二次元裏@ふたば

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113936 B21/09/06(月)00:13:30No.843076883そうだねx1 01:17頃消えます
その日、マヤノトップガンは珍しく昼食を一人で食べようと思い立って、お昼時で混雑するカフェテリアの中で空いているテーブルを探していた。
理由は貸してもらった少女漫画の中で大人の女性が一人で食事をして主人公から惚れられるシーンがあったからだが、何より、不機嫌だった。
デートが急遽中止になったからである。それも一か月前から約束していて、色んな計画まで練って楽しみいしていたお出かけだった。それを急に会議が入ってしまったからといて中止にされたのである。
おかげで、マヤノの頬は暇さえあれば膨らんでいた。
(もうトレーナーちゃんなんか知らない! うんと困らせちゃうんだから!)
やっと見つけた隅っこの小さなテーブルに座りながら脚をバタバタとさせていても、トレイの上にはトレーナーが決めた栄養価の高いメニューが乗っている。この天才児の時折みせるいじらしい一途さだった。
「あの〜、ご一緒にいいですか〜?」
むすっとしたまま昼食に箸を進めていると、おっとりした声が聞こえた。マヤノが顔を上げると、スーパークリークが料理を持ちながら慈母なような微笑みをこちらに向けている。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/09/06(月)00:14:03No.843077033+
「あっ、ちょっと待ってね! ……はい、どーぞー!」
その姿に一人で食べることなんて頭からすぐに消えて、マヤノは慌てて備え付けのカウンタークロスでテーブルを拭いてから相手を招いた。その手際の良さにクリークの方は少し目を丸くしてからまた綺麗な笑顔を向けた。
「うふふ、こんなに綺麗にしてもらって。ありがとうございます〜いいこいいこ〜」
「わわっ……」
そっとクリークの白く細長い指がマヤノの頭に近づいたと思うと、頭を優しく撫で始めて栗毛の天才児は思わず目を細めて受け入れてしまった。手のひらから伝わってくる温もりが心地よい。
クリークが手を離すころには、自分の中にあった幼子の癇癪のような苛立ちは何処かに行ってしまっていて、マヤノは静かに驚いた。
「クリークさんって、お母さんみたい」
自分のママのようだと言わなかったのは、概念としての、子供を守る菩薩のようなイメージをそこから感じ取ったからだった。マヤノトップガンには、常人では見知らぬ感覚でしか伝わらない第六感への理解力があった。類を見ない天性の才能だと言っていい。
「うふふ、そうですか〜? 貴方はマヤノトップガンちゃん、ですよね?」
221/09/06(月)00:14:30No.843077175+
お互い面と向かって話したのはこれが初めて会ったが、どちらも相手の名前は知っていた。かたやオグリキャップたちの前に幾度も立ちはだかった歴戦の魔王、かたや変幻自在の脚をもつ新時代の天才児である、だから自然とレースよりも話題は友人や身の回りや趣味などになった。二人とも闘争本能を他所に置いてきたような人に好かれる顔つきだったがや、はり強豪に名を連ねるウマ娘である、レース関係の事はレースで知るのが一番だと思ったのかもしれない。
「それでね、トレーナーちゃんは仕事だから仕方ないでしょーって! もー! マヤはずーっと楽しみにしてたのに!」
「あらあら、それは残念だったわね。かわいそ、かわいそ」
いつしか話題は自身のトレーナーの事に移ったので、またマヤノはデートのキャンセルの事にまたぷんぷんと怒り出して、クリークからまた宥められているようになっていた。またもや頭を撫でられたが、気にすることなくマヤノは続けている。
甘え上手と甘やかし魔である、歯車がかみ合うようで仲の良い姉妹のようでもあった。
321/09/06(月)00:16:05No.843077671+
「マヤもクリークさんみたいに大人のお姉さんになったら、トレーナーちゃんからもデートに誘ってくれるのかなぁ?」
「うふふ、マヤちゃんも、十分素敵な女の子ですよ?」
「でも、クリークさんみたいにいいこいいこ〜ってトレーナーちゃんに出来ないもん。マヤだってトレーナーちゃんを甘やかしてみたい〜!」
スーパークリークとトレーナーの仲が良いという言葉では到底表せない関係は、学園どころかファンでさえも知らない者はいない。公然と甘やかし、抱っこだってしたこともある。それでも二人を深く知る者から言わせれば、それでも序の口というのだからよほど思い合っているのだろう。
