二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1630165282864.jpg-(433378 B)
433378 B21/08/29(日)00:41:22No.840265034+ 01:49頃消えます
「そろそろ来るんじゃあ無いかと思っていたんだ」
開いたドアの向こうから冷房の効いた空気とトレーナーが顔を出す
外泊申請を行い許可が下りたその晩
アタシは特にアポ無しでトレーナーの元を訪れていた
週末だからといって土曜の夜出かけるような男では無いし
…まあ、トレーナー寮の明かりが点いていた事に安堵したの確かだが
「あのね。ちょっとアンタに聞きたい事があって…」
「ああ。分かってる。それならちょっと散歩に付き合ってくれるか」
頷くと、ハーフパンツにTシャツ、サンダルとラフな格好をした彼の後に続く
アタシの方もいつものジャージ。当然夏向けの薄手の物だが
「夜更けに未成年と徘徊とかいけないんだ」
「外泊申請出して来てんだろ。保護者同伴なんだから構いやしないさ」
「…悪い大人もいたもんねえ…」
世間ではこちとら優等生で通っているのにとんでもない担当もいたものだ
蒸し暑い夏の夜とはいえ夜風は涼しく季節が秋に近づいているのは分かる
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/08/29(日)00:41:32No.840265078+
寮から歩く事暫し。街灯が減って行くと田んぼの方へトレーナーの足は向いていた
畦道からは虫の音と蛙の声がひっきりなしに響き輪唱を奏でている
「他のトレーナー達からも話は聞いててさ…
『うちの担当が、俺の恋愛経験に探りを入れて来たんだよ』ってな」
彼が言うようにアタシ達ウマ娘のグループラインで
トレーナーの女性遍歴についてどう思うか?という趣旨の話が流行っていた
当然それをアタシも知っている。というより発起人がアタシだったのだ
とある熱帯夜、眠れなかったアタシはトレーナーにLINEを送り
その後寝るまでの間にちょっとした思い出話を聞いていた
そこで幼少時のこの男の初恋を知り、悶々とした結果それを皆にも伝播させたのである
「ま、話の張本人のお前が聞きに来ない訳無いもんなあ…」
「なんだ、もっと怒られるかと思ったんだけど」
「こういうのは遅かれ早かれなんだよ。思春期の女の子が一番身近な異性相手に
恋愛感情を向けてくるとか、彼女がいるのか質問するなんてのは、な
だから俺達としては既に心構えがある程度できているって訳だ」
221/08/29(日)00:41:43No.840265140+
何かそう言われると若干面白くない
アタシとしてはもっと狼狽えたり、慌てて欲しいものなんだけど
「可愛げが無いわねアンタ」
「お前なあ…まあ、俺の場合はな。彼女ならいたよ。中高まで一緒だった奴が一人」
「そう」
ああ、こっちとしては悔しい話だ
こいつのようにコミュニケーションが得意で快活
顔も悪くない男に彼女がいない方がおかしいと分かってはいたのに
…分かってはいても、アタシが一番になれなかったという事がやはり、悔しい
「でも、結局別れちゃった訳?」
「そうだな。お互いなりたいものがあった。追いかけたい夢があった
だから、そっちに夢中で互いの事までかまけているだけの器用さが無かったんだ。残念ながら」
「で?ちゃんと二人共夢は叶った訳?」
「幸いな。俺はこうしてトレーナーになって、良いパートナーにも恵まれた」
「ふふん」
321/08/29(日)00:41:54No.840265190+
「そして、あいつ…彼女も夢を叶えたよ。その成果物を今も間近で見てるから」
「へえ?」
「お前の勝負服。俺の元カノがデザインしたんだ」
「初耳なんだけど!?」
「俺だってデザイナーを知った時は驚いたよ。あいつだってびっくりしたからな
世間は狭いなって二人で爆笑してさ。それでこの間久々に会って思い出話に花を咲かせたもんさ
…いや、何にも無かったから。あんまそんな泣きそうな顔すんなよ」
「してないわよ」
もしそう見えたのだとしたら、唐突な話の展開で涙が我慢できなくなっただけ
「どのみち俺にはスカーレット。お前がいるし今のあいつにはちゃんと支えてくれる彼氏がいるさ
別れたから今は友達だけど、大事に思ってる事に変わりはないけどな…
まあ、そんな話だ。だから今のお前は俺達二人の夢を背負って走ってる、って訳だな」
「そんなの尚更一番で居続けなくちゃダメじゃない!」
「おうおうもう元気だな!スカーレットだな!」
「メジロだなみたいなのやめてくれる!?」
421/08/29(日)00:42:04No.840265253+
トレーナーに笑いかけていると月が陰り、改めて周囲の田んぼの様子に気づいた
「わ…」
淡い光があちこちに生まれ、そして飛び交う
「この辺りはこの時期、アキボタルが良く飛んでるんだ。奇麗だろ」
「うん…もしかしてアンタ、これ見せたくてアタシをここまで連れ出してきたの?」
「そうだよ悪いか?」
「悪いわよ!こっちは早く昔の話を聞かせて欲しいのに…
確かにホタルは奇麗だけど風邪も止んで暑いし、蚊もいるし!蛙うっさいし!」
「あーあーはいはい俺が悪かった俺が悪かった!」
「全く男ってこれだから…そうやってすぐ自分の世界に浸っちゃうのね」
「何歳になってもこういう生き物なんだよ。夢見がちで夢中になると他が見えなくなるからな」
スカーレット、とトレーナーは優しい声でアタシの名前を呼んだ
こいつがこういう声を出す時は、真剣に聞いて欲しいものがある時だ
「お前は俺の、俺達の夢なんだ。だからまだ走り続けてるお前を後押ししたいし
今はまだ、それしか考えらえない。俺はお前のトレーナーだからな」
521/08/29(日)00:42:15No.840265295+
