二次元裏@ふたば

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213166 B21/06/21(月)21:43:27No.815666991そうだねx2 22:43頃消えます
サクラバクシンオーは宙を進むピンポン玉の軌道を見切っていた。ラケットを振り切り狙い通りに強打する。

卓上で僅かなバウンド音が響いた後、ボールは私の遥か後方で甲高い音を立て小刻みに跳ねていた。11点先取、彼女の勝利だ。

「バクシン的、勝利ッッ!! いい勝負でしたね!トレーナーさん!」
温泉宿の卓球場に大ボリュームの声を響かせ、浴衣姿のサクラバクシンオーは少女のように飛び跳ねる。後頭部で結った、長く美しい栗皮色の髪をなびかせ、はしゃいでいる。いや参ったと短く返事をして私はラケットを卓球台に置いた。


…私達は、以前彼女の湯治で訪れた温泉宿に来ている。

年明けの初戦、高松宮記念の勝利への労いと、彼女の誕生日が近かった事から何か贈り物でもできないかと考えたまでは良かったが、いい贈り物が浮かばなかった。

直接聞くが早いか、と彼女に直接希望を尋ねたところ、思いがけない出来事だったらしく彼女はとても喜んだ。私の表情を少しだけ確認した後、あの温泉宿にもう一度行きたい、と彼女は言った。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/06/21(月)21:44:08No.815667284+
立派な温泉宿だがところどころ古めかしく、どこかひなびた雰囲気がある。

そんな印象が残る宿のせいかは分からないが1週前でもすんなりと予約を確保する事ができた。

喜んだ彼女は、宿に到着するなり温泉街へと繰り出す。その後は宿周辺の散策。夜になり温泉と食事で休憩を挟んだ後は館内探検、続いて現在の卓球三昧へと至る。

気力が無尽蔵に溢れる若いウマ娘の彼女は全てが楽しくて仕方ない様子だったが、彼女のバクシンに付き添う私の体力は徐々に限界が近づいていた。

卓球がひと段落した後、そろそろ部屋へ引き上げたい旨を正直に伝えると彼女はすんなり同意してくれた。

「今日はとても楽しかったです!トレーナーさんはお疲れのご様子ですので、お礼に肩をお揉みしましょう!さあさあ!どうぞこちらへ!」

卓球場を引き上げ私の部屋前ヘと引き上げた時、彼女は自分の部屋へ戻らず突然マッサージを申し出た。そして、返事も待たずさっさと私の部屋の中へと入ってしまった。
221/06/21(月)21:44:38No.815667489+
…ドアの方をちらり。トレーナーさんも一呼吸遅れてお部屋に入ってきます。ふう、と一安心し、トレーナーさんを一人がけソファへご案内します。

「…ありがとう、疲れてるだろうから手短かで構わないよ」
「心配には及びません!私、全く疲れておりません!トレーナーさんとお話もしたかったものですから!」
トレーナーさんの着席を見届けるとササッとソファの裏に回り、トレーナーさんの大きな肩に私の細い親指を押し当てはじめます。

……ぐい…ぐい。

トレーナーさんとお話したいことはたくさんありました。旅館の素敵な佇まいのこと。二人で歩いた夕暮れの温泉街のこと。足を伸びに伸ばして入った温泉のこと。トレーナーさんと向かいあって一緒に頂いたお夕飯のこと。楽しかった卓球勝負のこと。今日1日、とても楽しかったこと。…あとは…私の気持ちについて。

……ぐい…ぐい。

私は、トレーナーさんが好きです。…本当に好きなんだと思います。トレーナーさんは……私のことをどう思ってらっしゃるのでしょうか。

……ぐい…ぐい。
321/06/21(月)21:45:15No.815667739+
『――バクちゃんのトレさんに…カノジョさん?……聞いたコト無いかな。ねぇねぇ、聞いたコトある?』
『えー、いないと思うよ。だっていつもバクちゃんにつきっきりだもん』

……ぐい…ぐい。

『たまに校舎でご挨拶して、軽く話したりする事あるけど…え?話の内容?ああ…バクちゃんが疲れてないか、とか。授業中眠そうにしてないか、って。ふふ。心配みたいだよ』
『あ、私も聞かれたー。あはは。あのトレさんらしいよね。パパか』

