「これとこれとこれは合宿に被るから没、これも、これもだな」
「えっと、実家に顔を出す日がこれで……」
「じゃあこれもだめだな」
決定事項を元に次々とパンフレットが没の段ボールに放り込まれていきます。
思いのほか選定は早く進み、みるみる内に残るは数冊となりました。
「じゃあ、後は……」
「クルージング、貸し別荘、海外リゾートホテル……なあこれ本気で行くの？二人で？」
「最初に言ったじゃないですか！二人きりの思い出作りましょうって！」
「出来るの思い出だけで済みそうにないんだが？」
「お兄さんは大人ですから、子供のダイヤに手を出したりしません。ですよね❤」
「……………………おぅ、当たり前よ」

「……あっ、悪いダイヤ。クルージングはダメだ」
「あっ、お兄さんの予定と……」
「ああ、親の墓参り行かなきゃいかん」
「……それ、付いていったら駄目ですか」
「他人の墓参りって面白いか？」
「ご両親に挨拶を……どうでしょう……」
「んー……」
少し逡巡して、彼が口を開きました。
「うん、やっぱダメ」
「ぶぅ……」
「ぶすくれた顔も可愛いな(こらこらそんな顔したらだめだろ)」
「お兄さん……❤」
「あっやべ逆だ」

────────────────

そういう訳で夏休みに入って、合宿に行く前にお兄さんと貸し別荘へ遊びに行くことになりました。
今日はその為の買い物に来ています。

「えーっと、ボードゲーム、靴、懐中電灯、勝負下着……あら？」
メモを確認していたら、反対の通りに見覚えのある人影がありました。
「お兄さん……？」
今日はお墓参りの日と聞いていましたが、実家に帰ったのでは無かったようです。
やってきたバスに乗り込んで、どこかへと行ってしまいます。
「……行きましょう！」
荷物を貸しロッカーに預けて、バスを追うことにしました。
途中途中で身を隠しながら、付かず離れずの距離を保って追いかけます。

数時間ほど走って、山奥の方までやってきてしまいました。
この辺に実家があるのでしょうか？

お兄さんがバス停から降りたのを認めて、尾行を続けます。
またもや20分ほど移動すると、古ぼけたお寺が見えてきました。
「ああ、あなたですか。毎年ご苦労様です」
「いいえ、ロクな孝行もできませんで、これくらいしか」
「いやいや、きっとご両親も喜ばれますよ」
……お兄さんはご両親とも既に無くしてしまってたようです。
自分の話はあまりしない人なので、初耳でした。

お兄さんが奥の方へ消えていったのを確認して、私もお寺の方に声を掛けます。

「あ、あの……」
「おや、こんなところに、しかもウマ娘さんとは……ああ、あの人の教え子さんかい！」
「はい、サトノダイヤモンドと申します」
「サトノ……ああ、どうりで」
「何か？」
「あー……悪いことは言わない。このまま、見なかったことにして帰りなさい」
「それは、どういう……」


「ダイヤ？」

奥の方から、柄杓を持ったトレーナーさんが出てきました。
お坊さんは後悔したような表情になって、バツの悪そうに去っていきました。

「なんでここに？」
「えっと、見かけたので、追いかけてきちゃいました……」
「はぁ……山奥で迷ったらどうするんだ」
「ごめんなさい…でもやっぱり気になって」
「まあ、すぐ終わるからお寺で待たせてもらいなさい。送るから」
そういうとお兄さんは私に背を向けました。
「ま、待ってください！どうしてそんなに避けるんですか！」
「君の為にならないからだ」
「っ、そんな言い方、余計に気になりますよ！」

しばらくして、観念したのか大きなため息をついて、
「じゃあ、来なさい。ただし、静かにしてるんだぞ」

沢山の苔むしたお墓が並ぶ中を歩いていきます。
山奥だというのに鳥の声もしないで、木々のざわめきだけが立ち込めていました。
「ここ」
お兄さんが立ち止まったところには、肩身の狭そうに二つだけ、お墓がぽつんと立っていました。
たわしで軽くお墓を磨き、花とお供えを替え、柄杓で水を注ぎます。
線香を三本お墓にお供えし、お兄さんがしゃがんで手を合わせました。
真似して私も手を合わせていると、お兄さんがつぶやく声がしました。

