二次元裏@ふたば

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81216 B21/07/04(日)02:12:29No.819834862そうだねx2 04:52頃消えます
担当ウマ娘とは適切な距離感を保たなければならないという。
曰く、『異性と三年間密接に関わるのだから、彼女らの将来に影響を与えるようなことがあってはならない』とか。
要は下手に距離感を縮めて深い仲になってはならない、という事なのだが、残念ながら担当の子に妖しい眼で見られている先輩に力説されても全く響かなかった。しかも女性に。
案の定一年も経たずに姿を消した先輩の無事を祈りながら、俺は決してこうはなるまいと誓ったのだ。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/07/04(日)02:12:43No.819834911+
そう、誓ったはずなのだ。
221/07/04(日)02:12:55No.819834952+
「あなた、かぁ……えへへ、照れちゃうなぁ……アタシがお嫁さんかぁ」
ウィニングチケット。
俺の元愛バにして、これからの人生のパートナー。
ダービーウマ娘の栄光を掴んだ彼女は今、薬指を眺めてだらしない笑みを浮かべている。
321/07/04(日)02:13:08No.819835006+
『素直な娘だ』と最初は思った。
良く笑い、よく泣き、偽ることなく自分の心を素直にさらけ出す。
声が大きいのがタマに傷だったが、誰からも好かれる子だった。
421/07/04(日)02:13:21No.819835060+
自分もその一人だ。
どこまでも真っ直ぐなその姿に惹かれて、俺は彼女のトレーナーになったのだ。
実際、チケットと過ごす日々は楽しかった。
いつも明るく、素直に愚直に努力するその姿はとても明るく映ったし、そんな彼女を支えることにやりがいを感じていた。
彼女と過ごすうちに、当初の誓いはすっかり頭から抜け落ちていたのだった。
521/07/04(日)02:13:32No.819835098+
「アタシ、ダービーウマ娘になるんだ!」
それがチケットの口癖だった。
ウマ娘の誰もが憧れるクラシック3冠の1つ。
幼少期に見たダービーこそが彼女の原風景であり、走る理由だった。
だが、チケットも俺も、その重みをほんの少しも理解していなかったことを突き付けられることになる。
621/07/04(日)02:13:45No.819835141+
皐月賞。輝かしきクラシックの一冠目。
チケットは親友にしてライバルたるナリタタイシンに敗れた。
完敗だった。
721/07/04(日)02:13:58No.819835176+
何もかもが足りなかった。
レースが残酷であること、容赦なく勝敗をウマ娘達に刻み込むことを思い知った。
俺たちにとって初めての挫折だった。
821/07/04(日)02:14:21No.819835246+
それからのチケットは精彩を欠いていた。
いつもの明るさは消え、何処か悲壮感の漂う表情でトレーニングに打ち込んでいた。
それでも結果が出ることは無く、無慈悲にダービーは近づいていた。
921/07/04(日)02:14:55No.819835354+
「怖いんだ、走るのが」
「…………」
「タイシンもハヤヒデも真剣だった。アタシだけ何も分かってなかった。仲良しだって気持ちが抜けなくて、だからアタシは負けたんだ」
「……そっか」
「ほかの子だってそうだよ、なのにアタシは……!」
「……チケット」
「さんざん感動したっていって、何も分かってなかったんだ!ダービーを取った人たちがどんな気持ちで走ってたかなんて考えもしなかった!怖いよトレーナーさん、アタシ走れないよ……」
1021/07/04(日)02:15:39No.819835511+
「二人は何か言ってたか?」
「……タイシンはずっとアタシ達に勝ちたかったって。だからここまで来れたんだって。ハヤヒデも待ってるって」
「チケットは?」
「……勝ちたいよ!でも走れないんだ!こんなに走るのが怖くなるなんて思わなかった……!」
1121/07/04(日)02:15:53No.819835560+
「俺も同じだよ」
「…………」
「走ることにも、チケットにも向き合ってなかった。お前のトゥインクルシリーズは一度きりだって分かってなかったんだ。ただ、お前の走りを見て、それで満足してた」
「トレーナーさん……」
「やり直そう、二人で。勝とう、二人に!」
「でも……」
1221/07/04(日)02:16:11No.819835622+
「それに、俺はお前の気持ちが二人に劣ってるなんて思わない」
「え?」
「お前だって散々努力してきたじゃないか、小さいころから」
ボロボロになった沢山のノート。
表紙にデカデカと『ダービー!』と書かれたそれは、彼女が持ってきたものだ。
歴代ダービーの新聞記事のスクラップ、チケットなりの分析、そして何より彼女の気持ちが詰まったこのノートは、彼女がダービーをどれだけ想ってきたかの証だ。
1321/07/04(日)02:16:25No.819835659+
「お前の、俺たちの夢を叶えよう!俺がお前をダービーウマ娘にして見せる」
「トレーナーさん……!」
「チケット、お前の夢はなんだ!!」
「ダービーウマ娘になること!!」
「そうだ!そしてお前をダービーウマ娘にすることが俺の夢だ!!いくぞチケット!!!」
