1. 「インナー着る気とか、やっぱりないよな…?」 ってトレーナーが恐る恐る聞いてくるのが面白くてちょっと笑っちゃった。レース後にする話じゃないよねそれ。 「今でもニップレスつけてるんだよ。ほら」 本来ならボタンが付いているはずの前身頃をめくろうとしたら慌てて止められる。顔真っ赤にして可愛いなぁ。 「どうしちゃったの。私の勝負服なんて今更じゃない?」 「いや、そうなんだけどファンが色々言ってるの聞いちゃって…」 「色々って、例えば『パイズリ穴』とか?」 「ヒッ……!?」 悲鳴なんてあげられたら私が痴女みたいじゃないか。私より年上の男の人のはずなのに、こんなに初心でどうするんだろうね。 「言いたい人には言わせておけばいいんだよ。私はこれがかっこいいと思うし、人の視線を集めるのが気持ちいい。それが多少性的なものだったとしても全然平気だよ」 にっこり笑ったら、トレーナーはむっつり黙り込んでしまった。 「女の子が自分で選んだ服を外野がどうこう言うのはナンセンスだよ。言うべきことは『似合ってる』って一言だけ」 そんな、会話とも言えないような会話をしたことがあったのを、なんでだか今になって思い出した。 エッチな下着なんていくらだって持ってるし、他人に見せたことも沢山あるのになんでこんなにドキドキするんだろう。ていうか、部屋は薄暗く調整してあるし、こんなにぎゅって抱きしめられたらトレーナーからは見えてないし。でも多分、密着した肌からは彼にもこの落ち着きない心臓の音が伝わってるんだと思う。 「トレーナー……?」 「…………似合ってる。すごく似合ってる。で、俺しか見られないと思うとすごく嬉しい」 今までベッドの上で緊張した記憶はないのに。こんなのレースやライブよりずっと簡単な娯楽のひとつくらいに思ってたのに。胸がドキドキして張り裂けそうで、ちょっと泣きそうだ。 「はじめてじゃなくてごめんね」 あ、いま言わなくていいこと言った。多分私おかしくなってる。焦って言い訳を考えようとしたけど、キスで口をふさがれたらもうどうでも良くなってしまった。 2. 「パイズリって何?」 フジキセキの首を傾げる動作が思いのほか幼くて、言動以上にそのことに動揺した。 俺の愛バは母が女優なのだと言う。その華やかさに憧れて育ったからなのか、他人に見られることに抵抗がないし、清濁併せ呑む度量も持っている。そんな彼女は自分で選んだ衣装が世間でなんと言われているかくらい把握しているものだと思っていた。 「…マジで言ってる?」 「私が冗談言うことってある?」 「それは割とある」 悪戯好きが何か言ってるぞ、とは思うもののこの反応は本当に知らないやつなのだろう。マジかよ。お前の勝負服のせいで俺が裏でなんて呼ばれてると思ってるんだ。案外お嬢さんらしい世間知らずなところがあるのには気づいていたが、学園の王子様なのだ。艶っぽい方面には詳しいんじゃないかと勝手に思い込んでいた。 「ネットで検索…」 「してたら私の名前と一緒に出てるの見つけたんだよね。でも単語で検索したらフィルタリングに引っかかっちゃって」 スマホにフィルタリングかかってんのかよこの王子様! 想像以上の箱入りっぷりに戦きながら、ブラウザアプリを立ち上げたスマホをわたしてもう知らんふりを決め込むことにした。黙って見ていたら出てきたものを見て顔を赤くしたり青くしたり忙しない。 「……私、別にあんまりおっきいわけじゃないんだけど」 しかし最初に口から出るのがそれな辺り本当に肝据わってるよな。 「うーん、寄せたら挟めるものなのかな?」 「なんでちょっと協力的なんだよ」 ネクタイの裾をつまんで持ち上げ、もう片方の手で下から乳房をささえる。あまりにも目に毒だ。これで本人は手品のときに視線誘導しやすいからいいよねくらいに思ってるんだぜ? どんなアホが本人の目に見えるところでパイズリなんて言ったのか知らないが、そこに知らない男のものが擦り付けられるのなんて想像したくもない。サービス精神が暴走するきらいがあるから怖いんだ。 「本当に嫌なら削除依頼でもなんでもできると思うぞ」 「え、別にいいよ。どんな視点であれ見ててくれるのは嬉しいし」 ほら、そういうところ。 