そういう所が、マヤノトップガンには特に羨ましく見える。クリークのようにトレーナーから甘えられて受け入れるような、大人の女と言っても通じるウマ娘になってみたい。そんな耳年増な部分があるのも乙女には当然である。
「うふふ、でもねマヤちゃん。甘やかして貰っているのは、本当は私の方なんです」
そんなマヤノの心を覗いたかのようにクリークは言った。
「えっ?」
顔に疑問符を浮かべる少女に、一足先に少しだけ大人になっている少女はただ微笑んでいるだけだった。
421/09/06(月)00:16:30No.843077809+
ふとその二人の耳が一緒に同じ向きに傾くと、連動するように少し遅れて顔が動いた。
ウマ娘の耳というものは大きく自由が利く、なので音にも敏感で不意に漏れた小さな音でも聞き逃さずに判別ができた。二人が聞き逃さなかった音は、自分のトレーナーの声だった。
視線の先にはなるほど、マヤノトップガンとスーパークリークのトレーナーが二人でテーブルに座っていた。少し遅れた昼食らしい。
「あーっ、トレーナーちゃんだ! 隣の人って、クリークさんのトレーナーさんだよね?」
「はい。ご挨拶に行かないと〜」
「うん! じゃなかった、今はマヤはトレーナーちゃんに怒ってるんだった! お喋りなんかえーっと……五分ぐらいしてあげない!」
「あらあら、じゃあ五分経ったら行きましょうね〜」
今にも飛んでいきたそうしながらわざと不満そうに腕を組むマヤノに、クリークは微笑みながら上げていた腰をまた椅子に戻した。マヤノの耳が音を拾うためにそちらに向けられていたのをみて、少し肩だけで笑って自身も耳を向け始めた。
521/09/06(月)00:17:11No.843078008+
「今日はありがとうございました。いろいろ手伝ってもらってしまって。この頃は会議会議で休みなにもありやしない」
そういったのはマヤノトップガンのトレーナーだった。情熱と爽やかさを併せ持つ、夏にふと吹く涼やかさを含んだ風のような声だ。これは性格にもよく出ていて、特に中等部のウマ娘にはこの男は人気があった。
「気にしなくていいよ。元々はこちらの仕事だったんだし、お礼を言うのはこっちの方さ。それよりも、大丈夫だったかい? マヤノ君との約束、反故にしてしまったんだろう」
返したのはスーパークリークのトレーナーである。凛、としている。落ち着いていて、静かな声色ながら相手の体に染み込ませるような声だ。
「まぁ、かなり拗ねられてしまいました。まぁ、俺の落ち度です、うちのお姫様はそれはもう楽しみにしていましたから」
お姫様という単語に一番驚いたのは、担当ウマ娘であるマヤノ自身だった。お姫様なんて言葉は一回もかけられたことはないからだ。トレーナーにとっては軽口だったかもしれないが、少女にとってはトレーナーが王子様に見えたことだろう。恋する少女にとってお姫様とは王子様から攫われるものなのだ。
621/09/06(月)00:18:06No.843078300+
「いつもはマヤノが可愛いんですよから始まる君が、珍しいな」
「まぁ今日ばかりはね。どう挽回しようか」
「もぅ〜トレーナーちゃんったらマヤのことが大好きなんだから〜もー!」
マヤノは上気する頬を抑えて顔を振った。今すぐ飛び出していきたいが、このまま話を聞いていたい気持ちもあり、何とか後者が勝ったようだった。
「そうか、それじゃあ」
とクリークのトレーナーはヒト用としてもかなり大きめな弁当を開いて、そっと背広から二枚のチケットを取り出した。遊園地のチケットだった、付属しているホテルへの一泊二日もついている。
「受け取れませんよ、困ります」
マヤノのトレーナーがそう言ったのは、遠慮からではない。そういうチケットはかなりの金額もするし、すぐにおいそれととれるものではない、つまり自分の担当のために用意したものであろうことはすぐに分かった。
「いいから、君の担当がいかに可愛いかって自慢を聞くのが、俺は好きなんだ。彼女は大事かい?」
「そりゃあ当然」
「じゃあ、早く仲直りしなさい」
721/09/06(月)00:18:33No.843078448+
クリークのトレーナーはぴしゃりとそう言って、テーブルに置いた後あとはチケットに見向きもせずにただ弁当を食べ始めた。こうなったら頑固で、受け取らなかったらもう自分の物ではないようにそのままテーブルに放置するだろう。
