二次元裏@ふたば

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42859 B21/06/24(木)23:27:11No.816665474そうだねx1 00:27頃消えます
「ぐうっ……」
強烈に痛む腹を押さえて、苦痛の呻き声を上げる。昨日合コンで行った焼肉が中ったのかもしれない。
「スカイに知られるわけには、いかないな……」
担当に内緒で合コン、そして焼肉。
終いにゃそれで体調を崩したとあっては、間違いなくスカイの機嫌を損ねてしまう。
しかしこんな調子では今日はスカイのトレーニングを見る事は難しそうだ。
申し訳ないが、今日のトレーニングは急遽休みに変更させてもらおう。

……と、スカイにスマホでメッセージを打っていた俺は、腹痛に気を取られて気付くことができなかった。
トレーナー室の前を通り過ぎた、人影に。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/06/24(木)23:27:41No.816665675+
見上げた空は見事な青空、こんな天気の日にカフェテラスで飲む紅茶は格別──の、筈なのに。
「私は……どうすればいいのよ……」
自慢のウマ耳をペタンと折りながら紅茶を口にするキングヘイロー。
通り掛かったトレーナー室のドアが、偶然半開きになっていなければ、さっきの事も知らずに済んだのに──そう零すも、悩まずにはいられない。
「スカイさんは……きっと、この事を知らない筈……」
スカイには知られるわけにはいかない──苦悶の表情でそう溢す彼の顔。
担当に心配を掛けたくないのか、或いはもう長くないのか。
「まさか……スカイさんのトレーナーさんが大病を患っているなんて……!」
セイウンスカイに知られたくない、その意思は尊重したい。だが、見捨てる事も出来ない。
生真面目さ故に悩むキングヘイローだが、彼女は抜けているところがあった。
「ええ! セイちゃんのトレーナーさん死んじゃうのーっ!?」
すぐ側にいたハルウララに、気が付かなかった事だ。
221/06/24(木)23:28:10No.816665888+
「ぶふっ!……ちょ、ウララさん、ちょっと!?」
思わず口より高貴なる霧を吹き出すキングヘイロー。偶然側を通りがかったデジタルの顔にアールグレイの霧が降り掛かり、高貴さと尊さに包まれたデジタルはその場に崩れ落ちた。
「セイちゃんのトレーナーさんどうなっちゃうの!?」
「あ、えっと、落ち着いて、ウララさん!」
泣きそうになりながらキングに縋り付くウララ。これは不味い、彼──スカイのトレーナーは恐らく自分の担当だけでなく周囲にも病気の事は隠している筈だ。
こんな場所で大声で叫んだら、その内容はあっという間に広がってしまう。
それに──
「ちょいちょいキング、ウララちゃん。ちょーっと聞き捨てならない事が聞こえたんだけどー?」
「あ……」
──よりによって、一番知られたくない相手に知られてしまった。
321/06/24(木)23:28:40No.816666104+
どうやら自分のトレーナーは大病を患っていて余命があと僅からしい。
そんなバカな、と笑い飛ばさなかった自分を褒めてやりたい、とセイウンスカイは思った。
「ま。キングの事だからまたしょーもない勘違いだと思うけどさー……お?」
トレーナー室へ向かうセイウンスカイのスマホに一件のメッセージ。
相手は件の人物。即座に内容を確認すると、どうやらトレーナーの体調が悪いため本日のトレーニングはお休みとのこと。
それはいい。釣りに行くか、お昼寝か。
この後の予定は決まっていないが、心の赴くままに好きな事をしようではないか。
「……あ、そういえばトレーナー実に忘れ物してたかもー……」
だから、そう。
それでもトレーナー室に足を運ぶのは、今口にした通り、忘れ物の確認をするため。
別にキングの言葉が気になっているとか、そう言うわけじゃない。
421/06/24(木)23:29:03No.816666248+
結論から話せば。自分がキングの言っていた事を妄言だと笑い飛ばさなかったのは、正解だったのだろう。