「教えた俺も悪かったけど、嫌になったら我慢しなくていいよ。大人に頼ってくれ」 未通女相手にこれ以上下世話な話をするのもはばかられて、賢い大人のようなことを言って会話を打ち切る。件の勝負服もそろそろ着替えないと身体が冷えるだろう。部屋を出ていこうとするのを「待って」と服の裾をつまんで引き止められた。 「……トレーナーも、私を見てそういうことしたいって思う?」 座ったままのフジを見下ろす体勢。整った眉が不安そうに下がるのをみていられなくて目を逸らせば、ぱっくり開いた胸元があるのだからこれは確かにタチが悪い。 「俺はもっとフェミニンな子が好み」 だから安心しろとは言ってやれないのだけど、無防備なフジがこれ以上可愛く見えたら困るので目を逸らした。 「そっか。私のポニーちゃんたちに変な気起こさないでね?」 「うるせ~」 なんでそれが言えて自分がどんな目で見られてるか分からないんだよ。 「うーん…脈ナシって感じだよねぇ」 トレーナーが出ていった扉を見つめて、ため息とともに口に出したら悲しくなった。 フェミニンな子ね。そんなわざわざ私と正反対のタイプ言わなくてもいいのに。だからモテないんだよって言ってやってもいいけど、あの人がモテたら私が困る。 「髪とか伸ばそうかな……」 髪を伸ばしてメイクを変えて、服装も変えてみたら、ちょっとは意識してくれるだろうか。それとも彼からはすごく子どもに見えてたりするのかな。だって、ずっと女子校だからエッチな話なんて知らなくても生きてこられたんだもん。知らないよそんなの。 着替えなきゃって思うのに体が動かなかった。 別に、誰にどんな目で見られても構わないし、その全部を釘付けにしたままレースで勝つのは気持ちいい。だけど、どうせエッチな目で見られるならあの人がいいなって思ってしまうのは、もしかしたらすごくはしたないことなのだろうか。 3. 「キスしていい?」 うんうん、ちゃんとお伺いを立てられるなんて私のトレーナーはとってもえらいね♡ ぢゅぅ♡って下品な音を立てて唾液を交換するのは大好きだ。キスだけなら男も女もウマ娘だってなんにも変わらない。だから、あれ?思ってたより上手かもって思った感覚は間違いじゃないと思う。 ベッドに寝かせる動作も妙に手馴れていた。いや、別にいいんだけど。トレーナーの歳で童貞って方が珍しいだろうし。ただ未だに私の勝負服やポニーちゃんたちへの言動に顔を真っ赤にしている初心な様子との整合が取れずに混乱したままシーツに沈められる。 「ん、ふー……ぢゅ…♡」 トレーナーの手が脇腹を通って胸にたどりついて、乳首をふに♡って摘む。 「ん、あ♡ ん………♡」 「乳首開発済みなんだ」 「え? ゃ、ちがぅっ♡」 本当に違う。だっていつも胸じゃあんまり感じないのに、乳首をぎゅって摘まれるたび腰が浮いて♡ 何これ♡ 私、今日ちょっと変かも…♡♡ 閉じた脚の間にトレーナーの膝が割って入って、ゆっくりこじ開けられる。どろどろに濡れたそこを見る目がギラギラしてて可愛い♡ 「あっ♡」 準備万端だからゆーっくり撫でられるだけで声が出ちゃう。彼がくすって笑ったのが分かってちょっとムッとした。 「脚、自分で開いてて」 トレーナーの顔が私の脚の間にうめられて、熱くてねっとり湿った舌が押し当てられる。 「とれーなぁ♡♡」 名前を呼んで、何を要求しようとしたのか自分でも分からない。やめて? もっと? 分からないけど、トレーナーの舌はれろっ♡れろっ♡って容赦なく私の弱いところを責め続ける。足の裏が熱くなって、自分がすっごく興奮してるのがわかる。 「クリ舐めてるだけなのに尻尾まで濡れてるじゃん」 「あっ♡ うん♡ きもちっ、ッ…♡」 「このままイく? いいよ」 思わず枕を握りしめて追い詰められる感覚に集中する。無意識に足の先でシーツを引っ掻いて、爪先が滑っていく。 「イく♡ きもちい♡ あっ♡ あ゛っ………♡♡♡!?」 イった瞬間に膣に指が侵入してきた。待って、ちょっと予想外。 「声、可愛こぶらないでいいよ。演技しないで」 「ん゛っっ♡ だ、めぇ♡♡♡ イ゛ってるのに…♡♡♡」 だって、そんな、イってる最中にGスポット責められたら頭おかしくなる♡ 「フジのナカ意外と狭いな。