それが分かっているので、マヤノのトレーナーは一つ礼をしてからチケットを受け取った。
「クリークさん、いいの?」
「はい。いいんです」
クリークはむしろ誇らしげに、トレーナーの様子を見守っていた。
「しかし、大きなお弁当ですね。手作りですか?」
それでも残る申し訳なさを消すように、マヤノのトレーナーが話題を変えた。
「あぁ、クリークがねこっちも忙しくてあまり昼食も一緒に出来ないから、代わりに弁当を作ってくれてね。自分の好物ばかりで嬉しくなってしまう」
「甘やかされてますねぇ。あ、お米が」
「ん、何処かな」
先輩の頬に米粒がついているを見て、後輩は自分の頬に指をさして場所を教えた。が、なぜだかクリークのトレーナーは取ろうとせずに、顔を相手に近づけるので、お互い変な格好で固まってしまった。
821/09/06(月)00:19:01No.843078618+
少しして自分が何をしているのか気づいたのだろう、クリークのトレーナーはあっと声を上げると慌てて姿勢を正して米粒を取った。
「いや、ごめん。こういう時は、クリークに取ってもらっているから、そのなんだろう……忘れてくれると助かる」
「本当に甘やかされているんですね。今度は取ってあげますよ」
「か、からかわないでくれよ」
頬を染めて、恥ずかし気に笑う男の顔は、いつも凛々しい大人の顔からどこか子供のような無邪気さに変っていて。へぇ、と後輩は不覚にもときめいてクリークの気持ちが少しわかった気がした。
「いいなぁ、クリークさん。マヤのトレーナーちゃん、ほっぺにご飯粒つけたりしないから取ってあげられないもん」
「いーっぱい、食べてもらうのがコツなんです。今度一緒にお弁当作りましょうね」
それを見ていたクリークは自分が取ってあげたかったのだろう、少し残念そうな顔をしている。
「しかし、これでは卒業する時クリーク離れが大変じゃないですか?」
「よく、友人たちからも言われるよ。だけど……なんだろう、想像できない」
箸をおいて、クリークのトレーナーは少し空を見ながらそう言った。
921/09/06(月)00:19:35No.843078847+
「別れるときが?」
「いや、別れることが。こういうと、少し危ない奴だと思われるかもしれないけど、当たり前のように彼女とはこれからも長い道を進むんだと思う心があってさ。彼女と離れ離れになることが想像できない。可笑しいかな?」
「まぁ、貴方だったら別に可笑しくはないです。いっそ、プロポーズでもしますか」
「それも……いいかもしれないね」
軽口で言ったつもりなのだろうが、思わず真面目な返事が返ってきてマヤノとそのトレーナーはたいそう驚いたようだった。
「わぁ……! 聞いた、クリークさん! ぷ、プロポーズって、ね、ね! クリークさん?」
他人が喜ぶ顔が好きなマヤノが、微笑みながら、あらあらどうしましょう〜、なんて大人の女らしく微笑んでいるクリークを想像しながら顔を見て、あれ、と思った。
クリークはただ静かに頬を赤く染めてぎゅっと制服のスカートのすそを握りしめていた。耳をしなりと折って、俯き、自分のトレーナーを見ようしてやはり慌てて俯く。いじらしい乙女がそこにはいて、思わずマヤノは心にときめくものを覚えた。
1021/09/06(月)00:21:06No.843079303+
「もう五分経っちゃった……でもマヤ、後少しこっちにいようかなぁ」
いまだ顔の赤さが引かない先輩ウマ娘の姿に、マヤノは太陽のように笑顔を向けながら脚をまた、ぶらぶらとさせた。
「そ、そう、ね……もうちょっと、だけ……私も……」
向こうでは、プロポーズの事で相談する男とそれに困ったような顔をする男がいる。
一世一代の大勝負の始まりがこんなところで行われていることも知らないカフェテリアは変わらず賑やかのままで、マヤノは勝負服ではないウェディングドレスを着るスーパークリークとついでに自分を想像して、
(早く大人になりたいな)
と心の中で独り言ちた。細い指の乙女から投げられたブーケを捕まえる日はそう遠くない。投げる方になるのにはまだまだ前途多難でまだまだ時間がかかる。
だがいつしか必ず少女が大人になる日が来る、男の中でパートナーが子供でなくなる日が来る。いじらしい一途さを持つ天才児の未来は飛行機雲を伴って希望に満ちた青空を飛んでいた。
1121/09/06(月)00:23:08No.843079968そうだねx8
自分のいない所で自分の事を話すトレーナーを見たウマ娘学会の者でしたがついに10レスになって長さを抑えきれなくなっています誰か他の子も書いてほしい…!
