二次元裏@ふたば

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161148 B21/07/19(月)23:30:39No.825305775そうだねx3 00:31頃消えます
───沈む黒色、その上に容易く散らばる白斑が、
その漆黒の決意をあざ笑うようにゆるやかに染み込み…。
「おい、大丈夫かフラッシュ」
「…はい、もちろんです。少し考え事を」
「らしくないな。…そうだな。少し休憩するか」
ピンと張った空気が弛緩する。上の空ゆえの不覚。
トレーナーさんの大切なお時間を頂いたミーティングだのに、
そう、「時間魔」として、とても私らしくない。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/07/19(月)23:31:16No.825306040+
これも、この長雨と湿気がのせいでしょうか。
どちらを向いてもひたすらに重苦しい空気が充満し、
たまらず視線だけでも逃そうとしても、
いつもなら気が休まる窓越しからすら、
大嫌いな(…いえ好みではないと言い換えましょう)稍重な芝が、
まるで涙ながらに訴えかけてくる有様です。
確かにこのどんよりとした空気はドイツにはあまりなかったものですが、
こうもわかりやすく拒否反応が出てくると、
自分自身のことながら毎度苦笑してしまいます。
この、湿気を吸い跳ねっ返える髪のよう、ただ不快で、
言うことを聞かない、正すためには時間をかけ───
221/07/19(月)23:32:21No.825306507+
「何かあったのか?」「…いいえ、なぜです?」「いや笑ってるからさ」
またファル子ちゃんに何かあったのか?とはにかみながら二の句を継ぐ彼の目には、
優しさが感じられます。無論、ただの自嘲だったなんて
とっくに見抜いている、その優しい目。
321/07/19(月)23:32:58No.825306741+
「ファルコンさんは追試です。この長雨でライブは出来ないので、
 むしろ彼女にとっては挽回に集中できるチャンスと言えるでしょう」
「ははっ確かにな。しかしまた追試なのか。」
「2時間ほど期末試験対策にお付き合いしたんですけどね…
 まあ、その時から危ういとは感じてましたが」
「…ちなみに正確には?」
「2時間と16分20秒です。さらに言うと15回目の最後のお願いで、また昨日さらに一つ増えたところです」
「はははっ!」
421/07/19(月)23:34:06No.825307194+
破顔一笑。彼女に申し訳無さもありますが、暴露しながら自分でもつい笑ってしまいます。
順調に増えていく彼女のファン数と反比例するかのように、
彼女の成績は気の毒なくらい不順そのもの。
しかしひたむきに頑張る彼女を見てどう指導しようか悩む職員も多いらしく、
職員室でも度々話題になるとのことです。
そんなファルコンさんについて、トレーナーさんは直接の関係はないものの話題にしやすいからか、
度々雑談で名前を口にするようになりました。
今では、蒸し暑くまとわりつく空気をまさしく
「アイシーにブレイクできる」格好のネタになっています。
(ファルコンさん、ごめんなさいね)
521/07/19(月)23:35:43No.825307824+
聞く話によれば、一部ではそのレースよろしく
「赤点のまま卒業まで逃げ切ってしまうのでは」と危惧する向きもあるようで、クスッとなります。
ファルコンさんの勢いならやりかねないかなと、長い付き合いで感じるところもあり、それに───
「でももう彼女なら、成績はあまり関係ないですからね」
「どういうことだ?」
「もう彼女はスターですから。ウマ娘として本質的に必要な才覚はすでに存分に発揮されています。
 そうでしょう?」
「…」「あの圧倒的な逃げ足で寄せ付けるものはいません。
 本分のため、勉学など些事に惑わされず、これまで通りG1を総なめしていけば」
「フラッシュ」
「…はい、すいません。」
621/07/19(月)23:36:35No.825308165+
つい醜くまくしたててしまったバツの悪さから視線をそらし、
その先に、ふと肩越しの、向かいの壁掛け時計に目が行ってしまいました。
カチリ。カチリ。古くてうるさいと生徒に評判な、その秒針の音が、
しかし今は私の頭の中だけに響いてるかのような錯覚。
メイドインジャパンの生真面目さを反映する、誤差ミリ秒未満のクオーツによる発振出力と、
それに呼応するステッピングモータの秩序正しい動き。
721/07/19(月)23:37:53No.825308606+
見れば、ミーティング終了まで残り488秒。おかしい、いつもならとっくに大方針のすり合わせは終わり、
具体的なプランをガントチャートに落とし込みはじめている頃。
それが、あと485秒しか無い。1プランを整えるのにおよそ60秒しかない、
しまった、ここから建設的なミーティングに巻き直し───

