***ヒシアマ姐さんとプロポーズシリーズ:基本設定*** ・出会ってから4~5年経ったヒシアマ姐さんとトレ公が主役 ・トゥインクル・シリーズをURAシナリオ準拠で駆け抜けたため、有馬記念でナリブ先輩を破ったりもしているが、  そのための厳しいトレーニングが響いてヒシアマ姐さんの走力は早くも落ちつつあり、引退も視野に入っている ・トレ公は20代後半。ヒシアマ姐さんが最初の担当ウマ娘で、ここ3年くらいヒシアマ姐さんのことしか考えてない  夢は一生ヒシアマ姐さんといること。好きなものはヒシアマゾンとヒシアマゾンの髪と笑顔と胸と腋とへそと脚と尻と料理とおっぱいとその他色々 ・ヒシアマ姐さんは20歳~23歳くらい。トレセン学園は卒業し、寮も出ている。トレ公を男として意識しつつも将来は漠然としている。  夢はもっとたくさんのレースで活躍すること。好きなものはタイマンと人参と料理。大切なものはトレ公。 ・プロポーズの台詞は男気が足りないと失敗する ・各話に繋がりは無し。パラレルワールド。 ・うまぴょいはしてたりしてなかったり。 ・上記設定はたまに破られる。ただし最終的には幸せに結婚してもらう **************************** ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその0 ~引退式後の夜道編~*** 「アタシも引退かぁ……正直、実感わかないんだよね」 「悔しいとか、もっと走りたかったとか、そういうのは無いのか?」 「あるに決まってるさ。でもさ、これ以上走ってもヒシアマゾンらしい走りはもう出来無いって、トレ公も分かっているだろう?」  寂しく笑うヒシアマゾンの長い髪を、夜風が静かに、後ろへと流した。 「これからどうするか、決めているのか?」 「実は全然決めてないんだよねぇ……トレ公は、どうしたらいいと思うんだい?」 「俺の意見で自分の将来を決めるなんて――」  言葉が途切れてしまった。  俺を見つめるヒシアマゾンの顔が、冗談めいた笑顔に、ほんの少しの不安が混じった、とても切なくなる表情だったから。 「……ヒシアマゾン」 「なんだい?」 「結婚しよう」 「……うん」  満面の笑みは、どのレースに勝利した時よりも、嬉しそうであった。 ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその1 ~お前がナンバーワンだ編~*** 「なぁトレ公。アタシが引退したら、新しい子の担当になるつもりかい?」  引退の決まったヒシアマゾンが、トレーナールームでデスクワークに追われる俺に尋ねてきた。 「そのつもりだよ。他に出来る仕事もないしな」 「トレ公なら何でも出来そうな気がするけどねぇ」 「だとしても、俺はトレーナーという仕事が好きだからな」 「ふ~ん……次にトレ公が担当する子が、アタシよりも強いといいな」 「それは無いな。ヒシアマゾンより強くて綺麗なウマ娘なんて、いるわけが無い」 「は、恥ずかしいこと言わないでおくれよ……」 「俺にとっては、ヒシアマゾンこそが最高のウマ娘だよ」 「だから、恥ずかしいって……まぁ、アタシにとってもトレ公は、最高のトレーナーだよ」 「そう言ってもらえると救われるな」 「きっと、新しい子もトレ公を最高のトレーナーだって思ってくれるはずさ。その気持ちに、ちゃんと答えてあげるんだよ」 「分かってる。全力で支えてみせるよ」 「そうなると、アタシはひとりぼっちか……でも、しょうがないね」  ヒシアマゾンが力無く笑った。 「……ヒシアマゾン。俺にとって、お前は一番のウマ娘だ」 「あ、ああ」 「担当トレーナーとして、引退後もずっと、支えていきたいと思っている」 「えっと……つまり……?」 「つまり……」  なんと言うべきか少し考えたが、飾り気のある言葉では、ヒシアマゾンに届かない気がした。  だから、シンプルに言うことにした。 「結婚してくれ、ヒシアマゾン」 「…………わかったよ。結婚、しようか」  結婚しました。 ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその2 ~こども編~*** 「おねえちゃんたち、バイバーイ!」  休日の公園。小さなウマ娘が俺とヒシアマゾンに手を振りながら、母親と共に公園を去って行く。 「元気な子だったねぇ。アタシも、将来はあんな子どもが欲しいよ」 「子どもが欲しいって、結婚相手にあてはあるのか?」 「そりゃ……」  琥珀色の瞳がじーっと、俺を見つめる。 「ヒシアマゾン」 「な、なんだい?」 「……結婚しようか」 「……うん」  結婚しました。 ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその3 ~ケガ編~*** 「やれやれ。このヒシアマ姐さんがケガとはね……」  病室のベッドの上。ヒシアマゾンは窓の外を見ながら呟いた。 「こりゃ、そろそろ引退の時期かねぇ」 「そんなことは……」 「わかってるだろ、トレ公。アタシの体が、もう昔とは違うってことはさ」  当り前だ。俺は君の、トレーナーなんだから。  トゥインクル・シリーズの後、ヒシアマゾンの走力は徐々に落ちて行った。怪物・ナリタブライアンと渡り合うためのトレーニングが、彼女の体に小さいながらも、決して消えることの無いダメージを蓄積させていた。  低下した走力を補うためのトレーニングも、彼女の体のバランスを崩すことに繋がり、その結果が、これだ。  自分の不甲斐無さに、拳を握らずにはいられない。