二次元裏@ふたば

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309166 B21/09/01(水)22:18:56No.841612495そうだねx3 23:19頃消えます
「私は特に彼の過去とか気にしてないわ」
下級生からグループラインに流れて来たトレーナーの女性遍歴への質問
即座に返信したものの盛り上がる液晶画面を見ていて
そこに黄金世代の仲間達の物が含まれているのにすぐに気づく
興味津々なのは恐らく二人。グラスさんと、スペシャルウィークさん
そして知りたいけど臆病なのは二人。スカイさんと、エルさん
…意地を張っているのは一人。この私、キングヘイロー
だって絶対後を引くもの。それは分かっている
だからこそ聞けないし、聞こうとは思わない
そう思って私はその晩、さっさとスマホを待機画面にして毛布を被った

「あっ、もしかして貴方、キングヘイロー!?」
「おーっほっほ!さては私のファンかしら?」
「ええ!それと先輩…貴方のトレーナーさんは元気ですか?」
けれど知りたくない事は意外と勝手に向こうからやってくる
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/09/01(水)22:19:06No.841612586+
「先輩とは家も近くて、中学高校と一緒だったんです」
道端で声を掛けられた後の喫茶店
コーヒーに落したミルクをぐるぐるとかき混ぜる彼女は
こちらに視線を合わせぬまま懐かしそうにそんな事を呟いた
くりくりとしたクセッ毛の栗毛、眼鏡をかけておどおどしたウマ娘
ゼンノロブロイさんが大人になって、気弱になったそうな雰囲気の人
何かと面倒を見て貰う事の多かった彼女は自然と彼を好きになり
そして追いかけるようにして彼と同じ高校に入ったという
「…けど、家が近所で親しい以外にはあたし、特にこれといって取り柄もなくて
でも走りにはほら、ウマ娘だからちょっとだけ自信があって…
だから思い切って校内レースに出場して、見に来て欲しい!と頼んだんです」
…そして結果は惨敗
当然だろう。ロクに準備もせずに成果を残せる程勝負の世界は甘くなかった
応援に駆けつけてくれた彼も泣きじゃくる彼女を慰めるのが精一杯だったという
221/09/01(水)22:19:46No.841612923+
『俺、トレーナーになるんだ』
彼がそんな事を言い出したのはそのすぐ後
なんとも彼らしい話だ
一つの物事に夢中になると入れ込むタイプだとは知っていたが
それはどうやら昔からのようで人は中々本質は変わらないらしい
『だからさ、お前もこの間は惜しかったけど一生懸命走ってる所奇麗だったよ!
いや、改めてウマ娘の走る所見たけど凄いのな…こうギュンってさ!』
「それで今や中央でトレーナーですもんね。先輩はやっぱり凄いな、って」
「けど、それから貴方は…?」
「ハハ。あたしは…それっきりです。現役の選手を前に失礼かもしれないけど
あたしが走った理由は、先輩の気を引きたかったからというだけで…
大学に上がった後も連絡をくれていたんですがトレーナーへの道に夢中な彼の熱意に
かえってあたしは気が引けてしまって…返事も、返さなくなっちゃって」
「そう…」
321/09/01(水)22:19:58No.841613046+
現実は厳しいものだ
トレセン学園に入学するようなウマ娘でも活躍できる子は一握りだけ
多くは途中で夢破れ、学園を去る事も少なくはない
一流を胸に去勢を張り、母親への維持で走っていた私もまた
もしトレーナーと出会う事が出来なかったらどうなっていただろうか…
『キングは俺がいなくてもやれてたよ!』
あの人は以前、そんな事を言って笑った事がある
かいかぶりもいい所だ。私を王にしたのは貴方なのに
「けど、あの先輩がまさかあんな風にキングコールをする様になるなんて…
ちょっと雰囲気変わったかも。きっと貴方の影響ですよ、キング」
「そ、それはいいのか悪いのかわからないけど…でもね、後輩さん
確かに彼を王の従者にしたのは私かもしれないけど
彼をトレーナーにしたのは、紛れもない貴方なのよ」
「え…」
421/09/01(水)22:20:12No.841613178+
「だから私は、貴方に会えて良かった。彼をトレーナーにしてくれて、ありがとう
私を、キングでいられるきっかけを作ってくれてありがとう」
「や、は、その…そんな大したことはしてないっていうか」
「どうせだから彼とお話する?
学園からもそう遠くないし、呼ぶなり電話でなりすぐに出来ると思うけれど」
が、しかし彼女は苦笑しながら首を振った
「いーんです、今のあたしは二人のファンが性に合ってるんで
それにこっちから音信不通になったのに今更、困らせたくないし…」
きっとあの人なら喜ぶと思うんだけど
とはいえ無理強いは良くない。そのまま私は彼女と別れ
そして不思議な気分を胸にその場を後にした
521/09/01(水)22:20:24No.841613291そうだねx1
『彼をトレーナーにしたのは、紛れもない貴方なのよ』
キングヘイローの言っていた言葉を帰り道、思い出す
「…羨ましいなぁ…」
『先生からは今からトレーナーなんて無茶だからやめとけって言われたけどさ
こういうのはやるかどうかじゃないか?俺、やれると思うんだよ
だからお前もさ、どうだ?今からでもアスリート。目指してみたらどうだ?』
無理ですよ、とあの時あたしは笑ったのだ
それでも良かった。結局何もかもに臆病で
レースの時でさえおっかなびっくりで、告白さえしていない
していたら、違っただろうか
思い出す。天皇賞のキングヘイローは喜びの余り涙しながら先輩に抱き着いていた
三冠になりながら何故か世間は彼女よりスペシャルウィークとセイウンスカイに注目していた
勝利しながらどこか空虚な顔をしていた彼女の涙
突飛な真似をしながらもきっと世間が知らない苦悩を彼女はしていたのだろう
…そんな彼女を先輩は、ずっと隣で支え続けてきたんだろう
621/09/01(水)22:20:49No.841613524そうだねx8
『じゃあ、先輩があたしのトレーナーやってくださいよ』
あの時言えなかった事を口に出してみる
「…言ってみれば、良がったかなぁ…」
会わなくて良かった。だってきっとあたしは勝手に落ち込んで
あの時のレースみたいに泣きじゃくってしまっただろう
数年越しの後悔が胸の内から沸いて、そして涙腺を伝って落ちる