「ぐっ……ごほっ……く……」

鼻と口元にティッシュを当てて咳き込むトレーナー。
白い紙切れは赤く、彼の苦痛の色に染まっている。
空いた片手は腹を押さえて、その表情は苦悶の形に歪んでいた。
「うそ……」
嘘だ、これは何かの間違いだ。
自分のトレーナーが、トレーナーさんが、もうすぐ死んでしまうなんて。
嘘だよ、ねぇ、最近の出来の悪い映画だってそんなの無いよ。
「……あ……」
でも。
半開きになっているトレーナー室のドアをくぐる勇気が、自分には無くて。
声を掛けることも出来ずに、ただ足を引き摺るように逃げ出すことしか、できなかった。
521/06/24(木)23:29:56No.816666654+
──いやまったく、昨日はエラい目にあった。
腹は壊すし、うっかり足を滑らせて机に顔面強打するし。
お陰で朝から気分が悪い。未だ本調子とは言えないが、トレーニングに支障が出ない程度には回復したできたものの。
そしてトレーナー室に向かう途中、三女神像の前を通り掛かると、珍しい人物を見かけた。
「……あれ、スカイ?」
目を閉じて、三女神様に祈りを捧げるように両手を合わせている我が愛バ。トゥインクル・シリーズを共に駆け抜けてきた彼女だが、こんな姿は初めて見る。
声をかけると、彼女の耳がピクリと動き、目を開いてこちらを向いた。

──その頬には、涙の跡が残っていた。
621/06/24(木)23:30:09No.816666754+
その瞬間、腹痛や鼻血のことは頭から吹き飛んだ。
急いで駆け寄り、彼女の肩に触れる。
「スカイ! どうしたんだ!?」
何よりも大事な彼女が、泣いて三女神に縋る。見過ごせる筈もない。
こんな風になるまで彼女を追い詰めたのは、何が原因だ。
もし誰かが仕向けたことなら、俺は一生をかけてそいつに償いをさせてやる──
「トレーナーさん……」
──そう、硬く三女神に誓って、彼女に声をかけたのに。
「死なないでよ……!」
「へ?」
スカイの口から出た言葉は、何よりも予想外なものだった。
721/06/24(木)23:30:35No.816666947+
死ぬ? 誰が? 俺が? いつ? どこで?
混乱で頭が回らない。俺の胸に縋り付いて涙を流す彼女に、どう声を掛ければいいんだ?
「もう逃げたりしないから……! サボったりしないから……! だから、だからぁ……!」
「いや、ちょ、落ち着いて、スカイ、な?」
彼女の爪が胸に食い込んで痛い。
引き離そうとしても、激情に身を任せたウマ娘の力は強すぎる。
誰か、助けて──願いを込めて辺りを見渡すと、救いの手は存外に早く現れた。

「話は聞かせてもらいマシタ!」

中庭に響くはエルコンドルパサーの声。何事かとそちらを向けば、何と黄金世代のメンバーが勢揃いしているではないか。
「セイちゃん。トレーナーさん。理事長と生徒会長にも事情を話して病院を手配してもらいました。今すぐ行きましょう」
「キングちゃんが教えてくれたの!みんなでスカイちゃんを助けたいって!」
「ごめんなさい、スカイさん……でも、キングは見捨てたりなんかしないわ!」
821/06/24(木)23:30:57No.816667069+
「みんな……」
そして、明らかに感動している様子の我が愛バ。
え、キミこういう時は呆れてツッコミを入れる側じゃないの?
と、ヒートアップした周囲を落ち着かせる間もなく展開は進み──

「鼻と胃が少し荒れていますが命に別状はありませんね」
「良゛か゛っ゛た゛ね゛セ゛イ゛ち゛ゃ゛ん゛〜っ!」
「愛デース! セイちゃんの愛の力が、病魔をやっつけマシタ!」
「愛するものの為に死の淵より蘇る……ふふ、まさか小説のような展開がこの目で見られるとは」
「キングの目でも見抜けなかったわ……まさか、二人がそんな仲だなんて……」
どうやら知らぬ間に彼女達の間で俺は大病を患い、スカイへの愛の力で克服した事になっていたらしい。
いや確かに、彼女の事は好きだが──
「いやいや……愛ってそんな。なぁスカイ……スカイ?」
「えへへ……まあ、その……口に出すのは野暮じゃありません?……トレーナーさん」
「……マジで?」
921/06/24(木)23:31:18No.816667212+
黄金世代のメンバーにより、この事は瞬く間に学園に広まり──
「感動ッ! まさに絆の力!」
「比翼連理、か。トレーナーとウマ娘の絆が力になる事は今更言うまでもないが、愛の力で生命の摂理すら乗り越えるとはな」
「いやいや……愛って。教え子とトレーナーですよ」
「愚問ッ!前例はある!何ら問題はない!」
「ふふ……照れる事はないよ。私達生徒会も君たちを応援する立場にある」
「いやいや、理事長、生徒会長。ちょっと落ち着いてですね」
「祝福ッ! 学園として君達の挙式を祝おうッ!」
「……はい?」
1021/06/24(木)23:31:33No.816667330+
そして──

「それでは、誓いの口づけを」

ビューティ安心沢が手掛けたウェディングドレスに身を包み、牧師の前で永遠の愛を誓うセイウンスカイ。
いや、どうしてこうなった……?

