「どうしようか今日。あと朝食…もう昼食になるか」
「簡単なのなら一応できるけどもうランチ時よね〜…そうだ！歩いていけそうなとこに新しいサ店できたんですって！」
「あの本屋近くにできたチェーン店のか。なんか美味いけど量がえげつないから要注意とか。そこでガッツリめに？」
「そうしましょ！二人で雨の中、傘差してゆっくりのんびりと」
「うん。今くらいの雨ならあえて出るのも風情あるかもな。土砂降りは勘弁だけど」
「それと雨がこの調子のままならお買い物も。夕飯はりきって作っちゃうわよ〜。リクエストある？」
「うーん？とりあえず肉っ気が欲しいかな」
「んーアバウトだけど合点承知の助！スーパーで何か探しましょっか！…あー、あ、あとアレ！」
「アレ？」
「アレよ！そのー、昨日使い切っちゃったし？今度はもう少し余裕持って仕入れとかないと」
「あ、ああ〜そうだそうだ。2つしか残ってなかったのに買い忘れてて面目ない」
「お、お姉さんも確認してなかったしお互い様ってことにしましょ！ね？」
「はは、ははは」
「あははは…」

「………」
「………」
ひとしきり不自然に笑い終えてから二人は静かになってしまう。
話したい内容は恐らく一致しているだろうが、どう踏み出そうか迷っている。
そうしてる間に口を開いたのはアレの話題を切り出していたマルゼンスキーだった。
「…するのに夢中で二人とも寝オチしちゃったから話せなかったけど
　その、しちゃったわね。初めて…付けないで、エッチ。その上」
言葉にして、言葉にされて改めて認識する。
「たくさん、中に」
自分達はコンマゼロ何ミリの物理的な隔たりも捨てて奥底まで繋がり、生殖行為を完遂した。

「ついにしてしまった、な」
ターフを疾走し輝くアスリートであり、またその成熟した体に反して未熟な部分もある心を持つ少女であり
何よりもまだ学生という身分の彼女。
そんな至宝たる彼女が、まだまだ駆ける楽しみと苦難と喜びに満ちたこの道を中途に断っていいはずがない。
一心同体だと言い切り合えるほど男女としても真に心を通わしているとはいえ、指導者たる者が。
婚姻は当然まだしていないし、親族の許可と祝福だって得られていない、
だから二人は初めてを許し合い一線を超えた夜も含め、欠かすことなく避妊具を使ってきた。
後輩から教わった健康管理アプリを操作に戸惑いながらも正しく使い、危うい期間も回避してきた。
それ自体は喜ばしくとも、今はまだ起こしてはならないそれを極力避けるために。
ただ性快楽を共にして深く気持ちを確かめ混ざり合う、コミュニケーションの時とするために。
そうしてきた二人が昨夜、強い情欲に押し流され、ついに次の一線まで超えてしまった。
「してしまったな」

「やっちゃったわね〜私達」
重苦しい思考が巡る頭を抱えようと動きかけた手にマルゼンスキーがクスクス笑いながら手を重ねてくる。
シャワーを浴びた後なのもあっていつもよりふんわり温かく柔らかい綺麗な手のひらが
それよりも大きく節くれ立った男の手をさらさらとさすったり、ぽんぽんと叩く。
彼女の意図くらい分かる。
今の自分は『もしも』が起きたら、という気持ちを情けない程モロに顔に出しているのだろう。
「ごめん。君自身の体のことなんだから君こそ不安だろうに」
「ふふ、何のことかしら。…たった一人のパートナー同士だもの、どっちの方がとか考えないでいいの」
「ありがとう」

「ところで…感想は？」
「うん。…こうして労ってもらってまず言い出すのがこれなのは申し訳ないけど
　やっぱりトレーナーや大人としては真面目に反省してる」
「うん」
「法律的なアレは…あー…今更だけどもう当然の前提として。
　楽しくてレースを走ってる今の君がもし走れなくなったら、誰よりも君自身が悲しむ」
「うん」
　君にはもっと楽しく走ってほしい。楽しく走る君を見たいしファンや後輩達にも見せたいから
　だから…次からは本当に！本当に気をつけるし堪える！…それはそれとして、その、嬉しかった」
「気持ちよかった、とかじゃなくて？」

