけられるならさあ、歳取るのも悪い事ばかりじゃないよねえって。 でもデジたんもまだ若いのでっ!芝生の上でゴロゴロしちゃいましたっ! 夫も呆れちゃいましたよね。でも気持ちいいんですよチクチクして。 背中に芝の切れっぱしが付いたり湿気で濡れちゃったりしたから夫にタオルで拭いてもらって。 3 うっふふごめん今日はもうずっと惚気るかもしれない、げっふ♪ 「げっぷ助かる」「げっぷ助かる」「汚い」 ごめんねぇ。(もぐもぐ) 「何食べてるの」 ん?視聴者さんからもらったカチョカヴァッロってチーズですぅ。 スモークしてある奴。アッフミカート?って言うんだってぇ。 何だっけそうそう芝生ゴロゴロしたんだぁ。 背中拭いてもらってすっきりしてさ。そしたら二人で遊びの時間です。 4 周りじゃもう虫なんかも鳴いててさ? ああそんな季節かしらって思いながら鞄から棒とボール取り出してぇ。 えいっ!て。やあっ!て。それーっ!!て。 二人して若い頃みたいに思いっきり遊びましたぁ~♪ 気持ちよかったぁ~。 シートの上にゴロンって寝そべってると同じ公園で遊んでるウマ娘ちゃん達の声が聞こえてくるのね。 皆ご家族連れだからご挨拶はしませんでしたけどぉ、デジたん勿論ホクホクでしたよぉ~。 ご家族で仲良くしているウマ娘ちゃん達……。レースの場では見られないお姿やお言葉の数々。 疲れた身がいきり立つような凄まじいエネルギィでしたぁ。 5 そんでお片付けして帰ってですねぇ。 まだ体が火照っているのでダウナー系のドラッグとして有名なお酒をこうして飲んでいるわけですぅ~♪ 「余計火照るのでは???」「お酒ってダウナー系だったんだ。」 えへへぇ、そう火照っちゃってるのぉ。 だからなんかねえ皆にも幸せお裾分けしなくちゃって配信始めちゃった。 幸せになれたかなぁ? 「胸焼けしてる」「甘い」「棒とボール……来るぞ遊馬!」 リア充ですまんな!あはははは。 いやホント、デジたんみたいなヲタクがさあ、こんな人並みな幸せを得られるなんて学生時代は考えたこともなかったんですよぉ。 だってさあデジたんウマ娘ちゃんにさえドン引きされるぐらいのウマ娘ちゃんヲタクだったんだよ? 一生独身でもしょうがないやウマ娘ちゃんさえいれば幸せだしって思ってたの。 6 でもデジたん視野が狭かったっ! どこでどんな人と出会うか本当にわかったもんじゃありませんっ! (ぐびぐび)うぇーい。 偶然か必然か運命か知らないけど、今日はねえ、自慢したくなっちゃったっ! ホントはさぁ、ヲタク代表としてもっとこう、ダメでポンコツなところを求められてるって知ってるのぉ。 「デジたんはしょうがねえなあ」ってある意味で見下されてるデジたんをさあ、求めてるんでしょ? いいのいいのデジたんは見下すことも立派な娯楽だって知ってるしっ! お笑いだって配信だって、「ほんとに此奴しょうがねえな」って気持ちがどうしてもあるモンじゃん!デジたんだってそうだよっ! だからね、人を見下す気持ちってそれ自体を否定しちゃうといろんなものが成り立たなくなるというか、 凄く大事な感情だと思うのね?大事にしちゃいけないけどなくてはならないというか。 あれ?そんな真面目な話するつもりじゃなかったごめんなさい忘れて忘れてっ!デジたんげっぷするからっ! ……んんっっふっ! 7 「げっぷ助かる」「げっぷ助かる」「汚い」 アハハハハッ!そうそうっ!そうでなくちゃねっ! ああもう配信時間オーバーしてるっ! えーとああもう配信始まっちゃってますねっ! ツインターボチャンネルで「今度こそクリアするもんっ!マインドシーカーリベンジッ!」配信中ですっ! 前回は6時間でギブアップされてましたが今回は果たして見事優勝できるのかっ! 楽しみですねっ!それでは、バイデ、うっ!?ぷっ!うぇ(バタバタバタバタ) …… (バタバタバタ)はぁはぁ、ゴメンゴメン、それでは改めて、バイデジィ~♪ -- まだダークホース呑んでる 1 「メンタルもまた潜在能力(ポテンシャル)だ」 このアグネスデジタルの夫にして元トレーナーの言葉だ。 だがそれでは納得できない気持ちがある。 心も、体も、『持って生まれたもの(ポテンシャル)』ならば、アタシ達に出来る努力とは何なんだ。 鍛錬で伸びる能力が確かにある。 けれどもっと大きな視点で見れば、鍛錬したいと願う気持ちや鍛錬に耐えうるメンタル、どの程度のトレーニングで音を上げるさえも初めから与えられたものってことになっちゃう。 そんなの、受け入れられない。 2 だって、ウマ娘ちゃん達の輝きは生まれた時に決まってなんかいないはずだから。 寧ろ、生まれに反逆することにこそ輝きを増すものでもある。 過去なんか置き去りに。 今よりももっと。 未来を手に入れるために。 そんな努力が、ウマ娘ちゃん達の輝きだ。 それが単なる必然だなんて、そんなのそんなの……。 味気なさすぎるじゃないですかっ!!! 3 絶対の神に抗うことは不可能である。 そういう宗教があることは知っています。 神の啓示を知り己の行いを顧みることで、マシな未来を得ることができる。 そういう宗教があることも知っています。 ではどっちを信じるのか? 絶対の神とおぼろげな神と。 そして信じた末にどうするのか。 ああ、神様。我々の在りようを決めた挙句に信じ方すらお示しになられないのか。 4 つまりなぜ主婦ってムチムチに描かれるのだろうって事ですよ皆さんっ!! デジたんは薄い本の上でしかデカパイデカケツでいられないしそれすらも少数派っ!! それを求められてるからじゃないか? 夫はそういいます。まるで需要にこたえることこそ正義であるようにっ!! じゃあデジたんがデカパイデカ尻腰回りキュキュッのナイスバディになっちゃいけないっていうんですかっ!!! 憧れる事すら許されないというんですかっ!!!!! これが有名税と言う奴なのですかっ!?!?!?!?!?!?!?!? 5 「もうこうなったら整形外科に行くしかねえっ!」 TAKASUに電話を掛けたその手を夫が止めました。 俺は今のお前が好きなんだ。 キュンとなりました。 しかしアタシは今のアタシがアナタほど好きじゃないんですよぉっ!!! ああ、何と言う悲劇。 目指す先が違うという事がこれほどの断絶を生むとはっ! しかしデジたんもダイワスカーレットちゃん(の原案を描いたMEL氏が描く)みたいなダイナバイトボディに憧れてはいるのですっ!! 涙ながらにそう告げると夫も項垂れて黙りました。ごめんなさいごめんなさい。 我儘を言っているのはわかっていますしかししかしっ! 今ここにいない自分を夢見るのは、誰だってそうじゃないですかぁっ!!! 6 そんな訳でskebに「原型残らないくらいモリモリのアグネスデジタルを描いてくださいっ!!!!!」 って頼んだのですが今のところ一件も受理されなくて助けて欲しいんですけど。 ……げっふ。 「げっぷ助かる」「げっぷ助かる」「汚い」 うぃーっ。ごめんねえ。 「しつこく頼め」「何でも巨乳巨尻にする絵師知ってる」 うん、実はデジたんも知ってるんだけどその手の絵師さんの絵柄がちょっと合わないかなーって。 デジたんを忠実に描いてくれる人に無理して巨乳にして欲しい 「厄介すぎるwwww」「面倒wwwww」 えへへ♪(媚び声)そんな訳で #デジアート ではエロ絵もOK! ムチムチモリモリデジたん像をお待ちしておりまーす♪ それではバイデジ~♪ -- ウマ娘のことが大好きですっ 1 「ちょっとここ見てっ。」 「ん?」 寝間着姿のアグネスデジタルが、俺を呼んだ。 現役を引退した我が妻はコーチングスタッフとして学園に勤めている。 その際に記録したビデオをチェックしている最中の事であった。 「これは……。」 「やっぱりそうだよねえ。」 早戻ししたビデオを二人で見る。 そこにはターフを走る練習中の新バの姿。そのフォームには乱れが見えた。 2 「筋肉痛かな?」 「いや。」 動画に映るウマ娘は、右足を地面に付くのを嫌がっているように見えた。 「だとしたらこんなに横にヨレない。連絡先分かるか?」 「トレーナーの?本人の?」 「どっちでもいい。兎に角、明日医者に診てもらうよう手配させろ。」 「わかったっ。」 パタパタとデジタルが携帯電話を取りに行った。 その間に俺はビデオを戻して見直す。 フォームの乱れはどこからあったのか、痛みはどれほどなのか。 3 「トレーナーさんに連絡してきましたっ!」 「おう、ありがと。」 「トレーナーさんの方でも気づいてたって。明日本人に訊くつもりだったって言ってた。」 「流石だな。」 画面から目を離さないまま応えた。 「大きなお世話だったかな?」 「まさか。俺が同じ立場でも礼を言うよ。」 「だよね。あっちのトレーナーさんも『おかげで確信が持ててよかった』って言ってくれた。」 担当バの不調には早く気付くほどいい。『自分の方が先に気づくべきだったのに』という悔恨はあれど、『自分以外は気づくべきじゃない』なんて言い出したらそれは狂気の始まりだ。 4 「……大丈夫そう?」 「多分な。」 画面を見つめる俺に心配そうなデジタルの声がかかる。 「スタート時点では痛みはなさそうだったし、一応ゴールまで走り切ってるからそこまで深刻ではないと思う。 とは言え、医者の診断次第だけどな。」 「……それなら、ひとまずよかったぁ。」 はぁ、と息をついてデジタルが膝をついた。 「それにしても、一目で良く気付いたね。」 「そりゃここが怪しいってピックアップされたらな。」 5 「でもアタシは何度も見返してやっと気づいたのに……。」 「落ち込んでんのか?」 「少し。」 「生意気なんだよっ!」 髪と耳をぐしゃぐしゃと撫でる。 「もーっ!」 「そう簡単にプロ並みの目利きが出来てたまるか。」 デジタルがぶーっとむくれた。 とは言え、彼女のそれは既にプロに近い水準にはある。俺でもこのビデオをスタートからゴールまで通して見るだけでは見逃していたかもしれない。 一度で見抜ける眼力より、何度も見返して観察する。そっちの方がよほど大事だ。 そしてそれは、俺が言うまでもなく実践してくれている。 正トレーナーになったら一体どれほど活躍することか。 6 翌日。 「ただいまぁ~。」 「おう、お帰り。」 帰宅した妻を出迎える。その顔は見るからに気落ちしていた。 「一週間休みだってぇ……。」 「ああ、昨日のあの子か。」 とりあえず、飯にしよう。俺は妻をダイニングに招いた。 7 「一週間か……ごく軽い症状でよかった、って言うべきところだな。」 「だね……。足底腱膜炎だって。」 「そうか。」 足底腱膜炎。足指と踵を結ぶ足底腱膜と言う腱の炎症だ。練習のし過ぎで発症する典型的な炎症の一つである。 お好み焼きを切り分けてデジタルの皿に載せる。ホットプレートの空いたスペースに油を引いて、豚バラとエビとキャベツの鉄板焼きを始める。 「……見舞いには行くなよ。」 「なんでっ!?」 ガガッと音がしてデジタルの座っていた椅子が倒れた。俺の顔を立ち上がったデジタルが見下ろす。 「今のお前は、トレセン学園のスタッフだからだ。」 8 「一番身近にいるべきなのは、専属トレーナー。それと、家族と友人だ。今回は譲れ。」 デジタルの青い瞳を見返す。 「……わかった。」 10秒ほど見つめ合った後、彼女は椅子に戻った。 「アタシ早くトレーナーになりたい。」 「ああ、早く合格してくれ。」 「うん。」 9 デジタルのお好み焼きの上に肉エビキャベツ炒めを載せてやる。俺だってお前とウマ娘談議がしたいんだ。一緒に悩んで、一緒に笑って。一緒に歩みたい。 焦らなくてもいいけど……まあ俺がトレーナー復帰できるぐらいの歳の内にな。 「あっ、でもトレセン学園スタッフとして病人を見舞うのは当然なのではっ!?」 「お前はウマ娘の顔見たいだけだろ!」 「失礼なっ!純然たる憂慮、心配、懸念が故ですっ!!」 「猶更専属トレーナーより先んじちゃダメ。」 「はいっ!」 デジタルは苦い顔で頷いた。 気落ちしているであろうウマ娘に、専属トレーナーよりもアグネスデジタル先輩の方が心配してくれるなんて印象を与えてしまったら最悪だ。 そしてそれをデジタルも即座に吞み込んでくれた。お前は俺よりもずっと偉大なトレーナーになるよ。 だから、だからさあ。早くトレーナー試験、合格してくれねえかなぁ……。 -- やっぱり心配です 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! ねえねえ聞いてくださいよぉ~っ! 凄く言いにくいことがあったのぉ~っ!! 「それ本当に俺ら聞いていい奴?」「どういう導入だよ」 あのねえ、知り合いが怪我をしちゃったんですよぉ~。 ちょっとそれ以上は言えないんだけど。 「ついに殺ったかデジたん」「自首しな」 なんでだよっ!? ついにってどういうことですかっ! デジたんの事を何だと思ってるのっ?! 2 言いにくいってそういう意味じゃないんですよっ! そうじゃなくてっ。 所謂一般の方なんで、どこの誰がどういう怪我をしたかは言いにくいって事ですっ。 プライバシーとかありますしっ! いや、一般……一般かなあ。 「一般かどうかも怪しい人って何?」 ユーメージンでは無いって事です。 ほら、ユーメージンのお怪我だったらある程度公式で公表されるでしょ?そしたらその範囲でデジたんも喋れるんですけど。 だからかなり伏せた状態でお話することになるんですごめんなさい。 それでも話を聞いて欲しかったのよぉ。 3 「配信やってる場合か!」「友達は大切にしよう」 ああ~お怪我自体はごく軽い物なんですっ、ごめんなさい心配させちゃいましたね。 デジたんが薄情みたいな言い方はちょっと、『言い方っ!』ってなりますよっ! 一週間ぐらいで完治するらしいので。 ただその間やっぱり生活に支障は出るので、心配だなって。 「一週間で完治する軽傷で、生活に支障が出る?」 「デジたんがそこまで狼狽する事情があるの?」 おおッと探るな探るんじゃない。 「ウマ娘ちゃん?」 んぁあああ~~~~~っ!!!! 4 そうですよその通りですよっ!まったくデジたんのファンは察しがいいったらっ!! ぶっちゃけデジたんも情報伏せながら話を展開するのに無理を感じてましたっ!!! あのねえ、デジたんがトレセン学園で働いてるって話はしたと思うんだけど。 そこで新バちゃんがちょっと練習しすぎ系の怪我をしまして。怪我と言うか、傷めたというか。 さっき言った通り極軽傷なんですけど……脚ですよ。脚。ウマ娘ちゃんが傷めると言えば脚です。 で、『練習しすぎ系の怪我』って言ったじゃないですか。 走ったせいでできた傷って走ってたら絶対治らないんですよ当たり前だけど。 つまり完治するまで走るのは禁止、歩くのも最低限で、という事になります。 自分も同じ経験があるからわかるんですけど、ウマ娘ちゃんにとっては走れないのって超ストレスでして。 しかも周りの同級生たちが走って練習している間に自分は、ってなると、やっぱり不安になるだろうなって。 5 「練習メニューが行き過ぎてたとか?」「トレーナーさんはケアしてるの?」 トレーナーさんに非がある事ではない、です。少なくともデジたんはそう思います。 ケアも勿論してる。 ……こういう話になるから伏せたかったんだよね。 そんな話題話したデジたんが悪いんですけど。 ……ん~~~。練習とかで脚傷めるのって割と当たり前にあるんですよ。 あって良い事ではないんだけど、防ぐのはかなり難しいの。 トレーニングって肉体の限界に向き合う作業だから、ほんの少しのことで、それこそちょっとテンション上がったとか、バ場が少し崩れてたとか。 それだけのことで簡単に限界超えちゃうんです。 デジたんも関節炎をやらかして4か月くらいお休みしたことありますし。 6 「ああ、京都走った後の」「あれ何が原因だったの?」 そうそうっ!京都走ってダイちゃんに逆襲された後の奴。原因はわかんない。 疲労の蓄積だとは言われたけど、いつから疲れがたまってたかとかの追跡は無理でした。 だからさー、今回は軽く済んでよかったなあとは思いつつもさぁ。 どうにもならないけどどうにかならないかなーって。 思いながら配信始めたんですよ。 「元気出して。」「見舞いに行ってあげたら?」 ありがとありがと。 見舞いは行きたいですっ!ですが、そういうケアはまずはトレーナーさんのお仕事なのでっ! 行きたいけどっ!滅茶苦茶見舞いたいけどっ!!我慢してますっ!! 7 おっスパチャありがとうございますっ!! 「旦那とセックスしたら気分も晴れるよ」 バカバカっ!! スパチャで何を言ってるんですかキミはっ!!しかも赤スパ!!! お前スパチャでセクハラって!!デジたんだから許すんだぞっ!?他の子の配信だったら発言消されてますよっ!! 「デジたん普段からさんざっぱらセックスセックス言ってるじゃん……」「こっちこそデジたんのセクハラをどんな気持ちで聞かされてると思ってんだ」 ウゲェーッ!!因果が応報してしまったぁーっ!! じゃあ仕方ない許します。 そんな訳でお時間です。見ていただいてありがとうございましたっ! この後は安心沢先生のチャンネルで「瀉血は全てを癒す!刺々美のブラッドストリーム 第13回」が配信されます。 訴えられないといいですねっ!! それではバイデジ~♪ [余談]ダイちゃんとはダイタクリーヴァの事です。 彼女(?)に負けた後原作では球節炎を発症して休養したそうで、そのエピソードを使いました。 -- 世紀の一戦のある世界線の一線(※没ネタです) 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! 今回はねぇ、アキテンの話をしようと思いますっ! テイエムオペラオーさんとメイショウドトウさんと戦った時のエピソードについてめちゃめちゃ質問貰ってるので、ここで話しちまおうかなぁ~と。 二人が素晴らしいウマ娘であることにデジたんも異論はありませんっ! けれども。けれどもあの秋のレースだけは。 アタシの外してはいけないネジが、外れる音がしたんです。 2 ゲートイン。 オペラオーさんはドトウさんを見ていました。 ドトウもオペラオーさんを見ていました。 お互いにお互いを意識し、何度も繰り返した一着二着の記憶を噛み締めていたんだとわかりました。 当時のお二人は、出走すればその時点で一着二着が確定するとまで言われた怪物です。 特にオペラオーさんは3000m以上の距離でも結果を残しており、当代のウマ娘最強と言っていい実績がありました。 彼女が唯一の懸念であるメイショウドトウを気にしていたのは当然ですし、 メイショウドトウもそんなオペラオーに視線を向けていたのは当然です。 そしてそれ以外のウマ娘ちゃんが、二人を見つめて闘志を燃やしていたのも当然の事です。 その当然の事実に、アタシの何かがプツリと切れたんですね。 3 違うだろうと。 ウマ娘ちゃんは誰もが等しく尊いはずだろうと。 ゲートに入れば誰もが同列、ウマ娘としての本能を競う、だからこそウマ娘は美しい。 優勝劣敗はその結果であって、目的じゃないんだと。 ……いや、そうした言葉では説明しきれません。 あの風景の何がアタシの理性を飛ばしたのか、今でも説明が出来ません。 