今はまだ
「だからスカーレット。前を見ててくれ。俺じゃなくていい
脇目も振らず突っ走って、走りで一番になる事だけ考えてろ
…もしそれが済んでその時まだ俺に興味があるのなら。その時俺をお前の一番にしてくれ」
夜風と共に虫の音と、蛙の鳴き声と、心臓の音がアタシの耳を支配する
聞き出す筈の話はとっくに終わりを迎え何故か告白まで引き出してしまった
「…善処するわ」
「善処かよ」
「だってアタシ、ワガママなのよ。一番でいたい。それは走りでも、アンタにとっても
とっくにアタシがアンタの一番なのもアタシにとってのアンタが一番なのも分かってるけど
まあその為にはお互いに努力しなくちゃね」
「…善処するから」
「真似しないでよ。さ、そろそろ帰りましょ。お風呂入ってきたのにまた汗かいちゃった」
「俺も一度入るかな。で?今日は泊まって行くのか」
「許可とったんだから当然でしょ」
621/08/29(日)00:42:27No.840265368+
「ならお前、先にシャワー浴びてくれ。俺はその後でいいから」
二人、畦道を引き返しながらいつものくだらないやり取りを始める
だけどトレーナーは普段よりも距離が近くて、アタシもそれに浮かれている
「あ、トレーナー。アンタがソファはダメよ。寝るならちゃんとベッドにしなさいよね
ソファで雑魚寝は身体に悪いんだよってタキオンさんが言ってたわ」
「じゃあスカーレットがソファで寝てくれるのか」
「違うわよ!アンタのベッド広いんだからいいじゃないの!」
「手は出さないからな」
「そこは出しなさいよ。ちょっと位いいのよ?」
「出しませんからね」
正直な所出すとか出さないとか、一緒に寝るとか寝ないとかもうどうでも良かった
一緒に居られるのが、無性に楽しかった
721/08/29(日)00:42:40No.840265431そうだねx2
「……」
「おーい、スカーレット?」
翌日。昼過ぎに寮へと戻ってきたルームメイトの様子にウオッカは困惑していた
普段ならば外泊許可を得ても夜中に戻ってくる事も多く
愚痴を聞かされる事もしばしばだったのだが、よもやの事態である
こちらの問いかけにも心ここにあらずといった様子でぼう、っとした顔
漸くこちらに気づいたのかその口が「ああ…」とだけ開くと
「悪いけどウオッカ。ちょっと静かにしてくれる?アタシあんまり寝てないのよ…」
昨晩、トレーナーとのお喋りに興じていたダイワスカーレットはそう懇願してきた
だがウオッカはその様子に何やら震え、そして部屋を飛び出していく
「…ふふっ」
そんな彼女に構う事もなく、昨晩の事を思い出しながらダイワスカーレットは微笑んでいた

…あいつらうまぴょいしたんだ!
ただ誤解したウオッカだけがそれを胸に秘め、うっかり誰かに話そうと寮内を駆けていく…
821/08/29(日)00:46:53No.840266712+
ウワーッ!健全!
921/08/29(日)00:47:06No.840266785+
普通に健全だった
1021/08/29(日)00:47:27No.840266894+
しっとりとした空気出しやがって…
1121/08/29(日)00:47:57No.840267050+
あーこういう雰囲気好きだわ…
1221/08/29(日)00:48:25No.840267194+
健全な話で好きなのに困惑してるよ俺
1321/08/29(日)00:48:56No.840267356そうだねx1
黒塗りダスカだから警戒したら普通に良作だった
1421/08/29(日)00:48:56No.840267357+
ウワーッ!うまぴょいしたんだこいつ!!
1521/08/29(日)00:49:44No.840267617そうだねx2
>ウワーッ!うまぴょいしたんだこいつ!!
※してない
1621/08/29(日)00:50:39No.840267926+
だってこのスレ画は!
1721/08/29(日)00:51:57No.840268327+
目線だから警戒したら真っ当に良い話だった
1821/08/29(日)00:52:44No.840268598+
あれ…?健全だぞ…
1921/08/29(日)00:54:33No.840269174+
>「…善処するわ」
>「善処かよ」
>「だってアタシ、ワガママなのよ。一番でいたい。それは走りでも、アンタにとっても
>とっくにアタシがアンタの一番なのもアタシにとってのアンタが一番なのも分かってるけど
>まあその為にはお互いに努力しなくちゃね」
ここの流れがなんとなくダスカらしさがあっていい…
2021/08/29(日)00:55:15No.840269399そうだねx4
ウオッカは多分ウワーッ!うまぴょいしたー!!じゃなくてチューしたー!!!とかだと思う
2121/08/29(日)00:55:34No.840269511+
ウワーッ!誤解してる!?
2221/08/29(日)00:56:48No.840269884+
一兎を追う生き方なんてつまんねーじゃん!
2321/08/29(日)01:07:45No.840273284+
ススススカーレット!妊娠しちゃうだろ!!
2421/08/29(日)01:08:50No.840273623+
>「メジロだなみたいなのやめてくれる!?」
そうだね
2521/08/29(日)01:10:03No.840273980+
>ウオッカは多分ウワーッ!うまぴょいしたー!!じゃなくてチューしたー!!!とかだと思う
ウオッカはうまぴょいが隠語として使われているのを知っているけどやり方は知らないしチューの方がエロい事だと思っている
2621/08/29(日)01:45:42No.840284035+
凄い良い話だったな…


1630165282864.jpg