……ぐい…ぐい。

『私たち学生だもん、まぁコドモ扱いにもなるよ』
『でもさぁ。あのトレさん、グイグイ来られたら断り切れなさそうだよね』
『お似合いだと思うよ。バクちゃんと――』
421/06/21(月)21:45:47No.815667955+
「……それがどうやらあのお店の桜餅だったらしくて……あれ、聞いてる?」
「へぇッ?!あ、すいません…ちょっと考えゴトをしていました…」
トレーナーさんが何かを言っていたみたいです。ああ!失礼しました!クラスのお友達との会話を思い出していて聞けていませんでした。

「あぁ、いいんだ。さすがにもう眠くなるよな。肩も軽くなった。ありがとう、今日はこれでお開きにしよう」
トレーナーさんがソファから立ち上がり、私の方を振り返りました。

まだ、言えていないんです。
まだ、話せていないんです。トレーナーさん。
私は、意を決しました。

「あのッ!トレーナーさん!」
521/06/21(月)21:46:57No.815668440そうだねx2
「私、トレーナーさんが好きです!ずっと、ずっと一緒に居たいんです!いつか、私が学園を去る日が来ても…その後もずっと!」
不思議でした。すらすらと言葉が出てくるのです。

「私を、この先も導いて頂きたいのです。トレーナーさんは…どうでしょうか!私の事…どう思われていますか!」
伝えられる限りの言葉と想いを。トレーナーさんを見上げて私は言いました。

「…好きだ。…前に見た手紙で、今言ってくれた事だってある程度解ってたつもりだよ」
びくんと、心臓が、シッポが、跳ね上がりそうになります。心臓を突然握りしめられたような鈍い、苦しい感覚がありました。

「…でも、サクラバクシンオーのトレセンでの活躍を、今の関係のまま、見届けたいんだ」
……ハイ。……つまり、ツマリ?…むむ??

「ええと…それはつまり…どういうことでしょうか?」
「え……つまり?つまり……アスリートとしてのサクラバクシンオーも、一人のウマ娘としてのサクラバクシンオーも、どちらも大事にしたいと言うか…」
…なるほど!そういうことですねトレーナーさん!私は全て分かりましたよ!
621/06/21(月)21:47:34No.815668700+
バクシンバクシン
721/06/21(月)21:47:56No.815668857そうだねx3
「つまり、トレーナーさんは将来私の旦那サマになってくださると!しかし、それはまだ先の事!私が模範的な学級委員長であり続けるため在学中は最大限配慮をしつつ、いつか訪れる二人の門出の日を丁寧に、丁寧にお考え頂いているということですね!素晴らしい、なんと模範的ッ!さすがは、さすがはトレーナーさんです!」
「待ってくれ……待ってくれ!」
「ちょわわ!?まさか、違いましたか!?」
「そこまで前のめりな言い方してたかな!?」
「まあ同じようなものです!そしてご安心ください!父上も、母上も、トレーナーさんほど立派な方であれば必ずや喜んでくださいます!なに、心配はご無用ですよ!」

バクシン!バクシーン!

私は嬉しさを抑えきれず、お部屋の中を小走りでくるくる駆け回ります。パカラ!パカラ!

数周ほど部屋の中を走り回った後、口を開け私を見つめているトレーナーさんが目に入ります。私は笑顔でトレーナーさんの胸に飛びつき、ぎゅうっと力強くハグします。

「トレーナーさん!私達の明るい未来に向かって!バクシンしていきましょうね!オー!」
「…………おぉ…!」
821/06/21(月)21:49:08No.815669363+
…オヤ。窓の外が明るいような気がします。ひょいと窓の外を見てみると、大きな、大きな満月が光り輝いていました。なんと!今の今まで、まったく気づきませんでした。

トレーナーさん、満月ですよ!

…そうだな。

二人で外の満月に見入ります。

トレーナーさん、今日はとても楽しいことがあったのです。お話しても、いいでしょうか。

トレーナーさんの方を見て言うと、トレーナーさんは聞くよと優しく言ってくれました。

私は、ありがとうございますと笑顔でお返事をします。

そして、ゆっくりと、ゆっくりと記憶を辿っていきました。
921/06/21(月)21:50:21No.815669893そうだねx5
オワリ
バクシンする委員長が書きたかったので書きました

