二次元裏@ふたば

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2384567 B21/08/13(金)00:26:35No.834301163+ 01:27頃消えます
目黒記念で勝利したからといって俺とキンイロリョテイの関係が何か変わることはなかった。
次はGTだと出走した宝塚記念は5着。目黒の脚を使えばオペラオーを倒せるとは言わないが掲示板くらいには入ると思っていたんだが。
キンイロリョテイが手を抜いているのは明らかだったが理由はわからない。
聞いて教えてもらえるとも思っていなかったが。
なんとか練習の時だけでもと手をつくしたが、その度にボディにいいのを食らうだけに終わった。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/08/13(金)00:26:51No.834301264+
そうして春のGT戦線は終了。夏の強化合宿に入った。
合宿でのキンイロリョテイは比較的おとなしかった。周囲の目があるせいだろう。トレーニングも一通り真面目に行っている。
だが、それに気を良くして少し増量すると砂浜に埋められた。
トレーニングが早く終わったので追加トレーニングしようとすると海に放り込まれた。
ある時は遠泳でキンイロリョテイが溺れているというので助けに行けば、それは演技で逆に沈められたあげく、トレーナーが溺れたということで救助したという美談にすり替わっている事すらあった。
そんな合宿も終わる頃にはいい加減自分も人間としての耐久力が上がってきたなと実感しかけていた。合宿で一番鍛えられたのは俺かもしれない。
221/08/13(金)00:27:09No.834301389そうだねx3
「トレちゃんよぉ。近くで夏祭りやってるらしくてよー。ちょっとセイウンスカイとニシノフラワーの間に挟まってくるから小遣いくれよぉ」
なんてことを。
あの二人が仲良く笑顔で連れたって出かけていくのを俺は見ていた。そんなことをさせるわけにはいかない。
「わかった、財布を取ってくる」
と時間を稼いで、地元の自治体のご老人方が作ったであろう手書きのチラシの切れ端、ジュース引換券を集めて渡したところ、夜の海に放り込まれた。
流石にヤバいと思ったのかすぐにキンイロリョテイに救助された。
命の危機と引き換えに企みは阻止出来たようだ。
その後手間かけさせんなと逆ギレしたキンイロリョテイに屋台を総ざらいさせられたが、あの二人の笑顔を守れたのなら軽いものだ。
321/08/13(金)00:27:28No.834301500+
そうして合宿も終わり、なんとかキンイロリョテイの扱い方もわかって来たかなという頃、たづなさんに呼び出された。
キンイロリョテイの事かと身構える。なにせ秋戦線も成績は振るわない。オールカマー五着、天皇賞七着。
トゥインクルシリーズも5年目。引退を仄めかされても仕方がない。
身構えて出頭すれば、内容はまったく別だった。
「ドバイ、ですか……」
「まだ本決まりではありませんが、スタンドアップのドバイ挑戦の併せウマとして一緒に行ってもらえないかと……」
「ふーむ……」
スタンドアップは確かキンイロリョテイと同じような成績だったはず。ドバイに挑戦出来るとは思えなかったが、トレーナー側の希望という。色々あるものだ。
「本人に聞くだけ聞いては見ますが期待はしないでください」
なにせあの性格だ。海外なんて行きたがらないだろう。とはいえ聞かないわけにもいかない。
重い足取りでトレーナ室のドアを開ければ、眼前には信じられない光景が広がっていた。
421/08/13(金)00:27:54No.834301658+
床に倒れ蹲るキンイロリョテイ。それを見下ろす黒いスーツで黒鹿毛の華奢なウマ娘。
そのウマ娘が振り返る。黒一色のスーツの中でネクタイだけが真っ白い。そしてその視線、その瞳には人を殺してきたかのような圧。
「おまえか。うちの娘をろくに勝たせることすら出来ない無能は」
次の瞬間には腹部に鋭い一撃が入っていた。キンイロリョテイとは比べ物にならない一撃。
床に崩れ落ちる。
頭を踏みつけられる。
誰なんだ。学園内でこんな所業が許されるわけがない。床から見上げた姿。スーツに光る襟章はトレセン学園スカウトマンの証。
スカウトがなんでこんなところに。
いやさっき何か言ったな。俺の娘、だと……?