てか、浅い?」 意外って失礼だなぁ♡ 抗議する間もなく、まぁるく円を描くように私のナカを確かめた指がいちばん気持ちいいところを正確にロックオンしてぐっ♡ぐっ♡って押し込んでくる。 「っ、て♡ イッちゃう♡ またイ゛くっ♡♡ ん゛ぉっ♡♡♡♡」 ダメだ♡ 汚い声でちゃう♡ 無理♡ こんなの負けちゃうっ♡ 「と、トレーナー、交代しよう? 私がしてあげるよっ! ね?」 手でも口でも胸でもなんでも使っていいからって言ったのに、トレーナーは「楽しいからいいよ」って。本当に楽しそうな言い方が死刑宣告みたいに聞こえた。 「ン゛っ……………♡ ふ、ぁ゛…………ちゅ……♡」 だらんと口からはみ出した舌をフェラするみたいに舐めあげられる。いつもなら私がしてあげるやつなのに…♡ 「はー…っ♡ はー…っ♡」 ダメ。もうダメ。レースのあとよりライブのあとよりずっと疲れてる。何回イかされたのかよく覚えてないけど、トレーナーはまだ私に挿れてもいないのが恐ろしい。なんなの? そういう趣味なの? ていうかなんでこんなに手馴れてるの? 今までそんな様子見せなかったじゃないか。 なんに対してか分からないけど悔しくなって睨みつけたら、表面張力で張り付いてた涙がこぼれた。トレーナーが苦笑いしてそれを舐めとる。 「挿れたい」 「うん……♡ もう早くしてっ♡ 我慢できないっ♡♡♡」 ヘロヘロなのにお腹のなかがさみしくて仕方ない。お願い♡お願い♡って懇願しながら必死にすがりついてキスをする。脚を持ち上げられて、割れ目に熱いのがぴっとり♡あてがわれる。期待に疼くそこは簡単にトレーナーを受け入れてしまって、すっかり降りてきた子宮の入口が逃がすまいと先端に吸い付いた。 「あ゛♡ あ゛ーーーー………♡♡♡」 「挿れただけでイった? 前戯丁寧にすると違うだろ?」 あ、なにこれ♡ 知らない♡ 開発済みの子宮口をごりごり押されるだけ、で……♡ 「とれ、なぁ♡♡ とれーなーっ♡♡♡ おねがいっ♡♡♡ 出して♡ せーしちょうだいっ♡♡♡」 対面座位で腰を振りながらみっともなくお願いする私の下でトレーナーは愉快そうに私の胸を弄んでいる。乳輪の周りに噛み付いたり、おっぱいを持ち上げたところにキスマークを残したり、勝負服で隠れるギリギリのところに痕を残そうとするから気が気じゃない。たまにイタズラみたいに尻尾の付け根を叩かれて、まともに動けずへたりこみそうになる。 「いじわるしないでぇ♡ はやく♡ はやく出してっ♡」 「このまま出したら赤ちゃんできちゃうぞ? いいのか?」 「いいっ♡ いいからっ♡♡♡」 「ほんとにいいの? お前と遊んだことある奴らにも、ポニーちゃんたちにも、俺と生セックスしたのバレるんだぞ? 『フジキセキは王子様ぶってるくせに担当トレーナーに孕まされたんだ』って言われちゃうぞ?」 「~~~ッ゛♡♡ いいのっ♡ いままでエッチした中で1番きもちいからっ♡ 孕ませてっ♡ 赤ちゃんつくろっ♡♡♡ おねがいっ♡」 お願いするたびドキドキして、ちょっとイっちゃう。耐えられない。気持ちいい♡ 気持ちいいけど、はやく出してくれないとイきすぎておかしくなるっ♡♡♡ 「もう一生俺以外とセックスしないって約束する? エロ衣装に釣られたファン食ったり寮生に手出したりしない?」 「しな゛い゛っ♡ 約束するっ♡ だって♡ だってね♡ こんなに気持ちよくされたらもう他の人とできないよぉ♡♡」 「いい子。じゃあ、もう一回お願いしてみて」 「……ぉ゛っ、おねがいします♡ ナカに精子出して♡ 私にトレーナーの赤ちゃん生ませてくださいっ♡♡♡」 叫ぶような声は多分全然可愛くなかったと思うんだけど、トレーナーは満足そうに頷いてちょっと浮かし気味になっていた私の腰を思いっきり引き下ろした。 どぷっっっ♡♡♡♡♡♡ 熱いものが叩きつけられて、お腹の中がきゅぅっと縮んでいくような、電気が走るような甘い刺激が広がる。背中が反って倒れそうになるのを捕まえられて苦しいくらい抱きしめられるのすら気持ちがいい。脳を犯していく快楽に抗えず、多幸感に包まれながら目を閉じた。