一応続きものですがネタ尽きたので最後だとおもいます
fu101388.txt
1021/06/21(月)21:50:49No.815670108そうだねx1
なんだいなんだい
今日は随分としっとりバクシンの怪文書が多いようだが…
1121/06/21(月)21:51:35No.815670427そうだねx3
これは健全なバクシン
1221/06/21(月)21:53:23No.815671169+
光のバクトレありがたい…
1321/06/21(月)21:54:31No.815671660+
急に乙名史記者がインストールされたと思ったが健全にバクシンしててよかった
1421/06/21(月)21:55:05No.815671895+
正統派かつバクシン的大勝利ですね!
1521/06/21(月)21:55:20No.815672006+
これは嘘つきじゃないバクトレ
1621/06/21(月)21:57:16No.815672836そうだねx9
正直マッサージの段階で逆桜餅にされると思ってたからしっとり健全バクシンパンチがじんわり効いた
1721/06/21(月)21:57:16No.815672837そうだねx6
温泉宿って出てきたところで「はいはいメジロメジロ」と思った俺は心が汚れちマックイーンになっちまったんだ
1821/06/21(月)21:58:13No.815673242そうだねx7
>パカラ!パカラ!
委員長のこれだいすき
1921/06/21(月)22:00:51No.815674364+
委員長温泉から帰ったらクラスメイトとかご両親にトレーナーさんからプロポーズされました!とか言っちゃいそう
2021/06/21(月)22:03:09No.815675302+
トレーナーさん!私達の明るい未来に向かって!バクシンしていきましょうね!オー!
トレーナーさん、満月ですよ!
月が綺麗ですね
2121/06/21(月)22:06:00No.815676566+
……そうだな!
2221/06/21(月)22:10:00No.815678303+
元から逃げ切れるわけがなかったのです
2321/06/21(月)22:10:50No.815678632+
最近はバクシン的怪文書が多くて助かる…
2421/06/21(月)22:11:19No.815678824+
旅館に始まり旅館で終わって健康力が高まってきた
2521/06/21(月)22:13:59No.815679987そうだねx5
俺が一番好きなバクちゃんとバクトレだ
2621/06/21(月)22:15:49No.815680808+
委員長が旦那さまって言うとなんかとても魅惑的な響きがあるな…
2721/06/21(月)22:17:22No.815681484+
ちょっと早急だけどまあ展開は間違ってないよね
2821/06/21(月)22:19:48No.815682507+
委員長マインドと驀進力のおかげでしっとりしてもめんどくさくならないのがバクちゃんのいいところ
2921/06/21(月)22:19:59No.815682580+
>光のバクトレありがたい…
闇のバクトレとかあるのか…
3021/06/21(月)22:22:44No.815683816+
バクシンオーの怪文書は世界を光に導くからもっと増えろ
3121/06/21(月)22:23:33No.815684151そうだねx5
この本編のバクちゃんから少しだけ大人になった姿、っていう塩梅が絶妙なのよ
毎回ありがとう
3221/06/21(月)22:26:23No.815685288そうだねx1
>私は嬉しさを抑えきれず、お部屋の中を小走りでくるくる駆け回ります。パカラ!パカラ!
>数周ほど部屋の中を走り回った後、口を開け私を見つめているトレーナーさんが目に入ります。私は笑顔でトレーナーさんの胸に飛びつき、ぎゅうっと力強くハグします。
この情景ほんと目に浮かんでいい…
3321/06/21(月)22:26:40No.815685406+
助かる
助かる
助かりすぎる
3421/06/21(月)22:27:26No.815685691+
>闇のバクトレとかあるのか…
ヒトに正体を明かせない驀進の神!バクシン・シーン!
3521/06/21(月)22:28:45No.815686215+
あちょっと健康になる
3621/06/21(月)22:30:39No.815686962+
txt開いたらだいぶ前から続いてるやつだこれ
これからもバクシン的スレ立てを続けて欲しい
3721/06/21(月)22:32:17No.815687597+
>>闇のバクトレとかあるのか…
>ヒトに正体を明かせない驀進の神!バクシン・シーン!
あいつこそ光の神枠じゃねえか!
3821/06/21(月)22:33:04No.815687910+
>>パカラ!パカラ!
>委員長のこれだいすき
冷静に考えると二本足だと絶対に出ない擬音なのがヒエッて一瞬思うやつ
3921/06/21(月)22:33:41No.815688160+
一瞬逃げられかけたけどバクシンの驚異の脚力で一気に距離を詰めて逃がさなかった
4021/06/21(月)22:35:40No.815688936+
バクシンシーンは光のなかの光だよ!
バクトレ二人だけじゃなくバクシンファンもみんな幸せだ
ちょっと委員長がしっとりしてるのを隠してるくらいだよ
4121/06/21(月)22:37:28No.815689683そうだねx2
光に包まれたから今日は気持ちよく寝れる…


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