1221/09/06(月)00:23:45No.843080160そうだねx1
誰が抑えなくてはいけないなどと言った?
1321/09/06(月)00:23:51No.843080191+
むぅクリークが出て来てどうなるかな…ってちょっと身構えたけど想像以上にドストライクな奴お出しされて超嬉しい…
1421/09/06(月)00:24:32No.843080409そうだねx6
>クリークはただ静かに頬を赤く染めてぎゅっと制服のスカートのすそを握りしめていた。耳をしなりと折って、俯き、自分のトレーナーを見ようしてやはり慌てて俯く。いじらしい乙女がそこにはいて、思わずマヤノは心にときめくものを覚えた。
こういうクリークが見たかった
ありがとう…
1521/09/06(月)00:25:21No.843080647そうだねx4
いい…いや良すぎる
やっぱり乙女なクリークは体にいい
1621/09/06(月)00:26:06No.843080881+
相席シリーズ好き…
1721/09/06(月)00:26:46No.843081082そうだねx4
こういうのでええんやこういうので!
1821/09/06(月)00:28:38No.843081666+
礼賛するクリークファン
殺害予告を出すマヤノファン
1921/09/06(月)00:29:10No.843081851そうだねx9
久しぶりに乙女なクリークを見た気がする…ママの面が強いけど本来不器用な好意の伝え方してる娘なんだよな
2021/09/06(月)00:29:43No.843082020そうだねx9
>礼賛するクリークファン
>殺害予告を出すパパノトップガン
2121/09/06(月)00:30:12No.843082176+
素晴らしい
のでもっと吐き出せ自分を解放しろ
2221/09/06(月)00:30:14No.843082195+
相席シリーズ二本立てだと!?
2321/09/06(月)00:30:30No.843082284+
クソボケ説教エンドじゃないの初めてかな?
2421/09/06(月)00:31:03No.843082469そうだねx5
乙女なクリークいいよね…
2521/09/06(月)00:33:34No.843083340+
>>殺害予告を出すパパノトップガン
Maverick💢
2621/09/06(月)00:33:46No.843083407+
寝る前にいいものを見せてもらった
2721/09/06(月)00:33:55No.843083464+
文章がガチめなこともあって俺では後に続けねぇ…!
2821/09/06(月)00:35:19No.843083930+
どちらのトレーナーも大人の雰囲気がふっと浮かんでくる感じがしていいね…
2921/09/06(月)00:38:21No.843084967+
いい...助かる...
3021/09/06(月)00:38:27No.843084995+
今日は相席ネタが豊富だな…腰痛がよくなっている気がする
3121/09/06(月)00:42:15No.843086308+
いざ自分が愛を与えられる側になると耳を真っ赤になるクリークとか…すごくいいよね
3221/09/06(月)00:43:10No.843086610+
このクリークトレが頼れる大人って感じがしてクリークのために甘えるのもまたいじらしいほどの一途さのひとつだよね…
3321/09/06(月)00:46:32No.843087726+
この後トレーナーに会うたびに真っ赤になるクリークが見たいわ!誰か見せてちょうだい!
3421/09/06(月)00:48:02No.843088184+
マヤトレの真似してクリークをお姫様呼びし始めたりするといい
3521/09/06(月)00:50:55No.843089193+
直球で返されるとどぎまぎしちゃうクリークいじらしかわいい…
普段はもっとそれとなく見守ってるんだろうなトレーナー
3621/09/06(月)00:52:14No.843089634+
いいものを読ませてもらった
いい組み合わせだ
3721/09/06(月)00:54:04No.843090234+
マヤノもクリークも好意に気づかないわけにはいかないからな…
立場上子供扱いはしても
3821/09/06(月)00:54:30No.843090380+
ええやないか…
3921/09/06(月)00:55:04No.843090548+
タマモオカンもこれにはにっこり
4021/09/06(月)00:57:15No.843091245+
年頃乙女なクリークの供給ありがたい
4121/09/06(月)01:13:26No.843095689+
キャラの解像度が高くてめっちゃいい...
4221/09/06(月)01:15:03No.843096086+
機嫌すぐ治るマヤも可愛い…


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