ただ……あそこに、美しくない何かがあったのだと。 アタシは感じたらしいのです。 4 レース中は自分でも意外なほど冷静でした。 ペースの遅いレースに焦(じ)れることなく、落ち着いて脚をためていました。 『観客席に向かって走れ』 その指示を反芻しながら。 最終コーナーを回ると自分の前には誰もいない。 ゴールへ、そしてその先へ延びるターフが続いていた。 あの先へ、走っていいんだって気になりました。 ダートダービーの頃とは違う。雨の中でも地平線まで走れる気持ちがあった。 地面を蹴る。前へ前へ。速く速く。楽しく走ろう。 5 気が付いたら、一着でした。 ……今にして思うと、デジたんぶちキレてたんだと思うんですよ。 デジたんはウマ娘ちゃん大好きだから、ウマ娘ちゃんに対して怒る、っていう感情が理解できなかったんだと思う。 うん。オペラオーさんもドトウさんも、ほかのウマ娘を無視してたわけではないと思うの。 当時でも滅茶苦茶マークされてたし。ぶっちぎりで勝ち続けたって訳でもないし。 ……でもデジたんの中では、それでは納得できなかったっぽいんですよね。 あのお二方の、ほかのウマ娘に対しての見くびりを、敏感に感じ取ったんだと思います。 実績を考えればデジたん含め他のウマ娘を軽んじるのはしょうがないと思います。 でもデジたんのウマソウルはそれを我慢できなかった。 大好きで最強の二人が、寄りにもよって油断だと?って。 あはははっ、慢心は強者の特権のはずなのに。デジたんの持って生まれた脳回路はそれを理解しなかったのです。 6 いやそれでも説明しきった気分になれないなあ……。 あの時のデジたんはオペラオーさんとドトウさんの在り方を尊く思いつつも、「違うだろっ!!!」って言わずにいられなかったっぽいんですよ。 すみません、これについてはもうちょっとまとまったら改めてお話します。 あのレースでのデジたんは、「絶対に一着を取ってこの二人をきゃん言わせたるっ!」って気持ちだったのは確かです。 何でそんな気合が入ったのかははっきりと説明できません。 ああーそういやトレーナーに言われましたね、「そろそろショーを終わらせてやれ」って。 ショーストッパーってのは本来、拍手が収まらなくてショーが止まってしまうほどの名演技をする名優、と言う意味です。 本当ならオペラオーさんの二つ名にこそ相応しい。 でもデジたんはオペドトウのダンスショウを止めて見せた。 オペラオーさんを倒した以上、ショウストッパーの異名は……。 -- 誰が呼んだか変態勇者 1 あって欲しいと願うものがそこに無かった時。 いや、完全な筈の現実に対して「もっとこうだったら」と身の程弁えない欲を持ってしまった時。 神が我らに与えたもうはただ一つ。 「自分で描け」。 神ならぬ我が身故完璧を作り出すことは能わねど、 神ならぬ我らが身故不完全なものでも熱狂できる。 完璧には決して至れぬからこそ、無限の研鑽が出来、無尽の不完全を突き付け合い、好きだ嫌いだと言いあえる。 完璧なる一を得られない代わりに、不完全な媚薬を無尽蔵に味わえる。 このアグネスデジタルも、そんな無間地獄の住人の一人だ。 2 いつもはウマ娘のデータをノートパソコンで大っぴらに閲覧し、時に「ねえ見て見て!」と夫の腕を引いたりするのに、 今日は珍しく自室のデスクトップに向き合って、黙々とキーボードを叩いている。 競走バを引退してもアグネスデジタルの物語は終わらない。 ウマ娘と共にいたい、の一念のもと、トレーナー資格の取得を目指しながらトレセン学園のスタッフとして働いている。 表の顔がウマ娘と関わり続けているのと同じく、裏の顔もまた、まだまだ物語を続けている。 同人作家として。それも「ナマモノ」分野の第一人者として、『人知れず』『名を馳せる』という酷く脆い矛盾を今も保ち続けている。 ノックの音。 アグネスデジタルは三つのモニタの電源を全て落とすと、入って、と応えた。 「夜食をお持ちしました、先生。」 3 盆を持った男、デジタルの夫が入室する。 盆に乗せられているのは、箸。その横に湯気を放つ銀色の背の高いタンブラーと、たっぷりと氷水を湛えたロンググラス、そして緑色の液体が入ったショットグラスだ。 「どうぞ。」 デジタルの机の上に、盆の上の物を置いてゆく。 「ありがとう。」 言うが早いかデジタルはタンブラーを手に取り箸をその中に突っ込んだ。 ずぞぞぞ、と激しい音を立ててすすられるのは濃褐色の汁に彩られた太い麺。 タンブラーの中身はぶっかけうどんであった。 4 夜食のお供に麺類は定番である反面、丼がデスクの上のスペースを圧迫するという問題がある。 また麺類の宿命として、時間をかけると温度が下がり麺も伸びて味が落ちる。 これらの事情から、麺類の夜食は早々に食べきって片づけてしまいたい。 つまり『食べながら作業をする』のに全く向かないのだ。 その欠点を高水準で克服したのがこの『タンブラー入りぶっかけうどん』である。 これであればデスクの上のスペースを確保でき、時間をかけて食べても温度が下がりにくい。 また比較的汁が少ないため、麺の伸びも穏やかだ。 従来の麺類系夜食と比較して、かなり心理的負担の軽い食事となる。 タンブラーであるから残った汁が飲みやすいという側面もある。 ロンググラスの中身はただのお冷。食事のお供である。 しかしショットグラスの中身はただ物ではない。 5 これは『緑茶酒』である。 アグネスデジタルの稼いだ賞金で金に飽かせて買い付けた高級茶葉を蒸留酒に漬け、一か月以上置いたものだ。 うどんを啜った喉を水を煽って冷やしたところに、デジタルがショットグラスの中身を流し込んだ。 「……んんぃぃいーーっ!」 炭水化物、カフェイン、アルコール。 命を前借する組み合わせである。 「ではこれで。」 「待った。」 踵を返す夫にデジタルが声をかけた。 6 「どうした?」 「最後に許可を取らなくちゃいけないところが、あった。」 すっかり据わった目で、デジタルが夫の顔を見る。 「許可?」 「今プロットを書いてるんだけど。」 満を持してモニタの電源を一つオンにする。 そこには全画面表示のテキストエディタが表示されていた。 「キミをモデルにしたキャラクターが居るんだ。」 7 「何でそういう事を最初に言わねえんだよっ!」 執事然とした態度を完全に放り捨てて夫が怒鳴る。 「書き始めたときは想定してなかったんだよ。 でもさあ、キミが前担当してたウマ娘ちゃんとのことを思い出しちゃってさ。 ……もしロマンスがあったらいいなあってさ、くふふふふっ♪」 モニタに映るエディタにはびっしりと文字が載っている。 筆が乗った、いや、キーが乗った、と言う奴だろう。 つまりは大枠は書ききっていて、後は夫の許可如何のみ。 「……許すと思ってるのか?」 「脚色するから大丈V!」 8 そういって机の上のケント紙を摘まんでボールペンでさらさらと男性像を描く。 「物語の中のキミはこんな感じですっ!」 「似てねえっ!」 「似てたらダメなんでしょ?」 「んぐ、そうだけど……ウマ娘の方はどうなんだよっ!?」 「デジタル先生に描いてもらえるなら是非って!」 「アイツ……アイツっ!!」 狼狽する夫をよそにデジタルは青い瞳を輝かせる。 「大好きな人とウマ娘ちゃんのロマンスだなんて……デジたんもう描かない訳にはいかないのですよっ!!一度思いついたらさっ!!!」 「……んん?」 何か聞き逃してはならないフレーズがあったような気がして、夫は顎に手を当てる。 9 そんな夫をよそにデジタルは再びキーボードを叩き始めた。 「さあ出て行ってください、まだネームどころかプロットの途中なんです。 下手すると作画は外注かも。 いやいやああしてこうして筆がノりまくっちゃったらぁ~……♪ デジたん久々に小説で同人誌を発行するかもしれませんっ!!」 言っていることの意味はほとんど理解できないが、タンブラー入りうどんを再び啜ったデジタルがもう止めようもないスパートに入ってしまったのは理解した。 既に最終コーナーは過ぎており、後はもう何着で着くかの問題だ。あるいは事故を起こして脱落するかだが……。 「……好きにしてくれ。」 どんな理由があれ、ラチにウマ娘を叩きつけるトレーナーなどいない。 増してアグネスデジタルは現役時代から『こう』だったのだ。本格化を過ぎても意欲だけはちっとも衰えない。 スタミナには劣る方ではあったが、もっと長い目で見た持久力は御覧の通り。 10 「……炎上だけはしないようにな。」 長年連れ添った仲だから、ヲタクという人種は理解できなくとも『ナマモノ』というジャンルの危うさぐらいは知っている。 「そん時は助けてねっ!」 ところが帰って来た返事は全く反省の気持ちの無い呆れるほど生き生きした言霊であった。 「お前っ……お前なあっ!」 「炎上したって死ぬわけじゃなしっ!好きなように走って結果は後から考えますっ!! まあ見ててよ、このヒーローには君が嫉妬するほどのキレイな恋路を走らせてあげるからさっ!!!」 「……好きなように走って何度も凡走で終わったのはどこの誰だよ。」 「んがあああああっ!!!」 ボールペンを投げつけられた夫は、すごすごと退室した。 デジタルの大好きな人と、デジタルでない誰かとのロマンス……想像しかけて、やめながら。 -- 幸せについて本気出して考えてみたCentury Loversは愛が呼ぶほうへGo Steady Go! 1 ----始まり 「結婚を前提に俺と付き合って欲しい。」 「……うん、そういう事だと思ってた。」 担当バであるアグネスデジタルが引退し、トレセン学園のスタッフとして再就職してからしばらく後。 元トレーナーに呼び出されたデジタルは彼からの告白を受けた。 「でも大丈夫?新しい担当ウマ娘ちゃんとギクシャクしたりしない?」 「学園は辞めた。」 2 「トレーナー続けないの?引く手数多なのに。」 目を丸くするデジタルに、 「俺の愛バはアグネスデジタルだけだからな。」 と彼が告げると、アグネスデジタルは バーカ。 と言ってはにかんで笑った。 3 「じゃあ……取り合えず三年契約でお試ししてあげましょう!」 ----一年後 「うん、これにて料理は免許皆伝と致しますっ!」 「有難き幸せ。」 アジの南蛮漬けと味噌大根そぼろに、じゃがいもと玉ねぎの味噌汁のディナー。 「でもこれで終わりって訳じゃないからね?もっともっと色んなおいしい料理作れるようになってくれなきゃやだよ?」 「はい。」 「夕ご飯は一日の楽しみなんですからっ!」 仕事を終えて帰ってくるその時に、美味しそうな匂いがダイニングに招いてくれる幸せ。 アグネスデジタルは恋人に毎日それを提供するよう求めた。 4 ----二年後 リビングのテーブルの上に裸足の足をでんっと置きながらアグネスデジタルが大画面でウマ娘の走る映像を見ている。 「ねぇ~。」 「ん?」 乾燥機から取り出した食器を棚に戻していた恋人がその手を止めてやって来た。 「この子どう思う?」 「どうとは?」 「キレイだと思う?」 「愛を試すのは禁止にしてたはずだ。」 「えっへへっ♪正解っ!覚えてたかぁ~。」 5 ----三年後 「契約更新で。」 「有難き幸せ。」 「っていうかねぇ、ズルいんだよ告白した時点でこの物件用意してあるって言うのはっ!」 今二人が住んでいるのは、アグネスデジタルに交際を申し込んだときに同棲可能な引っ越し先として男が提案したものの一つである。 トレセン学園から程近く、互いのプライバシーが十分に保たれる部屋数があり、何よりデジタルの同人誌執筆、動画配信に向いた個室がある家。 月々の支払いはそれ相応だが、デジタルの獲得賞金と男の貯金を切り崩せば十分に足りる。 「では、これからもよろしく。」 「こちらこそ。」 ビールを湛えたグラスをチンと鳴らした。 6 何年目に結婚したのだか、二人とももうすぐには思い出せない。 でも籍を入れても別段何もなかったことは確かだ。 妻の親が夫の年齢に不審さを抱いたのも、夫の親が晩婚の彼とその妻を心から祝福したのも、もうずっと前の事のように思える。 「ただいまぁ~っ!」 「おかえり。風呂入ってきな、その間にチキンカツ揚げちまうから。」 「やったぁタルタルソースたっぷりお願いねっ!あそうだ、今日新バちゃん凄かったんだよ後でビデオ一緒に見よっ!」 --誰だってそれなりに人生を頑張ってる --愛とは愛されたいと願う事 --キミにとっての全てだ --膝を擦りむいたりして気にもならないのは --君と 走っているからだよねっ! -- おちんちん 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊のっ、アグネスデジタルですっ! トレセン学園のウマ娘たちの間でトレーナーのおちんちんの平均サイズが20センチであるという噂が広まったことがありました。 ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ んぬゃっはっはっはっはっは(文字表現不能な音声)!!!! (参考:https://www.youtube.com/watch?v=iq6JTHJna9U&t=2553s) 2 そうですよねそうなりますよねっ! 「何なのトレセン学園は思春期女子の集まりなの」 残念ながらその通りなんですよねぇー。 で、ですね。 その後ググったりなどして調べた結果、少なくともこの国の男子の勃起時の陰茎の長さは平均20センチに満たないと結論が出た訳です。 世の中には膣の深さのデータだってある訳ですから?男性器の統計データだって当然存在するわけですっ! 誰が統計してんだって話ですが、こんなふうに統計データ欲しがってる奴らがいる以上誰かが測定してる訳ですよねっ!! 3 さてさて。 トレーナーのおち……ハロン棒の長さが日本男児平均を超えているとなるとですね、2つの可能性が考えられるのですねっ! 1つは、ウマ娘のトレーナーになりたい男性集団に注目した視点です。 その素養の中にハロン棒が長い、という素養があると。 トレーナーになりたがるような男はそもそもハロン棒が長い男であると。 もう一つは、ハロン棒の長い男性集団に注目した視点です。 ハロン棒が20cm以上に育つほどの男性。 つまりテストステロンの強い男性は、女性的魅力に溢れたウマ娘と触れ合えるトレーナーという職業を志望する確率が高い。 従って、トレーナーになりたがるような男はそもそもハロン棒が長い男であると。 あっはっは、どっちにしろ生まれつきスケベな男がトレーナーになりたがるし生まれつきスケベな男はハロン棒も長いというお話にしかなりませんっ!! 4 仮にですよ?仮にこれが正しいとするとっ! ウマ娘は大きなハロン棒を惹きつけるメスだとも言える訳ですっ! これはヒト同士のロマンスを妨げる要素にすらなりうるっ! そうなると歴史的統計データも取れそうですよねっ!ヒトオス×ヒトメスとヒトオス×ウマ娘の成婚率、或いは出産率っ! そして大きなハロン棒を惹きつけることで寧ろヒトオス×ヒトメスの繁殖力を上げているって側面もありうるかもしれませんっ! ヒトメスがでけえチンポを求めているとは限らないってことは色んな文献で明らかに ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ はい。 5 そう考えるとウマ娘というのはもしかしたら行き過ぎたヒトオスの欲望の受け皿として生まれたのかもしれませんだとしたらAV業界はウマ娘とその相手になりうるデカマラ男優の作品で占められているのでどこかの前提がおかしいですねっ!!! ~~しばらくおまちください(優しい音楽)~~ はい。 「ウマ娘ってそんなに発情してんの?」「どこから20センチって話が湧いたんだよ」 わっかりませんっ!! だってデジたんはウマ娘であってヒトではありませんからっ!!! あと当時のウマ娘ちゃん達の流行ってのは本当にちょっとした手がかり、ならぬ指がかり爪がかりからもりもりと湧いて!沸いて!そして消えたものなのでっ!! 理由はあんまり意味がないのですっ!! 6 「ウマ娘ってチンチン好きなの?」 うーん。 ウマ娘ちゃんって全体で見ると統計的には好きでしょう。何故ならウマ娘ちゃんには、ヒトにはない『フケ』という現象があるからです。 明確に発情するウマ娘と、雰囲気によって性交渉がありだったりなかったりするヒト娘では、全体で見ればウマ娘の方が男性器が好き、とは言えるでしょう。 でもそれは男性器が好きなのかそれとも男性器による行為が好きなのかどうか、そして男性器のデカさの好みがどうなのかについては、未だデータが足りません。 「デジたんのトレーナーはどうなの?」 そうですねえ……。測ってはいませんが、『デジたんにとっては十分に奥までずこずこしていただける長さ』と言っておきましょう。 「デジたんちっちゃいから基準にならない」 知るかぁっ!夫と他人のハロン棒の長さを比べる機会なんてないし、増してや長さによって気持ちよさが違うかどうかなんて体感する機会はないんですよっ!! 7 「結局愛があるかどうかが大事って事だね」 そうですねっ! チンチン小さくてもでっかいディルドで愛してくれれば良い訳ですし、 そもそも小さいかどうかは挿入れられる側が決める事であって、20センチより短いから気持ちよくなかったとか20センチ以上だから超よかったとか、そんなの滅茶苦茶個人差ありますよっ!! 「でも20センチ以上無いとトレーナーになれないかもって思うし……」 平均は中央値ではありません。40センチとか50センチとかある異能チンチンに引っ張られている可能性もありますよっ!! それにおちんちんの長さで夢を諦めるのって馬鹿らしいと思いませんかっ!! 性的満足させる方法はおちんちん以外にも色々あるのにっ!! マネちゃんから電話が鳴りやまないのでこの辺にしときますそれではバイデ(この配信は終了しました) -- HITACHI 1 「マッサージしてぇ~!」 ベッドに横たわりアグネスデジタルが足をバタバタさせている。 「何?マッサージがしたい?」 「してくれっ!見ればわかるでしょっ!!」 むくれるデジタルに、夫がやれやれと腰を上げて膝立ちでまたがった。 寝間着の上から腰に親指を当て、ゆっくり力を込めて押し込む。 「おぉほぉ~~♥」 快感の嘶きが漏れる。 2 「ふぅ、ふぅ~、いいよぉ、気持ちぃい~♥」 「かなり凝ってんなぁ。」 押す位置を少しずつ肩へと近づけながら、背中をもみほぐしていく。 「最近さぁうぅっぐふぅっ♥ 疲れがなかなかあぁっ♥ 取れないんだよねえんんっ♥トシかしらぁはあっ♥」 快感を口から漏らしながらデジタルがボヤいた。 「単に疲れ過ぎだと思うけどね。」 「疲れすぎぃ?いひぃっ♥」 振り向きかけた首が仰け反り、デジタルが愉悦の声を上げる。 3 「お前毎日走ってるだろ。」 「うんっ♥ うんっ♥」 「今のお前は、ある意味現役時代よりハードな事やってんだぞ。」 「うぐふぅっ♥ そーおっ?ほぉっ♥」 「そうだよ。お前現役時代合計で二年ぐらい休養してるんだぞ?」 「そうだっけぇええぇーーーー!!!♥♥♥」 快活そうなアグネスデジタルだが、その成績と同じく出走期間にもかなりのばらつきがある。 