すっきりしたら先輩に、連絡位は入れてみようか
嗚咽しながらあたしはそんな事を考えていた
721/09/01(水)22:24:21No.841615304+
乙です
しっとり系もいいな
821/09/01(水)22:24:24No.841615331+
おつらい
おつらい…
921/09/01(水)22:25:21No.841615829+
切ないやつだった
1021/09/01(水)22:25:32No.841615915+
うーん切ない…何が悲しいって報われなかったことで世の中にむしろ喜ばれる結果になったことが…
1121/09/01(水)22:26:05No.841616197そうだねx1
さらっと三冠取ってやがる
1221/09/01(水)22:28:40No.841617468そうだねx5
昔のことを知らなくていいなんて強がってたのにトレーナーに会うことを勧めちゃうキングのお人好しさが凄くいい…
1321/09/01(水)22:29:37No.841617915+
>うーん切ない…何が悲しいって報われなかったことで世の中にむしろ喜ばれる結果になったことが…
後輩が喜ばせる側になる可能性もあるし…
1421/09/01(水)22:30:03No.841618123+
キングは三冠取っても欲しいものが手に入らなかったからな…
1521/09/01(水)22:31:54No.841619069+
人生いいよね…ってなる話だ
1621/09/01(水)22:33:33No.841619797そうだねx4
キングは自分が会うの勧めた癖に
その後トレーナーが後輩ちゃんの話したら一人の時しょんぼりするタイプだからな
1721/09/01(水)22:37:48No.841621660+
話聞いたらキングならそう言っちゃうわな…
1821/09/01(水)22:45:24No.841625333そうだねx2
おつらいけどこういう甘酸っぱいのいいね…
1921/09/01(水)22:47:30No.841626284+
キングは自分の感情を別にしてその人にとっての最善を提案しちゃうからな…
結果として自分の情緒がどうなろうと人のために動いてしまうのもキングが一流たる所以よね
2021/09/01(水)22:50:34No.841627695+
寝る前にうるっとくる話が読めた…いい…
2121/09/01(水)22:59:10No.841631526+
かなわない恋いいよね


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