好きな女1人、守ってやることが出来なかった。本音を、言うことが出来なかった。  もう走らないで欲しい。俺を置いて、前に行かないで欲しい。足を止め、俺の横にいて欲しい。  そう、言っていたなら。今、言えたなら。  君とずっと、穏やかに生きていたいと。 「ヒシアマゾン、俺とけっ――」  俺は、言葉を飲み込む。  心身共に弱り切った彼女に、そんな言葉をかけるなんて。  俺は、そこまで卑怯な男だったか。自分の我儘のために、彼女の我儘を踏みにじるような、情けない男だったか。 「俺と……なんだい、トレ公……?」  ヒシアマゾンがこちらを見ながら、首を傾げた。  胸が、苦しくなる。彼女の戦いを、彼女の誇りを、最後まで支えてやらなければならないのに。   「……リハビリをしよう。君なら、きっとレースに復帰できる。たとえ昔のような走りが出来なくても、君が走れるのなら、君が走りたいのなら、俺はずっと、君を支え続ける」    俺は、俺の我儘を踏みにじった。彼女が後悔しないように。それで彼女がどれほど傷付こうと、目を逸らさずに、傍に居続けなければいけない。  それが、俺の人生なのだ。 「もし……アタシが走れなくなったら」 「そうなっても、俺は君の傍にいる。ずっと、ずっと、君がもっと大人になって、そして年老いても、俺は君の傍にいたい」 「それって……もしかして……」  ヒシアマゾンが、子どものように無垢な瞳で俺を見つめる。ああ、彼女はこんなにも、か弱い表情を持っていたのか。そんなことも、俺は気付けなかったのか。  溢れ出した思いに突き動かされ、俺はヒシアマゾンを抱きしめていた。 「ちょっ、トレ公、どうしたんだい、一体」 「頑張ろう、ヒシアマゾン。君が納得の行く未来を、俺と一緒に進もう。俺がずっと、死ぬまで支える。だから……」  飲み込んだはずの言葉が、喉を越えて、口から出て行く。 「結婚、しよう」  沈黙が、病室を支配する。自分の弱さに、涙がこぼれそうだった。  だがヒシアマゾンは、そんな俺を抱き返した。 「……うん。アタシも、トレ公と一緒じゃなきゃ、嫌だよ」 「ヒシアマゾン……」 「ただし、最後まで走ってからだよ。それまではもう、そんな情けない顔はしないでおくれよ」 「そっちもな」  笑い合う声が、病室から沈黙を消し去った。  その後、復帰したヒシアマゾンは引退までに5つのレースに出走した。優勝することは出来なかったものの、全てのレースで入着を果たし、有終の美を飾った。  最後のレースの後に彼女が浮かべた笑顔は、まるで青空のように、晴れやかな笑顔だった。  そうして、俺と彼女は結婚しました。     ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその4 ~暴れゴルシ編~*** 「逃げろ、ヒシアマ! 暴れゴルシだっ!」  そう言って俺はヒシアマゾンを突き飛ばし、そして暴れゴルシに吹っ飛ばされた。 「トレ公ーーーーっ!!」  回転しながら宙を舞う俺の耳に、愛しいヒシアマゾンの声が聞こえる。  ああ、こんなことなら、ちゃんと――  黄金比のような美しさを持つヒシアマゾンの姿を思い浮かべながら、俺は落下し、地面を転がる。 「トレ公、生きてるかいっ!?」  泣きそうな顔で駆け寄ってきたヒシアマゾンの頬に、手を伸ばす。 「ヒシアマゾン……」 「すぐに救急車が来るからねっ! しっかりするんだよっ!!」 「頼みが、ある……」 「なんだい!? なんだって聞くよっ!」 「結婚……してください……」 「な、なにをバカなこと言ってるんだいっ!?」 「ダメ……か……」 「ダメなわけないじゃないかっ! だから、死ぬんじゃないよ!!」 「そう……よかった……」  体から、力が抜けていく。 「トレ公!? ダメだよ、トレ公!! トレ公ーーーー!!」  病院に運ばれた俺だったが、奇跡的に全治1週間の打撲で済んだ。  黄金長方形のフォームで走るウマ娘と黄金長方形の回転で重力がどうたらと医師は言っていたが、意味は分からなかった。  ヒシアマゾンは「心配して損した」と、呆れた様子で言った。  でも結婚はしました。  ゴールドシップは懲罰室7泊8日の刑に処されました。 ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその5 ~エッチ編~*** 「トレ公♥ トレ公ぅ♥」  対面座位で俺と繋がったヒシアマゾンが、強くしがみ付いてくる。 「アタシ、トレ公と結婚すりゅぅ♥ ぜったい、ぜったい結婚すりゅ♥」  腰の動きが早まり、今にも射精しそうになるのを、俺は必死にこらえた。 「毎日いっしょにねてぇ、毎日いっしょにおきてぇ、ずっとずっと、一緒にいりゅぅ♥ それで、こどももたくさんほしいぃ♥ トレ公のぉ、こども、いっぱい産みたいぃ♥♥」  甘く蕩けた声での懇願が、俺をより興奮させる。だけど、まだ終わらせたくない。もっとヒシアマゾンを感じていたい。 「こどもたちにぃ、かこまれて、しあわせに暮らすのぉ♥ トレ公ならきっとぉ、いいパパになるからぁ♥ アタシも、いいママになりゅからぁ♥♥♥」  俺は喰らいつくように、ヒシアマゾンの唇に己の唇を重ね、舌を入れた。ヒシアマゾンは「んんっ……♥」と悦びの音を喉で鳴らし、舌を絡めてくる。  限界が来る。俺は腰を動かし、ヒシアマゾンの子宮に届くよう、ペニスを突き入れる。そして射精と同時に、唇を離した。 「あっ♥ あぁ♥ 熱い、トレ公の熱いのが、来てる……♥ あっ、あっ、あぅぅぅ……♥♥♥」  ヒシアマゾンの膣が、射精を続ける俺のペニスを強く締め付ける。  