関節炎を発症した時は勿論、大敗を重ねた後や海外遠征後にも休暇期間を取っており、長い時では丸一年一切レースに出なかった時期もある。 「もともとお前は疲れが抜けにくいんだよ。そこを気力でカヴァーしちまうから余計に体に無理が出る。」 「そんなことおほぉっ♥ 言われてもぉーっ!!♥♥」 今の彼女はトレセン学園でコーチングスタッフとして働いている。トレーナーほどの責任はないとはいえ、複数のウマ娘の世話をする以上教え子ほどには休暇を取れない立場だ。 4 「単純に走り過ぎなんだよ。はい終わり。」 「んぐふぅ~……♥ ありがとござましたぁ~♥♥」 夫が体の上から退いて暫く余韻を味わった後、デジタルは徐に起き上がった。 「よーし、ではアタシも揉んであげよう!」 「お、いいのか?」 夫がベッドに伏せると、デジタルはその背に足をかけた。 「待った!乗る気かっ!それはいくら何でも」 重い、と言いかけて 「俺の背中には強すぎる。」 5 「今重いって言おうとしたね?」 「言わなかったんだから見逃してくれよっ!」 「結構憧れてたんだけどなぁ、お父さんの背中踏み踏みして気持ちいいって言ってもらうの。」 「……わからんでもないけど。あれ子供が乗るのでも本当はダメなんだぞ。」 「ダメなの?!」 「背中全体を押し込んで胴体を床と挟み込むから、背骨越しにあばらの関節にダメージが入るんだよ。足じゃ手みたいな細かい力加減も出来ないし。 お前のパワーで背中踏まれたら冗談じゃなく死にかねない。」 「そうだったのかぁ……。」 「めんどくせえけど手でやってくれや。」 「乗れないならいいや寝る。」 「お前っ……まあいいけどさ。」 いそいそと自分のベッドに戻る背中を見て、夫も仰向けに寝直す。 6 「それにしても、疲れすぎかぁ。」 デジタルが天井を見ながらぼやいた。 「好きなことを好きなようにしてただけなのになあ。」 「現役時代だってそうだろ?」 「そうだけど。でもでもレースもしてないのにっ。いつも普通に過ごしてるだけなんだよ?」 「お前の普通は、お前の体にとって普通じゃないんだよ。」 「なにそれ。」 天井を見るのをやめて、横のベッドの夫の顔を見る。 「自覚はあるだろうけど、お前は『ウマ娘が好きっ』って気力で動けちまうんだよ。 それはお前の長所だし凄い事だけど、それって本当は非常時にだけ出していいパワーなんだ。」 7 「呉一族秘伝、『外し』。」 「似たようなところはある。お前は呉の血筋じゃないから体が耐えられない。」 「わかりやすい例えだっ!」 「そうかぁ? 兎も角、短いスパンで休養を取るサイクルを探さなくちゃな。」 「休養を取るサイクルかぁ……。」 「トレーナー資格試験の勉強期間だと思えばいいさ。」 どうしたものか、と悩む妻に、夫はできる限り明るい声で言う。 「ウマ娘ちゃんの顔が見れなくなるのは嫌だなあ。」 「別に引きこもって過ごせって訳じゃないんだ。休むだけじゃなく、走る回数を減らすとか、寝る時間を早くするとか。色々合わせ技で疲れが取れればいい。」 「……ありがと。」 8 「おう。……何だい?妙にしおらしいじゃないか。」 「現役時代もこうしてアタシの事心配してくれてたのかな、って思ったらさ。 アタシ『休め』って言われるたびに不貞腐れてたけど……。ごめんね、今更だけど。」 「……やっぱり疲れてるよお前。」 「何?どゆこと?」 呆れ声の夫に起き上がって不機嫌な声を浴びせる。 「そんなに素直に昔の事を謝るなんて。」 「あのさぁ、」 「来週はどかーっと休んじまえよ。」 「そんなこと……」 「お前はさぁ、ウマ娘が好きな自分に本当に素直だけど。偶には裏切ったっていいんだぞ?自分なんだから。」 デジタルの目が見開かれる。 9 自分だからこそ自分の事を裏切れないのだ、などと青臭い反論はしない。 自分と言うものは移ろう。それを知っている。信念がいくつもあり、その間をふらふらとして、あっちで人類の平等を叫んだと思えばこっちで嫌いな人など死ねばいいと思う。 一貫性などない、それこそがヒトの強さだ。だからこそ、原理主義に陥らず妥協が出来、色んな人と内心はどうあれ手をつなぎ合えるのだから。 ウマ娘ちゃんを愛しているアグネスデジタルを裏切る自分が居てもいい。それは、競走バとして最初に休養を呑み込んだ時からわかっていたことだ。 ウマ娘ちゃんと同じぐらい、でも全く別の感情で愛する人と共に生きている今ならば、猶更に。 そんな夫にそう言われたら……妥協してあげるしかないかなぁ。 「わかった。掛け合ってみる。」 「俺も、いい休養になるよう工夫するよ。」 「絶対だからねっ!?」 眉を吊り上げる妻を見て、ああ、と優し気に夫が笑う。 それを見て、妻もなにがおかしいの、と言いながら苦く。しかし穏やかに笑った。 -- だからありったけを 1 「アグネスデジタルを、抱く。」 生温い風が吹いた。二人の心を吹き抜ける風だった。 「アグネスデジタル、を。」 「抱く。」 さっきよりも力強く、宣言した。 「……行くか。」 「行こう。」 そういうことになった。二人はアグネスデジタルを待ち受けるべく零式と名付けたハイエースに乗り込んだ。 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! ラジオドラマ『風で勃ちぬ』第4話、「デジたんで抜かねば」をお送りしましたっ! 2 「?」「???」「なにこれ……。」 いいですねいいですね、良い反応ですっ! 「アグネスデジタルは頭がおかしい」 だからスパチャで罵倒するのはやめてくださいっ! まあねぇー、あの。架空のラジオドラマを冒頭にぶつけてみようか、となって、ふと 『アグネスデジタルを抱く』というワードが浮かんだのです。 じゃあそれをフックにちょっと書いてみるか、となったのでこうなりました。 「???????」「やっぱりアグネスデジタルは頭がおかしい」 アタシもそう思う。 「デジたんの描く同人誌っていっつもこんなバカみたいな展開なの?」 だはははははっ!流石にそんなことはないですねっ!! 3 皆さんリアクションに困っておられるようなのでその間にぶつけましょう。 デジたんの3Dモデルお披露目ぇ~~~!ドンドンパフパフ。 「?」「?」「???」 はーいこちらが今回お作り頂いたデジたん3Dモデルですっ! 立ってみるとほら、リアルデジたんと身長完全におんなじ!動きもシンクロしてますっ!! 増やしてみましょう。 I know, I know I've let you down I've been a fool to myself 「やめろ補完すんな」「????」「何で増やすの……。」 世界の終わりという感じがするでしょう。 あ、それと来月の一週目は配信をお休みする予定です。 4 「情報量が、情報量が多いっ!」「今日は一段と訳が分からんぞ。」「やっぱりアグネスデジタルは頭がおかしい」 でへへ。 まあまずはお休みの話からしましょうかね。 お仕事の疲れがたまったのでちょっと長めの休暇を取るつもりなんです。 具体的にどこが悪いって事ではないのですが疲れが取れないので夫に相談したところ、疲れすぎだと。 現役時代も散々休んでたろと。いう事で、体力回復のために暫くお休みになります。 「ゆっくりやすんで。」「お大事に。」「大事になすってください。」 ありがとうデジたんは骨董品ではありませんよっ! 「3Dお披露目をサラッと流すな。」「今日マジで何なんだよ。」 ええーい!分身の術!! ルミナスイリュージョンッ!!! 5 「キレキレだっ!」「ウマ娘ってすげえ、再現できるんだアレ。」「コメントを拾ったなら質問に応えてくれよ。」 ワハハハッ!今日はちょっとテンションがおかしいので色々ミックスしてぶつけております。 あのねえ、3Dモデル貰ってめっちゃっテンション上がってるし、次の休みも別の配信者の方とお泊りするんだぁ。 デジたんだって色々ミックスしてぶつけられちゃったんだからキミらだって受け入れてよ! ここはデジたんの日記帳!!キミたちはデジたんのサンドバッグ!!!! 「酷い」「でもデジたんのパンチならちょっと浴びたいかも」 シュッシュッシュッ! 見よう見まねフリッカージャブですがいかがですかっ! 「何なんだよこの配信は…」「誰か説明してくれよぉおおーーーっ!!」 LONELY WAY こ~の~ぼ~くの~♪ LONELY WAY お~も~う~まま~♪ はし~れ~め~ろ~す~の~よ~お~にぃ~♪ 6 そんな訳でこんな時間ですねえ。 架空のラジオドラマもぶつけられましたし3Dモデルお披露目も出来ましたしお休み告知もしましたし、これ以上デジたんに何を望むんだ君らは!? 「冷静」「クールダウン」「リラックス」 はい。 3Dお披露目は流石に雑だったと思いますね反省です。PRISMAみたいに設置してデジ民が間違って声掛けたらピンが立つようにします。 「シージやってんのデジたん」「シージ配信して。」 ごめん今はやってないんだよねえ。うわALIBI追加ってそんな前かぁ!! 「配信者とお泊りって、オフコラボって……ことっ!?」 そうだよぉでへへ今から楽しみですじゅるりら♪ 誰とコラボするかは今は……あ、言っていいの? うふふ、オフコラボのお相手様はっ!!スレンダーで凛々しい、樫も(この配信は終了しました) -- 水と油は熱して混ぜて乳化させるに限る 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですっ! 「パカライブ0期生、樫本理子です。よろしくお願いします。」 ということでねっ! 今回はオフコラボということで。初顔合わせですよねっ? 「そうですね。今はトレセン学園と契約しているある温泉旅館の一室で配信をさせていただいております。 都合上機材は余り豊富ではないため、映像や音声のクオリティは通常より下がってしまうこと、お詫び申し上げます。」 真面目ですねぇ樫本せんせぇ。 「現状の説明をするのは当然の事です。」 流石ですっ! さて樫本せんせぇと言えば理事長代理時代の話ですが。 「いきなりですか……。」 2 やっぱり視聴者さんが一番気にしているところですのでっ! 「そうですね……。 かなり批判が多かったことは自覚しています。 しかし競走バ達に規律を求めたことについては間違ってはいなかったと今でも思います。ただ……。」 ただ? 「正しさは一つではなかった、ということです。 間違いとは競走バの力が発揮できない事、不平等がある事だと思っています。 しかしそれを打破する正しさは一つではなかったという事です。」 なるほど。では樫本せんせぇは別の正しさを見つけたと? 「そうです。いや、見つけた、という言い方は正しくありませんね。 わたしも嘗ては、ウマ娘の好きにさせる事こそ正しいと思っていました。 しかしその結果、担当していたウマ娘は故障してしまった。」 3 それは……公表されている話ではありますが、改めて聞くと重たい。 「この辺りの詳細は自分のチャンネルの方で動画にしているのでそちらを見てもらえればと思います。 ここでは概略を話すにとどめますが……怖かったのです。ウマ娘の故障が。」 それは当然の事です。 「だから恨まれてでもブレーキ役をやるべきだと考えました。デジタルさんのトレーナーさんもそうでしょう?」 うぐっ!確かにデジたんのトレーナーもブレーキ役をしてくれています。 「走ることが楽しいウマ娘にとって、ブレーキが不快な存在なのは理解しています。 しかし、好きなように走らせてはいけない。走るのが好きなアスリートが好きなように走るというのは、言い方は悪いのですが、自滅に近い。」 わかります。デジたんも今コーチングスタッフをやらせてもらっていますが、どこかでブレーキかけないと壊れますよね。 「トレーナーの仕事は正にブレーキだと思っています。走りたくないウマ娘はいない。でも走りたい気持ちとその気持ちに応じられるだけの肉体が伴っているかは別の事。 と言うより、ほとんどのウマ娘は、放っておくと壊れるまで走ってしまうんです。」 4 おっと問題発言? 「デジタルさんも現役時代、かなり休養を取っていましたよね?」 うぐぐっ! はい。トレーナーに指示されて何か月か休養してました。 「走りたかったでしょう?」 うぐぐぐっ! 「そうなんですよ。アスリートは無理をしたがる。いや、無理をして自分の限界を超えていくのが仕事なのだから当然ではあります。 でもその意欲が旺盛すぎると、簡単に体を壊してしまう。実際にそれを目にしてきました。」 うーん……反論できません。 「ふふ、反論する必要はありません。わたしは『限界ギリギリを見極めるのはトレーナーの仕事』だと思っていました。 でも、それでメンタルに影響を出しては本末転倒ですよね。心身ともに健康であって欲しいからこそ管理するのに。」 5 せんせぇの笑顔可愛いですねっ! 「っっ!今はそんなことはいいでしょう?」 一番大事なことですよ、ほら笑って笑ってっ!? 「調子に乗らないでください! 話を続けます。 あの時に、ウマ娘のメンタルまでは完全に把握することは出来ない、と改めて思い知ったのです。 ヒト同士ですらできないことがウマ娘とトレーナー間でできるはずがない。 出来ないことを出来ると思い込んで、無理やり実行すれば当然歪みが出る。 わたしはそれを自覚していたつもりですが……。見事に敵役になってしまったという訳です。」 グロロロロ……心は正しくても力は暴走するということですね。 「心が正しくなかったという事だと思いますが?」 はい。あっ、もう配信時間ギリギリですねっ! 6 「愚痴に付き合わせてしまって申し訳ございません。最後に何か楽しみを提供できればと思います。」 リングフィットアドベンチャー持ってきましたけど。 「……うっ……。」 あははは、狼狽えてるっ♪ 「いいでしょう、それが視聴者の望むことならば。」 おお、言いましたね? 「その代わり手伝ってくれますよね?」 そう来ましたか、当然です。ウマ娘の体力を改めてお教えして差し上げましょうっ! 「楽しみにしています。……あれ?このケーブルはどこに?」ええっとですね、これはここに、それだと本体が、あれそうですねどうするだろこれ?待ってくださいここがこれに繋がってるのでこの線は(フェードアウト) -- 代わっても変わらないもの 1 姿見の前に生まれたままの姿を見せる。 こんばんは、アグネスデジタルです。 はい、元六冠バのウマ娘ちゃんアグネスデジタルが自宅の姿見にすっぽんぽんの姿を見せているのです。 体全体を眺めても143cmの体にグラマラスさは全然無くて、お腹は現役時代よりちょっとぽっちゃり。 顔を鏡に近づけるとシワ……がまだありませんっ!ありませんけどっ!!お肌の弛み具合は油断するなと指先に感触で応えてくれます。 上から下までもう一度姿見を見直します。そこにはどうしようもなく『アタシ』がいました。 そりゃ他人よりちょっとかわいい自覚はありますけど?『アタシ』というのは『アタシ』の基準であって、イイとかワルイとかないのです。 『このアグネスデジタルというウマ娘は、デジたんにとって魅力的なのか?』 結論は『自意識』という強固な壁に阻まれて出せませんでした。『アタシ』は『アタシ』であってウマ娘でもヒトでもないのですお分かりいただけるだろうかこの辺り? 2 「お帰り。」 寝室に戻るとベッドに身を横たえた夫が目を覚ましていました。 「起きてたんだ。」 「寝付けなくてな。そっちは?」 「大丈夫。」 そう言って自分のベッドに入りました。 「アタシの事好き?」「急に怖いな。」 ベッドに寝そべりながらお互いの顔を向け合います。 「アタシ奇麗だと思う?」「お前は奇麗だよ」 「もしさあ、アタシがキミになってキミがアタシになったら変わらず愛してくれる?」 「どういうこと?」 ああ、当然の疑問ですよねえ。 「もしもキミがアタシみたいで、アタシがキミみたいだったら。」 「つまり、俺がお前みたいなウマ娘ヲタクで……?」 「アタシがキミみたいな頑固で不器用なウマ娘だったら。」 3 「お前みたいな性格のトレーナーなら、頑固で不器用なウマ娘にでも遠慮なく近づきそうだな。」 「キミみたいな頑固で不器用なウマ娘ちゃんは、ファンです好きですって言ってくるトレーナーを突っぱねられないだろうね。」 夫が苦笑いした。アタシも苦笑いした。 必然がそこにあるだけだった。例えアタシ達が正反対でも、出会っていればきっとこうなっていた。 こんな風になる配役みたいなものが予め決めてあって、そこにアタシ達がハマっただけだ。 しばらく前からそんな考えに取りつかれています。 イヤじゃない。 寧ろ嬉しい。 アタシ達は、アタシ達だから、出会い、一つになったのです。 自分から見た自分を好きになれなくても、その分だけ好きになってくれるあなたがいる。好きになってあげるアタシがいる。 まあいい歳こいてアオハルなコトで。まずいなぁ、ちょっと今日は寝付けないかも。 いいや、今日はもう少し、必然について考えていたいから。 4 ――――さてご忠告申し上げます。ここから先は蛇に足を描いてしまいますっ。 もしもベッドとベッドの間の棚の、引き出しに、こんなものが入っていたら。 「何だいそれ。」 取り出したのは両端に端子らしきものが付いた白いコード。その真ん中にはこれまた白い、そして四角くて重たい何かが付いています。 「タキオンさんからもらった人格交換ケーブルですっ!」 「怖ぁっ!」 夫が跳ね起きました。 「真ん中の機械にお互いの記憶を保存して、そこから再現した人格が相手の脳の制御を一時的に奪うんだって。」 「精神隷属器じゃん……。」 「タキオンさんは『残酷な見世物』って呼んでた。」 「そんな名前の物を作るなタキオン!他人に渡すなタキオン!!」 「じゃあ首筋出して。」 「躊躇えよぉーっ!」 ウマ娘パワーで抑え込んだ夫の首と自分の首に、ケーブルの先をぐさり。ぐさり。 機械のボタンをスイッチョン。 5 「……はっ!」 意識が飛んでどのくらい経ったのでしょう。アタシは夫でした。 「おお、体がデカい。」 「やっと目覚めたか。」 アタシの声が上から聞こえてきました。ベッドの上から覗き込むアタシ。……アタシ? 「ウワーッ!」 若い!姿見の中のアタシと全く同じアタシの筈なのに、若く見える!可愛く美しく、そして気高く見えるっ!! 「キミッ、キミッ! キミアタシの事好きすぎでしょっ!?!?」 「俺そんな声してたんだな、自分で聞くと変な感じだ。」 「アタシの声でそんな口調で喋られると脳がバグる……。」 「それにしてもお前から見た俺ってこんな感じなのか。」 「イヤーッ!グワーッ!!ヤメテェーッ!!!」 照れくさい!照れくさ爆弾!!顔を背けながら両手をバシバシと虚空に押し出して恥ずかしさを表現します。 6 暫くキャイキャイしてゲラゲラした後、どちらともなくスン……となって。ベッドに横たわり、二人して『残酷な見世物』のスイッチをオフに。 ……そして目覚めるとアタシは1/1スケール等身大のアタシでした。 先ほどまで夫の体の中にいた感覚を反芻します。 「めっっっっちゃいい体験でしたっ!!!」 「いい体験……。」 夫の呆れ声が横のベッドから聞こえます。 「……お前は本当に凄いウマ娘だよ。」 