二次元裏@ふたば

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31696 B21/07/02(金)23:29:22No.819398667そうだねx9 00:29頃消えます
ウマ娘とは適切な距離感を保つ事が大事だと同僚がくだを巻いていた。

夢と期待に胸を膨らませ、共にトレセン学園の門をくぐった輝かしい思い出のあの日からはや数年。

当時の中堅チームのサブトレーナーとして配属され経験を積み始めた俺と違い、新人ながら専属契約を結び長年二人三脚で走り続けた結果、担当ウマ娘の男性観を見事自分という名のブリリアントカットにしてしまい、結局ブリリアントカットの宝石が載った指輪をプレゼントさせられたアイツを憐れとも何ともつかない目線で見る羽目になった俺は、空になったグラスに酒を注ぎながら、何の説得力もない言葉にただ頷くだけだった。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/07/02(金)23:29:57No.819398906そうだねx2
実際、ウマ娘とトレーナーにおける距離感というのは、指導をしていくにあたって精神面、肉体面ともにかなり重要視される。
精神面は言わずもがな。
過酷なレースで互いの身を削る彼女達に於いてそのメンタルが及ぼす影響は計り知れない。我々トレーナーは彼女らに寄り添い、僅かな異変も見落とさず、綻びを素早く掬い上げてケアしてあげなければならないのだ。
そして、肉体面の距離感。
自分に合ったそれを会得する事こそが、彼女達の杖たらんとする我々に求められる最低限の資質といえるだろう。
221/07/02(金)23:30:42No.819399202そうだねx2
酔い潰れた同僚をタクシーに叩き込み、自分はほろ酔い加減を覚ます為に河川敷をゆるゆると進む。
心地よい薫風に運ばれる爽やかな季節の予感に胸を躍らせていると、前方に人影が佇んでいるのに気が付いた。

「タイキ、もう門限は過ぎているぞ」

そのシルエットと気配で、本来であれば寮のベッドで夢の中にいるはずの我が愛バ、タイキシャトルであることに気が付き、声をかける。

「トレーナーさん……」

いつもの天真爛漫、溌剌とした声は無く、代わりにあるのはか細く震える声と、目尻に浮かんだ宝石。

「ワタシ、なんだか寂しくて……トレーナーさんの部屋に行ったら誰もいなくて……怖くて……匂いを辿って来マシタ……」
321/07/02(金)23:31:32No.819399546そうだねx2
豊満な胸の前で硬く握り締められた拳は、頼り無く震えている。
常人を遥かに超えた身体能力を持つウマ娘の中でも最高峰の上澄みともいえる彼女は、それと同時に離れて暮らす家族を想って郷愁に涙する一人の少女なのだ。

「タイキ、少し遊ぼうか」

こういう時、抱きしめて優しい言葉をかけてやるのは簡単だ。しかしそれではあの憐れな同僚の二の舞になる可能性も否めない。
ならば、別の楽しい感情で上書きしてやるのが良いだろう。身体を動かして眠くなってくれれば最高だ。

「遊ブ?」

「ああ、この間ゴールドシップとそのトレーナーを見て羨ましがっていたろう。ファストドロー対決なんてどうだ?」

そう言いながら俺は小石を幾つか拾い集める。
421/07/02(金)23:32:00No.819399728そうだねx1
「Oh!この間のゴールドシップのfight!とってもexcitingデシタ!でもトゥレーナーさんのgunは……?」

既にウマソウルでリボルバー式の拳銃をその手に具現化しながら、少し元気になったタイキが俺を気遣う台詞を吐く。

「そもそも持ってないし、教え子に銃口を向ける訳にもいかんだろ。俺はこれで十分」

そう言いながら先程拾った小石をポケットの中に詰め込む。

「ヘェ……手加減はムヨー、デスヨネ?」

「勿論」

ウマ娘達は基本、負けず嫌いだ。普段どれだけ穏やかな気性の持ち主であろうとも、一度レースに出走するとなれば豹変する子も少なくない。
そしてそれは、相手に舐められていると感じれば尚の事。
先程の雰囲気から一変、剣呑な気配を纏わせたタイキは、両手を腰の辺りに構え、仁王立ちで俺を見据える。
521/07/02(金)23:32:37No.819399981そうだねx1
「コインを投げるよ。地面に落ちた瞬間が合図でイイね」