完全にひとつに融け合った俺たちは、淫らな快楽に全てを浸し、荒い吐息を漏らし続けるのだった。  数十分後。  俺の隣にいるヒシアマゾンは、顔を赤くしつつも、不機嫌そうな様子だった。  迂闊にも「かわいかったよ」と俺が言ってしまったせいで、恥じらいを感じてしまったのかもしれない。 「ヒシアマゾン」  俺の呼びかけにも、反応を返さない。照れくささが、彼女の許容範囲を越えているのだろう。  結婚すりゅぅ♥とか子ども欲しぃ♥とか、俺は嬉しかったし、興奮したんだけどな…… 「……なぁ、ヒシアマゾン」 「…………」 「……結婚しようか」 「………………………………」 「……結婚、しよう」 「…………」  ヒシアマゾンは無言で、こくり、と頷いた。  てなわけで結婚しました。 ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその6 ~よっぱらい編~*** 「まったく、担当ウマ娘に迎えに来てもらう酔っ払いトレーナーだなんて、聞いたことがないよ」 「ごめぇん……ヒシアマ……」 「こんなところ学園の子に見られたらなんて言われるか……って、もう門限は過ぎてたね。アタシも不良になっちまったねぇ」 「ヒシアマぁ……」 「なんだい、トレ公」 「結婚……しよう……」 「はぁ? そういう冗談は、酔っぱらってない時に言いな」 「冗談じゃないし……」 「だとしても、酔ってない時に言いな。そうしたら、考えてやらなくもないからね」 「ほんとう……?」 「本当だよ。だから、今日は大人しくしてな」 「ああ……」  頭痛の不快感で目を覚ます。自宅のベッドの上。記憶が少し、おぼろげだ。  昨日は久しぶりに飲み会に誘われ、自力で帰れそうになかったからヒシアマゾンに連絡して…… 「おっ。やっとお目覚めかい、トレ公」  エプロンを付けて台所に立っていたヒシアマゾンが、こちらを見る。 「ヒシアマゾン……なんで」 「昨日トレ公をここに送った後、一回自分の家に帰ったんだけどさ。やっぱり気になってねぇ。朝一で来ちまったよ」 「寮は……ああ、もう卒業したから……」 「しっかりしておくれよ? まだ酒が抜けてないんじゃないかい?」 「大丈夫だ……大丈夫……」 「そんな顔で言われても説得力ないよ。朝飯作ってるから、ちょっと待ってておくれよ」  俺はテーブルの前に座り、朝食を作るヒシアマゾンの背中を見つめる。  若妻のようなその姿に、何か、大事なことを忘れてるような気がした。 「はいよ、まずは味噌汁を飲みな。シジミの味噌汁は二日酔いに効くって言うしね」  俺は出された碗を持ち、一口すする。 「……旨いな」 「へへっ。そう言ってもらえると、やっぱり嬉しいよ」  テーブル越しのヒシアマゾンが、屈託の無い笑みを見せる。  そして、思い出した。昨日言った、大事なことを。 「……ヒシアマゾン」  痛む頭を我慢しながら、俺はヒシアマゾンをしっかりと見据える。 「な、なんだい?」 「結婚しよう」 「……たく。だから、そういうことは酔って無い時に言いなって」  俺はテーブルに手を突き、身を乗り出して、顔をヒシアマゾンの眼前に近づけた。 「ト、トレ公……?」  あとほんの少し前に出てしまえば、唇が触れるくらいの距離。  目を丸くしたヒシアマゾンを逃すまいと、じっとその目を見つめながら、俺は声を発す。 「ヒシアマゾン」 「は、はい……」 「結婚、しよう」 「はい……」    結婚しました。  ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその7 ~逆よっぱらい編~*** 「トレ公の背中はおっきいなぁ~♥」  酔っぱらったヒシアマゾンを背負い、俺は深夜の帰り道を進む。  少女だったヒシアマゾンがお酒の飲める年齢にまで成長したこと。それまでの間、ずっと相棒として走ってこれたこと。  それらに感慨を覚えなくもないが、今はヒシアマゾンに飲ませすぎたことへの後悔が勝っていた。 「いけぇ~、ウマ男トレ公~」  子どもか。でも、こんな姿を見せられるくらいに打ち解けたと思えば、悪くは無いのかもしれない。  すれ違う人々がちらちらとこちらを見なければ、もっと良かったのにな。 「ねぇねぇトレ公、トレ公は、アタシのことすきか~?」 「好きに決まっているだろ。大好きだよ」 「どのくらいすきか~?」 「世界一だ」 「本当かぁ~?」 「本当だよ」  ヒシアマゾンが酔っぱらっていなかったら、こんな恥ずかしい台詞は言えなかっただろうな。 「アタシもだぞ~、トレ公~~♥」  ヒシアマゾンが頬ずりをしてくる。さすがに照れるな…… 「なぁ、トレ公、それならぁ、結婚しようかぁ♥」 「はぁ?」 「結婚しよう、トレ公~♥」 「……俺で良いのか?」 「トレ公じゃなきゃ、やだ~」 「酔っ払いの冗談ってことにしておくよ」 「よっぱらってないし~、じょうだんでもないよ~♥」 「頬を近づけるな」 「トレ公すきすき~♥」 「はいはい。俺も好きだぞ」 「だったら、結婚するぅ♥」  そんな感じでヒシアマゾンはベッドで眠りこけるまで、ずっと俺に甘え続けた。  「あれ……ここは……」  ヒシアマゾンが、ようやく目覚める。床に寝転がっていた俺は起き上がって、冷蔵庫に向かう。 「そっか、トレ公の部屋か……だいぶ迷惑かけたみたいだねぇ」  そう言いながら、ヒシアマゾンは自分の衣服を点検している。 「何もしてないからな」 「みたいだねぇ。それはそれで、女としては情けない気もするよ」  俺は苦笑する。あの女傑が、そんな女性らしいことを言うなんて。 