「ふふーん♪」 勿論皮肉だってわかってますとも! でもいいんだ、それは呆れてしまったキミの負け惜しみだから。呆れさせたら勝ちなのです。しょうがないなお前はって思わせたら勝利なのです。 呆れるとは飽きられるということ。諦めて受け入れられるということ。諸説ありますが。 昔っから道化役のアタシには、呆れられることは一番の許しでした。おっとしんみり警報!そんな話がしたい訳じゃない。 ベッドから飛び出しキッチンへ。冷蔵庫からビールを二缶取り出すとバタバタとまた寝室へ。 「ごめん今日飲みたい気分!」「……俺も。」 カシュっといい音が響いて、夜更かしの約束が交わされるのでした。 [余談]アドバイスを受け、改行を空けないようにしてみました。 テキストエディタで見ている自分は改行した方が読みやすいのですが、 スレだと弛んで見えるのかもしれません。 あと本文を6レスに収めるのめっちゃ楽になった。 -- 夜の勇者アグネスデジタル 朝の皇帝樫本理子 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊の、アグネスデジタルですぅ~。 ひそひそ声で失礼します。 本日は樫本せんせぇと温泉旅館でオフコラボ、ということでお送りしておりますっ。 いやぁ凄かったですねえ樫本せんせぇのリングフィットアドベンチャー。 なかなかどうして動きは的確。そしてあっという間に逆噴射。 お陰で殆どデジたんがプレイすることになりましたねえ、まあアーカイブを見てくださいよ、デジたんの横でくたびれてるせんせぇが可愛いったら。 さて、あの後二人で温泉に入りまして、部屋に戻るとせんせぇはあっという間に眠ってしまわれたのです。 (カメラを動かす音)ほら、こちら♪ 非常に姿勢良く気を付けの姿勢で眠っておりますね。 お陰で寝息に合わせてお布団が上下するのがおわかりいただけますでしょうか♪ よっ……(カメラを固定する音)と。 折角ですから皆様には樫本せんせぇの寝顔を堪能していただきつつ、デジたんおしゃべりさせていただこうと思いますよろしくお願いしますっ。 2 「リコちゃん可愛い」「リコちゃん可愛いな…」「リコちゃんはいつでも可愛いだろ」 あ~せんせぇのチャンネルのリスナーさんも見ておられますねえ。いいなぁ愛されてるなあせんせぇ。 さて何故オフコラボをすることになったのかと言うのをお話ししましょうかねえ。 前にもお伝えしましたが、デジたんは今、本業の学園スタッフの仕事をお休みしております。 疲れがたまっているので一週間ほどドカーンと休みを取ろうという事になりまして。 でもただじっとしてても心が塞ぎますし、デジ民(たみ)の皆さんとも交流したい。 で、どうせ休むんなら温泉行こうかと。 一人で行ってもつまらないなと。 じゃあ折角ならオフコラボしよう。 それなら今までオフコラボしてない人がいいよね、ということで樫本せんせぇに声をかけたのです。 意外性の人選だったと思いますっ! でも仲はいいんですよっ!配信で特に触れなかっただけで、一緒にご飯食べに行ったりしてますっ。 3 「確かに意外性はあった」「理子ちゃんもデジたんも割と誰とでも仲良くできる人だよね」「理子さん俺はお堅いイメージあった」 ですよね、せんせぇは誰ともお付き合いできる人です。所謂『話の分かる人』なのかなって思いますね。 言葉を尽くして説明すればちゃんと聞いてくれるし、意見も返してくれる。 本人今寝てるから言っちゃいますけど、デジたん樫本せんせぇのそういうお話してて気持ちいいところが大好きですっ♪ 「デジたんがヒトに興味を持った!」「ついにデジたんウマヲタを卒業か」 デジたんはウマヲタを、やめへんでぇーっ!! 「寝てるんだから静かに」 ……ですねっ。 今はお仕事にも余裕が出来たのか、配信でもお優しい表情を見せる事も多いですよね。 競バの専門的な話もしてくれるのでデジたんもチェックしてます。 今日も配信外のところで色々トレーナーとしての経験談とか聞かせてもらいました。 ちなみにトレーナー試験は一発合格したそうです。何かそんな気がしてました。 4 「ごめん理子ちゃんの寝顔が可愛すぎてデジたんの話全然入ってこない」 うぐぐ、まあいいでしょう。この配信はせんせぇのリスナーさんも見ておられますし。 しかしせんせぇのリスナーさん達はデジたんに感謝してください? リコちゃんせんせぇの寝顔だなんてご自身の配信では見ることなどでき……あっ、いや。 「たまに見てる」「よく寝落ちしてる」 そうなんですよね……。配信者がよく寝落ちしちゃダメだよっ。 デジたんも初めて見た時はおいおい大丈夫かと思ったんですけど、今日の寝付きっぷりをみて確信しました。 これはあの方の健康の証なのだなと。 最近は寝落ちする前にちゃんと配信切れるようなったみたいですしっ。ブツンッって。 「そうそう、ブツンって切るんだよね」「ねむねむで操作してるのがよくわかる」 ねー。器用なんだか不器用なんだか。このデジたんには出来ない感じの可愛さがねぇ、いいんですよ。 これで喋らせると理路整然としてるし、ウマ娘ちゃんへの愛にも満ちているし。急なお申し出でもこんな風に一緒にお泊りしてもらえるほど付き合いがいいし。 そりゃ人気にもなりますよねーって。 5 「喋り上手いよね理子ちゃん」「筋が通ってて説得力があるから聞いてて気持ちがいいよね」 そう!ホントそう。配信外でのお話もホント楽しいの。 さっき言ったみたいに打てば響くし、知識量凄いから好きな事喋ってもらうだけでもめっちゃ為になるし。ウマ娘ちゃん以外でこんなに好きになった女性は初めてかもしれません。 「おっ浮気か?」「不倫だ」「浮気する前に事前に書面にして配りなー」 きゃぁ危ない危ない!清いお付き合い!清いお付き合いですっ!いや清さは関係ありませんねっ! 「静かに…」 はい。 「デジたんも寝な」「こういうことしてるから疲れ溜まるんじゃないの?」 あはははっ。おっしゃる通りですね。大人しく寝ます。 そうだな、折角だし1時間ほどタイマーかけてこのまませんせぇの寝顔を配信しておきます。それではバイデジ~♪ 6 おはようございます。モーニング樫本の時間です。 「おはリコ」「おはリコ」「おはリコ」 はいおはリコです。今は午前5時39分ですね。 先ほどアーカイブを見ましたが、昨夜はアグネスデジタルさんがわたしの寝顔を配信しながら好き勝手にお喋りされたようで。 なので本日は特別編としてアグネスデジタルさんの寝顔を配信していきます。 『やったぁあああああ』 『やったぁあああああ』 『じゅるりら』 『じゅるりら』 『じゅるりら』 『じゅるりら』 ・ ・ ・ [余談]前回のこんデジのレスで「樫本先生は配信を頻繁に寝落ちしてそう」というレスがいくつかあったので使わせてもらいました。 -- 愛の前には何もかもが当て馬になる 1 「たっだいまぁ~♪」 「おう、お帰り。」 時刻は15時20分を少し過ぎたところ。我が妻アグネスデジタルが休養の温泉旅行から戻って来た。 「休めたか?」 「いやぁ疲れちゃったかも?」 「バーカ。」 「うんむむむ……。キミも樫本せんせぇと一緒に過ごせば分かるよっ!」 「知ってる。」 引退後トレセン学園のスタッフとなった妻は、有難くも元担当トレーナーの俺と結婚してくれた。 で、ここ最近は疲れが目立っていたので、思い切って一週間の休暇を取ってもらった。 まさかその最後の2日を樫本理子元理事長代理との温泉旅行に費やすとは思っていなかったが。 2 「ああ~そう言えばキミも樫本せんせぇと温泉旅行行った事あるんだったね。」 「温泉旅行行ったのはキャロッツのトレーナーだよ。」 「あれ?そうだっけ。」 アオハル杯。 嘗てトレセン学園で行われていたチームレース。 その復刻にあたり、学園所属のあるトレーナーと当時理事長代理を務めていた樫本先生が激しく対立した。 ……したのだが。 実際にはそのトレーナーと樫本先生はプライベートで接触を行い、ほぼ和解に近い所まで辿り着いていたそうだ。 とは言えそれは飽くまでプライベートでの話。育成方針まで曲げられるほど両トレーナーは軽薄でもなければ柔軟でもない。 清々しいほどの『それはそれ、これはこれ』の精神で、アオハル杯を堂々と戦った。 アグネスデジタルはその『あるトレーナー』側の助っ人として参加していた。 キャロッツのトレーナーはデジタルの能力に「本当にどこでも戦える」と舌を巻いていた。当時の俺はそう言われてそれなりに鼻が高かったもんだ。 3 兎も角、樫本理子というトレーナーは敵対している相手とでも親しくなれてしまう器の持ち主、ということだ。 デジタルから彼女と一緒に温泉に行きたいと言われた時には面食らったものだが、同時に樫本先生なら受け入れてしまうだろうなとも思っていた。 「まあいいや、これお土産っ。」 「おう、ありがとう。」 定番の温泉饅頭の箱を受け取り、キッチンへと向かう。 箱を棚に収めている間に、「ちょっとお昼寝してくる~。」と言う声が聞こえた。 何のために温泉に行ってきたんだか。だが、あの樫本先生と二人っきりとなれば仕方ない。 そもそも午前の便で帰ってくるはずだったのに「お昼樫本せんせーと一緒に食べて帰りたい」と連絡が入った時点で予感はしていた。 樫本理子はトレーナーとしては非凡も非凡である。 『徹底管理主義』を掲げる彼女の育成方針は一見するとガチガチに縛り上げて一切の自由を許さない管理体制に思える。 しかしアオハル杯で樫本率いるチーム・ファーストのウマ娘達が見せたパフォーマンスは途轍もない物だった。 4 チーム・ファースト所属のウマ娘は、誰もがその潜在能力を存分に発揮していた。しかもレースが進むにつれてその能力は右肩上がり。 樫本理子の掲げる『徹底管理主義』が、『絶対にウマ娘を故障させない事』を目的としていることが明らかになった今では、それがどれほど異常なことかがよくわかる。 トレーニングとは限界への挑戦だ。今よりも速く、今よりも力強く、今よりももっと長い時間走れるようになる為に肉体を痛めつける。 一方で樫本流の徹底管理主義はウマ娘の故障を許さない。 それはつまり、能力の限界を引き延ばしつつも肉体の限界は決して超えないギリギリのラインを見極める事を意味する。 そんな事が出来れば苦労はいらない。だが樫本理子はその不可能に近い難題に極めて高い水準で応えていた。 樫本理子がチーム・ファーストでそのトレーナーとしての手腕を発揮すればするほどに。 彼女の言う『徹底管理主義』が彼女にしか実現不可能な高過ぎる理想であることが浮き彫りになる。 その様はまるで、彼女の理想が拒絶した筈の、極限を超えて走り自滅するウマ娘そのものだった。 5 挫折を味わった天才トレーナーとの会食は値千金だろう。土産を棚に収めると、俺はデジタルの眠る寝室に向かった。 ノックはせず、ゆっくりと音を立てないように扉を開ける。 「お、何だい寝顔を見に来てくれたのかな?」 「ノックをするべきだったかな。」 デジタルはベッドに腰かけてスマホを弄っていた。 「いいさ、俺とお前の仲だ♪」 「寝るんじゃなかったのかよ。」 「せんせぇとの会話を反芻してると、メモりたいことが色々あってね。」 「無理もないな。」 その横に俺も座る。 6 「俺だってあの人の経験談は幾らでも聞きたいぐらいだ。」 「あっ浮気かな?浮気だよこれ!」 「バカ言うな。お前以上の女がこの世に居てたまるか。」 「……ホントそう言う歳に合わないこと言うのやめた方がいいよっ!」 そう言って耳をピコピコさせながら目を逸らす。 「浮気だなんだとシャレにならないこと言いだすからだ。」 「それでムキになって妻を口説いたってワケ?軽い冗談に重たいパンチ返してきやがって。」 「軽く無いからカウンターが有効なんだよ、この小娘が。」 「小娘じゃありません成人女性ですぅーっ!!ああーっもう!何メモするか忘れちゃったじゃんかっ!!」 「いいんだよ忘れちまえよ。」 俺はデジタルの軽い体を持ち上げて、放り投げるようにベッドに横たえる。 7 「ちょっとっ!」 抗議を無視してスマホを取り上げ、掛け布団を被せる。 「疲れ過ぎだって言っただろ?大人しく寝とけ。」「やぁーっだあぁーっ!!」 「やだじゃねえんだよ、温泉旅行から帰って来て昼寝がしたいって時点でおかしいんだよ。休めてねえじゃねえか。」 「掛かり気味なのは自分じゃどうしようもないんだもんっ!」 「うるせえっ!そんなんだから疲れ過ぎるんだよ!!」 「だからどうしようもないって言ってんじゃん!!!」 「じゃあトレーナーがどうにかするしかねえなあ……。」 「……っ。……っどうしてくれるんですかっ。」 あぁーー……。こんなどうでもいい一言で瞳を潤ませやがって……。 俺が何も言わずに押し入れから『汚れてもすぐ洗えるタオルケット』を取り出すと、妻もいそいそと掛け布団と枕を取っ払い準備を始めた。 寝るしかないぐらいに疲れ果てる準備を。 [余談]ここまでが育成実装前の作品になります。 以下は関連性のない新生アグネスデジタルとなります ----- 五回目ですよ五回目二人っきりで温泉旅館にっ!五回目っ!傍から見たら完全にそーゆー仲じゃないですかって気づいたら創作意欲止まりませんよねフヒヒ誰を当てはめて書いたらイイネタになるでしょうかとか考えてたところにこれなので誰か助けてください 1 「なっ、何を言っているのかっ、わかっているのですかっ!?」 「結婚を前提に、付き合って欲しい。」 正座で向き合う、真剣なトレーナーさんの目。 ……っこっ。こんなっ……!! こんなに緊張したレースは無いかもしれませんっ……!! ―――― 五回目なんですよ。トレーナーさんと二人っきりで温泉旅館。 最初の時はね?「ちょっと怖いかも」って思ってました自分で誘っておきながら。 でもでも全然心配要りませんでしたっ! トレーナーさんはあたしのウマ娘ちゃんへの愛をどこまでも聞き込んでくれて……。理解してくれました。 「会えてよかった」なんてドラマチックな事も言ってくれたんですっ! あのトレーナーさんは言ってくれたんですっ!! こんな……こんなあたしにですよっ!? 2 その後も大きなレースで勝ったり、時には酷い負け方をしたりと節目節目ごとに二人で温泉に行きました。 嬉しいことも悔しいことも楽しいことも悲しいことも、みんなみんな話して、スッキリ幸せになってチェックアウト。 ……んでも。100%全く完全にハッピー♪なだけではなかったのです。 お風呂に浸かったりお布団に入ったりした時にふと考えちゃってました。 最初の時の気持ち。中等部とはいえ本格化してしまったウマ娘であるあたしと、大人の男性が二人で宿泊。 そんなのもうぴょいじゃん。そんなのもうぴょいじゃないんですかっ!? いえいえこのアグネスデジタル自分が何者かはよぉ~っく存じておりますっ! そもそもあたし自身、今まで温泉に泊まるたびに夜通しお話してそのまま寝ちゃっていたのですからっ! トレーナーさんに万一、いや億が一、そんな気持ちがあったとしてもっ! ロマンスにならないのはトレーナーさんではなくあたしが原因。 それで最高に幸せになれるあたしが原因ですっ! 3 大体あたしは学生でありトレーナーさんの担当ウマ娘。 トレーナーさんにとって色んな意味で恋愛対象にはなってはいけない存在です。 そういうのこそ美味しいんですけどっ♪ いやいやいやそれは飽くまでデジたんの頭の中や二次元の話でありましてぇ、 デジたんにはまだまだ走りたいレースがあり、叶えたい夢もあるのですっ! ……ん?だったらデジたんが全部走り切って夢を叶えたら?その後は? 受け入れちゃってもいいって、ことぉ!? 落ち着きなさいアグネスデジタル、Be cool, Be coolです。 いいですかデジたんあなたは学生で、まだまだレースが控えています。 トレーナーさんだってそんなこと合点承知乃介です。 ロマンスを夢見るのはいいですが、リアルとフィクションの区別はつけなさい。 ということは夢見るだけなら許される?いやいや違う違うっ!! 4 そんな感じで毎回温泉旅館では脳の栄養を使い尽くして眠ってしまっておりました。 で、五回目の今夜。デジたんのいつものウマ娘語りが一段落したところに、トレーナーさんから、「聞いて欲しいことがある」と。 ピシリ。空気が固まる音が確かに聞こえました。 ゴクリ。デジたんの喉から息を呑む音がしました。 真剣なお話。真剣に受け止めなくてはならない。 引退、辞職。あるいは億が一のロマンス。全部覚悟して、もう一度唾を呑んで、しっかりとお目を見据えます。 「……何でしょうか。トレーナーさん。」 「結婚を前提に付き合って欲しい。」 現実の言葉を前に、覚悟なんてターフの芝のように散りました。 5 思い返して見れば兆候は色々ありましたよ確かにっ!? 挨拶したいからってアタシの里帰りについてきてパパママに「お世話をさせていただいております」と頭を下げたりっ! 僕の親がファンだからと言って自分の里帰りにアタシを引き連れてご両親に引き合わせたりっ!! 「まるで結婚するみたいですねっ!」って茶化したら珍しく歯切れの悪い言葉で「……そうだね。」と応えたりっ!!! ていうか何で気づかなかったんだデジたんっ!? いやわかっています。わかっていて、気づかないふりをしていたのは、デジたんの方。 自分にはロマンスなんて似合わない。そう思っていた方が楽だったから。ヲタクのモテなさ、ヲタクのダサさこそをアイデンティティだと思っていたから。 そんなアタシのガラスの鎧を、愛と言う名の金槌が粉々に打ち砕いたのでした。 6 「けっ、けっ、結婚~~~~~~!?!?!?!?」 「勿論今すぐ返事をしなくてもいい。」 「いやいやいやいや、デジたんまだ学生ですけどっ!?」 「結婚は卒業してからの話だ。」 「競走バですけどっ!?!?」 「引退した後でいい。」 「そんなのいつになるか分かりませんよっ!?」 「五年でも十年でも待つ。」 「アタシじゃなくてもっと綺麗で、可愛いウマ娘ちゃん沢山いるじゃないですかっ!!」 「僕は君と生きていたい。」 「~~~~~~~っ!?!?」 強い……強すぎるっ!! 様々なロマンスやてぇてぇを思い描いては描き上げてきたあたしですがっ!!現実、そして我が身と言うエッセンスがここまでクリティカルなものだとはっ!!!! 7 ですがここで気絶してはトレーナーさんの本気に御無礼と言うもの。眩暈でぐらつく視界に必死で耐えつつ、言葉を探します。 「……もし、もし嫌だと言ったら?」 「君のトレーナーを降りる。」 「バカァーーーーッ!!!!」 今まで出したことの無い大声が胸から飛び出しました。 「デジたんを放り出す気ですかっ!唯一のっ!最高のっ!!理解者だと思っていたのにっ!!! あなた以外の誰が、あたしのトレーナーをできると思っているんですかっ!?」 あれ、デジたん今致命的な事を口走りましたかっ!?そんなの知らないっ!!! 「トレーナーを降りるなんてっ!そんなのはデジたんを最後まで立派な競走バに育ててからにしてくださいこれからもよろしくお願いしますっ!!」 8 「……それは、オーケーって事かい?」 「オーケーもエヌジーも無いんですよっ!デジたんの返事次第で放り出すつもりだったとかどういう事ですかっ!! 脅しっ!