「やめろ、トレちゃんに、手を、出すな……」
辛うじて起き上がったキンイロリョテイだったが、すぐに足を払われて再び床を舐める。
521/08/13(金)00:28:34No.834301897+
「おまえ、今まで手を抜いて走っていたな? てっきりシルバーコレクター程度の足かと思って諦めていたんだが。俺の目を欺くとはやるじゃないか」
今度はリョテイが踏みつけにされる。やめろと叫びたい。今すぐ止めなければ。だが腹部の痛みで体が動かせない。
「何の気まぐれかわからないが、目黒記念であれだけの脚を見せておいてバレないとでも思ったのか? あの脚があれば今までのシルバーが幾つかはゴールドになっているはず。つまり手を抜いていたってことだ」
「親父……俺は……!」
「いいか、ウマ娘は走るのが本懐だ。本能だ。魂からの衝動だ。走らないウマ娘などウマ娘じゃない。走った結果として目が出ないのはいい。だが手を抜いていたのは許せん」
振り上げられた足がリョテイに命中する前に、精神力を振り絞って体を動かして飛び込んだ。
肩の裏にに衝撃。
「トレちゃん……!!」
今のは骨が砕けたかと思うほどの衝撃に目の前がチカチカする。
621/08/13(金)00:28:48No.834301975+
「ほう、根性だけはあるのか。――いいだろう。チャンスをやる。ドバイで勝て」
ドバイ遠征の話をなぜ知っている。考えようにも思考はまとまらない。
「勝てないなら引退、学園も中退だ。望み通り自由にしてやる」
それだけ言い捨てると黒い嵐は去っていった。
圧が消えて安心したのか、それを見て俺は意識を失った。リョテイがなにか叫んでいるが何を言っているのか聞こえな……。
721/08/13(金)00:29:09No.834302090+
気がつくとソファに寝かされ天井を見上げていた。
起き上がろうとすると腹部が痛み、再び横になる。
「起きたかよ」
顔を動かせばリョテイ。顔に湿布が貼られている。自分の肩や腹部にも処置がされていた。リョテイがしてくれたのか。
「…………」
「…………」
聞きたいことは沢山あった。だが聞いてはいけない事のような気もする。
リョテイも言い出しにくいのか黙って椅子に座っている。
しばらく沈黙が支配して、リョテイがゆっくりと口を開く。
「――あれは俺の母親だよ。サンデーサイレンス。聞いたことくらいあるだろ」
821/08/13(金)00:29:36No.834302262+
「あれが、か」
その名前を知らぬトレーナーは居ないだろう。
サンデーサイレンス。トレセン学園のトップクラスのスカウトマン。スカウトしてきたウマ娘は数知れず。その中で重賞を勝ち抜ける"当たり"のウマ娘も数知れず。
トップスカウトマンの証、リーディングサイアーを持つ元競走バのウマ娘。
確かスズカも彼女の誘いで学園に来たはずだ。
「小さい頃からあんな感じでよ。走らないとよく殴られたもんだ。あんまりだから一度嫌がらせで親父って呼んだら逆に気に入りやがってな。それ以来ずっと親父呼びだ」
語るリョテイの目はどこか遠くを見ている。
「そんな親父だからトレセン学園には無理やり入らされたようなもんだ。辞めようとしたこともあった。けれど中学生程度の女が一人で生きていけるわけもない。すぐに見つけられて捕まったさ。それで嫌でも理解したんだ。走るしかないってよ」
諦観の混じった溜息。これがあのいつものリョテイと同じとは思えない。
921/08/13(金)00:30:19No.834302550+
「けど本気で走る気にはなれねえ。親父への反抗心もあったが、ウマ娘の足はガラスの足だ。本気で走ればいつ折れるかわからない。だから本気で走らず、負けないが勝ってもいない順位で落ち着くことにした」
「……」
黙って聞く。口を挟むほど野暮じゃない。
何よりリョテイが走らない理由がわかるのだ。
「親父は走って勝てるウマ娘にしか興味がない。このままシルバーコレクターして引退卒業すりゃ逃げられる。掲示板に入れば多少でも賞金もでる。そう思ってたんだがなぁ」
「どっかのバカが勝たせてしまった、か」
「そうよ。おかげでこの有様だ」
幼少期からのネグレクト。走らなければ否定される環境。それが今までのリョテイだったのか。