「とりあえず、トマトジュースでも飲んだ方が良い。二日酔いに効くらしいからな」 「二日酔いって感じはしないけどねぇ。でも、ありがたくいただくよ」  ヒシアマゾンは俺からトマトジュースの缶を受け取り、ベッドに腰掛けてそれを飲み始めた。 「……なぁ、トレ公。昨日のアタシ、何か変なこと言ってなかったか?」 「言ってたな」 「だったらその……それは、冗談だったってことにしてくれないかい?」  俺はヒシアマゾンの表情を窺おうとした。そうすると彼女は、気まずそうに目を逸らした。 「トマトジュース、ごちそうさまだよ」  ヒシアマゾンが、缶をテーブルの上に置いた。話を終わらせるかのように。 「ヒシアマゾン」 「な、なんだい?」  俺と目を合わせないようにしながら、彼女は応えた。 「君が何も言わないのなら、冗談で済ませるつもりだった。でも、君が冗談にして欲しいって言ったから、冗談じゃ済ませられなくなった」 「ど、どういうことだいそりゃ!?」  ヒシアマゾンが、やっと俺と向き合う。 「冗談にして欲しいってことは、それが本心だってことだろ。だったら、俺は冗談にするわけにはいかない。俺は、君の言葉が、嬉しかったから」 「ちょっと……勘弁しておくれよ……」  再び目を逸らそうとする彼女の肩に、俺は手を伸ばす。 「あっ」  ヒシアマゾンが体勢を崩し、ベッドに倒れる。俺は押し倒すような態勢のまま、彼女を見据える。 「ヒシアマゾン」 「……そんな真剣な目で、見ないでおくれよ」 「俺は、今まで君と走ってこれて、本当に良かったと思う。そして、これからも一緒に走っていきたいと思う」 「……そうかい」 「たとえ君が引退しても。俺が、新しいウマ娘を担当したとしても。ヒシアマゾンと、一緒に居たい。一緒に、人生を走っていきたい。だから」  ヒシアマゾンが、潤んだ目で俺を見返す。 「結婚しよう、ヒシアマゾン」 「…………ずるいなぁ。そんなの、断れるわけないじゃないか」 「断らせてたまるか。君は、俺の愛する、ただ一人のウマ娘だ」 「アタシにとっても……アンタは世界でただ一人、愛するトレーナーだよ」  自然に、お互いの顔が引き合っていた。誓いの口付けは、ほんの少し、トマトの味がした。  といったことがあり、結婚しました。  ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその8 ~カオス編~*** 「パクパクですわ!」 「パクパクですわ!」  芦毛のウマ娘たちが、俺とヒシアマゾンに襲い掛かってくる。 「くっ、これでも喰らえ!」  俺はチョッコガンを容赦なくぶっ放した。ビニールに包まれたひとくちチョコレートが、廊下に散乱する。 「チョコですわ!」 「チョコですわ!」 「今だ、行くよトレ公!」  ウマ娘たちが夢中でチョコを拾っている隙に、俺とヒシアマゾンは2階の空き教室に避難する。 「とりあえず入口を塞いでおくか」 「そうだね。目標まで、あと少しってとこだろうからね」  俺とヒシアマゾンはロッカーと机を動かし、簡易バリケードを入口に構築した。 「ちょっと休憩しよう。さすがに疲れた」 「お疲れ、トレ公」  腰を下ろすと、俺はチョッコガンの弾倉からチョコレートを2つ取り出し、ヒシアマゾンと1つずつ食べた。 「うわっ!? このチョコレート、ちょっと甘すぎじゃないかい?」 「このくらい甘くないと、マクイン性細胞に感染したウマ娘を足止めできないらしい」  マクイン性細胞。ウマ娘の体に入り込むと、そのウマ娘を芦毛のスイーツ好きに変えてしまう恐怖の細胞。  俺とヒシアマゾンはその主感染源である1人のウマ娘を捕らえるために、危険を冒してトレセン学園に潜入していた。 「なんにせよ、ここまで来れたのはトレ公のおかげだよ。アタシ1人じゃ、なんとか細胞に感染してたかもしれないからね」 「アグネスタキオンが装備を提供してくれたからだ。これが無かったら、俺は足手まといになってたよ」 「そんなことはないさ。たとえ武器が無くっても、相棒が一緒ってのは心強いもんだよ」  ヒシアマゾンが笑う。その眩しい笑顔に、何度助けられてきたことか。 「それで、アイツは練習場にいるのかい」 「今、確認する」  俺は教室の窓から、望遠おいしい棒で練習場を見る。望遠おいしい棒はいざという時の非常食にもなる超高性能望遠鏡である。 「いたぞ、奴だ……」  練習場の真ん中。芝生の上で呑気に重いコンダラを枕にして、深呼吸しながら青空を見るウマ娘。  芦毛の王、ゴールドシップ。 「奴にオムレツ弾を撃ち込めば、他のウマ娘はアグネスタキオンが元に戻してくれる」  オムレツ弾とは、大量のカロリーを圧縮しオムレツで包み込んだ弾丸である。これを受けたウマ娘は、カロリーの過剰摂取により行動不能となる。  このオムレツ弾を使い、俺とヒシアマゾンがマクイン性細胞の大元であるゴールドシップを拘束、主たる感染源の無くなった状態でアグネスタキオンが治療薬を散布する。  マクイン性細胞殲滅作戦「ミヅハノメ」は、いよいよ正念場を迎えようとしていた。 「それじゃあ、早速タイマンしにいくとするかい」 「待った、ヒシアマゾン。その前に、言っておきたいことがある」 「なんだい、トレ公」 「この戦いが終わったら、結婚してくれないか?」 「はぁ? 何の冗談だい」 「冗談じゃないぞ。この戦いでもしものことがあった時、後悔したくないからな」 「何言ってんだいトレ公。アタシとアンタのコンビなら、大丈夫に決まっているさ」 「……そうだな」 「わかったら、さっさとアタシに掴まりな」  ヒシアマゾンが窓枠に足をかけ、俺はその背中に掴まる。 「行くよ、相棒!」 