脅迫ですこれはっ!!! 引退まで、卒業まで待ってくれるんなら何でそれまで黙っててくれなかったんですかっ!?!?!?」 「我慢が、できなかった。」 「……っ!!」 「アグネスデジタルのファンが増えた。キミの魅力を知る人が増えた。……焦る理由には十分だろ。」 「~~~~~~っ!!!!」 クソデカ感情ってぶつけられる側になると本当にとんでもない!!! 助けてこいつデジたんに首輪をつける気でいるっ!!!!!そしてその首輪が、あんまりイヤじゃないあたしが居ますぅう~~~っ!!!!! 「……時間をください……。」 そう言うのが、精一杯でした。 9 「それがママとパパの馴れ初めですねぇ~。」 「ママいま凄く可愛い顔してるっ!」 ヤマニンキングリーちゃんがスケッチブックにあたしの顔をデッサンします。 「上手だねぇ~♪」 「ママのご本沢山読んでるもんっ!」 「ママの本読むのはやめようねぇ~。」 「夕飯出来たよ。」 キッチンからの声。 「はい!じゃ、行こうか。」「はいっ!」 ああ……現実てぇてぇ。 ----- 本格派女児 1 「こ、これがあたしの勝負服ですかぁ……?!」 https://umamusume.jp/app/wp-content/uploads/2021/01/a54adb203540e98efe832550a082a6d8.png デザイナーの案を見たデジタルは顔を赤らめて耳を激しく動かしていた。 「どうかな。」 「片手袋にガーター網タイツ、ノースリーブでわ、脇が見えて……。ちょっとデジたんにはセクシー過ぎではありませんか?」 「そうかなあ?中学生相当の色気があっていいと思うけど。」 「トレーナーさん、ちょっと変態っぽいですぅ。」 非難めいた視線がトレーナーの顔を見上げる。 「まあ、もう一案あるから。」 「はい。」 トレーナーの視線に応じて、デザイナーがもう一枚バインダーを取り出した。 2 https://umamusume.jp/app/wp-content/uploads/2021/09/cdfc7f009b00acfc4d1dc6eba8c4ef75.png 「おお~~っ!!可愛いっ!いいじゃないですかぁっ!!!」 デジタルの反応は上々。 片手袋の代わりにシュシュ。網タイツの代わりに左右非対称のソックス。 ヘソ出しで露出度は先の案よりやや強めだが、その分JSファッションに寄せた、明るい色を散らした服。 勿論これも素晴らしい物であるし、本人が気に入るならいいのだが、と自分に言い聞かせつつもトレーナーの顔は曇っていた。 「トレーナーさん、好みじゃないんですか?」 「いや、これも凄く似合うと思うよ。」 しかし。アグネスデジタルの私服を見たことのある彼にとっては多少逡巡の種があった。 3 デジタルの私服は、思いっきりJS向けのファッションである。 ピンクを基調にした上着に、シンプルなスカートを縛るベルトにはハート型のバックルが付いている。 小物やアップリケも可愛いを重ねるコーディネート。 小柄なデジタルには似合っている服装ではあり、全体のバランスもとれている。恐らく本人も意図的にこのファッションを選んでいる。 身長143cmという小学生高学年相当の体格に小学生向けファッションを着る事自体は問題は無い。 しかし既に本格化を迎えたデジタルは、これ以上体型が大きく変わることはない。 つまり、体型に合わせたファッションを続ける限りこれから先もずっとJS向けファッションで押し通す可能性がある、という事だ。 それは流石にどうか、という事でトレーナーはセクシー路線の勝負服案もお願いしていたのだが。 本人にNGが出されたのなら仕方がない。 「……トレーナーさんのえっち。」 「誤解だ。」 4 劃して第二案のカワイイ路線を前面に押し出した勝負服が採用された。 トレーナー室に届いた服をいそいそと身に着け、姿見の前でくるくるとはしゃぐデジタル。 その様を見て、まあ焦らなくてもいいか、とトレーナーも笑った。 「どうですか、やっぱりいいでしょう!凄いですよこれ!!ディテールも凄いし生地も丈夫!!今すぐ走り出したいですっ!!!」 「それはよかった。」 「……やっぱりえっちな方の勝負服着て欲しかったんですね?」 トレーナーの気分を敏感に感じ取り、ぶーっとデジタルがむくれた。 「えっちな方って言い方はやめなよ。」 「じゃあトレーナーさん好みの方のっ!」 5 「だってデジタル、キミは私服も幼い路線じゃないか。」 「デジたんが好きで着てるんだからいいじゃないですかっ!」 「高校生や大学生になってもあの路線で行くつもりか?」 「そんなのその時にならないとわかりませんっ! 大体あたしはもう本格化してしまったので、似合う服が増えないんですっ!! あたしには今の自分の好きなものを好きなだけ着る自由しかないんですよっ!!!」 「わかった。キミは正しい。」 開いた両手を翳し、抵抗の意思がないことを示す。 「大人っぽいのが好きなら……。勝負服のデザインにするとか回りくどいのじゃなくてですね。 その、一緒に服を選びに行くとか、そういう……。」 「いや、僕は単にキミのファッションが心配で、」 「……今割と最低な事言いましたよっ!?」 6 「あたしがっ!勇気を振り絞ってですねっ!男の人と一緒に服を選びに行こうって提案をしたんですっ!!」「うん、うん。」 「それをですね、デジたんのファッションが心配だなんて躱し方、酷くないですかっ!」「デリカシーに欠ける発言だった。」 「でも本音ですよねっ。」「はい。」 喋りでデジタルに適うトレーナーは全国で見ても一握りだろう。 「だからっ、そのっ……トレーナーさん好みのデジたんのファッションをですね。 見繕う機会を……差し上げてもいいというか……。」 「じゃあ次の日曜にしようか。予定空けるよ。」 「えっ、あっ、そんなスピード決済、あっ、はい、よろしくお願いしますぅっ!!」 先ほどまでの勢いはどこへやら、アグネスデジタルは顔面を真っ赤にしながらトレーナーに深々と頭を下げるのだった。 「きゃあトレーナーさん好みにされちゃうフヒヒそんなのちょっとした調教じゃないですか今度の新刊のネタに。」「漏れてる漏れてる。」 「ぎゃぁっ!しまったっ!」 [余談]公式サイトってWordpressで出来てるんですかねえ https://www.youtube.com/watch?v=ABtT29S5dB8 かわいい あと勝負服デザインをデジたん自身がやってるエピソードは後から知ったので許してください ----- Finest Hour 1 「いやぁ~~~素晴らしい式でしたっ!」 後部座席のアグネスデジタルが満面の笑みを浮かべている。 それをルームミラーで見ながら元トレーナーが応えた。 「身内だけでやろうって案もあったけど、派手にやって正解だったね。」 「そうですともっ!」 身を乗り出そうとしたデジタルをシートベルトの緊急ロックが留めた。 「テイエムオペラオーさんにメイショウドトウさんヒシアマゾンさんにフジキセキさんそれとそれと……あああデジたんの結婚をあんなにも沢山のウマ娘に祝福してもらえるなんてぇっ!!!」 そう、今日は後部座席の彼女、アグネスデジタルと僕の結婚式だった。 2 アグネスデジタルはここ3年ほどにかけて活躍したウマ娘だ。 得意とする距離はマイルから中距離。ターフでもダートでも傑出した成績を誇るウマ娘。間違いなく時代を代表するウマ娘である。 だが彼女を特徴づけるのはその能力だけではない。 彼女は重度の『ウマ娘ヲタク』だった。 グッズを集め、同人誌を描き、それに飽き足らず自身が並んで走る事まで望み、そして実行して見せた。 特に当代最強と謳われたテイエムオペラオーに勝って見せたレースは今でも語り草だ。 ムラっけはあれども強さには誰も疑いを持たない。 それでいて、本人は揺るぎないヲタクでもある。 飽くまでウマ娘が大好きな女の子。それも日常や人生を捧げ尽くすほどに。 走って競って勝ちたいというウマ娘が持つはずの本能をウマ娘への愛で塗り潰してしまえる、異能のウマ娘。 3 そんなウマ娘を愛してしまった僕も相当の異能なのであろう。 彼女の気持ち、ウマ娘への愛を今でも完全には理解できていない。 ただ、理解できないなりに彼女の人生を全うさせたいと思った。 だってそうだろう。ウマ娘のトレーナーは、ウマ娘に惚れ込むのが仕事だ。 その『ウマ娘への惚れ込み』の化身を、僕はこの小柄なウマ娘に見出してしまった。 ウマ娘を愛しウマ娘の為に生きるという点で、彼女に敵うトレーナーが果たして地球上にいるかどうか。 そんな最高にウマ娘を愛するウマ娘ヲタクのウマ娘に、僕は惚れ込んでしまった。 当時中等部の、小娘と言っていい年頃のウマ娘。そんな彼女が不器用ながらも全身全霊でウマ娘全てを深く広く愛する態度。 僕はそれを見て、完全に屈服した。 4 競走バの世界は厳しい。最小5人、最大16人が競い、『勝った』と言われるのはたった一人。 それ以外の4~15人は、例えどんな記録を残そうと『負けた』ことになる。 3割打てれば名打者と呼ばれる野球より。一対一で闘い過半数勝てれば強者と言われる格闘技より。 レースという競技の勝敗の定義はずっとずっと厳しい。 だからトレーナーは死に物狂いで作戦を立てる。対戦相手の苦手を攻め立て、時には妨害行為を行ってでも一番人気の足を引っ張ろうとする。 それこそが『正々堂々としたレースへの参戦姿勢』だ。 そんな競走バ人生にあって、デジタルは飽くまでも敵を愛した。 全力で戦い、勝利も敗北も喜びとした。 勝てば素晴らしいウマ娘を下した喜びを、負ければ素晴らしいウマ娘と戦えた喜びを。噛み締める事の出来るウマ娘。 講釈はもういいだろう。僕はシンプルに。彼女に惚れてしまったのだ。 小学生高学年程度の体躯しか持たない、そしてもうそれ以上成長しない、アグネスデジタルというウマ娘に。 5 ロリコンの誹りは甘んじて受け入れた。 デジタルは成長しきってこの体型なのだから彼女と結婚する相手は誹られる運命にあるし、それは誰にもどうにもできないことだ。 「似合ってるよ、ドレス。」 「……えっへへぇ~♪」 照れた顔がルームミラーに映る。 「ありがとう、僕と結婚してくれて。」 「こちらこそですっ!」 身を乗り出そうとしたデジタルをシートベルトの緊急ロックがまた留めた。 「こんな、こんなアタシと一生……えっへっへぇ、一生添い遂げてくれる方が現れるなんてぇ……全然想像もしてませんでしたぁ……♪」 「うん。」 6 「……ありがとう、ございますっ……。」 ひっ、ひっ、とデジタルは涙を流す。僕も泣きそうになる。 「礼を言うのはこっちの方だよ。ありがとう。プロポーズ、受け入れてくれて。」 「ひぃぃいいいん……。」 デジタルは俯いて嘶いた。もう限界なのだろう。 僕なんかと結婚してそこまで反応してくれるなんて、冥利に尽きるじゃないか。 「家に帰ったらお風呂入ろうか。緊張で汗かいちゃってさ。」 「あたしもです。」 ミラー越しに見える目元を腫らした『妻』の顔に不覚ながら興奮してしまった。 7 「ごめん……お風呂だけじゃ済まないかも。」 「……えっち♥」 ミラー越しに見るデジタルの目には非難の色が全く無いのがわかった。 ----- 愛ある限り戦いましょう 1 「行ってきまーっす!」 元気よくドアを飛び出したアグネスデジタルを見送り、僕は朝ご飯の片づけに取り掛かる。 食器を洗い終わったら洗濯に取り掛かる。 妻の下着を手に取るのは最初は緊張したものだが、今となっては慣れたものだ。 洗濯機が唸っている間にウマ娘の練習する風景を撮ったビデオを流しつつ競バ新聞をざっとチェック。 掃除機をかけ終わる頃には洗濯機が沈黙しているので絞り終わった衣服を取り出しベランダへ。 二人分の洗濯物を干し終わったらコーヒーを淹れて、パソコンに向かう。 正トレーナーに渡す為、預かったウマ娘のデータを分析してまとめるのだ。 今の僕の仕事はサブトレーナー。 と言いたいところだが、本当の仕事は、アグネスデジタルの夢の後見人である。 2 トレセン学園を卒業したアグネスデジタルは大学進学を志望した。 理由は「ウマ娘ちゃんとキャンパスライフを送りたいっ!」 が第一で、第二は「トレーナーになってウマ娘ちゃんハーレムを味わいたいっ!」 実に彼女らしい。 今の住まいに近く(※トレセン学園が近いので学園生徒と出会う機会が期待できるため)トレーナーになるための学科がある、 と言うアバウトな理由で選んだ大学は、当時の彼女の偏差値ではかなりの難関だった。 しかし挑まず諦めるのはデジタルの性に合わない。先のレースの大敗を機にたっぷり一年取った休養の間に、二人三脚で試験対策を実施。 合格掲示の前に二人で立つ。 「どうだ、デジタル……?」 「御無礼。一発です♪」 ニヤりと笑って振り向いたデジタルを僕は思わず抱き上げてぐるぐるとその場で回った。夕方のニュースに映像が流れた。 3 その後大学生活が落ち着くと、僕らは結婚した。 元々トレセン学園時代から婚約をしていたから、別に急に決めたことという訳でもない。 学生結婚という事で親や周りからは色々言われたが、 「この人をこれ以上待たせたくなかったので~♥」 と惚気るデジタルの会見映像が全ての話題を呑み込んで波の向こうに攫ってしまった。 競走バとしてのキャリアから、彼女はメディアをコントロールする強かさも身に付けていた。 我ながら、素晴らしい女性と結婚できたことが誇らしい。 尚、デジタルは大学に進学後はレースの成績があまりおぼつかなくなり、程なくして引退している。 引退レースでの素行は今でも競走バ史に残る珍事として語られているが……それは別の機会に話すことにしよう。 4 僕はと言うと彼女の引退後は仕事の量を減らした。 流石にパートナーのいる身でほかのウマ娘の専属トレーナーをするのは無理がある。 「え、トレーナー辞めるんですかっ!?」 「誰かの担当ってのはやらなくなるかな。」 「そんなっ!勿体ないっ!!あたしもアナタと一緒にウマ娘ちゃん育てたいのにいぃ~~~!」 「……担当トレーナーに『君を一人前のウマ娘に育てるけど、一番大切なウマ娘は妻だ』って言われたらどう思う?」 「惚気てんじゃねえって思いますっ!!納得しましたっ!!!」 なので今はこうしてサブトレーナーとしてデータ分析を主な仕事としている。 これなら家事とも何とか両立が出来る。 収入は減るが、デジタルが現役時代に稼いでくれた賞金があるので少なくともここ10年は生活に不安はない。 5 「ただいま帰りましたぁ~~!」 「おかえりなさい。」 驚くなかれ、デジタルは今でもいわゆる小学生向けファッションを押し通している。 体型に似合うからと言うのもあるが、彼女曰く『ナンパ避け』なんだそうだ。 「めんどくさい女に見てもらえるから男の人が避けてくれるんですっ!」 そんなに嬉しそうに言われると困ってしまうのだが。 「もうご飯食べる?」 「はいっ!終わったらレポート手伝ってくださいっ!」 「了解。」 6 「今日は随分甘えただね。」 「んっふふ~♪」 ベッドの中、左腕にデジタルが縋り付いて寝転んでいる。 それぞれの寝床は用意してあるのだが、今日の妻はこういう気分のようだ。尻尾がバタバタと暴れて掛け布団が起伏する。 「排卵期なんですっ!」 「そう……。」 もうちょっと何か言いようがないものかなぁ……。生理周期を隠す間柄ではないとは言え。 でもデジタルに甘えられるというのはやっぱり嬉しい。 腕から感じる高めの体温。嬉しそうな笑顔。長い髪から放たれる芳香。僕も幸せだ。 「いい匂いがする。」 7 「えっ。」 「あっごめん。」 口に出てしまっていたか。 「なんで謝ってるんですか。いい匂いって言われて嫌な妻はいませんよっ。」 「同人誌のネタに出来そうかい?」 我ながらいい躱し方だと思った。思ったんだけど。 「大好きな夫にぃ、いい匂いって言われてぇ……嫌な妻はいませんよ?……って言ったんですよぉ?」 デジタルが僕の体の上にのしかかった。軽い体重。でも放たれるプレッシャーはG1六冠バに相応しいそれだ。どんなバ場でもどんなポジションからでも勝ちに行ける、異能のウマ娘の……。 僕がどんなバ場でどんなポジションから負かされたのかは、詳述は避けさせて欲しい。 ----- 第二の日の出 1 「あたしは今っ!太陽と一緒に戦っているーっ!!」 最後の直線であたしはウマ娘ちゃん達の様々なご尊像を幻視しました。 思い出の中に光る決して色褪せない美しい偶像(アイドル)達。 でもいまのあたしはそれだけじゃない。思い出だけじゃない。 トレーナーさんが。ファンのみなさんが。そして何より今ここで走っている全てのウマ娘ちゃんがぁ! あたしに走れと言っているっ!! 輝きの中へ!尊みの中へっ!!飛びこめぇえーーーーっ!!!! 2 なぁんて熱く走った時代もありましたっ。 残念ながら今はもう、脚が付いていきません。 いやいや、怪我をしたとかではないんですよっ?!もう兎に角最近デビューしたウマ娘ちゃんが強くて強くてかっこよくてっ!! 衰えてしまったあたしでは勝負にならなくなった、という意味です。 いつかは必ず来ること、とは言え、やっぱり寂しかったですよねぇ。 だから引退会見でも泣いちゃいました。 もう二度と、あんな風にレースは出来ない。 ああ、だからそれを青春と呼ぶんだって、会見しながら気づいちゃって。 えへへ、あの時はお恥ずかしいところをお見せしました。 実は、もう競走バ生命が長く無いな、というのは大学進学前から気づいてはいまして。 トレーナーさんからも勧められて、がっつり休養とりまして。その後進学直後にダートで4着。 ショックでしたよねぇ。何の為に休んだんだっていう。 その後のG1で何とか勝ちまして、それが最後の勝ちになりましたねえ。 ああ~しんみりしちゃった。そういう話じゃないのですよ。 3 そうしてそのぉ。太陽?の話。 引退すると当然ファンの皆さんともウマ娘ちゃんともお別れになります。 明るい舞台からも遠ざかって。でも人生は続きます。ピッカピカに輝いていた舞台から降りた後のこれから人生数十年。 ……実は進路は決めておりましたっ! はい、ウマ娘ちゃんのトレーナーですっ! あたしからレースを取ったら何が残るのか。ウマ娘ちゃんへの推しです。推しの心です。そこにある壁として、石ころとして、芝として土としてラチとして見つめ尊敬し支えていきたいこの気持ちですっ! 思い出したよ最初の気持ちって奴を、って事ですっ! あたしの人生は元々、陰にあったのです。それが黄昏を経て、また陰に戻っただけ。 でも夜空には星がたくさん瞬いていますしっ!それを見ながら夜明けに向かってずんずん進むのはとっても楽しい事ですっ! 4 夜明けとは何か?勿論っ!トレーナーになることですっ!! 「トレーナーってウマ娘ちゃんのハーレムじゃないですかっ!」てね。 勿論、今こうしてトレーナーさんと結婚しているとそれがそんなに簡単じゃないことぐらいわかっています。 でも、でもっ! 夜空に輝くウマ娘ちゃんと言う星々。手が届かなくたって、見つめることは出来ます。天文学者になることは出来る。 そしてそれは、一生出来る事だと思うんです。 天文学者になれたなら、例えピカピカの青空の下でもどこにどんな星があるのかわかるでしょう。 