「「ダ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ビ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」」
1421/07/04(日)02:16:38No.819835704+
そして迎えたダービー。
二人の親友。二人の夢。
「負ける、もんかアアアアアアアアアアッ!!」
全身全霊の果てに、彼女は――――――――――
「トレーナーさああああああああああん!!!!!やったよおおおおおおおおおお!!!!!」
「やったぞおおおおおおおおおお!!!!!チケットおおおおおおおおおお!!!!!」
俺たちは、夢をつかみ取ったのだった。
1521/07/04(日)02:17:06No.819835786そうだねx2
そして、その日から、チケットの様子は少しずつおかしくなっていった。
具体的に言えば、ふとした瞬間に顔を赤らめるようになった。
物理的な距離感が少し遠くなった。
身だしなみに気を遣うようになった。
1621/07/04(日)02:17:18No.819835830+
「どう、かな……?」
「ああ、似合ってるぞ。でもこの格好ならもう少し髪長い方が良いかもな」
「……トレーナーさんは、髪長い方が好き?」
「ああ。好みもあるけど色んな髪型に出来るしな」
「そっかあ……そっかあ」
その日からチケットは髪を伸ばし始めた。
1721/07/04(日)02:17:29No.819835880+
「どうかな?」
「ああ、美味い。でももう少し味が濃い方が好みかな」
「そっか、頑張る!」
弁当を作ってくるようになった。今までそんな素振りは見せなかったのに。
1821/07/04(日)02:17:45No.819835928そうだねx2
「どうだ、最近」
「何が?」
「チケットだよ!何かこう無いのか!?好きとか結婚したいとか!!」
「バカ!!」
「うーん、無いかな。でも最近可愛くなってきたし、料理も上手くなってきたし、だんだん好みに近づいてるような」
「おお……!」
タイシンとハヤヒデのトレーナーに絡まれることも多くなった。
1921/07/04(日)02:17:57No.819835964+
そんな折、ふとあの言葉を思い出した。
『異性と三年間密接に関わるのだから、彼女らの将来に影響を与えるようなことがあってはならない』
「チケットなら大丈夫だろう」と無意識のうちに葬っていたあの警句が、実感を以て鎌首をもたげてきたのだ。
2021/07/04(日)02:18:09No.819836002+
「いや、でもなあ」
「どうしたの?」
「いや、何でもない。それで今日は?」
「カレー!好きでしょトレーナーさん!」
「おお!しかしどんどん上手くなるなあ」
「タイシンとハヤヒデのおかげだよ!」
気付けば、部屋に上がりこまれるようになっていた。
それと同時に、自分の中でもチケットへの気持ちが大きくなっていくのを感じていた。
彼女へ向けていた親愛が、別の気持ちになっていった。
2121/07/04(日)02:19:03No.819836179そうだねx1
恐らく先輩たちもそうだったのだろう。
『異性観を壊すことなかれ』とは言うが、何も影響を受けるのがウマ娘だけ、という訳がない。
トレーナーも着実に担当ウマ娘に異性観を壊されていた。ただそれだけの話だったのだ。
2221/07/04(日)02:19:14No.819836221そうだねx1
そして三年目。URAファイナルズも終え、いよいよ契約解除の時が迫っていた。
2321/07/04(日)02:19:30No.819836272+
「おっきいねトレーナーさん!」
「町内会だし正直舐めてたが、ここまで立派とはなあ」
俺たちは温泉旅館に来ていた。
福引で当てた旅行券を使い、慰労も兼ねて小旅行をすることになったのだ。
2421/07/04(日)02:19:42No.819836311そうだねx2
「それにしても……」
「なあに?」
「随分と綺麗になったな」
「……うん」
髪を伸ばし、少女だった彼女は今や大人への階段を登り始めていた。
「本当に綺麗だ」
「……っ!は、早くいこうよトレーナーさん!」
「あ、ああ」
2521/07/04(日)02:20:08No.819836403そうだねx1
〜⌚〜
「へー、部屋に備え付けになってるんだ」
「一緒に入るか?」
「え?」
「あ、いや」
「えっ!?」
「いや、気の迷いだ!忘れてくれ!!」
「……トレーナーさんがそうしたいなら、良いよ?」
「なんて?」
「良いよ?トレーナーさんなら……」
「…………」
「…………」
「「…………」」
2621/07/04(日)02:20:19No.819836434そうだねx1
あの時、本当にどうかしていた。
全然そんな気は無かったのに、一気に変な空気にしてしまった。
本来ならセクハラで終わったはずだったのが、チケットの発言がさらなる混沌を呼び寄せた。
2721/07/04(日)02:21:21No.819836632そうだねx1
俺はもうヤケになった。この混沌をぶち壊そうとして、核弾頭をぶっ放すことにしたのだ。
「あーっ、チケット!!」
「ど、どうしたの!?」
「好きだ!!」
「??????????」
「好きだッ!!!」
「……ふぇ」
2821/07/04(日)02:21:36No.819836673そうだねx1
言っちまった、言っちまったよ。
だがもう後には引けない。
「いつの間にか好きになってた。お前が好きだ。走るところが好きだ。声がデカいのが好きだ。料理が好きだ。その明るさが大好きだ、愛してる」
