「くっそぅ…あのオカマ覚えてろぉ……」 保健室から氷嚢を頭に当てて教室に戻る私。 体育の時間にボールが顔面に直撃して、そのまま10分くらい伸びてたらしい。 犯人のオカマ野郎はしきりに謝ってたけど、いつか必ずリベンジすることを心の中で誓った。 がらがらと扉を開け、昼食中の喧噪をかき分けて席に戻ると、机の上には箱を入れた巾着とメモが置かれていた。 「ああ~…そういえば弁当忘れて出たかも…」 メモには『おっちょこちょいなのもカワイイけど、次からは気を付けてね♪』とカワイイ丸文字が添えてあった。 わざわざ届けてくれたのだろう。帰ったらお礼を言わなくては─── 「あ、モエちゃん!」 戻ってきた私に気づいたのか友達が数人やってきた。 頭大丈夫?など難のある心配をされつつも本題はそちらではないようで。 「それねー!モエちゃんのお姉さんが届けてくれたんだよ!」 「は?姉?」 家は今のところ私一人っ子だ。今のところ。だから姉など存在しな…… 「もうモエちゃん!あんなにステキなお姉さんいるならなんで言ってくれないの!」 「ほんっとカワイかったね~!肌とかもちもちだったし!」 「しかもモデルさんみたいな体形だし・・・はぁ…憧れる~」 存在……そんな完璧女子…… ちょいちょいと教室の隅に呼び寄せ、机に隠していたスマホを全員にこっそり見せる。 心当たりのページまですいすいと画面をめくるのを取り巻きは興味深そうに見ていた。 「……ひょっとしてこんな人だった?」 「そうそうこの人!」 「いいな~私も早くスマホ買ってもらお~」 「……」 ────画面に表示していたのは、母親のウマスタアカウントだった。 お母さん💢 あっ、モエちゃんお帰り~♪お弁当ちゃんと食べれた? なんで姉だなんて嘘つくの! あー…何か、盛り上がっちゃってね?止める間もなくって、ごめんね? ……むう でも、カレンまだ学生で通るんだって嬉しかったな♪ お母さん💢歳考えて💢恥ずかしいからもう止めて💢 バタン …怒られちゃった……後でお兄ちゃんに慰めてもらお♪ バンバンバン💢 パパ……もう目開けてもいいよ♪ じゃーん❤ブルマ買ってきちゃいましたー❤ ちょっとお尻がきついかな……モエちゃんと同じサイズなんだけど… 今日ね、モエちゃんのお弁当届けに学校行ったらね、モエちゃんのお姉さんだって言われちゃった♪ モエちゃんには怒られちゃったけど…でもやっぱり嬉しかった♪ だから…"お兄ちゃん"❤ またあの時みたいに……いっぱい"指導"してくださいっ❤❤❤きゃっ❤❤❤❤❤❤