交尾の終わりと同時に、時が動きだしたかのように全身の汗腺が開く。呼吸の感覚を思い出し、脱力に苦しむ体を起こす。 完全に力を失った陰茎を引き抜くと、ずるりと音がして口を開けた秘部から残り汁が鈴口から糸を引いた。 時刻はいつの間にやら夜明け前を指している。だるい体を無理に動かして、漏れ出た諸々の汁を拭き取る作業を始めた。 それからは週末定休日は、料理の勉強と称して彼女が家に泊まるようになった。 コロッケ、ハンバーグ、つみれ汁、日を追うごとに彼女の肉の扱いは上手くなった。 手淫、尺八、手つなぎ騎乗位、同様に肉棒の扱いにも長けていった。 しばらくしてもトレーナーにコロッケを振る舞うのがせいぜいな彼女を見てはほの暗い独占欲を満たしていた。 ある日の事後、精と蜜にまみれた竿を唾液で綺麗にさせているときにふと、 「そういえば、彼氏とはどうなんだ」 と聞いてみてしまった。 けれども彼女は困ったような顔をして、 「まだまだ……かな」 と返すのみだった。 その真意を問う気は起きなかった。 避妊具を付けて行うときもあれば我欲のまま種付けするときもあった。 そうなれば当然デキるものもデキるわけで、そうした事態になって関係に亀裂が入りかけたこともあった、 しかし今更この極上の蜜月を手放すつもりは無い。その時はなんとか言いくるめて古なじみの下で処理することに相なった。 しかしそれでも彼女が泊まり込みをやめる気配も、避妊具の有無にとやかく言うことも無かった。 それだけこの関係が深いものであることを暗に示していた。 やがて泊まり込みでの仕込みを花嫁修業と勘違いしたらしき情報が広まり、毎週彼女と逢瀬とはいかなくなった。 魚屋、八百屋、衣装店にも泊まることがあるらしい。 その中には当然というか独り身の男もいるわけで、さては自分以外の一物を加えこんでるのでは、と邪推するときもあった。 しかし、咎めようにも自分が発端で、なにより顔なじみと穴兄弟かもしれない事実を確認することに気が引けたのだ。 "花嫁修業"の頻度こそ減ったが、その分情事に当たってはより濃厚なものをぶちまけることで口をつぐんだ。 「ふう……じゃ」 靴のかかとを合わせ、汚れた服を詰めた鞄を持った彼女を玄関まで見送るのがいつもの習慣だった。 初夜に比べると肉も、竿の扱いも卓越的に上達していた。夜に至っては主導権を握られることもしばしばだ。 そうなるとふと思うことがある。いったいこの関係はいつまで続くのだろう。 がらりと引き戸を引き彼女の姿が朝日に眩む。別れの時、彼女が「また来週」と言ったことは一度も無かった。 また来週体を重ねるかもしれないし、来週は他の店に行くのかもしれない。 気が変わって警察の世話になるのも仕方なし。 振ん切りをつけてトレーナーと結ばれ、この関係が闇に葬られるでも良し。 何事もなく蜜事が続くならそれは万々歳だ。 来週は秘伝の唐揚げレシピでも教えてやるか。そんなことを考えながら帰路へと付く彼女を手を振って見送った。 朝焼けはすがすがしいほど眩しかった。