「あ、ちょ、待って」
「ずっと一緒にいたい。契約が終わってもずっと。離れたくないんだ」
「待って!!」
ほとんど熱に浮かされたように喋りまくる。出しても出しても止まらない。
2921/07/04(日)02:21:47No.819836709そうだねx1
「お前の目が好きだ。髪が好きだ。顔が好きだ。うなじが好きだ。胸が好きだ。脚が好き」
「分かったから、分かったから!!!!!」
気付けば二人でゼエゼエしていた。下手すればダービーの時より。
3021/07/04(日)02:22:14No.819836808そうだねx1
「あ、あのね?アタシも……アタシもトレーナーさんが好き。ずっと一緒に居たい。契約が終わってもずっと!だから、もうすぐっ、アタシたち、わかっ、別れなきゃ、別れなきゃいけないって、グスッ……!」
「チケット!」
「だから、嬉しくてっ、トレーナーさん、好きっ、大好きっ、愛してる!」
「チケット!!」
3121/07/04(日)02:24:06No.819837179そうだねx2
ともかく、俺たちは一緒になった。
肌を重ねたりタイシンとハヤヒデから祝福されたり二人のトレーナーにニヤニヤされたり桐生院さんが目を輝かせていたり理事長とたづなさんが嘆いていたりと色々あった。
結局トレーナー契約は更新。引退まで二人で走り続け、今はトレセンを離れて広報の仕事をしている。
3221/07/04(日)02:24:20No.819837234そうだねx1
「トレーナーさん!」
「だからもうトレーナーじゃないって」
「でも他に呼び方無いし」
「あなたとかどうだ」
「えー、恥ずかしいなあ……」
「これからはそう呼んでもらうからな」
「?」
3321/07/04(日)02:25:09No.819837373+
「ほら、これ」
「何?箱……?」
「開けてみろ」
「……トレーナーさん、これって」
3421/07/04(日)02:25:29No.819837430そうだねx1
見てますか先輩。俺も結局ダメでした。
「これからもずっと一緒だ」
「あなた、かぁ……えへへ、照れちゃうなぁ……アタシがお嫁さんかぁ」
3521/07/04(日)02:26:20No.819837577そうだねx3
トレーナーが担当バの異性観を破壊するとき
トレーナーもまた異性観を破壊されている…
3621/07/04(日)02:26:28No.819837599そうだねx11
ウマ娘に異性観を破壊されるトレーナーは多い。
とっとと覚悟を決めた方が良い。三年間苦楽を共にした相手以上の人なんてそうそう見つかるものでもないだろう。
一心同体のパートナーと一生を共に歩む以上の幸せなんて無いのだから。
3721/07/04(日)02:28:15No.819837922そうだねx1
タイトレとビワトレは距離感破壊されてなさそうだな…
3821/07/04(日)02:28:22No.819837951そうだねx22
これでおわりです
育成と三章終わってからずっと頭の中にあったのを形にしました
長々と付き合っていただきありがとうございました
3921/07/04(日)02:29:04No.819838076+
チケケッコンは合法
4021/07/04(日)02:30:02No.819838273そうだねx1
そもそもトレーナー君は期待されてるとはいえマジの新人だからな…
4121/07/04(日)02:30:50No.819838433そうだねx1
メス顔チケットについてもっと詳しく描写してください
4221/07/04(日)02:31:21No.819838541そうだねx1
読みやすくて健全な良い怪文書だった
チケゾー呼びだと恋愛対象じゃないけどチケット呼びだと恋愛対象になるという謎の感覚がある
4321/07/04(日)02:31:30No.819838581そうだねx1
スタートでもう決着ついてる
4421/07/04(日)02:32:24No.819838720そうだねx4
>読みやすくて健全な良い怪文書だった
>チケゾー呼びだと恋愛対象じゃないけどチケット呼びだと恋愛対象になるという謎の感覚がある
シリウスのトレーナーがチケゾー呼びで個別のトレーナーがチケット呼びだからかな
4521/07/04(日)02:32:30No.819838745そうだねx3
この後B(ブライアン)NWでハヤヒデとクソボケを気ぶるのはまた別のお話
4621/07/04(日)02:34:51No.819839185そうだねx3
>メス顔チケットについてもっと詳しく描写してください
初めてだしお互いヘタクソで痛くて正直気持ちよくないけどでも心は幸せでいっぱいな感じです
4721/07/04(日)02:36:02No.819839409そうだねx3
桐生院は極端な例だけどそりゃトレーナーに成り立てとか人生経験ほぼないからこうなるよね…
4821/07/04(日)03:20:20No.819846006そうだねx1
すごく読みやすかった
4921/07/04(日)03:36:48No.819847954そうだねx1
はぁーよきよきでした
5021/07/04(日)03:39:38No.819848303+
高湿度チケゾーは健康にいい
5121/07/04(日)03:46:41No.819849119+
チケゾーすら堕ちるのか...三年間の魔力は恐ろしい


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