「ちょっとアンタ、そこに直りなさい」 「はい」 オークスでの一件の後、アタシはアルダンに話を聞きに行った。 冷たいお嬢様と側近から逃げ回ってるパーマーは論外として、 ライアンかアルダンならアルダンの方が落ち着いて話してくれると思ったからだ。 案の定、アルダンは既に”処置”を経験してて、はにかみながら色々と実態について話してくれた。 「それで、一体何事でしょうか」 「……自覚無いの?信じられない」 吐き捨てるように言ってから、アイツに突き付けてやった。 「おばあ様の言うことだから大人しく聞いたけど、アタシ初めて捧げてもいいなんて言ってないんだけど!?」 鳩が豆鉄砲を食ったような顔、 それがすぐに崩れていって、終いには、 「は、あっはっはっは……!」 腹を抱えて笑い出した。 「何がおかしいのよ!乙女の純潔なんだと思ってるわけ!?」 「ああ…いや…すみませんっふ」 「ああもう、コイツ……!」 「す、すみません。確かに笑い事ではありませんでしたね」 「そうよ、アルダンもマックイーンもなんであんなのを受け入れたんだか…」 「お二方のことは存じ上げませんが、少なくともドーベル様はまだ処女でございますよ」 「へ?」 「簡易処置をしたと申し上げました。道具を使って一時的に快楽で発散させただけでございます」 ……話をまとめるとこうだ。 フケというのは発情期のことで、興奮したり身体能力が上がったりする。 メジロ家はそれをレースで存分に生かし、レース後に処置で発散させるやり方を伝統的に取っている。 処置というのが所謂セックスで、曰く子供をつくる真似事をするのが一番発散に効果的とのことだ。 ただし極端に性経験に乏しいアタシに本格処置をするのは忍びなく、ただ気持ちよくさせるだけの一時しのぎで済ませた、と。 「じゃあ、入ってたのって……」 「性感マッサージ用のスティックです。本物は2倍くらい太いですよ」 「にっ……!?い、いや、じゃああんなに激しくその…イ、イかせたのは……?」 「少しでも頻度を減らそうと一回の密度を上げてみたのです。思えば生娘には酷なことをしたと反省しております」 しょぼんと項垂れるコイツと、自分の余りの無知っぷりに毒気が抜かれてしまった。 「……もういい、アタシが何も知らなかっただけ、か」 「申し訳ございません」 「…まあ、その気遣いは褒めてあげるけど……これからも簡易処置で済ませて」 「かしこまりました」 「あ”、い”っ♥くうっ……❤あっ、まだっ!?くう”……っ❤」 今日も今日とて執拗な虐待を受ける。 レースの後は毎回するし、練習後もよくフケてしまう。 その度にアイツに人目のないところに連れ込まれて目隠しをされる。 行為に慣れて暴れなくなったからって手足は縛られなくなったけど…… お尻を晒すのにもすっかり慣れてしまって、 「期待してます?」 「するわけないでしょ。早く終わらせて」 「自分でお尻振ってるの、気づいてないんですか」 「っ!?」 ……こんなやり取りまでする始末だ。 「やだぁ、もう止めてっ❤もうい、う”っ❤」 「駄目ですよ~我慢してくださいね」 目が見えないから嫌でも意識が自分のナカに向く。 棒の長さや粒が執拗にアタシを抉るのがはっきり分かって、耐えようとする気持ちが快感の前にすぐ折れてしまう。 「し”てない”っ♥やだ❤もうイき”たくな”っ~~~~~~❤❤❤」 毎回気絶するまで徹底的にイかされて、数日は収まるけどそれからはあっさりフケが再発する。 いつまで、こんな生活が続くんだろう。処女と引き換えで収まるなら、いっそ…… 「あ”────────っ……♥❤❤」 初めてフケを経験してから1ヵ月が経ち、アタシの体に異変が生じた。 