───しかも今日と来たら、口からついて出るプランはフワついた理想論のようで、ひどいものばかり。
まるで気合でなんとかしますと自分に言い聞かせるようで、「フラッシュ」具体的でない、
数値に落とし込めないタスクしか、出てこない「フラッシュ」
このままでは、また予定が、また負「フラッシュ!」
821/07/19(月)23:40:03No.825309431+
はっと我に返った私の向かいで、残ったコーヒーを、
───望み通りクリープが混ざった、濁った黒色、まるで、今の中途半端な私を暴いたような───
トレーナーさんが飲み干します。
そして「…今日は、紅茶に口を付けないんだな」言われまたも愕然とします。
そう、これは私が提案したルーチン。
大切なミーティング前には、切り替えのため
「お互いに好きな飲み物で一息入れ」スタートすることをルールとしました。
それすら、してないなんて。「らしくないな」…返す言葉もありません。
それもこれもこの長雨の───いや、本当の理由は分かりきっていて───
921/07/19(月)23:46:23No.825311689+
───そう、彼女がダービー以降、勝ちきれないレースをしているのはトレーナーの俺が一番痛感している。
だがあの彼女が、ルーチンを忘れてしまうほどに思いつめていたことには、
不覚にも、今ようやく気づいたばかりだ。
1021/07/19(月)23:46:50No.825311851+
彼女の切れ味は一級品だ。本人もそう自負しているだろう。ハマったときのキレはまさしく据え物斬りといえる。
事実ダービーの彼女は、バ群に埋もれかけあわやというところ「一閃」活路を開闢せしめた。
瞠目した関係者も多かっただろう。あの薙ぎに惚れた人間は一人や二人ではあるまい。
俺もまさしくその一人だ。それも、初めて走りを見た、いや、会ったときから。
1121/07/19(月)23:48:16No.825312367+
しかしここのところ勝ちきれない。どうもスランプというやつだ。