そしたらワクワクしてきませんかっ!これから訪れる日の出は、昇ったらもう沈むことは無いんですっ! あの日が戻らなくたって、あたしの未来には光が満ちている。それが分かったんです。 5 え?結婚した理由かぁ……。 ずっと支えるって約束してくれたからですね。感謝しかありませんよっ! G1六冠バを育てたってキャリアがあれば、幾らでもトレーナー続けられる筈だったんですからっ! それなのにデジたんと生きる道を選んでくれた。 「トレーナーさん自身の人生はどうなるの?」って思って、訊いたんですね。 そしたら「僕はキミにイキイキしていて欲しい」って。 人生全肯定っ!そんな事言われたらもうキュンじゃないですかっ!ラヴじゃないですかっ!!ぴょいじゃないですかっ!!! まあ実はこれを言われた時は「よっしゃあ遠慮なく推し活してやるぜぇっ!」ぐらいの気持ちでしたけど、 その夜もう一度言葉を噛み締めて、愛だろ、愛。ってなって。 後日プロポーズされたんでぇ、受けました。あったりまえですよねっ!! 6 「今日はありがとうございました。」 「こちらこそですっ!」 インタビュアーさんにびしっと敬礼。こうしたあざといムーヴは現役時代に培ったものです。 幼いあたしの容姿には、あざとくて頭が悪くてその上で礼儀正しい、というのが好感度が高いと学んだのです。 ぶりっ子ってめっちゃ言われますけど、実際話したらおっさんだねとも言われるんでイーヴンです。 オフィスを出て地下駐車場に行くと夫が待っていました。 「お疲れ。」 「はいっ!」 時刻はもう夕方。助手席から見る西の空は絵の具で塗ったような奇麗なオレンジ色で、東の空はもう夜の色をしています。 「どうだった?」 「よかったですっ!」 「よかったって……インタビューが?」 7 「日が沈んでも……。」 「……日が沈んでも……?」 運転席の夫の顔を見ます。 「手をつないで、一緒に夜明けまで歩いて行けたら。」 「ロマンチックな事言うね。」 「えっへへ、これでもアイドルソング沢山歌ってきましたからっ!」 「夜明けまでか……。いいね。ありがとう。」 「あっ、いやっ、違いますっ!!」 「えっ?」 怪訝な顔のアナタに、追い討ちを。 「夜明けの後も、ずっとですっ!」 ----- ノットキャンパスライフ 1 扉をノックすると「どうぞー」と声が聞こえたので妻の部屋に入る。 アグネスデジタルはこちらに背を向けPCに向かったままで、動画を見ているようだった。 「何見てるの?」 「アグネスデジタルちゃんの配信ですっ!」 「は?」 画面を見るとデジタルの3Dモデルがひょこひょこと動きながらゲームの実況を行っている。 「何これ?」 「世の中には凄い人がいますねぇ~。このデジたんの3Dモデルが作られてて、色んな人がアバターに使ってるんですよっ!」 「許可出した覚えないんだけど。」 「こういうのはそういうもんですからっ!」 そういうもん……。 2 「中でもこの人は大分デジたんに似ててですねっ!イチオシですっ!」 そう言いながらデジタルはキーボードを叩いてチャット欄になにがしかを入力すると、画面にクレジットカード決済の画面が表示される。 彼女は躊躇わず\50,000を……振り込んだ!? 「ちょっと今何した?」 「赤スパ入れましたっ!」 「何で5万円も。」 「1万円だと『元六冠バのクセに赤スパギリギリの額入れるのケチ臭い』って叩かれるんで!」 「嫌な世界だな!それに身バレしてるじゃないか!」 「特に隠してませんからね。」 「……キミがいいならいいけどさ。」 ネットは広大だ。一応彼女自身のハンドルネームも覚えておくことにする。あとで検索しよう。 ……それにしても。 3 「ぎゃひっ!?何するんですかぁっ!!」、 後ろからデジタルのお腹を両手でぎゅっと掴んだ。 「最近はインドアばかりで鈍ってるんじゃない?」 「離してくださいぃお腹揉まれるのイヤぁですぅっ!」 「トレーナーの目を誤魔化そうったってダメだぞ。」 「大学のレポートもあるしトレーナー試験対策もしててデスクワーク多めなんですから多少はその……なりますっ! いいじゃないですか今はもう現役じゃないんだし!ギッチギチに絞り込まなくたって健康ですっ!」 「健康ねぇ?」 ゲーム実況配信動画に視線をやりながら、全盛期より僅かに、しかし確かに斤量の増えたお腹を責める。 「わっかりましたからっ!今は落ち着いて動画見せてくださいよぉ。」 4 「明日運動公園でも行く?」「やたっ!行きます行きますっ!」 デジタルが目の色を変えながら僕の腕を振りほどく。引退したとは言え、走りたい本能は絶えない。明日は土曜日だし、急だけどデートと洒落込もう。 ――――そして土曜日。 「んっへへへへへ……ウマ娘ちゃんがいっぱい~♪」 ウマ娘用ランニングコースでは、トレーニングウェア姿のウマ娘達がそこかしこで走ったりストレッチをしたりしている。 ジャージ姿のデジタルも入念な準備運動をしながら首をぐるぐると動かして躍動するウマ娘の肢体に見入っている。 「集中しないと怪我するよ。」「あっはいっ!」 注意すると首を戻してストレッチに戻る。こういう所は変わらず真面目だ。真面目……。 「集中っ!」「はいっ!すみませんっ!」 5 「じゃあまずは軽く行きますかね。」 競バ場ほどには整備されていない踏み荒らされ気味のターフを、確かめるように走り出す。 程なくして足が馴染んだのか、少しずつ加速していく。ペースがゆったりとしている分、美しいフォームを鮮明に見ることができる。 長いターフをぐるりと回れば3000メートル。マイラーのデジタルでも全力疾走でなければこのくらいは走り切れる。 とは言え、息は荒い。 「お疲れ。」 「やっぱり走るっていいですねっ!」 キラキラと笑って見せる。惚れた贔屓を差し引いても、この笑顔は美しいと断言していいだろう。 「アグネスデジタルさんですよね?」 声に二人で振り返るとウマ娘達に囲まれていた。 6 「えっあっはいっ!ああウマ娘ちゃん達があたしを見てるぅ~♪」 涎を垂らしつつも手は滑らかにバッグに伸び、消毒ローションを塗りつけて握手に備えている。 きゃいきゃいとはしゃぐウマ娘ちゃんに写真を撮らせたりサインを描いてあげたり。実に楽しそうだ。 「とっくにハーレムじゃないかデジタル?」 そういうと彼女はううーん?と困ったような笑顔。 夢の途上だけど夢見るような瞬間。偶にはいいじゃないか。 太陽のような夢が叶う前に輝く月に見惚れたって。いつだってキミはそうやって美しいモノを愛でて来ただろう。 「トレーナーさんも一緒にお写真どうですか?」「え?僕?」 ウマ娘の子が僕に声をかけてきた。デジタルの顔を見ると嫉妬や焼きもちの混ざったような複雑な顔をしている。 正直ちょっと、ぐっと来てしまった。 ----- マニキュア 1 ――――いつでも勝てるかどうか分からない。だが私には信仰がある。信仰が私をこれほどまでにした。 2 勝負服の中にメイクが含まれているウマ娘も存在する。 アグネスデジタルもその中の一人だ。 「……。」 自身の爪にメイクアップアーティストがマニキュアを塗る様をデジタルはじっと見つめている。 「よし!完成です。」 「いつもありがとうございますっ!」 「頑張ってきてください。」 「はいっ!」 デジタルが大きく頭を下げると、メイクアップアーティストは笑顔で頷いた。 真のプロはメンタルケアも一流だ、と傍にいたトレーナーは感心する。 3 振り向いた瞳に迷いはない。 レース前にはいろいろと悩ましい要因があった。 他人の枠を横取りするような形での出走登録。 そのウマ娘が走るのを楽しみにしていたファンや関係者のバッシング。 そうまでして走らなければならないのか?それが競走バの宿命だとしても、他にもやりようはあったのではないのか? 「じゃあ言い方を変えよう。」 心を曇らせているデジタルに、トレーナーは悪魔のように囁いた。 「テイエムオペラオーとメイショウドトウ相手に君の得意な2000mで戦えるチャンスが、この先来ると思うかい?」 戦いたい、以外の答えなどあるはずがなかった。 4 こんなに苦しく悲しいのならば愛などいらぬ、と帝王は言った。 こんなに苦しく悲しくとも、愛があれば乗り越えられると彼女は言う。 自分が押しのけたあのウマ娘も、きっとそれを乗り越えられる。そう信じる。だからこそ、走りたいでも勝ちたいでもなく、自分は、絶対に勝たなくてはならない。 「あの子は僕の囁きなんかで奮起した訳じゃありません。 一人の競走バとして、自分で向き合い、自分で克服し、自分で決意した。望んで重荷を背負い、それを力に変えられる本当の競走バに。あの時初めてなれたんです。」 出走前。手を開いて爪を見る。 衣装の色に合わせて指ごとに赤、黄、水色に塗り分けられたマニキュアが雨の中光っている。 メイクさんは頑張ってきてくださいと言ってくれた。 こんな、こんなあたしに。悪役のあたしに。4番人気20倍バ券のあたしにだぞ? 輝く爪を拳にして握りしめる。 ゲートオープン。 5 逃げを得意とするウマ娘が出遅れた事からレースはスローペースで進んだ。 全てのウマ娘がスタミナを温存できる状況。終盤で最高速を競う勝負になる。 3200mでも勝利した経験があるオペラオー相手にスタミナ勝負は分が悪い。デジタルにとってはお誂え向きの状況だった。 最終コーナーを外から回る。競り合いに強いオペラオーには付き合わず、外から伸び伸びと駆ける作戦だ。 当代最強と謳われるウマ娘ちゃんと得意の距離で戦える。 応援してくれるファンも、背中を支えてくれるトレーナーも、夢を奪った代わりに光を見せなきゃいけないウマ娘ちゃんもいる。 これで燃えないウマ娘はいない。 ここで萌え尽きなければアグネスデジタルじゃないっ! 最後の直線、観客席のファンを見る。思わず外に切れてしまう。そんな距離損などものともせず、アグネスデジタルの末脚が炸裂した。 6 「あの後割とすぐにオペラオーさんが引退したのは本当に残念でした……。」 悲しそうにアグネスデジタルは言う。 「枠を押しのけたウマ娘ちゃんもご存じの通り……余り長くは活躍できなくて。 あっ、今もオペラオーさんやその子とは仲いいんですよ?一緒にご飯食べたりしてますっ! とは言え、あのレースの事を思い出すと考えちゃうんですよね。 自分がトレーナーになったら、こういう背負う事で湧き出て来る力の事をどう教えるか。 それと、背負ったからと言って必ずしも全てが報われる訳でもないって事も。」 「それはもう、ウマ娘ちゃんを信じるしかないのかなって。 デビュー前からあたしはウマ娘ちゃんを信仰し、崇拝していました。 きっと乗り越えてくれる、乗り越えた結果が例え報われなくても、その先にまた光を見つけられるはずだって。」 7 「ウマ娘は自分で育つものです。自分で育ち、自分で挫折し、自分で立ち直る。 僕達トレーナーはそのそばで、ほんの少し手助けができるだけ。 代わりに走ることも代わりに悩むことも、代わりに諦めることすらも出来ない僕達ができることは、本当に少しだけ。」 「ウマ娘ちゃん様はデジたんにとって会いに行ける神様ですっ! 神のお悩みを解決できるなんて烏滸がましい。御託宣としてお伺いし、祈りの言葉を捧げるのみです。 『きっと大丈夫ですウマ娘ちゃん様』って。……あたしなんかでも、それで勝てちゃったんですから。」 ―――― 「お~いおいおいおい……。」 「泣き方がレトロなんだよなあキミ……。」 僕達夫婦のインタビュー記事を読んで妻、アグネスデジタルが涙を滂沱と溢れさせていた。 「あだじ、ずごぐ良いごど言っでまずぅ~。」 「そりゃよかった。」 8 ふと、デジタルが自分の手の爪を見つめた。 「どうしたの?」 「あの時のメイクさん、頑張ってきてくださいって言ってくれたんですよねえ。」 「ああ、いい人だったね。」 「今ならプロとしてのリップサービスだったってわかるんですけど。 でもやっぱり嬉しかったんです。やる気出ました。」 「うん。」 「ああいう事が出来るトレーナーになりたいです。」 「うん。そうだね。キミならなれるよ。」 「……えっへへ♪」 歴戦の勇者は、少女のように照れてその耳を細かく動かした。 ----- 最高にヤりたい時にヤるうまぴょいは最高に気持ちイイんですよっ! 1 「ただいまっ!」 「おかえり。」 大学から帰宅したアグネスデジタルは、ただならぬ意気を放っていた。 顔は紅潮し汗ばんで、目つきは鋭く、息が荒い。 走って帰って来たのだろうか。 「先にお風呂にするかい?」 「お風呂、お風呂っ!そうっそうですねっ!シャワー浴びてきますんで、アナタもシャワー浴びて来てくださいっ!」 「いや、うちお風呂一つしかないけど……?」 「あっそ、そう、そうですねっ!じゃあ一緒に浴びましょう!」 「ご飯の支度が、」 「そうっ!そうですともっ!そうですよねっ!ご飯食べましょうご飯っ!」 「シャワーはいいの?」 「あっあああぁぁーーー!!!……っごご飯にいたしますですっはいっ。」 2 ……正直この時点で、デジタルに何が起こっているのかはある程度、いや、完全に察していた。いたけれど。 食卓に着いたデジタルはいつも以上に箸を素早く動かし、テーブルの上の料理を片づけていく。 今日の献立は白米ご飯にほうれん草の味噌汁、コンソメスープのロールキャベツ、豆腐とトマトのサラダ。 バキッ! 「あっ。」 「あっ、ごめ、ごめんなさいっ!す、すぐ拾いますぅっ!」 力加減を間違えたのか、デジタルが箸をへし折ってしまった。 「いいからいいから、座ってて。」 「はいぃ……。」 こんな事は同棲初日の食事以来だ。 3 折れた箸を拾い、新しい箸を手渡す。 「はい。」 「あ、ありがとござますぅ……。」 顔を赤くしてこちらの目を見ようともしない。……絶対おかしい。おかしいというか、その。 ―――― 二人して無言で手早くご飯をやっつけると、洗い物を食洗器に任せて二人してお風呂へ。 脱衣所で服を脱ぎ去るが早いかデジタルが首に飛びついてキスをしてきた。 慌てて身を屈めて応じる。 「んっ、んふっ、ふぅっ、んんっ!」 破裂しそうな吐息と一緒に舌をねじ込まれる。口の中をねろねろと舐められてねだられる。アナタも入れて、あたしに挿し込んでと。 4 唇同士で繋がりながら風呂の戸を開けるのはなかなか難儀した。 水栓のレバーをシャワーに切り替えてハンドルを捻る。二人して冷水を浴びる。 が、冷たっ、と悲鳴を上げたのは僕だけだった。デジタルは変わらず湯気でも立ちそうな情熱で僕の唇を味わっている。 その顎を両手で掴んで何とか引きはがすと、ぬとっと粘度の高い唾液が糸を引いた。 「いじわるぅ……。」 青い瞳の上目遣いに僕の下半身もぐっと反応する、が。 「お互いいい大人なんだからさ。」 フケ。ウマ娘の発情を示す言葉だ。こうなるともうレースどころではなくなる上、フェロモンを分泌するのか周りのウマ娘にも伝播してしまう厄介な症状。 勿論対策は存在する。身も蓋もなく発情を抑える薬がある。デジタルだって当然知っていて、お世話になったこともある。常に持ち歩いてもいるはずだ。 「いい大人だからこそですっ!」 5 「フケちゃった時の最高に興奮したフケぴょいがしたかったんですっ! だってだって現役の時はいっつも薬で抑えられていましたっ!ほかのウマ娘ちゃんはトレーナーさんとたっぷりしっぽりずっぽりしてる最中にですよっ!?!?」 「ちょっと待て待て、ほかのウマ娘って、」 「例えば!」 ここでデジタルが挙げた名前については明かせない事を許してほしい。 「そうだったのか……いや、何となくそんな気はしてたけど。」 「だからあたしだって青春したいんです!青春の過ちぴょいを思いっきり取り戻したいんですぅっ!」 「過ちはダメだろっ!」 「過ちたいですぅ~~~!!!」 スクワットのように両手両足を上下にぐんぐん動かして駄々をこねる。 こんなセックスアピールがあったものか。 けれど、赤く充血したクリ鞘と小陰唇が膨らんで股間からちらちら見える様に、僕もすっかりと『フケ』てしまった。 6 「あ、大きくなってる♥」 陰茎の素直さを目ざとく見つけたデジタルが跪いて迷わず口に含んだ。 うぅ、と唸って僕はシャワーのハンドルを閉める。もう参った。参りました。担当としてキミのフケを解消しよう。 半勃ちの肉棒を飽くまで優しく、ゆっくりと労わるように妻の舌が舐め回す。 恥ずかしい話だが、女性経験の乏しい……つまりは自慰でばかり欲望を発散してきた僕の半身には変な癖がついていて、射精寸前の快感を維持し続けていないと勃起せず、かつ刺激を与えすぎると半勃起のまま達してしまう。要するに勃起力がズブいのだ。 妻はそんなデリケートな難物の扱いを知り尽くしている。 飽くまで優しく、撫でるような愛撫で僕の陰茎をじわじわと刺激し最高潮まで導いていく。そして僕はと言えば、幼い容姿のデジタルが僕の汚い欲棒にそんな心尽くしの奉仕をする様に刺激以上の興奮をしてしまう。 ちゅぽんっ、と音を立ててデジタルの唇が陰茎から離れた。半身はすっかりと肉槍の様相を呈していた。 「嬉しい……♥」 うっとりした顔でデジタルがソレを見つめる。 7 「じゃあ、あたしの番ですっ!」 そう言ってデジタルが浴室の壁に手をついて、秘部を露にする。 花弁は充血して綻び、ぬっとりとした蜜で濡れている。 全く。お互いに愛撫して愛撫され、ロマンティックに繋がるつもりだったのに。「細かい事は省いてください」と言わんばかりの開花に僕は膝を曲げて、雄蕊を雌蕊に突き刺す。 「おぉふぅっ♥」 嘶きが浴室に響く。秘肉は声よりも更に正直に僕の肉棒にしゃぶりつく。 普通の男ならその途端に漏らしかねない刺激だが、今の僕は平気で耐えられる。ウマ娘とセックスし続けると性的にも強くなるという噂は本当なのだろうか? だとすると強く美しく淫らな彼女らはさながら悪魔かサキュバスか。 「あぁーっ!!」 8 強く縋りつく膣から無理やり陰茎を引き抜くと、デジタルはと悲鳴のような声を漏らした。 「おぉほぉーっ!!!」 そしてもっともっとと吸い付く膣に、引き込む蠕動以上の速度で肉槍を刺してやるとと喜悦に嘶く。 「もっとゆっくりが良かった?」 「い、意地悪ぅ……♥ す、好きにしてくださいぃ……♥」 「わかった、好きにするね。」 言質を取ったとばかりに腰を動かす。 「おっ? おっ♥ おっ♥ あんっ♥ はぁっ♥ ぐふぅっ♥」 デジタルの秘部を肉棒で掻き毟ると、彼女の肺から甘い息が漏れる。 9 「あっあっあっあっあっだめっだめっ激しすぎぃっおん、あっうふぅっ♥」 その悲鳴を聞いて、僕は浅い膣の最奥に亀頭を押し当てたまま腰の動きを止める。 「だめ?優しくした方がいい?」 「い、い、意地悪、いじわうぅ……。」 もじもじぐりぐりとデジタルの腰が蠢いた。 「続きはベッドでしようか。その態勢辛いでしょ?」 「こ、この、調子に乗ってぇえええっ!?」 返事を待たずより長いストロークで膣肉にチンポを擦らせる。こっちも実は限界が近かった。ここで相手の絶頂度を把握していないと危ない所だった。 「ああ、出される、出されちゃう、種付けする勝手なピストンじゃんっ!学生なのにぃ、デジたんじょしだいせーなのにぃ、妊娠させちゃうのぉっ!?」 10 「そうだよ、人生滅茶苦茶にしてやるから!」 