二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1625064154809.png-(133074 B)
133074 B21/06/30(水)23:42:34No.818773476そうだねx5 00:43頃消えます
担当のウマ娘とはくれぐれも適切な距離感を保つように、とは耳にタコが出来るほど聞いた。
講師が次々と語るはウマ娘が掛かり気味になるケース、トレーナーが本気になるケース、或いはその両方。

だが僕がその圧倒的末脚に目を奪われながらも、小柄な体格故にその才能を開花させられていないナリタタイシンには、そんな距離感がどうの、という考えは余り必要なさそうだった。私生活ではクールな現代っ子で、僕のような冴えない男には恋愛感情の関心を向けたりはしないだろう。ましてや彼女の男性観を壊すだなんて、大それた事が起きるはずもない。それよりも、彼女にはたとえ鬱陶しがられても、指示の声を届けるトレーナーが一刻も早く必要だった。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/06/30(水)23:42:52No.818773566そうだねx4
だから僕は、熱血トレーナーを演じる事にした。うざったい程にしつこく、正しいアドバイスを届けられるように。彼女が、体を壊してしまう前に、あの才能を活かさなくちゃいけなかった。髪型も、学園に着ていく服も、全部換えて。無論、以前の僕を知る同僚には内緒にするよう口止めを依頼して。
そして彼女に俺のアドバイスは届き、ナリタタイシンは模擬レースで己のスタイルを学園に示すことができた。そうして俺たちの二人三脚が始まった…。
221/06/30(水)23:43:10No.818773672そうだねx4
「よお、タイシン。今日も制服似合ってるぞ!」
学園近くの繁華街。心なしか元気のないタイシンの背中を見て、思わず声を掛ける。彼女から離れていく見知らぬ女の子は…昔の同級生だろうか?
「やめて、街中でオヤジ臭い事言うの」
つれない返事を頂いてしまった。虫の居所が悪いのか。いや、俺としても年頃の少女に対してデリカシーを欠いた発言だったかも知れない。
「すまん、何だか落ち込んだ風だったから、ついな。気を悪くしたなら謝るよ──!?」いきなり手を握られた。ナリタタイシンに。
「許すから、このまま帰ること。いいでしょ」
「あ、ああ。気が済むんなら別に構わない」
遠くで舌打ちが聞こえた気がしたが、ナリタタイシンへのナンパ狙いの男だろうか。彼女を守れるなら第三者からの舌打ちなど、百でも二百でも甘受する。
「…見たかっての」
「…? 何かあったのか?」
「別に…何もなかったよ」それならいいんだが。
321/06/30(水)23:43:44No.818773896そうだねx11
ナリタタイシンのやる気が上がった。
独占力のヒントレベルが3上がった。
束縛のヒントレベルが3上がった。
421/06/30(水)23:44:01No.818774017そうだねx1
「セカイ系ポップスなんてどうだろう」
「何それ? サブカル的なヤツ?よくわかんないんだけど…でもプラネタリウムでそれ系のイベントやってた」
「のぞいてみる?」「まあ、のぞいてみてもいいけど」
ただ、俺には懸念点があった。
今の熱血トレーナーの格好は、ちょっとプラネタリウムには相応しくない。
「すまんが少し着替えてくる。プラネタリウムで落ち合おう」
「はぁ!? アンタが誘ったんでしょ!? いやまあ、いいけど…何着てくるわけ」
……
「悪いねタイシン、待たせてしまった」
「遅いよ…は? はぁ?!」
暑苦しい髪型を覆い隠すハンチング帽に、普段は掛けていないリムレスの眼鏡。明るいリネンジャケットの下には、鮮やかでいて上品なストライプのシャツ。軽やかなコットンストレッチのトラウザ〜ズに、スウェードのスニーカー。心なしか声色も穏やかで。
「プラネタリウムの雰囲気を壊したくなかったからね。学生時代の服を引っ張り出して来たんだが…似合わなかったら笑い話にでもしてくれればいい」
「笑わないよ…笑うもんか」
521/06/30(水)23:45:08No.818774432そうだねx13
サブカルクソ野郎みたいな見た目してんな…
621/06/30(水)23:45:34No.818774628そうだねx7
なんとなくムニャ平思い出してダメだった
721/06/30(水)23:46:57No.818775125そうだねx7
その後、プラネタリウムに来ていたタイシンの友人、ビワハヤヒデにも驚かれてしまった。
「衣服がパーソナリティーに与える影響について、トレーナーと再検討する必要があるな…」と独自理論の構築に余念がないようだった。

「ねえ、アンタ」
「なんだい、タイシン」
「その格好、アタシ以外の子の前で見せないで」
「…? うん…ああ。別に構わないが」

思春期の女の子は気難しい。
821/06/30(水)23:49:25No.818775993+
こいつ…自分から距離感をゆさぶって…
921/06/30(水)23:56:49No.818778404そうだねx1
熱血から穏やかになったのにいつもと変わらない距離で接してくるのはヤバい
1021/06/30(水)23:59:57No.818779459そうだねx1
タイシンちゃん落ちるの早くない?笑
1121/07/01(木)00:00:39No.818779763そうだねx2
私も堕ちちゃいそー(笑)
1221/07/01(木)00:03:02No.818780650そうだねx4
どこからでも沸いてくるなこのモブ
1321/07/01(木)00:05:20No.818781439+
来たなヒト娘
1421/07/01(木)00:06:31No.818781871そうだねx1
私が代わりに堕ちてあげよっか?笑
1521/07/01(木)00:11:36No.818783450そうだねx1
菊花賞の直前、タイシンが急に体調を崩した。呼吸器系の炎症は、菊花賞までに完治するものではないとの、医師からの通告。それでもタイシンは、菊花賞を走りたい、そう願った。頼み込んだ。懇願した。だったら、俺はタイシンの願いを聞き届けなくちゃいけない。でも、どうすればいい…?
「ねえ、アンタ…あのセカイ系ポップスとか…歌える?」
「あ、ああ…持ち歌にしてたような曲もある、他のアーティストのも」
「だったらさ…お出かけで、カラオケ連れてってよ。それで、アンタの歌…聞かせて。あのプラネタリウムの時の、似合わない格好でさ」
「わかった!タイシンのためならそれくらい何でもない!」