「応!」  2階から地上、そして練習場の王へ。褐色の女傑が、駆けて行った。  その後、ゴールドシップを死闘の末にオムレツ弾で沈黙させた俺たち。  しかしアグネスタキオンがもう1人の主感染源、メジロマックイーンの存在に気付き、俺とヒシアマゾンは休む間もなくメジロマックイーンにもオムレツ弾を撃ち込みに行った。  そして治療薬が飛行ドローンによってトレセン学園中に散布され、芦毛になっていたウマ娘たちは元の髪色に戻り、騒動は完全に終息したのだった。    平穏な学園生活が帰ってきた。  ゴールドシップ、メジロマックイーン、アグネスタキオンは理事長にこっぴどく叱られ――何故アグネスタキオンまで叱られたのかはわからないが――事件は大団円を迎えた。  マクイン性細胞から回復した生徒たちに後遺症は無く、学園のウマ娘たちはみんな明るい顔をしていた。  何故か暗い顔をしているウマ娘を見かけたが、恐らく今回の事件とは全く関係ない何かがあったのだろう。  そんな人々を横目に、俺は練習場に急ぐ。  今日もヒシアマゾンとトレーニングをするために。そして、プロポーズの答えをもらうために――  結婚はそれから3年後にようやくOKもらえました。   ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその9 ~指輪編~*** 「……いいのかい? 一人で帰しちまって」  ハッピーミークのトレーナー、たしか桐生院さんだったか。  その人と別れたトレ公に、アタシは声をかけた。 「見てたのか、ヒシアマゾン」 「まぁね。いやぁ、トレ公も隅に置けないねぇ。あんな綺麗な人と」  休日の街中、デパートから出てきた2人。それはつまり、そういうことなんだろう。 「アタシにも言ってくれればいいのにさぁ」  トレ公は溜息を吐いた。 「なにか勘違いしているみたいだけど……」 「いいっていいって。アタシには隠さなくて。なにせ、相棒なんだからね」  アタシは、作り笑顔を見せた。相棒には、分かってしまっているかもしれないけど。 「……なぁ、ヒシアマゾン。ちょっと時間あるか?」 「あるけど、なんだい?」 「話したいことがある。ちょっと付き合ってくれ」  到着したのは、街が見渡せる高台。アタシの、お気に入りの場所。アタシにとって、特別な場所。  いや、アタシだけじゃなくて、トレ公にとっても特別な場所だと、そう思ってる。  そんな場所で話したいことなんて、とても大事なことに違いない。  心が、アタシらしくもなく、怯えた。 「俺が君のトレーナーになって、もう何年になるかな」 「5年だろ? そのくらい、トレ公ならちゃんと覚えてるだろ?」 「ああ、しっかり覚えてる。本当に、長い付き合いだよな」 「そうだね……アタシはもっと、トレ公と一緒にやっていきたいけどね。なんたって、相棒なんだから」 「俺も……同じ気持ちだ」  本当に? 疑ってしまいそうになる気持ちを、アタシは振り払った。  弱気になるんじゃないよ、アタシ。トレ公は、アタシに嘘をつくような男じゃない。そんな男だったら、ここまで一緒に走ってこれなかった。  だからこそ、何を言おうとしているか、怖かった。 「なぁ、トレ公。それで、話ってなんだい?」 「それは……ちょっと、いや、凄く緊張するんだけど」 「緊張しなくていいじゃないか。アタシたちは相棒、いや、もう家族みたいなもんなんだから」 「家族……そうだな、家族、だよな」 「ああ、そうさ」  家族だから、何を言っても、祝福してあげたい。兄弟の幸せを喜ぶように。  ……本当は、そんなの―― 「……怒られたよ」 「何がだい?」 「こういうものは、他人に相談しないで、自分だけで頑張って考えるべきだって」  そう言うと、トレ公はポケットから小さな箱を取り出した。 「ヒシアマゾン」  その箱を見て、アタシは心臓が止まるかと思った。予想外だったから。そんなもの、アタシに相応しくなかったから。 「結婚しよう」  トレ公が開けた箱には、シンプルなデザインの綺麗な指輪が入っていた。  アタシには似合いそうにない――いいや、もしかしたら、似合うかも知れない――そんな、シンプルな指輪が。 「……アタシなんかでいいのかい?」 「君じゃなきゃ、ダメなんだ。君と一緒にいた、この5年間。俺は、ずっと君が好きだった。相棒として、家族として、そして、女性として」  ああ、アタシはなんて、臆病者だったんだ。相棒や家族なんて言葉で、ずっと自分を騙してきた。  トレ公から、目を逸らしていた。  涙が、溢れてくる。 「ヒシアマゾン!? 大丈夫かっ!」  きっと高かったであろう指輪を投げ捨てかねない勢いで、トレ公が駆け寄る。 「違う、違うんだよ、トレ公……」  自分が情けなくて、どうしようもなくて、それでも温かいトレ公が、嬉しくて。 「アタシは、自分の気持ちを上手く、言えないけど……それでも、トレ公と、ずっと一緒にいたいって、そう思ってる」 「……ああ」 「恋とかさ、愛とか、そういうの、わからなくて、でもさ、でも……」 「俺だって、そんなのは分からない。分からないけど、俺は、君と一生、走っていきたい」 「アタシも……アタシも、そう思ってる。だから、それをちゃんと、言葉に出来ないのが、悔しいよ……」  トレ公が、アタシを抱きしめた。 「言葉にしなくていい。俺に伝われば、何だっていい。俺も、君の想いを感じ取れるよう、努力するから」 「……トレ公は本当に、優しいね」  アタシは、トレ公の背中に腕を回す。 「アタシはやっぱり、トレ公がいないと、ダメみたいだよ」 「だったら、ずっと俺の傍にいろ」  トレ公がこんなに力強かったなんて、アタシは知らなかった。