「気持ちよさもだけど、何より気持ちがすごかった」
そう言って昨夜のことを思い返す。

『避妊具を切らしてしまったからお開きにしよう』ではなく『付けずにしてみたい』と言われた時の焦りと興奮。
初めて直接味わった潤滑液まみれの肉のぬめりと熱。
そこを抉り、掻き混ぜ、突き上げて味わう歓喜。
全霊の愛を吐き出し終えた後に見た、苦しさや恐怖ではない幸福な涙が溢れていた彼女の美しさ。
覆い被さったまま深く口づけをして、愛する彼女と何もかもを混ぜ合い一つになれたような感覚。
至上の幸福が胸を燃やし、自分も涙を流した夜。

股間の熱を伴いながらも今の自分の胸にあの想いが蘇ってくる。

「君の全てを手に入れられた気がした
　もしかしたら君の未来を道を閉ざしたり狭めたりしてしまうかもしれないのに、君は受け入れてくれた。
　マルゼンスキーという女性の体も心も、未来までも俺にくれたんだ。そう思えた。
　勝手な言い方してしまったけど、笑うかな？」
「ううん、全然。あたしもだいたい一緒だもん」
「そうなのか」
「君やスペちゃん達、ファンのみんな…たくさんの人にあたしの走りを見せたい。レースが楽しくて仕方がない
　だからまだ走りたいし、そもそも学生なんだからこれからはちゃんと気をつけなきゃって反省したわ
　自分で付けないでシようって言ったクセにね」
クスクス笑ってから少しの間目を閉じ、一息ついてからまた口を開く。
「でもね。シてる間は本当に、本当に思ってたの。
　『どうなってもいい。全部をこの人にあげたいし、この人の全部を注いでほしい』って
　悪いお姉さんかな、あたし」
「まさか」

「にしても…ぜ〜んぶ中で受け止めちゃうことになるとまでは流石にお姉さん思ってなかったなぁ〜」
「そこはもう完ッ全に欲に負けてた。ごめん」
「も〜、怒ってるんじゃないのよ！だいたいあたしが『出して』って足絡めてお願いしたのが悪いんだもの」
「でも俺が3、いや2回目からもう中でいいかどうか確認もしなくなったから」
「溢れてきて『注ぎ足してくれる？』なんてあたしが言ったのも良くなかったし！」
「『お腹も頭の中も俺で満タンにする』なんて意気込んでごめん！」
「君がそろそろ腰疲れてきたって言ったからもう休めばいいのにあたしが上になればいいなんて粘ったから！」
「目の前で揺れまくる胸見て顔埋めてアホほど元気取り戻したばかりに…！」
「……」
「……」

「…やっぱり今日はまず婦人科行きましょ。アフターピルって早いほど確実らしいし」
「そうだな…」
『やっぱりやりすぎたわ』という認識を共有して得られた、非常に現実的で確率も高い不安解消案である。
「洗ったばっかりのタッちゃんには悪いけど頑張ってもらうわ。ゆっくりのんびりはまた今度にしましょ」
「残念だけど緊急事態だしなぁ」
「…二人とも結局お子様だったってことよね、今回の件は」
「ああ…本当ごめん…」
「二人でやらかしたことなんだから謝らないでいいのよ〜。モチ、付き添いお願いね？」
「OK。シャワーもらったらすぐ支度するよ」

一番大切なこの人と歩んで未来を育んでいけるのなら、という気持ちが真実であろうと
その一番以外のものだって捨ても悲しませもせずに全部手に入れられる方が良いに決まってる。

今はまだその時ではない。焦らず欲に溺れ過ぎず、ちゃんと我慢していこうと誓った二人であった。
…多分。

マルゼンスキーの体力が15回復した。
マルゼンスキーのやる気は「絶好調」をキープしている。
「内的体験」のヒントLvが1上がった。
トレーナーの体力が10減った。
トレーナーの「ふり絞り」のヒントLvが3上がった。

終わりです
>一日予定空けてたのに二人して昼前に起きたし結構な雨降ってて洗ったばかりのタッちゃん出すのももったいないから家デートにしちゃおっかってなってほしいスケ
ってレス見て書き出したのになんかデートお流れになっちゃいました