「してぇっ!滅茶苦茶にしてぇっ!!デジたんはもうアナタだけの牝バだからぁっ!!」 「ううっ!!」 「ああーーーんっ!!」 子宮を限界まで押し込むように突けば、締まった膣が肉棒の皮を引き延ばして亀頭の根元に刺激を集中させる。 どびゅうぅぅーーーっ、と快感が尿道を駆け抜けていく。 デジタルも全身をびくつかせてそれを受け入れる。 ああ、夫婦の最高の快感とはこれだ。脳が確信しているのが分かる。 熟していながら中学生平均にも満たない肢体が淫らに自分を求め、余裕のないその肉欲を自分の嗜虐欲で叩いて、捏ねて、注ぎ込んでやれる。 『幸福』ではない快感。『道徳的』ではない善行。『理知的』ではない合理性。 誰にも文句の言えない『正しい背徳』がここにある。 11 はあぁーっ。はあぁーっ。はぁーっ。はぁっ、はあぁーっ……。 長い息を何度もついて痙攣しながら余韻を味わい尽くすと、妻は振り向いて言った。 「……続きはベッドでって、言いましたよね♪」 言っていない。少なくとも二回戦の話じゃない。 けれど白濁を溢れさせる陰部。 妻のとろけた笑顔。 そして未だ萎れない剛直を視界に収めたら、反論は意味を成さない。 「うん。」 ウマ娘と言う存在は本当に、サキュバスなのかもしれない。 [余談]「淫魔とやりまくると精力が上昇する」という設定を作り出したサキュバステードライフに感謝します。 ----- ヘアー 1 「♪きみの愛バが~ ずきゅんどきゅんはしりだし~♪」 アヒル座りで楽し気に鼻歌を歌う僕の妻、アグネスデジタルの背後で胡坐をかいて、彼女の長い髪の毛にゆっくりとブラシを通す。 色素の薄さが示す通り、彼女の髪は細く柔らかい。 頭皮に軽く触れてからするりと毛先までブラシを通すたび、彼女の尻尾が嬉しそうにパタパタと揺れる。 「痒い所はありませんか?」 「ないでぇーっす♪」 片手を添えて、傷つけないようにゆっくりとブラシを通す。 本当は頭皮をマッサージするようにブラッシングした方がいいらしいけど、この奇麗な髪がぐしゃぐしゃになるのが嫌でそこまでは思いきれない。 つまりこれはヘアケアの為のブラッシングと言うよりは僕の為のグルーミングに近い。 2 梳られた髪がふわりと顔に近づくたび、シャンプーとリンスの香りがする。 桃色と茶色が混ざったような彼女の髪にはブロンドのような輝きと黒髪のような艶が同居している。 見つめる程に不思議な髪質だ。 手に取った髪束は細く、しかし指で擦ると柔らかくも強い存在感がある。 「……何ですか?もうおしまい?」 デジタルが振り返った。 「ごめん、つい見とれてた。」 「マジですかぁ。アナタあたしの事好きすぎですよぉ。」 困ったように笑いながらも、尻尾は嬉しそうにパタパタと振られている。 3 「あたしの髪、そんなに好き?」 「うん。」 「Oh……。即答。」 デジタルはまた困ったような笑顔で驚いて見せる。 「頼りないようで意外と強くて、キラキラ光って艶々と色気があって。 勿論毎日のトリートメントの賜物なんだろうけど、本当に綺麗でいい香りがして、」 「ちょちょちょちょちょーっとストップストップですっ!」 デジタルが両手を前に出して僕を止めた。 「何だかマニアックでフェティッシュですよぅ、それヨソで言ったら絶対引かれるやつですからねっ。」 「……わかってる。」 4 んもうっ、とぷりぷりしながらデジタルは立ち上がり寝室に向かった。 僕も明日の仕事に備えるため立ち上がり、自室に向かう。 溜まった仕事を終えると自分も寝室に入った。 隣のベッドの妻はすっかりと眠りに落ちて穏やかな寝息を立てている。 ――何だかマニアックでフェティッシュですよぅ 妻の抗議が脳裏によぎった。布団の上に流れる髪の毛をそっと撫でる。 つるつるとした手入れの行き届いて生き生きとした手触り。 間近に近づけるとシャンプー、トリートメントに寝汗の匂いが微かに混じる。 「……僕も変態なのかな?」 「『も』ってどういう意味ですか?」 見るといつの間にか起きていた妻の青い瞳が、恨みがましくこちらを見上げていた。 ----- ファッション 1 「ウワーッ!カワイイッ!!」 妻から送られてきた自撮り写真を見て、らしからぬ声を上げてしまった。 アグネスデジタルは今日は大学のサークル仲間と一緒に服を買いに行っている。 女子小学生向けファッションを好む妻は大学にも「男避け」と称してその服装を押し通している。 しかし流石に親しい友人からはもう少し冒険した方がいいという意見もあったそうで、本日に至る。 2 どうかな?というコメントと共に送られたデジタルの装いは全体的にシックだ。 黒い短めのスキニーパンツで足首を見せて、裸足にスニーカー。 トップスは袖余りのダボッとしたニット、その上にさらに白いコートをこれもルーズに羽織っている。 この「着られている」感が幼い外見のデジタルに綺麗にフィットする。 「そんなアプローチがあったのか……。」 『大人の服を無理に着ている風の可愛らしさ』。ファッションに疎い自分は素直に感心した。 3 「凄く可愛い」 と返信するとテンションの高めなスタンプが返って来た。 僕は彼女の写真を待ち受けにして机に置くと、再びパソコンに向かい、サブトレーナーとしてのデータ解析の仕事に戻った。 暫くしてまた通知音。 見ると今度もシックだが、方向性はより大人っぽい。 革靴に黒のソックス、茶色いロングスカートのトップスはストライプのシャツに厚手の紺色のジャケット。 「奇麗だ……。」 思わず口に出てしまう。 「凄く綺麗」 と返信するとまたテンションの高めなスタンプが返って来た。 4 その後も不定期に自撮り画像が送られてくるのでその都度 「奇麗」「可愛い」「印象違って見える」「似合う」「今度それでデート行こう」などと返す。 いやはやウマ娘が美人なのは知っていたしアグネスデジタルが可愛いことは先刻承知のつもりだったけど、服装一つでここまで色んな魅力を引き出せるとは。 夫として、ファッションに疎いなどと言っていられない。本気で勉強する価値がある、と心から感じた。 サブトレーナーとしても正トレーナーに勝負服のデザインについて助けになれるかも。 ―――― 「ただいまっ!」 数時間後戻って来た妻は、玄関に紙袋を満載したカゴ付き台車を引きずっていた。 「アナタに褒められた奴全部買ってきちゃいました!」 満面の笑みで残虐な行為を告白する妻を前に、僕は、うん、と力無く応える事しかできなかった。 でも好き。 [余談] 参考:https://www.air-closet.com/share-style/8376/ https://folk-media.com/1943100 ----- ファッション2 1 こんにちはアグネスデジタルです。 今あたしはナウでヤングな喫茶店でレイコーをしばいています。 いやホントに何でこんなことになったのでしょうかサークルの女同志たちが 「デジ絶対服変えた方がいいって」 「アグっちマジ可愛いんだから冒険しなきゃだよ」 「気に入らなかったらそれでもいいからさぁ試すだけでも」 とか何とか言ってあたしにお出かけの約束を取り付けさせてまずは一緒にお昼ご飯食べようって事になってこんなイケてるカッフェエに入っておいしいコーヒーとサンドイッチを堪能している次第ですあたし何言ってるんだろ。 「いやでもホントデジって髪奇麗だよね。」 「え、そうですかぁ?」 「敬語やめなって。」 えい尻尾よ嬉しそうにパタパタするのをやめろっ! 2 見たこともない都会の街を彼女らの背中を追って進んでいくとそこは雪国(ブティック)でした。 店員さんもおしゃれで店内のお客様もおしゃれ。 小学生風のファッションを身に着けている自分は浮いていることこの上なし。帰りたい帰りたい。 けれど親愛なる同志たちは「この子に似合うコーディネイトをお願いできますか?」と店員にまるで10年来の知り合いのように話しかけます。 ああ、あたしは彼女らを同志たるヲタクと思っていたけれど所詮住む世界が違ったのです。 深い絶望に項垂れるあたしの手を取り、店員さんはズボンやニットを手に取ってアタシに優しく手渡し、フィッティングルームへと案内します。 ―――― アタシは自分の見ている世界の狭さを思い知ったのでした。 3 「これがあたし……?」 フィッティングルームの鏡に映る自分は一人前の女性。 ヲタクらしさに縋り付かない、自分の容姿を諦めない、低身長であることを生かす大人の女。 黒い短めのスキニーパンツで足首を見せて、袖余りのダボッとしたニット、その上にはさらに白いコートをこれもルーズに羽織る。 完全に服に着られているけれど、寧ろその背伸びしている感覚を逆用して、背の低さを可愛さとして演出している。 そんな手があったのか……! 幼さゆえのあざとさではプロの端くれでいるつもりでしたがファッションの世界は奥深い。 カーテンを開くと同志たちがカワイー!カワイー!ヤッター!とはしゃいでくれます。 あたしも嬉しくて自撮りしちゃいます。そしてぽちぽち。 4 「誰に送ってるの?」 「相方。」 「おお、旦那さん?」 どうかな、と添えて送信ボタンをタッチ。 ドキドキしながら待つ時間は何十分にも感じられた。 「凄く可愛い」 そのレスはタイムスタンプによると2分未満らしいがとても信じられない。 「ウワーッ!ラブラブじゃんデジー!」 「やっぱアグっちめっちゃ可愛いんだって!!」 「え、そ、そうですかぁ……♪」 5 もうその後のあたしは同志の着せ替え人形と化しました。 店員さんの勧めるコーディネートを着るたびに夫に写真を送ります。 その都度に「奇麗」「可愛い」「印象違って見える」「似合う」「今度それでデート行こう」などと返してきやがって同志をキャアキャアと喜ばせます。 うう、慣れてないんですよぉ萌えられる側はぁ。 どうでしょう?と店員さんが言うたびに保留と返してきた服がレジ横のテーブルに山と積まれているのを見ると買わなければいけない気持ちになってしまいます。 しかも全部夫のお墨付きで、あたしも出来るなら着て歩きたいモノばかり。 「いやーホントなんでも似合うねデジ!」 「どうする?どれにするアグっち。」 あたしの心は決まっていました。 ポケットから引き出した革ケースから、悪魔のカードを取り出します。 6 「うわっ!ブラックカードだ!」 「無職の癖に!」 「引退バを無職呼ばわりは酷過ぎるよっ!」 気の置けない同志の言葉に大笑いしながら、これで、と店員さんにカードを差し出しました。 「たまったポイントどうしますか?」 「全部使いますっ!」 この手に渡ることなくスタンプが満たされたポイントカードがレジの向こうへ消えていきます。 而して我が物になった紙袋の山。配送サービスもございますが、という店員さんに一も二もなくYESYES!! 7 「ありがとうございましたっ!」 運転手さんに頭を下げ、荷台から紙袋を満載したカゴ付き台車を引っ張り出します。 それはこちらがやりますからと言う声が聞こえましたがごめんなさいもう我慢が出来ないのです。 ゴリゴリガタガタと台車で家の前のタイルを鳴らして我が家の扉を開けます。 「ただいまっ!アナタに褒められた奴全部買ってきちゃいました!」 あらら、アナタは何だか呆けたお顔。 大丈夫ですよっ!賞金を溜めた貯金残高に比べれば1割にも満たないお値段ですし、それにっ!! 明日からはアナタが褒めてくれた奇麗で可愛いデジたんのお姿をお見せできるのですっ! アナタが手に持つ携帯電話の待ち受けはアタシが送った写真の一つ。なるほどなるほど、それがアナタの一番のお好みなのですね……♪ 「早速着てお見せしましょうっ!」 ----- ヘアー2 1 「ズギャアァ!」 すわ風呂場にスタパ齋藤が?!と思ったらデジタルだった。 「ガジェットマニアの髭おやじみたいな声がしたけどどうした?」 「いえ、ガジェットマニアの髭おやじみたいな声を出しましたが何でもないですぅ。」 風呂の戸越しに様子を聞くも大事は無いようでよかった。 しかしガジェットマニアの髭おやじみたいな声を出しておいて何でもないという事があろうか? 「ガジェットマニアの髭おやじみたいな声を出しておいて何でもないという事はないだろう。」 「ガジェットマニアの髭おやじみたいな声を出しましたけど何でもないんですってばっ。」 しかし激しい転倒音も聞こえたし、夫としてももう少し状況を訊かないと安心できない。 2 「……でっ!そしたら転んだんですっ!」 「あらら。」 脚のムダ毛を慣れない安全カミソリで剃っていたら、ひっくり返ってしまったらしい。 いつもは電動シェーバーを使っているが、風呂場にあった僕のカミソリを見てチャレンジしたくなったそうだ。 「そりゃ大変だ。」 「何で入ってくるんですか?!」 話を聞きながら服を脱ぎ終えていた僕は躊躇なく戸を開けて闖入する。 「自分で剃るのが難しいんだろ?」 「手伝ってくれるんです?」 手を差し出すと、こちらに向かってカミソリと右脚を差し出した。 3 「……生えてないように見えるけど。」 「よく見てくださいよ……ひゃんっ。」 ふくらはぎに触れると確かに微かな毛の感触がある。 色素が薄く毛自体も非常に細いが、確かに至近距離で見ると気になるかもしれない。 「なるほど。」 僕はシェービングジェルを手に取ると彼女の脚にしっかりと塗り付ける。 「こそばゆいっ!変な感じっ!エロいっ!」 「エロいかぁ。」 まあ僕もエロいと思う。 4 ジェルは塗った後しばらく置いた方がいい。その間に左脚も伸ばしてもらい、そちらにもジェルを塗りたくる。 「うひゃあ両脚ヌルヌルしてるぅ、変な感じぃ~。」 劃して両脚つるつるてかてかのアグネスデジタルの出来上がりだ。 見慣れた脚もこうして演出するといつもと違った艶めかしさがある。光る太ももの間には大陰唇で縦一文字に固く閉じられた秘部が影の中に見える。 「何ジロジロ見てるんですかぁ?」 ジトっと抗議するデジタル。反論のしようがないので無視して先にジェルを塗った右脚からカミソリを滑らせていく。 「痛くない?」 「大丈夫でーす。」 洗面器に溜めたお湯で時々カミソリを濯(ゆす)ぎながら、妻の脚を剃っていく。 5 元々毛自体が細かく細いので、力は要らないが肌にしっかり密着させないと剃り残してしまう。 特に太ももの裏側なんかは、脚をしっかり持ちあげないと手も届かない。 足首を左手で持ち上げながら慎重に剃っていく。脚を上げることで彼女の肛門や、開脚によって少し開いた大陰唇の内側までも見えてしまうが不可抗力だろう。 じっと見つめても俺と貴様の仲なのだしいいだろう。 「すけべっ!」 よくなかった。剃り終えて足首から手を離した途端、足の裏で顔面を軽く蹴られた。 めげずに左脚だ。 学習したのか、デジタルは手で自分の股を隠しつつ脚を僕に委ねる。あの手の向こうにデジタルのおまんこがある……そう思うとどうしても視線を向けてしまう。 「すーけーべっ!」 左足の裏の感触も顔で味わうことになった。 6 けれど僕も、彼女の目が僕の股間に向いていることを見逃してはいない。 「やんっ!」 自分の顔から左足を持ち上げれば、両手で抑える股間の隙間から白い粘液が滴っているのが見える。 それに手の奥を中心としたぴくっ、ぴくっとした周期的な痙攣もある。 「どうする?続きする?」 「……お願い。」 デジタルはそう言って自分から左脚を高く上げて、太ももの裏側を晒した。 ふくらはぎから太ももへとカミソリを滑らせるたび、びくっ、びくっと脚が震える。 7 「じっとしてないと危ないよ。」 「だってぇ……。」 抗議する声と共に、視線は僕の充血しつつある股間に向く。 「僕は脚の毛を剃ってるだけだよ?」 「よく言うよぉ……。ん、んむっ、んんっ!」 顔を近づけるとデジタルも赤い顔でこちらを見つめる。どちらともなく唇を貪り合った。 「むひっ!?」 手が剥がれた股間にシェービングジェルを塗りたくるとデジタルが総身を震わせた。 「ちょっと、やめっ、ひどいよそんな、あはんっ♥すけべすけべぇっ♥」 8 ジェルを大陰唇に揉みこむと、掌に膣がパクパクと動くのを感じる。ねとついた粘液の中心に人差し指を差し込むとデジタルがのけぞった。 「あああぁっ♥もぉっ♥このバカァッ♥♥」 フェロモン交じりの白濁した尿を噴き出しつつ、デジタルの膣肉が僕の指をしゃぶり上げる。 まとわりつく愛液は粘度が高いなんてものではなく、糸をひくほどねばついてきた。 「ここも剃らなきゃだもんね。」 掌で肉鞘や大陰唇を押し揉むと生えかけのじょりじょりとした毛の感触と共に、膣奥から響くような震えの感触がある。 「ほんとっ♥バカっ♥なんだからぁっああぁぁんっ♥♥♥」 膣口や尿道から止めどなく発情液を垂れ流しながらデジタルが全身をわななかせる。 9 「……どうする?」 腰を抜かしたデジタルの前に、完全に準備が出来た僕の肉剣を見せる。 デジタルは頬を膨らませながら言った。 「……入れて。」 彼女の両脚を持ち上げて間に割り入ると、彼女自身の淫液で白く汚れた膣に慾棒を差し込んだ。 「んあっ!!」 ねとねとの粘液と絶頂寸前の激しい絞り上げが陰茎を襲う。 10 「えっ?おおっ?!」 僕は彼女を持ち上げ、マットに寝そべった。彼女に騎乗される形になった訳だ。 「これ、深く、入るうぅっ!?!?♥♥♥♥♥」 リアクションを待たずに下から突き上げてやる。子宮を激しく上下に揺さぶられてデジタルは目を白黒させる。 「やだっ♥激しいっ♥ 深いっ、深いからぁっ♥」 深いからもっとしてと言っているようにしか聞こえない。 「だめぇっ♥すぐ、すぐイっちゃうからっ!」 「いいよっ、イってっ!僕もすぐ出すからっ!」 「出しちゃダメだよ、あんあんっ♥ああん♥あん♥おふっ♥ふぅっ♥だめ、もうだめ、ダメッイク♥イク♥イク♥イク♥イク♥イク♥イくぅうーーーーーっ♥♥♥♥♥」 11 絶頂のうねりが僕の半身を締め上げ、絞り上げ、舐め上げた。柔らかくきつくヌルヌルの天国で地獄が僕のチンポを無理やり絶頂させる。 「うぅぅっ!」 どぴゅっ!どびゅーーっ!!びゅうぅぅーーーっ!!! 音がしそうなほどの射精がデジタルの胎内に撃ち込まれる。 「あひぃっ!熱いっ♥イってるのにまたイくぅっ♥♥」 そうして痙攣する膣がまた僕のチンポを啜り、僕にも更なる絶頂を味わわせる。 お互いがお互いを絶頂させ合って数分、いつの間にか握り合っていた手をほどいて、デジタルはゆっくりと後ろに倒れこんだ。 12 はぁ、はぁ。ふぅ、ふぅ。互いに仰向けに倒れる。彼女は僕の脚に背を乗せ、脚を僕の胸に載せる。 「……まだだよ。」 一足早く息を整えた僕は起き上がると彼女の両脚を持ち上げてそのまま押し込む。いわゆる「まんぐりがえし」の姿勢だ。 「こうすると、お尻の間もよく見えるよね。」 深い絶頂の疲労からまだ返ってこれていないデジタルは、やだ、やめてと力無く抵抗するばかり。 彼女の羞恥に反してパクパクと次を求める膣口に、僕はまだ収まらない勃起を押し込んだ。 ----- UP SIDE DOWN 1 「あっ?!はっ、はっ、はぁっ♥」 デジタルの両脚を抑え込みながらばすっばすっと腰をぶつける。 その度に粘つく膣がカリに縋り付いて、早く射精して射精してとせがんで来る。 「ううっ!」 