もっとトレ公のことを、知りたかった。アタシの知らないトレ公を、もっと見たかった。 「当たり前だよ……アタシはアンタの、パートナーなんだから」  パートナー。その言葉にアタシが込めた想いを、トレ公は感じ取ってくれた。  目をつむったアタシの唇に、柔らかな感触が伝わる。  きっと、夕焼けに照らされていた街は、綺麗な夜景を見せ始めているだろう。  だけど今日、この瞬間だけは、夜景なんか見ずに、このまま目をつむっていたかった。  トレ公を――アタシの大切な、世界でただ一人のパートナーを――強く、感じていたいから。   そしてアタシとトレ公は、結婚した。 ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその10 ~クソボケ編~*** 1月。初詣にて。 「トレ公は何をお願いするんだい?」 「ヒシアマゾンと結婚できますように」 「ふ、ふ~ん…………」 4月。トレーナールームにて。 「今日から新年度だねぇ。トレ公の抱負はなんだい?」 「ヒシアマゾンと結婚する」 「は、はぁ……」 7月。七夕祭りにて。 「トレ公は短冊になんて書くんだい?」 「ヒシアマゾンと結婚させてください」 「へ、へぇ~……」 10月。トレーナールームにて。 「今日からもう下半期だねぇ。トレ公は何か目標とかあるのかい?」 「ヒシアマゾンと結婚したい」 「ほ、ほぉ……」 12月。大晦日の年越し祭りにて。 「トレ公の来年の抱負はなんだい?」 「ヒシアマゾンと結婚」 「ひ、ヒシアマゾンと結婚……ねぇ……」 「ああ」 「…………このクソボケェーーーーーッ!!」  ついに堪忍袋の緒が切れたヒシアマ姐さんの弱ビンタが、トレ公を吹き飛ばした。 「そういうことは、ちゃんと、アタシに、直接、男らしく言うもんだよっ!!」  祭り客に見られながら、トレ公はゆっくりと立ち上がった。 「ヒシアマゾン……俺と、結婚してください」 「声が小さいぃっ!」 「俺と結婚してくれっ!!」 「まだ小さいっ!!」 「俺と……結婚しろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!」 「わかったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぅ!!!」  その瞬間、祭り客たちから拍手が沸き起こった。 「「「抱けーっ! 抱けーっ!」」」  囃し立てる周囲からの声に背中を押され、2人は抱き合う。  そして、歓声に包まれるトレ公とヒシアマゾンの頭上に、新年を祝う花火が打ち上がった。  「……新年おめでとう」 「ああ……おめでとう、トレ公」  そうしてトレ公とヒシアマゾンは新年早々、結婚した。 ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその11 ~シンクロ編~*** 「「ヒトシレア公マ!!」」  俺とヒシアマゾンの声が重なる。 「な、なんだいトレ公……」 「そっちこそ……」 「ま、まずはトレ公から先に言っておくれよ」 「いや、ヒシアマから先に言ってくれ」 「それは、その……もういっそ、一緒に言おうか」 「……わかった。相当無謀な気もするが、なんかいけそうな気もする」  俺とヒシアマゾンは向かい合って、深呼吸する。 「「ヒトシレア公マ!!」」 「「アおタれシと」」 「「結婚しよう!!」」  結婚しました。   ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその12 ~婚姻届編~*** 「うわっ! なんだいこれっ!?」  トレーナールームで鞄を開けたヒシアマゾンが、驚いた声を出す。 「どうした?」 「来るなっ、トレ公!」  気になって近寄ろうとした俺を、ヒシアマゾンが手で制する。それを無視して、俺は鞄の中を覗き込んだ。 「それは……何かの申込書か?」 「いや、これは、その……」 「見せてくれないか」 「ダメだって! 絶対に見せないよっ!!」  そこまで言われると、逆に気になってしまう。俺はその申込書らしきものの端を掴み、引っ張り出す。 「あっ」 「これは……婚姻届か?」  ヒシアマゾンを見ると、ほんのりと頬を紅くしている。 「やられたよ……さっき美浦寮に顔を出した時、後輩たちが鞄にこっそり入れたんだろうね」 「なるほどな」 「まったく、妙なイタズラするもんだよ……」  俺はその婚姻届を手に持ったまま、自分の机に向かった。 「トレ公?」  自動車の運転免許証を見ながら、ボールペンで自分の氏名、住所、本籍地などを書き込む。  そして書き終えた婚姻届を、ボールペンと一緒にヒシアマゾンへ差し出した。 「はい」 「あの……トレ公?」 「結婚するんだろ?」 「…………」  ヒシアマゾンがペンと婚姻届を受け取り、テーブルへ向かう。 「えっと……本籍は……」  ブツブツと呟きながらも、ヒシアマゾンはペンを動かすのであった。  というわけで結婚しました。 ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその13 ~身を固めろ編~*** 「はいはい、わかってるって。それじゃあ切るからね」  ヒシアマゾンは通話を切り、溜息をつく。 「誰からの電話だったんだ?」 「母親さ。早くいい相手を見つけろとか、うるさくてねぇ」 「ああ、そういうのは鬱陶しいよな」  そう言って俺は、カシスオレンジを一口飲む。  居酒屋での、ヒシアマゾンとのサシ飲み。