「いやー。すっかり捕まってしまいました……トレーナーさん、セイちゃんの一生をよろしくお願いしますね」

学園中の生徒達が見守る中、スカイと口付けを交わす。
まあ、うん。ここまでくるともう仕方ないだろう。

事態がこんな風になるまで気が付かなかった俺は、きっと一生を掛けて償う必要があるんだろう。

そんな事を思いながら──俺は、何だかんだで開き直り、愛する彼女を抱きしめ、お姫様抱っこで抱き上げて、衆目の前で盛大にイチャつく事にしたのだった。
1121/06/24(木)23:32:16No.816667623そうだねx4
トレーナーさんに縋り付いて泣くセイちゃんとウェディングドレスに身を包むセイちゃんとアンジャッシュのセイちゃんが見たかったのでこうなりました
1221/06/24(木)23:32:46No.816667833そうだねx3
こういう話は大好きですよ
1321/06/24(木)23:33:05No.816667979そうだねx15
久々に見たがやはりアンジャッシュはいいな
1421/06/24(木)23:33:48No.816668244そうだねx8
ちゃんと墓まで持っていけよ
1521/06/24(木)23:34:11No.816668411そうだねx1
そうそうこういうのでいいんだよ
1621/06/24(木)23:34:45No.816668633+
ギングとウララとエルがナイスパスすぎる…
1721/06/24(木)23:36:16No.816669194+
いやぁ最高ですね
1821/06/24(木)23:37:25No.816669702+
展開が…展開が早い…!
1921/06/24(木)23:38:33No.816670177+
いいね…
2021/06/24(木)23:39:26No.816670634+
黄金世代がバカしかいない……
2121/06/24(木)23:40:29No.816671040+
満腹だよ…
2221/06/24(木)23:41:32No.816671458そうだねx1
>ギングとウララとエルがナイスパスすぎる…
キングがウンストレが大病を患ってると勘違いし
ウララが更にウンストレが死んじゃうと勘違いし
エルが元々何も無かったのを愛の力で治ったことにした
2321/06/24(木)23:43:24No.816672178そうだねx2
>>ギングとウララとエルがナイスパスすぎる…
>キングがウンストレが大病を患ってると勘違いし
>ウララが更にウンストレが死んじゃうと勘違いし
>エルが元々何も無かったのを愛の力で治ったことにした
これ黄金のフォーメーションすぎない?どんな位置からでもシュートに繋げてゴールできない?
2421/06/24(木)23:45:24No.816673025+
>これ黄金のフォーメーションすぎない?どんな位置からでもシュートに繋げてゴールできない?
いいでしょ?
黄金世代だよ?
2521/06/24(木)23:48:36No.816674323+
死にかけてたトレーナーさんが愛の力で復活!なんてことがあったらウマ娘はみんな騒ぐしセイちゃんだって素直にならざるを得ないですよ
2621/06/24(木)23:48:45No.816674376+
アンジャッシュ久々に見た
それはそれとして祈りを捧げるセイは絵になるな
2721/06/24(木)23:49:01No.816674468そうだねx3
何だか知らんがとにかくよし!
2821/06/24(木)23:58:21No.816678006+
アンジャッシュというか勘違いものはまたブームが来てほしい…
2921/06/24(木)23:59:08No.816678293+
第一発見者がセイちゃんだったら焼き肉がバレてセイちゃんにも焼き肉奢ることになって話が終わっていた筈なのに……
3021/06/25(金)00:00:07No.816678704+
黄金世代の微笑ましい日常が想起されるだけでほっこりした最高
3121/06/25(金)00:00:50No.816679034+
一生かけて償わないとな
3221/06/25(金)00:04:50No.816680619+
20年後くらいならたぶん笑って許してもらえる
3321/06/25(金)00:10:05No.816682669+
なんか通りすがりのデジタルが死んでるんだけど…
3421/06/25(金)00:13:07No.816683870そうだねx1
>なんか通りすがりのデジタルが死んでるんだけど…
そのうちリスポンするからほっとけ


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