「ドーベルちゃん、何かあった?」 「えっ!?な、なんでもないけど……」 「最近落ち着きないよねドーベル……あっ、もしかして恋とか!」 「ばっ……!?」 「えーでもドーベルちゃん男の人苦手でしょ~」 「ほらお付きの人とか」 「えっ!あの人女の人じゃないの!?」 「アイツは関係ないから!」 カチカチと歯が鳴って、貧乏ゆすりが止まらない。爪を噛みたくなるのを唇を挟んで何とか阻止する。 一人でいるといつもこんな調子だ。人目があるとある程度収まるけど、それでも落ち着かないのはどうしようもない。 原因は多分分かってる。ただ、解決を切り出す勇気が持てないだけ。 「あっ、見つけました。どうしたんですか、急に居なくなったりして」 「こっち来ないで!アンタが居ると調子狂う……」 コイツの姿を見るだけで期待に下着を濡らしてしまう。 そのくせ、あの簡易処置では満足しきれないのだろう。終わった後の喪失感が日に日に強くなるのだ。 満たした器の中身が思ったのとは違って、癇癪を起こしてぶちまける。でも残るのは空の器だけ。そんな感じ。 「ストレスはお肌によくありません。化粧品でカバーするにも限度が……」 「分かってる、分かってるよそんなこと!」 でも解決するにはコイツに体を明け渡すということで、そのふんきりがまだ付かないのだ。 「……アンタは」 「はい」 「アンタは、アタシのことどう思ってるの」 「敬愛すべき俺の主人です」 「……っ」 模範解答に歯噛みをする。やっぱり駄目だ、こんな奴に抱かれるくらいなら…… 「そして」 アイツが近づいて来て、アタシの顎をとった。 「一目見てから狙っていた高値の花でもあります」 整った中性的な顔つきに獣のようなどう猛さが垣間見えた。 「ほ、本気で言ってるわけ!?アタシの趣味知ってるからって」 「言い方は寄せてみましたけど、想いに偽りはありませんよ」 大きな黒い瞳がアタシを捕らえて離さない。違う、離れないのはアタシの方…… 「ずっとアタシのことを……」 「お慕いしております。狙っていた、といった方がよろしいですか」 「くっ、この……!」 「俺は誰よりもドーベル様を理解しています。何が好きで何が嫌いで、どんな風に鳴いてどんな風に歓んでくれるかも」 「……やめて」 「この世の誰よりあなたの側で、あなたを想い続けておりました」 「……やめてったら!」 低めの声が甘く響く。 「墓まで持っていくのもやむなしと思っていましたが、もうその必要はないようで────」 「もう黙って!」 胸を突き飛ばす。 あの整った顔から歯の浮くような台詞がささやかれる度に、アタシの中で何かがとろとろとろけていく。 あまりのことに、腰が抜けてしまって上手く動けない。 「ドーベル様がお望みなら、今夜俺の部屋に来てください。”処置”の準備はしておきますので」 ……あの男が危険だとしきりに理性が叫ぶ。ならすることは決まっている。おばあ様に連絡して、クビを──────── アイツの部屋の前に立って、戸を開いた。 「……お待ちしておりました。ドーベル様」 読書中だったのか、眼鏡を外して書物に栞を挟んで立ちあがる。 「勘違いしないで。これ以上フケで悩みたくないだけ」 「賢明な判断でございます。準備は済んでおりますよ」 その言葉に体が小さく震える。悲願の叶う期待なのか、それとも後戻りできない恐怖なのか。 ベッドの上に四つ這いになり、部屋着を下ろす。 下着のみを纏った尻をはしたなく突き出すのがいつもの合図だ。 「では、失礼いたします……」 「っく……!」 いつもは棒でかき回されるばかりだったあそこに、アイツの指が入ってくる。 