「父さん、母さん、来たよ。今年はお客さんも一緒だ」
お客さんとは私のことでしょうか。ただ黙って見守ります。
「ダイヤは、俺の可愛い教え子だよ。あんたらからしたら目の上のこぶかもしれないけど、勘弁してやってくれ」
臆面もなく可愛いと言ってのけるお兄さんに口角を必死に押さえます。それより、こぶ……？

「確かにこの子の実家があんたらの会社を潰したさ。でもそれは、この子が悪いんじゃないだろう？」


合わせた手を口に持ってきて必死に声を抑えます。そんな話聞いたことありません。

「ハナから知ってはいたんだ。でも結局、言ってたように復讐なんてする気にならなかった。
だってこの子も必死だったんだ。周りの期待に必死になって答える姿を見て、なんで貶めようだなんて思えるんだ？」

「あんたらも俺に期待してくれてたけどさ、あんな後ろ向きな期待じゃない、真っすぐな期待を受けてこの子は走ってるんだ」

「だから俺はそれを支えるよ。曲がりなりにも期待の重みは分かるんだ。結局逃げ出したけどな」

「許してくれとは言えないけど、彼女に罪が無いことだけは分かってやってくれ」

遠くで蝉の鳴く声がしました。

「……声に出さないと何となく届かない気がしててさ、あといい機会だから打ち明けておこうって思ったんだ」
「……」
「ごめんね、変な話聞かせちゃって」
「い、いいえ……そんな……」
帰り道、私とお兄さんはバス停に向かってゆっくり歩いていました。
頭の中はぐちゃぐちゃで、今もどうやって歩いているのかわかりません。
……お兄さんは、どうして私をスカウトしたんでしょうか。やっぱり、ご両親の仇討ちを……
「いや普通に君の走りに惚れただけだけど」
「ひゃぁ！？こ、心を読まないでください！！」
「口に出てるの気づいてないの？……まぁでも」

彼が、振り向いて、

「その顔が見たかったところは、ちょっとあるかもね」
酷く陰惨に、意地悪く口元を歪めていました。

「…………」
「……どした、ぷるぷる震えて」
「……かい」
「なんて？」
「…もう一回、今の表情お願いできますか……？」
「えっなんで、こ、こう？（ﾆｨ）」
「はぁうぅ……っ」
「えっ、そんなに変？」
「違うんです……なんというか、すごい…」

「すごい、グッとくる表情で……」

(ああ、ニヒルな悪役とか好きなタイプか……)

このあといっぱい、夏の”思い出”を作りました❤
お兄さんと掛けがえのない絆を感じたひと時でしたね❤


【マゾっ気】のヒントレペルが5上がった！
トレーナーとの相性は運命的だ！

触発されて書いてたらお盆のネタになりました。

……お似合いのカップルだね！うん！

性癖曲がりすぎとちゃうかこの娘

ゼオライマーのマサキみたいな顔してんのかな…

>ゼオライマーのマサキみたいな顔してんのかな…
タイムリーなのだとオベロンかもしれない

お嬢様は悪い男に弱い
古事記にもそう書かれている

しれっと勝負下着を新調するんじゃない

セガサミーさん家はそんな実家じゃないよー😭

>しれっと勝負下着を新調するんじゃない
必要だったじゃないか

>セガサミーさん家はそんな実家じゃないよー😭
事業競争に負けたのを逆恨みしてるだけかもしれない

レペル？

いい…

パチンコで破産しただけかもしれない

>パチンコで破産しただけかもしれない
クソ親…

すみませんこの夏の思い出♥の部分に詳細が足りないと思うんですけどどこにありますか？

セガの下請けだったけど別の会社に変えられたとか？

>すみませんこの夏の思い出♥の部分に詳細が足りないと思うんですけどどこにありますか？
二人きり❤の”思い出”なので残念ながらお見せできません❤

復讐お兄さん流行ってるのか

セガバンダイかもしれない

>レペル？
習得するかはトレーナー次第…

まさか触発される人が出るとは……
なんやかんや嬉しいかもしれん

なるほどそういう収め方があったのか…
いいもの見せてもらいました

自分ごと家をお兄さんに捧げれば結果的に復讐の手伝いになる…？

>自分ごと家をお兄さんに捧げれば結果的に復讐の手伝いになる…？
復讐したかったのは親であってサトトレじゃないんだ
元気に走ってくれるのが一番だよ

セガとかむしろ傾く側じゃろがい！

硬貨積みが得意で笑顔が凶悪なお兄さんみたいな顔してるんだろうな…

サトちゃんの性癖はもうボロボロ