トレセンに来るような娘はみんな前向きで走りたい勝ちたいと思っているウマ娘ばかり。そう思っていた。こういう子もいるんだな。
「で、トレちゃんよ。ドバイって?」
「ああ、それはな……」
たづなさんからの要請を説明する。帯同バだと思っていたらとんでもないことになってしまった。
「そっか。――トレちゃん、メニュー頼むわ。ドバイに勝てるやつ」
1021/08/13(金)00:30:52No.834302763+
椅子に保たれて手を顔に当てるリョテイ。その表情は読めない。
「いいのか?」
「いいも悪いもねぇだろ。そもそもトレちゃんだってターゲッティングされてんだぜ。リーディングサイアー持ちのスカウトマンとやらかし経験有りのトレーナー。勝てるんならどうぞ、だ」
「――そりゃ無理だ」
頭でメニューを組み立てる。だがドバイとなるとすぐに組み立てられるようなものでもない。
「んじゃ、頼むぜ。……痛つつッ」
腹を抑えながら部屋を出ようとするリョテイを呼び止めた。
1121/08/13(金)00:31:05No.834302842+
リョテイの走らない理由を知った上で、これは言って置かなければならない。
「リョテイ、今までお前を担当バとまともに思ったことはない。殴って殴り返されての関係だったしな。それを今から担当とトレーナーとか言うつもりもない。でもお前と俺は一蓮托生になった。だから『共犯者』だ。お前の望みを叶えた上で、ドバイにで勝たせてやる」
痛む体を無理やり手を差し出す。リョテイとの間に担当やトレーナーという関係は望むべくもないし似合わない。これは共闘だ。
少し間を置いて、リョテイはその手を握り返してきた。きっちり握りつぶさんばかりの力を込めて。
「いいぜ、ドバイに勝って親父の鼻を明かしてやろうじゃないか」
1221/08/13(金)00:31:46No.834303126+
SSさん怖いって…
1321/08/13(金)00:32:45No.834303501そうだねx2
前回まで
fu243409.txt

産駒=学園にスカウトしたウマ娘という解釈にしました
リョテイだけ作劇上の都合で実子
悪役にしてしまいましたがSSファンがいたらすいません
1421/08/13(金)00:33:16No.834303666そうだねx2
SSさんも過保護なだけと信じたくはあるなウマ娘世界だし
1521/08/13(金)00:37:04No.834305147そうだねx2
走りで全部ひっくり返してきたSSさんだしな
実力を隠すなんて理解できないだろうし....
1621/08/13(金)00:38:21No.834305666+
まあ黒くて暴力振らせればSSっぽくなるしいいんじゃないですかね
1721/08/13(金)00:41:38No.834306946+
まあ悪役やりすぎって方向以外ならいいかなと
1821/08/13(金)00:47:17No.834309111そうだねx6
>ちょっとセイウンスカイとニシノフラワーの間に挟まってくるから小遣いくれよぉ」
>なんてことを。
そうだね
1921/08/13(金)01:04:16No.834314965+
SSさんも馬主以外にはある程度好かれてたいやまぁ馬主が嫌ったからこそあぁなったし....てかステゴ配合はよく言えば頭の良い悪く言えば狡賢いから原種のプレイスタイルと合わん
2021/08/13(金)01:05:45No.834315414そうだねx1
馬の気性難って笑い話になりがちだが動物のフィルターを取り除いて人に置き換えたらまぁえげつないことになると思うわ
2121/08/13(金)01:07:37No.834315935そうだねx5
    1628784457224.png-(42458 B)
42458 B
SS
2221/08/13(金)01:15:33No.834318127+
SSは境遇が境遇だし
ジャパンに来てだいぶ丸くなったと本人だけは思ってるかもね
2321/08/13(金)01:15:35No.834318140+
リョテイでこんだけ剣呑なんだから自分以外の馬嫌い!なスペちゃんとか目の色変わりそう


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