無機質な感触じゃない。きゅうきゅうと吸いつくアタシを受け止めてよくなじむ、人肌の感触。 それだけでじわじわ熱いものがこみ上げて、蜜になって指を濡らす。 「んー……中指でも届かないか。というか前戯要らないですねこれ」 「ふっ……うぅ……」 「まあちゃんとほぐした方がいいか」 「うううぅ……っ」 アイツの指がでこぼこした中の壁を浅く抉る。 ゆっくり抜き差しされてるだけなのに気持ちよさはいつもの比にならなくて、 あっさりイかないようにシーツを噛んでなんとか耐える。でもそれも長く保たなくて。 「ふーっ……ふー……っ!くぅぅっ……❤」 ごしごしと強めに、壺でも磨くような手つきで愛撫されて、耐え切れなかった。 だけどその時点でアイツの手が止まった。いつもならこのまま気絶させられるのに…… と思いながら物足りなさを感じていたら仰向きに寝かされて、半裸のアイツと目が合った。 「はっ、な、なにそれっ!?」 「今からお相手させていただく愚息でございます」 薄くラテックスの色を纏った、アイツの股から反り立つそれはアタシの想像をはるかに超えたサイズをしていた。 (大きい…!二倍とか大嘘じゃない!) 目算軽く器具の4倍の太さもありそうな凶悪なそれが、アタシの下腹部にぴったりと添えられる。 股から臍のすぐ下まで一直線に熱が這い、今から自分が何をされるかをはっきり示していた。 「む、無理っ!そんなの入るわけない!」 「入るように出来てるんで大丈夫ですよ」 「あっ、や、やだ………」 腕を回してお尻を掴まれ、先っぽが私の穴をしっかり捉えた。 そのまま入り口の周りを滑らせて、入るか入らないかのフェイントを仕掛けられる。 前後する先端から目が離せないでいると、いつの間にかその動きは止まってて、そこが私の股に隠れていた。 「あっ、待っ……」 ずぶぶぶぶぅっ❤ 「うあっ…すっごいとろとろ……」 「あっ、ああ……う~~~~~~~~っ……❤❤❤」 「嘘っ、入れただけで!?待っ……ぐうぅ……」 とっくに堕ちていたアタシの体は、アイツを受け入れただけで白旗を振った。 どうしようもない多幸感に包まれて、今までにないくらい深く絶頂する。 「…ぐぅ…っはぁ…!締め付け凄すぎ、っでしょ……」 「んー……」 苦しそうなアイツに向かって、ぼんやり両手を伸ばす。 「ど、ドーベル様……?」 「……もっと、シてよ」 「はは……お望み通り、にっ!」 「んひっ❤」 大きく弓を引いて、また太いアレが奥まで私を貫く。 一番いいところを横殴りしながらねちねちとしつこいピストンで何度もイって、それにも構わずアイツの攻めが続く。 愛おしさのままにアイツを抱き寄せて口を突き出せば、察したアイツが唇を啄ばみにやってくる。 上も下着も脱ぎはらって少しでも多く肌をくっつけた。キスも唇だけから舌も絡めあうようになって、溶けるようにお互い求めあった。 「ドーベル……ドーベル……っ!」 骨盤を砕くような勢いでアイツが腰を振っていたのが突然止まる。 一番奥を強く突かれてイッたアタシのお腹の中で、何かじんわり熱いものが膨らんでいる。 (これ……まさか……) ぐりぐりと押し付けて、少しでも奥に届けようと無駄な努力をしているのを見て、その正体に合点がいった。 その途端、動いてもいないのにまた私はみっともなくイき散らかした。 「あ、ああ”っ♥んくぅ……っ♥………………もっと……もっとぉ……❤」 「こっ、このドスケベ女が……お望み通り気絶するまでヤッてあげるよ!」 その後一晩中抱き合って、いつ寝たのかは覚えてない。 起きた時には自分の部屋で、寝間着も元通り戻っていた。 