私こういうの好き！(バァァァン

素晴らしい…こういう茶化さないマルゼンスキーの怪文書でしか得られない栄養素がある

こいつら生ぴょいして因子汁も出したんだ！！！

生ぴょいピロートークもたまにはいいもんだ…

しっかりと互いの愛の結果についてはイチャイチャする癖に今後のことはちゃんと考えてるのいいよね…

むっ
マルゼン怪文書いいねぇ
なまえっちでおめでたする確率は85％ですよ
ゴムを正しく使うとおめでたする確率を85％下げるそうです

>「内的体験」のヒントLvが1上がった。
ああ内的体験ってそういう…

>　『どうなってもいい。全部をこの人にあげたいし、この人の全部を注いでほしい』
私ここ滅茶苦茶好き！！！！！１１１１

ふり絞りいいですよね
この場合3発出さないと発動しないんでしょうか？

>シャワーを浴びた後なのもあっていつもよりふんわり温かく柔らかい綺麗な手のひらが
>それよりも大きく節くれ立った男の手をさらさらとさすったり、ぽんぽんと叩く。
>彼女の意図くらい分かる。
こういうそっと支えてくれるしっとりさいいな…

そっと保存した

こいつら日常的にゴムぴょいしてるんだ！

マルゼンさんこういうの似合うね…

めっちゃいい…

大人っぽいけど等身大な二人の関係いいよね…

この度も感想ありがとうございます
>なまえっちでおめでたする確率は85％ですよ
>ゴムを正しく使うとおめでたする確率を85％下げるそうです
なかなか怖いですよね…
ネタ探しにパール指数っての見てピルすげぇとかゴムぴょいも信じ切っていいわけじゃないんだとか驚きました
ちなみに前日の夜イベントで【本当にいいんだな】でなく
【ダメだ…！】を選んだ場合はトレーナーの鋼の意志ヒントLvが最大になるだけです

>【ダメだ…！】を選んだ場合はトレーナーの鋼の意志ヒントLvが最大になるだけです
いらない！

もう遺伝子がお互いを求めあってしまったんだ
どうにもできないんだ

あたいあんたのトレーナーとマルゼンさんのカップル好きよ…

こいつら本気でお互いを想いながら愛し合ってるんだ！！

やはりイチャラブ…イチャラブは心が洗われる…

>「目の前で揺れまくる胸見て顔埋めてアホほど元気取り戻したばかりに…！」
これは不可抗力だと考えられます

寝る前にいいもの読ませてもらったよありがとう

朝シャンからのコーヒー牛乳に慣れ切ってたり気持ちが通じ合いまくってたりしてるのがすごく好き…
早く卒業して結婚は済ませてしまえ！

>>【ダメだ…！】を選んだ場合はトレーナーの鋼の意志ヒントLvが最大になるだけです
>いらない！
その時同僚女に電流が走る

>ネタ探しにパール指数っての見てピルすげぇとかゴムぴょいも信じ切っていいわけじゃないんだとか驚きました
ちゃんと使えたゴムぴょいでも約2%は産駒ができる辺りもうとにかくできていい時期にできていい人としろ！に尽きるなと思った！

>ちゃんと使えたゴムぴょいでも約2%は産駒ができる辺りもうとにかくできていい時期にできていい人としろ！に尽きるなと思った！
遮蔽物あって正しく使っても2%あるの！？

凄いね生命

パール指数というのが「その避妊方法で一年生活して100人中何人が妊娠するかという数字」だから一回での確率はもちろんずっと下がるよ！
でも結局ゼロじゃないということだぞ！

この日のことを機に二人で避妊のこともっと勉強したりしてほしい
んでゴムちゃんと使えば大丈夫と甘く見てておったまげーしたりしろ

前途は多難だけどそれでも大変な事を乗り越えて幸せになってほしいって願う組み合わせだ…
良き怪文書でありました…

幸せな二人いいよね…
でも早いとこご両親に挨拶はして欲しいと思いましたまる

>「…二人とも結局お子様だったってことよね、今回の件は」
大人であるトレーナーとトレセン生徒屈指の大人っぽいお姉さんとで本当に心も通じ合ってるけどやっぱりまだ未熟でもあるのがかわいい
かっ飛ばすのもいいけどこれからも2人で安全運転していって…

異世界言語を殆ど使わない王道怪文書初めて見た…ありがたい…

良い意味で激マブ怪文書書く勇気が出た
トレンディ語録使わなくてもこれ程良い物が書けるんだな

>トレンディ語録使わなくてもこれ程良い物が書けるんだな
合点承知の助は入ってる！
死語やバブリーな言葉出してくるのは日常やエンジョイしてる時で真面目な気持ちを語ったりする時はほぼ不使用だ！

アプリの時からマルゼンさんはそうだから…
女の子の顔になったときの破壊力はすごいぞ

一回命中したら空胎なしの子沢山になりそうだな…