普通のウマ娘であるならば、この手のスランプが訪れると自暴自棄になる。
無理もない、年端も行かない女の子なのだ。
下手をしたら大の大人ですらみっともなく他に当たる姿を見せるというのに、しかしフラッシュは違った。
とにかく沈着冷静、トレーニングをするたびに課題を洗い出し、
PDCAサイクルをビジネスマン顔負けに回そうとする。
たおやかな見た目とは裏腹に、と言ってしまうと本人には嫌がられそうだが、
実際のところその胆力には舌を巻く。実際多くの者が賛同するだろう。
1221/07/19(月)23:49:13No.825312700+
一方でこの付き合いを続けてきて、同時に彼女の本質も少しずつ見えてきたように思う。
───つまり、彼女は完璧主義で、そして心配性ということ。
その2つを同時に慰め、かつ安心して行動に移すための策が、
タスクの細分化とルーチンワークへの落とし込みなのではないか。
すなわち、必要事項を書き出し、かつスイッチを入れるだけで、
どんな心境であっても速やかに物事をこなすことができる。
1321/07/19(月)23:50:38No.825313210+
それは彼女の生真面目な性格に見事に噛み合い、
一糸乱れぬ正確さで必要事項を片付けていき、着実に実力を伸ばしていった。
あくまで俺の妄想でしかないが、もしそれが正しいならば、
彼女がルーチンすら満足にこなせなくなっているというのは、
ほとんど自分を見失いかけていると言っていいのではないだろうか。
現状に呑まれ、たまらなく不安になった今、彼女の心配性で敏感な部分が無防備にも外気にさらされている。
1421/07/19(月)23:51:48No.825313593+
しかし彼女には天稟がある。そして実際、大輪として花開くことも夢ではないと確信している。
彼女らしく、これまで通りトレーニングをこなし、そしてキレる距離を伸ばすことさえできれば
あの素晴らしい展開を再び手中にすることなどたやすい。俺はその手助けをするだけだ。
ただ彼女がここまで追い詰められている以上、サポートできる手段はそう多くないとみるべきだ。
少なくとも理詰めの話ではない。
俺がトレーナーとしてできることは。
彼女を根本的に支え、トレーナーとして一緒に並走するためには───
1521/07/19(月)23:52:38No.825313887+
「フラッシュ」
───俺の決意を誠実に伝える他ない。
「はい」
時間を気にしているのか、どうも浮ついているフラッシュに呼びかけ、深呼吸する。
予定では残り5分程度、俺のこの後の予定などどうでもいいが、時間を気にする彼女のためだ。
手短に、しかし心からの想いを伝える。覚悟を決めフラッシュに話しかける。
1621/07/19(月)23:53:55No.825314312+
「単刀直入に言おう。最近の戦績を振り返って、不安になっている部分があるんじゃないか?」
「…はい」
「その不安はよく分かる。ひとえに俺の指導力が足りていないせいだ。申し訳ない」
「…!そんなことないです!トレーナーさんはずっと的確に指導くださっています。
 私が、私が単純に実力不足だからです!」
「ありがとう、でもそんなことはないよ。君の才能は本物で、
 保証すらできるものだ。それを伸ばしきれていないのは俺の責任だ。
 それに、どんな状況であっても、安心してトレーニングを行ってもらえる環境を作るのが
 指導者としての勤めだ。もうすでに、そんな基本的なところもフォロー出来ていないのは
 俺が未熟だからと痛感している。」
「そんな…!」
1721/07/19(月)23:55:33No.825314893+
「…だから君には権利がある。もし他に指導を受けてみたいトレーナーがいるのなら、教えて欲しい。
 俺から働きかけることもできる」「…!」
「ただ、もし俺ともう少し頑張ってみようという気が少しでも残っているのなら…
 …いや、フラッシュ、机に手を乗せてくれないか?」
抗議をしたそうなところを遮られ不満そうだったが、渋々彼女は両の手を机の上に乗せてくれた。
何をするというのかという怪訝そうな目つきから視線をそらし、
そのフラッシュの手を、外側からゆっくりと握る。
1821/07/19(月)23:56:35No.825315253+
フラッシュの全身の毛が逆立つ。彼女にとって予想だにしなかった行動だったに違いない。
「うぇ、あの、えっと、あああ」
こんなに目が泳いでいる彼女を見るのは初めてだ。
───しまった、やってしまった、これは───セクハラだ。
1921/07/19(月)23:57:22No.825315537+
後悔先立たず、理事長から解雇届と一緒に訴状にサインさせられる状況が脳裏をかすめる。
しかし覆水盆だ、もう走り切るしかない。
「フラッシュ」
「ぅ、ひゃい」
「俺は君に惚れ込んでいる。
 君と支え一緒に走りたいと思っている。君が不安なら、それを解消するために何でもする。」
一句一句に反応して信じられないといいたいような目でこちらを見てくる。
顔を真っ赤にし、もはや何を言っているのか分からないと言ったふうだ。
2021/07/19(月)23:59:01No.825316126+
「だから俺を信じて、君のことを、俺に預けてくれないか」
「〜〜〜〜〜ぁ、ああ、考えさせてくださいっ!」
耐えきれず手をすっぽ抜き(ウマ娘の全力だ!)、トレーニングルームから駆け出していくフラッシュ。
ああ───これは───床にパックごとぶちまけた牛乳のイメージがちらつく。
しばらくは牛乳が、いや飯が喉を通らないかもしれない。
いや───これは───やってしまったやつだ───
2121/07/19(月)23:59:52No.825316405そうだねx6
その後2日ほどトレーニングに現れなくなったけど
更にその後何か決心したようにトレーナーの前に現れるフラッシュを誰か書いてください
2221/07/20(火)00:01:13No.825316918そうだねx1
告白ですよね?
2321/07/20(火)00:01:42No.825317101そうだねx6

2421/07/20(火)00:01:45No.825317132そうだねx1
良い大作だ…
2521/07/20(火)00:04:58No.825318277そうだねx3
思春期の女の子になにしてやがる!
2621/07/20(火)00:06:12No.825318725そうだねx3
部屋に戻ったファル子がぐでんぐでんのフラッシュを見て
即フラトレを締め上げにやってくるんだよね
2721/07/20(火)00:16:01No.825322617+
こんにちはーごめんくださ…開かねえ
しゃーい☆(バゴォ
トレーナーさんがあの子に何をしたか吐け
2821/07/20(火)00:16:37No.825322861+
ウワーッ!またウマ娘の男性感が破壊されてる!
2921/07/20(火)00:17:51No.825323358+
ファル子がウマドルの仮面外して詰めてくる…
3021/07/20(火)00:21:36No.825324844+
事実上の告白だよこれ…しかもシチュエーションも完璧だし…
3121/07/20(火)00:21:43No.825324900+
「いえこれは私が悪くて」なんてフラッシュが割って入る
事態は悪化する
3221/07/20(火)00:23:00No.825325381+
こんな告白されたらしばらくトレーナーの顔を見れなさそう


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