「ドーベル様、ご機嫌はいかがでしょう」 「大丈夫、ちゃんとノってるから」 夏が過ぎて、秋のGⅠ戦線が始まった。 今日は秋華賞。エアグルーヴ先輩は届かなかった、ティアラ路線最後のレース。 しっかりフケも乗って、コンディションは最高の状態。今日は、絶対に勝てる。 「対抗バのキョウエイマーチも、ドーベル様をマークしてくるでしょうね」 「上等。絶対、負けないから」 「……時間です。ドーベル様、ご準備を」 パドックで勝負前のインタビューに答えていると、遠目で見守ってるアイツと目があった。 それでふと思いついて、目配せと口パクをしてみる。 『あとで、よろしく、❤』 赤面して顔を抑えるアイツに満足して、アタシはゲートに向かった。 ~~~~~~~~~~~~~~~ 走りの伸びと肉体に限界を感じて、引退が視野に入ったころの話。 ベッドの上で、アタシは下だけ裸になってアイツに組み敷かれていた。 可愛い顔に似合わない凶悪なアレを震わせながらゴムを付けている。 「ドーベル様、何のつもりですか」 手を伸ばして竿の根元に爪をかけ、くるくると逆方向に巻き取っていく。 コイツには巧妙に首輪を付けられて、こんな変態に堕落させられてしまった借りがある。 だから今度はアタシが自分から転がり落ちてやる番だ。 「もうすぐ、走らなくなるでしょ。だから、さ」 心臓がうるさい。 「ナマで…してみたいなって」 唾を飲む。 上目遣いで、 「……ダメ?」 「ああっ、だめ❤あっ❤やっ❤いきなり激しすぎっ♥」 いつにも増して激しい攻めにアタシはすぐぐちゃぐちゃにされる。 性欲に燃えた視線が突き刺さって、それがすごくゾクゾクした。 「はあっ…はあっ…ドーベルが、ドーベル様が悪いんですよ!」 「ああんっ❤せきにんっ…てんかっ?……さいってぇ❤」 「っ!このぉ……!」 いつもより一回り大きい先っぽがアタシのイイところをぞりぞりめくる。 「はっ”……うぅ❤」 どちゅんと深く突きさされ、ぐりぐり奥をなじられる。 「お”、ぐぅっ……❤」 必死にアタシにしがみついて可愛い顔が歪むのを見るとほの暗い愉悦が心を満たす。 何度もべたべたなキスをして、抱き寄せて腰に足を絡ませる。 相手が自分の思う通りに動くのがこんなに楽しいとは思わなかった。コイツのことをもう責められない、かもしれない。 「はっ…!はっ…!ナカで、ナカで出しますよ!」 「だ、だめっ❤そんなのだめっ❤」 「俺の子、孕んでっ!ちゃんと産んでっ!」 「やだっ♥ぜったいやあっ❤」 がっちりと脚を絡め逃がさないでいると、アタシの中で先っぽが大きく膨らんだ。 直後、お腹の中が火傷しそうなくらい熱くなってアイツの動きが止まった。 「うっ、ううっ……」 最後の一突きで同時にイったアタシの中に、どくどくと流れ込んでくる。 ぐりぐり腰を突き出して無防備なお腹にいっぱいいっぱいまで種を詰め込まれる。 「孕んで…孕んで…」 うわごとのようにつぶやくコイツの背中を撫でながら、甘ったるい余韻に脳がしびれていくのを楽しんでいた。 いそいそと着替えるアイツを横目で見ながらだるい体をベッドで転がしていた。 お腹にはたっぷりアイツの分身が入っていて、その熱が嘘じゃないことを伝えてくる。 「ご主人様にこんなに中出しするとか、使用人としてどうなの?」 「ばっ、ドーベル!…様が言い出したんじゃ……!」 「知らないから、そんなの。使用人失格だね」 梯子を外されて顔色が白黒するアイツを見てすっかり満足したアタシは寝返りを打って仰向けになった。 撫でれば分かる程度にぽっこりしたお腹をさする。 「……っ♥」 ぐつぐつと、お胎の中で何かが煮えていくのを感じた。