トゥインクル・シリーズの頃は、彼女とこんな風に過ごすなんて想像すらしていなかった。  タイマンのレースを求める豪快な少女は、いつの間にか大人の落ち着きを身に付けていた。 「俺の親も、早く身を固めろってよく言ってくるよ」 「そっちも大変だねぇ。まだそんな年じゃない……ってわけでもないか、トレ公は」 「とは言っても、結婚したい相手なんて1人しか思い浮かばないな」 「1人はいるのかい。一体どんな……」  ビールの入ったグラスに口を付けたまま、ちらり、とヒシアマゾンがこちらを見た。 「そっちは、誰かいないのか?」  俺がそう尋ねると、ヒシアマゾンはビールを飲み干し、ドン、と空のグラスを置いた。 「……恥ずかしいけど、1人だけ、いるさ」 「そうか……」  俺はカシスオレンジの残りを飲む。騒がしい居酒屋の中、空のグラスと空の皿を挟んだ俺とヒシアマゾンの間にだけ、沈黙が流れる。 「なぁ、ヒシアマゾン」 「なんだい?」 「これは、酒の勢いじゃなくて、その、本気なんだが」 「本気だったら、堂々と言いなよ」 「ああ。あのさ」  俺は少し身を乗り出し、ほんのりと酔っているヒシアマゾンの顔をまっすぐ見つめた。 「俺と、結婚しないか?」 「……まぁ、そうなるよね」  ヒシアマゾンは空のグラスに視線を落とす。 「……嫌か?」 「……ううん」  そして、顔を上げた。 「結婚、しようか」  安堵したような笑みは、かつての灼熱のような笑みでは無い。  それでも、こちらの胸を熱くするような、優しい笑顔であった。  そんなわけで結婚しました。 ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその14 ~プロポーズ練習編~*** 「君の作った味噌汁を、毎日食べたいんだ! ……違うな」  俺はホワイトボードに列挙したプロポーズ台詞候補から、今の台詞を削除した。 「もっとヒシアマゾンの心に響くような言葉じゃなきゃ……」  トレーナールームの外では、小雨がぱらついている。まるで今の俺のような雨だ。  俺は、ヒシアマゾンと結婚したかった。理由は山ほどあるが、一言で言えば「ヒシアマゾンのいない日常なんて嫌だ」というワガママだった。  ん? なんかそれ良いな。 「君のいない日常なんて嫌だ……だから、結婚しよう」  やっぱり何か違う。これじゃあドキドキヒシアマになりそうにない。  こんな姿を他人に見られたら恥ずかしさのあまり成層圏から地上にダイブしたくなるのだが、ヒシアマゾンは用事があるため、今日はトレーナールームには来ない。そして他に来客があったとしても、ヒシアマゾン以外はノックをするはずである。  つまり、このプロポーズ練習を誰かに見られる心配は無かった。 「ヒシアマゾン、俺の子どもを産んでくれ……! ダメだろ」  見られる心配が無いと、ちょっと冒険的な台詞も言ってみたくなる。 「君の笑顔を、この先の人生ずっと、見ていたいんだ。だから、結婚してくれ!」  これはなかなか良いのではないか。スマイルヒシアマくらいにはなりそうな気がする。 「君の笑顔を、この先の人生ずっと、見ていたいんだ。だから……いや、やっぱりちょっとキザったらしいな」  そういえばキザってどういう意味なんだろうか。ピラミッドと関係が? 「ヒシアマゾンの心を掴む言葉……もっと豪快な……そうなると、いっそシンプルな方が良いか」  俺はゆっくりと息を吐いてから、少し大きめの声を出した。 「ヒシアマゾン、俺と――」 「悪いトレ公。ちょっと忘れ物しちまってねぇ」 「結婚してくれっ!」 「え!? あっ、え~と……」  俺が振り返ると、トレーナールームの入口にヒシアマゾンの姿が見えた。 「……」 「……」 「……やり直しても良いか?」 「……う、うん」 「ヒシアマゾン。俺と、結婚してくれっ!」 「……ごめん。ちょっとだけ、考えさせてくれないかい」 「……はい」 「…………」  ヒシアマゾンはそっとトレーナールームの扉を閉めて、去って行った。  俺はしばし呆然とした後、机に突っ伏し、外で降っている小雨のように泣いた。  でも半年後に結婚しました。 ***ヒシアマ姐さんとプロポーズその15 ~ハートキャッチヒシアマ編~*** 「まほう……しょうじょ、ハートキャッチ……ヒシ、アマッ……はぅぅ♥」  俺の股間の上。ピンク色の魔法少女コスプレをしたヒシアマゾンが、ペニスの挿入された腰を煽情的に動かしている。 「いけないトレーナーの、ハートを、キャッチ……ひゃぁぁぅん♥♥」  スカートの中に左手を入れ、彼女のクリトリスをそっと触ると、決め台詞が嬌声へと変わった。 「トレ公……こんな、恥ずかしいこと、させて……何が楽しいん、だい……」  羞恥に崩れた顔で、ヒシアマゾンが恨めしそうに言った。 「ヒシアマゾンが俺にしか見せられないような可愛い服を着て、誰にも見せたくないような恥ずかしい表情をするのが、凄く興奮するんだ」 「アタシはもう……恥ずかしすぎて、死んじまいそうだよ……」 「そうか……」  ヒシアマゾンの腰が止まっていたので、代わりに俺が腰を突き上げる。 「んあっ♥ はゆぅっ♥♥♥」  膣内を上下するペニスの動きに合わせて、ヒシアマゾンの喉から喘ぎ声が漏れる。 「トレ公……ちょっと、まって……はうっ♥ あうぅぅぅ♥♥ あっ♥ あぅっっ♥」  普段の豪快な調子とは違う、か弱い少女のような喘ぎ。  より一層大きく硬くなるペニスをヒシアマゾンの膣が締め付け、その気持ち良さに腰が止まらなくなる。 