二人きりのカラオケボックス。酸素スプレーを持ち込んで、タイシンに吸わせながら。
1621/07/01(木)00:12:16No.818783668そうだねx1
♪僕の目 ひとつあげましょう だからあなたの目をください. まだ見たことのない花 新しい季節を探してた
♪嘆いて 嘆いて 僕らは今うねりの中を歩き回る 疲れを忘れて この地で この地で 終わらせる意味を探し求め また歩き始める
♪泳いで 泳いで 青い目とウロコで うろうろする僕はシーラカンス どこかへ走り出しそう さよならする深い夜から
♪ほら 朝が海や空を食べてく 今 君がそれに気がつく 表と裏 表と裏 隣り合ってた表と裏

「ふふ…アンタって、本当はサブカルおじさんだったんだ…」
「何言ってるんだ、俺は熱血で…」
「うん、そういう事にしとく。それと…体調の分は気合でカバーしてやる。アンタのソロコンサート、聞いちゃった、からね…」

タイシンは、不可能と思われた菊花賞を、一位で走り抜けた。
1721/07/01(木)00:15:38No.818784693そうだねx7
サカナクション好きな俺にダメージが入った
1821/07/01(木)00:16:44No.818785022そうだねx2
育成の時はセカイ系って何だよって思ったけどサカナクションが当てはまるなら俺もいける気がしてきた!
1921/07/01(木)00:18:51No.818785699そうだねx6
熱血は自分を熱血とは言わんのだ
2021/07/01(木)00:19:21No.818785859+
サブカルなんだ…サブカルなんだ…
2121/07/01(木)00:22:51No.818786996そうだねx2
クラシック三冠。それでも、彼女の呼吸器系が受けたダメージは軽いものではなく、年内は静養と調整に追われた。そして迎えたシニア級日経賞。タイシンの実績だけを考えれば一番人気を獲得するに十分なレースであるとしても、不調からの復活明けには不安が募る。俺は必死で彼女を励まし…そしてタイシンは、見事復活を遂げた。

俺は思わずターフに駆け出す。もつれた足は転び、地面に顔面が叩きつけられる。血の味、血の匂い、生温い感触。それがどうした。ナリタタイシン復活の瞬間を、僕は祝福しなければならない。もっとも近くでタイシンを見続け、応援し続けて来たトレーナーとして。

「タイシン、おめでとう!!」
「アタシ、これがいい。アタシは、レースで、勝ちたいんだ!!」
「うん、うん…!!」
「あとさ、鼻血、拭きなよ。ほら、熱血スーツが台無し」
そっと手渡されたティッシュを鼻に詰め、天皇賞春へのプランを語り合う僕たちだった。
2221/07/01(木)00:27:46No.818788659そうだねx4
😇
2321/07/01(木)00:28:38No.818788986+
可愛いなこいつら…
2421/07/01(木)00:29:08No.818789159そうだねx6
お互い自分に自信がないコンビになってませんか?
私は良いと思う
2521/07/01(木)00:33:35No.818790672+
😇
2621/07/01(木)00:36:46No.818791720+
そこからの激戦を、ナリタタイシンはクラシック三冠としての実績が伊達ではない事を証明し続けた。そしてURAファイナルズ優勝後、シニア一月の福引で引き当てた温泉旅行券を期限が切れる前に使いたいとタイシンから申し出を受けた。僕はトレーニング指導で溜まりに溜まった各種書類を徹夜で片付け、温泉旅行に向かう事になったのだが…正直、大分ふらふらする。温泉に入れば良くなると思ったのだが、湯当たりを起こし…

「いだだだだだ!やめっ、やめてタイシン!!」
「やめない。湯当たりに効くツボなんだし。それに…もう無理するのは金輪際やめて」
「えっ?…いだだだだだだっ!!」
「ほら、今のアンタ、それが素でしょ。熱血の皮を被って、アタシを引っ張るために」
「ちょっと待ってね、それいつから気付いてたんだい?」
タイシンの顔が悪戯っぽく微笑む。
「ソロコンサートの…と・き!」
ぐりぐりぐり。
「いだだだだだだだ!…うわー…恥ずかしい…恥ずかしさが積み上がって来たぁ…」
2721/07/01(木)00:37:48No.818792041そうだねx1
😇
2821/07/01(木)00:38:06No.818792136+
「別にいいでしょ」
彼女がするりと浴衣を脱ぐ。
「これからもっと恥ずかしい事、共有するんだから。…アンタ年上だけど、経験ある?」
「あの…ないです…」
「良かったぁ…初物、アタシが頂いちゃってゴメンね。アタシも初物だからおあいこにしといて?」
「ちょ、気持ちは正直嬉しいけど、早まらないで、あーっ!! ……♡♡」

年下のウマ娘に尻に敷かれるようにして、僕とタイシンは結ばれました。でも、正直、幸せです。

おしまい
2921/07/01(木)00:38:30No.818792264+
すごくいい…
3021/07/01(木)00:38:43No.818792339+
😇
3121/07/01(木)00:38:47No.818792368+
ウワーッ!差しきってゴール!!


1625064154809.png