「O.K……歯にモノ見せてやりマース」

「それを言うなら目にモノ、だよ」

軽口の応酬を終えて、弾かれたコインは甲高い音とともに宙へ舞った。

僅かな時が悠久へと変化する錯覚。
そして、重力に惹かれたコインが鳴らすはずだった金属音は、一つの銃声によって掻き消された。

「ウソ……」

絶句するタイキ。俺の周囲を抉った三つの弾痕。そして俺の手に握られた幾つかの小石。
621/07/02(金)23:38:03No.819402015そうだねx1
タイキは恐るべき速度で銃を抜き、三発の弾丸を俺の急所へ向けて寸分違わず撃ち出した。
その尋常ならざる速度は銃声が一つに重なって聞こえる程。

俺はそれと同時に、指で小石を三つ弾いた。
弾丸の強度と小石の強度は比べるまでも無い。同速度でぶつかれば小石が砕けるのは自明の理だ。しかし、弾丸の軌道を逸らすくらいはできる。
接近せずに銃を使うウマ娘を無力化するにはどうするかを考えて編み出した俺だけの間合い。
この距離感は新米や駆け出しには荷が重い。
721/07/02(金)23:38:39No.819402248そうだねx2
「どうした?続けるか?」

呆けてこちらを見るタイキに声を掛けると、ブルブル、と頭を振って体勢を立て直した。

「hmm……なら、これはドウデス!?」

タイキが少し掛かった口調でそう叫び片脚を踏み鳴らすと、彼女を中心に半径20メートル程が何も無い荒野へと変貌した。

「ほぅ……」

いつの間にかウマソウルをここまで使いこなす様になっていたか。我が愛バながら成長著しく、頼もしい限りだ。

「これでトゥレーナーさんは小石をget出来まセーン!!Pocketの中の小石を撃ち尽くしたらthe end!」
821/07/02(金)23:39:09No.819402444そうだねx1
考えたな、と素直に感心する。
緊迫した場面で相手に不利を押し付けるその思考は、必ずや今後のレースの糧となるはずだ。

「Further……ワタシはこうシマース」

BANG、と呟くタイキの手には、二丁目の拳銃が顕現していた。

「準備はいいか?」

あえて突き放すように煽れば、タイキは何も言わずに銃口を俺に突きつけた。
921/07/02(金)23:39:42No.819402643そうだねx1
「Why!?Why why why why why!!??どうして当たらないンデスカ!?」

既に俺が小石を撃ち尽くして数分。
未だタイキの弾丸は俺を捉えること叶わず。
半ば狂乱に陥りながらも二丁の銃を絶えず乱射し続けるタイキの狙いは正確無比。
だからこそ、ウマ娘の動体視力を凌駕するわけでもない常人の俺を撃ち抜けない異常事態は、益々タイキの焦りを誘発させる。

「視線、銃口の角度、弾丸のスピード、そして膨大なデータの統計に基づいた理論と、それを可能にする技術さえあれば誰にでも出来る事だよ」

銃口を向けられる、射線から身体をずらす、フェイントをいれる。唯ひたすらにその繰り返し。
一歩、また一歩、距離を詰める。
1021/07/02(金)23:40:17No.819402868そうだねx1
「そこに相手の心理状態なんかが加われば、こうやって躱すのは容易い」

手が届く。今度は向けられた銃口の方をずらす。
いつの間にか、俺はタイキとハグ出来る程度までに近づいていた。

「俺は、タイキの事なら何でも知ってるからね」

「あっ❤️」

タイキの顎を優しく、指で弾く。
弾丸と同じ速度で小石を撃ち出すそれは、揺り籠のようにタイキの脳を揺らし、その潤んだ瞳は静かに閉じられた。
1121/07/02(金)23:40:41No.819403047そうだねx6
「おやすみ、俺のじゃじゃウマ娘。良い夢を」