でももう支配欲に頭を侵された僕はこのまま吐き出す訳にはいかない。 もうやめてと、気持ちよすぎてもういやと言わせるまで腰を止める訳にはいかない。 アスリート特有のお尻の弾力が僕の腰を強く跳ね返してくれる。 その度に僕はそれに応じた強さで腰を奥まで落として深く深く繋がる。 2 「ゆ♥床♥痛いか♥痛いかも♥……。」 けれどそんな妻の訴えについ体を持ち上げてしまう僕だ。鬼畜にはなり切れない。 所謂駅弁の態勢で、彼女の小さな体で僕のチンポを扱く。さながらアグネスデジタルをオナホール扱いだ。 「深っ♥これっ♥深いからぁっ♥♥」 けれどそんなに長くは腕の力が持たない。 彼女の背を壁に押し付けるとこんどはデジタルをグローリーホールに見立ててやる。 「強いっ♥強いってぇ♥勝手なピストンッ♥♥」 ドチュッ!腰と腰が限界まで密着する距離に陰茎を叩きこむ。 「♥おおほぉっ♥」 3 「優しい方がいい?」 耳元で囁くと、調子に乗らないでよねと囁き返され、膣肉の締りが増した。 「うっぐっ。」 ウマ娘の本気の腹筋。チンポが根元から千切られそうだ。 けどデジタルも息が荒い。 締め付けるという事は否応なく肉棒が強く食い込むという事でもある。 「じゃあそのままでいなよっ!?」 「うっ、うっそっ、や、やめてっ!?あひぃっ♥♥♥」 根限りの膣に根限りのピストンで応じてやる。抜くたび指すたび強烈な抵抗がチンポを襲い、デジタルもまたその刺激に全身を震わせて仰け反る。 4 パンパンパンパンパンパンパン! おっ、おっ、おっ、おっ、おっ。 デジタルはいつしかすすり泣いていた。チンポを差し入れるたびに嗚咽を漏らす肉壺。 だが、それももう終わる。 「射精すぞデジタルっ!」 「あ、はっ、来て、出してください……いっぱい、いっぱいぃ……♥」 びゅうぅっ!どびゅぅっ!びゅうぅぅうーーーっ!! 「うう……。」「あはぁあああああ……♥」 互いに満たされているのが分かる。稲妻のような絶頂ではなく、大波のように寄せては返す快感。 お互いを愛しきったという満足と快楽が股間から全身に行き渡る。 5 「あ、あ、毛、毛を、剃、剃らなきゃぁ……。」 うわごとのように呟いて、デジタルはぐたりと僕に体重を預けた。僕も彼女を床に下ろし、そのままお互いに座り込んで、30分ほど抱き合っていた。 -- 秋ですねぇ。 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊のっ、アグネスデジタルですっ! いやあすっかり肌寒い季節になりましたねぇ~。街を行くウマ娘ちゃん達もニットにコートにロングスカートとシックな装いになっておりますじゅるりら♪ そういうデジたんも同じように秋物を着てですね、今日はお買い物に行って来ました。 現役時代はお写真撮られて「私服も小学生並み」などと言われていましたがぁ、今はちゃんと年相応の恰好ができるのですよぅ。ふふん。 まあ買って来たのはウマ娘ちゃんグッズなんですけど。あははは、その辺りは現役時代とまるで変わっておりませんっ! ウマ娘ちゃんの為に生き、ウマ娘ちゃんの為に死ぬ。 それがこのアグネスデジタルのザユーのメイでございます。 2 と言っても今日は控えめで。 ウスイホンが5冊にぱかプチ2つ、タペストリー1つに「日本バ具大鑑 3 中世」って本ですね。 「急に渋いアイテムが混ざったぞ」「何その本」 何その本と言われましても文字通り中世日本のバ具の資料集ですね。 「どうするのそんなの……」「ついにフェチに目覚めたかデジたん」「何で中世」 フェチって言われたらフェチかもですねえ。 古本屋で見かけたときにビビっと来たのですよ!ページをめくると見えたのですっ!!戦国時代を駆け抜けるウマ娘ちゃん達のお姿がっ!!! あと戦国時代パロ描く時に使えそうだったので。 3 「調べたらこれ滅茶苦茶高い」 しーっ!値段の話はしーっ!! 店主さんもびっくりしたでしょうねえ、色褪せた古本をめくって目を輝かせて、ハスハス言いながらレジに持って行くちっちゃい女の子なんて見ちゃったら。 でも向こうも流石プロですよ。一つも表情を変えずに「ンン円です」と。 で現金取っ払いでお支払いしまして、傷まないようにとちょっと丁寧に包装してくれて。 にっこり笑って「大事にしてくださいね」って。そんなのキュンじゃないですか。勢いで「はいまた来ますっ!」って言っちゃいましたよ。 「丁寧にしてもらうと嬉しいよね」「いいお店だ」 ねー。客として丁寧に扱ってくれるとファンになっちゃう。 向こうにしてみたらあたしみたいなちょっと変な客なんて見慣れてるんだろうね。 だからそんなに動じなかったんだろうね。 4 「俺コンビニで常連ぽく扱われるといやだな……」「わかりたくないけどわかる>常連ぽく扱われるといや」 わかる。それもわかる。 あのねえ、日常的に使ってるお店って多分、風景の一部なんだよね自分にとって。 だからそこに人間味が入ってくるとちょっとイヤって言うか。 勿論丁寧にしてくれる店員さんに悪い所はなんにもないんだけど、何ていうかなあ。 コンビニって結構だらしない物を買いに行くじゃん。 雑誌とか菓子パンとかアイスとか安いお酒とか。そういうのを買う行為って多分、プライベートに近いんだよね。 そこに他人が入ってきちゃう感じがイヤなのかなあ。 ほら、ネットやってるときに近いというか。自分の楽しみの為だけに動いてる感じ。 理性のハードルを下げて剥き出しの生き様になってる時というか。そういう時にその、他人の存在を感じちゃうとイヤなのかもしれない。 5 「流石デジたん話がわかる!」「オタクだなあ。」 うーん。 こういうのって大分コントラストがある気がするんだよねえ。 あたしはコンビニで「いつもありがとうございます」って言われたらありがたいなって気持ちの方が勝る人ではあるんです。 でも「話しかけないで欲しいな」ってのも何パーセントかくらいはあるって感じ。 それが10パーセントある人もいれば90パーセントの人もいるんじゃないかなあ。 あれ?こんな引っ込み思案の話をしたかったんだっけ?ウマ娘ちゃんのオータムファッションの話をしてなかった? そうそう秋物ファッション買ったんです! 大学の友達に引っ張られてさぁ、着せ替え人形にされたの。あはははは! あたしみたいなちんちくりんのオタクにファッションなんか似合わないよって思ってましたけどプロは凄いですね! めーちゃめちゃかわいい服めーちゃめちゃ持って来てくれてっ! 全部買いました。はい。 6 「全部て。」「極端なんだよなあ。」「そういう所がオタクっぽい。」 あはははは、返す言葉もありません。 さてそろそろお別れのお時間です。 歯医者もブティックもドラッグストアも、勇気を出して店員さんに相談すると凄く安心できます。 「歯医者の店員????」 皆さんも勇気を出すと得るものがあると思いますよ!過ごしやすい時期ですしねっ! この後は樫本理子せんせぇのチャンネルでStarHorse4の実況第四回が始まりますよ。 前回は自分の育てたウマ娘で万バ券を取って複雑な顔をした挙句リクライニングシートの快適さに寝落ちしてましたが果たして今回はどうなるのかっ!? デジたんもドキドキで視聴いたします。 それではバイデジ~♪ -- SKINSHIP 1 華奢、というのが第一印象だった。 線が細く、脂肪も薄いアグネスデジタルの、妻の体。 抱きしめる腕や掌にあばら骨の感触があるし、背中で感じる彼女の手は確かに細い。 けれど感覚を集中すると女性らしい柔らかさがあるのが分かる。 胸板で押し潰している乳房も密着しているからこその存在感がある。 汗ばんでいるのは僕か彼女か、それとも両方か。 この瞬間僕らは一つになっているのかもしれない。ひょっとしたら、セックスよりもずっと。 鼓動ももうどちらがどちらだかわからなくなっている。 肩越しに感じる吐息。 髪の匂い、肌の匂い。 デジタルって、女の子って。どうしてこんなに素敵な香りがするんだろう。 腕は飽くまで体を密着させるための留め具だから、力強く抱き締める必要はない。 僕の肩、背中にそっと添えられている、けれどしっかりとくっついてくれる妻の腕を、裏切らないように。 2 何でこんな事になったのかを語ることにあまり意味は無いので過程は取っ払ってただ今のお気持ちを表明させていただくと、ハグって凄いな、って事です。 今デジたんは夫と上半身裸で抱き合っております。 ちょっと胸が押さえつけられて苦しいのですがそれも何だか嬉しい感じ。 優しく添えられる夫の腕。大きな胸板。ワイルドなパパみたいな肌の匂い。 落ち着きながら興奮しています。ウマ娘ちゃんに萌える時の熱狂とは違う、焚火を眺める時のような気持ちです。 これ絶対エッチな事の筈なのになんだかとても落ち着くのです。 あたしも彼も鼓動は少し早め。そりゃ興奮しますよね。でもお互いに興奮しているってことに何だか安心してしまうんです。 ハグなのに恥ずかしくもえっちに感じちゃってるのはあたしだけじゃない。子供っぽさを分け合えると安心できるんです。 ウマ娘パワーでぎゅっとしちゃえば、苦しめてしまえる。そんな事しませんけどっ! でもそんなことせずに。離れないように相手に腕を絡めるだけで後は何にも要らない。 ……ウマ娘ちゃん達もパートナーとこういうことしてるんでしょうかっ! あっ、腕に力が入っちゃったダメだダメだ集中しなきゃ何に? 3 切欠はどちらかが人肌恋しいからハグしようと言い出したことにあった。 恐らくはアグネスデジタルからだが、脱ぎ始めたのがどちらかはわからない。 互いに寝間着の上を脱いで抱き合った。そして想定以上の衝撃を感じ、二人で一つになったまま。 最初にギブアップしたのは夫。ベッドに横たわるように上半身を倒したので、デジタルもそのまま倒れた。 「……頭、載せられると重いかも。」 夫が不平を漏らす。 「じゃあ、どうします?」 妻が解決策を問う。 「……。」 「……。」 4 二人は同時に首を逸らし。同じ高さで戻した。 お互いの顔は当然に衝突。衝撃は互いの唇が受け止めた。 舌を入れるかどうかは二人とも悩み、二人ともやめておこうとなった。 その代わりお互いに顔を傾けて口の凸凹を咬み合わせる。 当然口を開ける事になる訳で、宙に浮いた舌は程なくして互いに先端で触れ合ってしまう。 ――――これは……。 ――――眠れないですよぉ……! 穏やかなハグなどありえない、と同時に悟った所で舌は情熱的に絡み合い、妻も夫も明日の朝を台無しにする覚悟を決めて、互いの腕の力を込めた。 -- 錐は英語で 1 こんデジこんデジこんデジ~♪元競走バ、パカライブ03小隊のっ、アグネスデジタルですっ! 今日は作業配信という事でねっ!漫画描いてる場面で失礼いたしますっ!! そろそろ冬の祭りも近い事ですし暫く作業に集中することになりそうです。 「ナマモノの配信っていいのか……?」「デジたんはいつもアウトを攻めるな」「大外大好きだよね」 ナマモノとは限りませんよ!少なくともそれが分かるような……そういうシーンは配信外で、ああいやいや。 兎も角配信でお見せする範囲では、何を描いているのかはわからないようにいたします。 で、ちょっと構図に困っているところがありまして。 ババーン。 2 キックです。いわゆるスーパーキックですね。 「おお~!」「上手い」「後ろ回し蹴り!」 回し蹴りではないんですね。こう、押し出すような蹴りに見せたいんですよ。後ろ向きヤクザキックというか。 「壊してるの柵?」 そう。 あのねっ!ウマ娘ちゃん同士で逢いたいけど逢えない、お互いの気持ちがわかっているのに近づくことが出来ない、 分かっているからこそ離れなければならない、って障害がゴリゴリにあってですねっ! 知るかーっ!!!って! 心の壁も物理の壁もぶち破るぜっ!って!!いうシーンなんです!!! 「新刊の見せ場をここで言うな」「面白そう」「ネタバレやめろ」 ダハハハハ、すみません盛り上がってしまいましたっ! (ごくごく) 3 「何飲んでるの?」 七冠バ。https://ssl.web-sanin.jp/~shop-hikami/cgi-bin/shop/view.cgi?v=3&kjc=14&ctg=1200&page=1 「また七冠バ呑んでるの?!」「G1に未練があり過ぎない?」 未練とかじゃないんですよぉ。 ほら、ボトルがシンボリルドルフさんのお姿なんですよっ! こんなのデジたんが買わない訳にはいかないじゃないですかっ!! 「キモい」「ストレートにキモい」 おいおいおい、キモいはダメですよ、謝ってください!蔵元に謝ってくださいっ!! 「蔵元ごめんなさい」「デジたんはキモい」 そうそう、キモいのはデジたんだけでいいんです。 ……あのねえ、あたしもこれで結構傷つくんですからねっ! お酒呑んでるだけでそんなに言われる筋合いありませんよ!! 4 そうそう作業ですね。 構図で悩んでてね、さっき見せたのが足裏側からの構図なんですけど。 (カチカチ)これが横から。漫画の右から左って流れに沿うとこれの方がいいのかなーって。 「おお~!」「1ページに何枚も構図作るんだ」「さっきの方が迫力ある」 そうそう、ネーム切ってるとプロットは出来ても見せ方にいくつか候補が出てきちゃって。 さっきの方が迫力はあるんだけど、よっと。(カチカチ) ほら、こっちは横に長い構図だから見開きにできるんですよ。 「でも奥行きのある方が好きかな。」 そうねぇ~。(カチカチ) 5 んん~。(カリカリカリカリ) こんなもんかな。右奥から左手前に向かって蹴とばす感じにしてみました。 「早ぇ!」「早っ!」「上手いなー。」「これいいわ。」 おお~。上々じゃないですか。 やっぱり印象的な場面は見開きの方がいいよねえ。 これだと後のページ全部ズレちゃうんでちょっと調整しないといけないんですけど。(カチカチ) で、ちょっと試しに画面奥側に向かって蹴とばす構図も描いてみますかぁ~。(カリカリカリ) こうかな。 「早い早い!」「パースってそんな簡単に描けるもんなの?!」 でへへ。簡単じゃあないですよぉ。それ用のお人形があるんでそれ見ながら、後は漫画っぽい嘘を交えてアタリを入れただけです。 やっぱりこっちに向かって蹴とばしてるさっきの方が好みかな。(カチカチ) 6 おかげさまで構図決まりそうです、ありがとうございますっ! やっぱり色んな意見もらえると作業捗りますよっ!! 「デジたんめっちゃ素直に話聞いてくれるから好き」「デジタル先生アタリ描くの滅茶苦茶早い……」 でへへ♪褒めても何も出ませんよぉ♪(ごくごく) げっぷ。 「出せたじゃねえか」「げっぷ助かる」「げっぷ助かる」「汚い」 フヒヒすみません♪ 7 ウマ娘ちゃん描いてると走ってるシーンがどうしても多くなるんで、それで奥行き描くのは鍛えられた感じです。 でもまだまだですけどねっ! 「ギムレットには早すぎる」 おおっとぉ!それ以上はダメですよ。 そんなこんなでお時間です、あららスパチャ。ありがとうございます。 「冬コミ楽しみにしてます。」 ありがとうございます、谷野……なんて読むんだろ金偏に、進の中のやつ。ああ、キリ! ん~~~~そうですかぁ……んぐぐぐぐ、デジたんの配信にはあまりお名前を出さないほうがいいと思いますぅ~~~!! ではバイデジっ!! -- 凸凹合わせて仲直りを 1 「デジタルにおまんこって言って欲しい。」 「バッカじゃないですかっ!?」 土曜日の昼下がり。 二台のベッドにそれぞれ、昼食を終えて夫婦揃って午睡に入るというところ。 何やら世間話が拗れに拗れ、元トレーナーの夫の性癖の迷宮へと深く踏み込むことになって。 その果てに出た言葉がこれである。 2 「エロゲーとかでもさ、」 「ちょっと待ってください。エロゲーの話をデジたんに当てはめようとしてる?」 アグネスデジタルも昼食直後の重い胃を抱えてそんなツッコミを入れたくはない。 だが言わねばならないのだ。 「エロゲーはファンタジーです!ファンタジーはフィクションです!フィクションイズノットファクト!!オーケー?!」 「バットフィクションイズドリーム。」 「オーノー……。」 デジタルは起き上がりかけた上半身を再びどさりと横たえた。 「聞きたくないならいいよ。」 「話したいならどうぞ?」 3 「……聞きたくないんだよね?」 「話したいんでしょう?」 細めた目で『聞きたくありません』と非難を込めてデジタルが睨む。 それを見て夫は彼女に背を向けた。 「お、どうしました?あたしに言って欲しいことがあったんじゃないですか?」 「もういい。」 「本当ですかぁ?」 「もういいって。」 「でも何だか眠れなさそうですよねえ?」 「何だよ、聞きたいのかい?」 「ええ、でも話したいなら受け止めては差し上げますよぉ?」 「……。」 「……。」 4 「じゃあ、遠慮せず言うよ。」 「ええ、どうぞ。」 デジタルは密かに深呼吸をして覚悟を決めた。 「エロゲーというか漫画もアニメも大体アニメやロリコン文化の影響を受けていて少なくとも日本で公開されているアニメ系文化の女性像は多かれ少なかれ幼さが含まれている。 増してや海外から見れば日本人女性そのものが小柄に見えるし、世界的に見れば日本のアニメ絵文化は全体的にロリコンの気があるんだろう。つまりエロゲーに興奮するっていうのは多かれ少なかれロリコン趣味と言える。それが人妻物であったとしてもね。 受け止める側の男性もそこに描かれる女性像にナイーヴさ、幼さがあるのはある程度了解している。だからこそ隠語が生えるんだ。こんなに幼くて純粋そうな女性が汚らしい卑しい言葉を使う、その事に興奮してしまう。 デジタル、君は僕が言うのも何だけど魅力の中にそうした幼さや純粋さが大いに含まれている。夜のウマぴょいで興奮する要素の多くの部分を占めていると言っていい。そもそもウマ娘は全体的にアニメ絵チックでそうしたロリコン趣味を内包しているものではあると僕は考えるんだけど。 そんな可愛い女性がオマンコだのチンポだのと 5 「おまんこおおおぉぉぉーーーーーー!!!!!!」 デジタルが叫んだ。夫は目を剥く。 「どうですっ!アナタがロリっぽいと蔑むこのデジたんがおまんこと叫ぶ様子はっ!! 本当に男って奴はどうしようもないんだからっ!!! そんなんだからウマ娘ちゃん全年齢オンリーイベントに男性がほとんど来ないんですよ、頭に精子が詰まってるんじゃないですか?! それとも脳みそが金玉に支配されているのかな??? 聞きたくないって拒絶して布団かぶってりゃよかったですよ自分の夫がこんな脳みそチンポ野郎だっただなんて初めて知りましたっ!!! ああおかげで昼寝出来なさそうですもう外走ってきますねっ!!!」 妻は布団を飛び出す。寝室の扉に向かう彼女の手を夫の手が掴んだ。 「……何です、この手は。」 6 「仲直り、したい。」 「あたしは気分転換がしたいんですっ。」 「……わかった。」 夫がその手を離すと妻は部屋を出て行った。程なくして玄関で靴を履く音、玄関の扉の締まる音がして、夫は布団をかけ直して目を閉じた。 ---- ゆさゆさと揺らされる手ごたえに目を覚ますと、妻の悪戯っぽい笑顔が目の前にあった。 「『おまんこ』、しましょうか♪」 その手には0.01mmの鋼の意志が入った箱がカラカラと振られていた。