「ひぅっっ♥ はっっ♥ ふぇっ♥ ふぁぅっ♥ あっ、うんんっっ♥♥ あぅぅんっっ♥♥♥」  俺は魔法少女服の胸ボタンを外して、ヒシアマゾンの豊かな乳房を露わにし、両手で揉む。  魔法少女の幼さとは対照的な、ヒシアマゾンの淫らな表情と魅惑的な乳。興奮はエスカレートするばかりだった。 「はぐぅっ♥♥♥ ひぐっ♥♥♥ ああぅっ♥♥ ううぅぁっ♥♥」  俺は腰の動きを力の限り速め、射精へのスパートをかける。 「出すぞ、ヒシアマゾン……!」 「はうぅぅぅっ♥ 出してぇ、出していいからぁぁ♥♥ はやくぅ、おわらせぇてぇ♥♥♥」  よほど魔法少女コスプレでのうまぴょいが嫌なようだが、そうなると射精してしまわずに、焦らしたくなってくる。  だがヒシアマゾンの膣壁は精子を求めるようにペニスを強く圧迫し、その中を移動する快感は流石に耐えきれるものでは無かった。  そして俺の精液が、勢い良くコンドームの中に発射された。 「あっ、あああぁぁぁぁ……♥♥♥ あついのが、出てるぅ……♥♥♥」  ゴム越しではあるが、ヒシアマゾンは精子の温度を感じているようだ。  痴態から早く解放されたいがための、精液搾取。  その倒錯が、発射したばかりのペニスに活力の起点を与えてくれた。 「はぁ……はぁ……」  ベッドに横たわり、荒い息を吐く魔法少女ヒシアマ。  乱れる長い黒髪と、曝け出した乳房と、スカートから覗く太腿。  メルヘンな服装とミスマッチなその色気が、劣情を誘う。 「もう、脱いでもいい……かい……?」 「駄目だ」  俺は手早くゴムを交換し、ヒシアマゾンを後ろから抱きしめる。 「ダメって……ちょ、ちょっと待っておくれよ!?」  彼女は突然、慌てだす。自分の太腿に触れる、勃起したペニスに気付いたのだろう。 「いくらなんでも早すぎるってっ!! せめて、少し休憩してから!」 「駄目だ」  俺から逃れようと四つん這いになったヒシアマゾン。その腰を両手でつかみ、彼女の秘部にペニスを挿入する。 「ひぐぅぅぅっ♥♥♥♥」  腰を前後すると、ヒシアマゾンの髪と乳が揺れ、肉と肉がぶつかる淫猥な音が響く。 「あぅぅっ♥♥♥ ふぁぅっっ♥♥ ひにゅぅぅ♥♥ はぐぅぅ♥♥♥」  こんなに美しく、可愛らしく、いやらしい女性が、俺と繋がっている。  愛おしさが胸に溢れ、俺はヒシアマゾンの躰にしがみ着く。そして、一心不乱に腰を振った。 「トレ公ぅ♥♥♥ トレ公ぅぅぅぅ♥♥♥♥♥」  鍛えられた筋肉と、女体特有の柔らかさ。  それはヒシアマゾンの豪快さと繊細さであり、彼女の気質はその躰にも現れている。  彼女の肉体に溺れることは、彼女の精神に溺れること。  溶けて、蕩けて、俺のペニスが彼女の一部として飲み込まれていく。  彼女の愛に、塗れて行く。  やがて、限界が近づいてきた。ヒシアマゾンも快楽に身を委ね、もはや格好など気にしていない様子だ。 「ヒシアマゾン……ッ ヒシ、アマゾン……ッ!!」 「トレ公ぅ、あついよぅ♥♥♥ あつくて、あつくて……♥♥♥」  ペニスをヒシアマゾンの最奥に突き入れると、彼女の膣が一気に締まった。  快楽と精液が、びゅるり、びゅるりと、再び迸る。 「あああぁぁぁぁぁ……♥♥♥♥♥♥」  絶頂に昂るヒシアマゾンのよがり声。膣圧に促され、射精がなかなか治まらない。  しばしの後、彼女の膣内からゆっくりとペニスを引き抜くと、コンドームの先には大量の精液が溜まっていた。 「トレ公……♥♥ アタシは、もう、ダメだよ……♥♥♥」  俺はヒシアマゾンの髪と耳をそっと撫でる。そして彼女の唇に、一瞬触れる程度のキスをした。 「へへ……♥」  幸せそうな表情を浮かべる艶姿のヒシアマゾン。  それを見ていると劣情以上の愛情が――絶対に彼女を手放してなるものかという決意が――込み上げてくるのであった。  数分後。  ヒシアマゾンは、ベッドの上でこちらに背を向け、体育座りをしていた。 「こんな恥ずかしい格好で……あんな恥ずかしいことして……」  自己嫌悪に陥ったのか、何やらブツブツと呟いている。そんな必要は無いと、慰めなければ。 「とても可愛かったぞ、ヒシアマゾン」 「可愛かったじゃないよ、まったく!!」  どうやら逆効果だったようだ。だけど魔法少女の格好で怒っているヒシアマゾンも、なかなか趣があると感じた。 「ああもう……これじゃあ、アタシはお嫁にいけないよ……」 「そこは責任を取るから、心配しないでくれ」 「責任を取るって……」  膝を抱えて、ヒシアマゾンが俯く。そして、小さくこう呟いた。 「……結婚してくれる?」 「当然だ」  俺は即答した。 「……本当かい?」 「ああ」 「イマイチ信用できないんだよねぇ……」 「どうしてだ?」 「こんな格好させてるからだよ……」  それを言われると反論の余地が無い。流石に今日は、意地悪をしすぎたかもしれない。 「……もし、本当に結婚する気があるならさぁ」 「ああ」 「ゴム無しで……アタシを抱けるかい……?」  俺は間髪入れずにヒシアマゾンの前に回り込み、両脚を掴んで左右に広げた。 「うわぁっ!?」  驚いて後ろ向きに倒れるヒシアマゾン。  その無防備な秘部に、三発目を射精したくてウズウズしているペニスを押し付ける。 「待って、待ってトレ公っ!! そんなことしたら、赤ちゃん、できひゃう!」 「結婚するんだから覚悟の上だ。君も子どもも、俺が責任を持って幸せにする」  そして俺は、彼女の膣内に三度目の侵入を果たす。 「んぁ、はぅぅっ……♥♥ こ、この……バカトレ公ぅ……♥♥♥」  言葉とは裏腹にほんの少し嬉しそうなヒシアマゾンの顔を見ながら、俺は挿入したペニスを前後させ続けるのであった。  数か月後、ちゃんと結婚しました。