満点の星空の下、脱力したタイキの豊満な肢体を背中に感じながら、俺は再びトレセン学園への帰路に着いた。
肉体的な距離感を会得した結果、ウマ娘の全力を受け止められる様になり、それが益々ウマ娘とトレーナーの精神的な距離感を縮める要因になっていると俺と同僚が気付くのは、未だ先の話である。
1221/07/02(金)23:41:50No.819403475そうだねx4
ウワーッ!タツジン!
1321/07/02(金)23:41:59No.819403530そうだねx2
タイキ怪文書助かる
1421/07/02(金)23:42:04No.819403557そうだねx5
誰にでもできるわけないだろ!
1521/07/02(金)23:42:25No.819403678そうだねx7
以上です

飛び道具ウマソウルは難産でしたが書いてて楽しかったです

ウマソウルで作られた武器は変幻自在なので首に届く前に刃引きされたり弾丸がゴム弾の様に変化するのはみんな知っているな
1621/07/02(金)23:43:12No.819403933そうだねx1
壊音の霹靂?!
1721/07/02(金)23:44:48No.819404474そうだねx3
「お客さん、お客さん、着きましたよ!」

「んあ?ああ、あーりがとうございまふぅ……」

「お客さん!また寝ないで!参ったなあ……あ、お迎えですか?いやあ助かります。お代はタクシーチケットを頂いてるんで、こちらに金額を書いていただければ、はい、はい、ありがとうございました。それでは」

「はい、ありがとうございます。……まったく、少し飲み過ぎでは無いか?トレーナー君」

「んん……ルナァ……」

「おや、私が目の前にいるのに夢の中の私にうつつを抜かすとは良い度胸だね。私も久しぶりに掛かってしまいそうだ」

「愛してる……グゥ」

「…………私も愛してる。私だけの旦那様❤️」
1821/07/02(金)23:45:36No.819404777そうだねx2
剣術の達人を剣豪と呼ぶように…射撃の達人をガンマンと呼ぶ…
1921/07/02(金)23:47:31No.819405451そうだねx2
適切な距離感ってそっちかよ!
2021/07/02(金)23:47:50No.819405575そうだねx1
落ち着いて聞いて欲しい...普通の人間はSAAのファニングショットに小石では勝てねーよ!!
2121/07/02(金)23:48:25No.819405798そうだねx3
だがクラリックの資格を持ったトレーナーならどうかな
2221/07/02(金)23:49:17No.819406078そうだねx10
>ウマソウルで作られた武器は変幻自在なので首に届く前に刃引きされたり弾丸がゴム弾の様に変化するのはみんな知っているな

2321/07/02(金)23:51:16No.819406760そうだねx4
京極さんかお前は
2421/07/02(金)23:52:27No.819407125そうだねx3
この形式の怪文書も5作目なんですがそろそろテキストファイルをつけた方が良いんですかね?
2521/07/02(金)23:53:15No.819407363+
いつぞやタイキのトレーナーやってるヴァッシュってネタの怪文書あったなあって思い出す勢いだ…
2621/07/02(金)23:59:05No.819409504+
ちょっと達人すぎる…
2721/07/02(金)23:59:31No.819409639そうだねx1
>この形式の怪文書も5作目なんですがそろそろテキストファイルをつけた方が良いんですかね?
あると嬉しい
ここの使用上過去作読みたいって思っても確実に追える方法ないし
2821/07/03(土)00:00:29No.819409982そうだねx1
軍やら特殊部隊から声がかかりそうなトレーナーきたな…
2921/07/03(土)00:01:42No.819410401そうだねx3
>皆川亮二っぽい画風のトレーナーきたな…
3021/07/03(土)00:04:16No.819411327そうだねx2
>いつぞやタイキのトレーナーやってるヴァッシュってネタの怪文書あったなあって思い出す勢いだ…
あれすげえ好きだったんでそう言ってもらえると嬉しいです
3121/07/03(土)00:05:17No.819411697そうだねx2
やっぱり中央のトレーナーってみんなすごいんだな…
3221/07/03(土)00:07:33No.819412531そうだねx2
このトレーナークリスチャン・ベールじじゃない?
3321/07/03(土)00:09:03No.819413116+
必殺!
チャンベールアクション!
3421/07/03(土)00:10:46No.819413715+
ウマソウルとは…
3521/07/03(土)00:26:49No.819419451+
毎回愛バと惚気てくるルドルフトレーナー、直接的な描写がないけどグラトレとエルトレの先輩でこのタイキトレの同僚にしてあのルドルフのトレーナーとか格が無限に上がっていく…


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