二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1623596580561.jpg-(16469 B)
16469 B21/06/14(月)00:03:00No.813005952そうだねx4 01:06頃消えます
風光明媚と一言で言えばそこで終わりだが、五感に働きかけてくる現地ならではの空気、匂い、音は、多忙な日常から心を一時切り離してくれる。
この温泉旅館へ来るのは2度目だ。シニア級の年初、商店街の福引で引き当てたのを、験が良いと揃って喜んだものである。
門扉をくぐり、丁寧で暖かい歓待を受ける。流石にシンボリルドルフの顔は売れているが、相手もプロだ、実に楚々としたもてなしをしてくれた。
「流石に懐かしいな」
通された部屋は以前のものとは厳密には違うが、それでも思い出されるのはURAを制覇したあの頃。
荷物を傍らへ置きながら座椅子に腰を下ろし、よく手入れの行き届いた室内に大きく息を吐いた。
「そんなに昔でもあるまいに、老け込むぞ」
苦笑いで俺を振り返りながら、ルドルフもカーディガンをハンガーへかけ、窓のそばへ立つった
腰高の大きな窓からは、豊かな渓流を眺めることが出来る。耳を澄ませなくとも、彼女ならその水音をより楽しめるのだろう。
「うん、いい眺めだね」
「景色を楽しめるのも歳の為せる技だと思うが」
「君と共に重ねた齢じゃないか」
彼女の方が上手なのは今に始まった事ではなかった。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/06/14(月)00:03:10No.813006009そうだねx3
名湯は体から疲労を絞り出すような心地よさで、俺が出たのはいくらか長風呂を楽しむルドルフとほぼ同時だった。
土産物屋を冷やかし、展示の絵画などを見ながら、ゆっくりと部屋へ戻り再び一息。
程なくして運ばれてきた食事は、彩りも香りも、以前より更に磨きがかかったように感じる。
「さ、今日くらいは」
言って、ルドルフが浴衣の袖を抑えながら徳利を差し向けてきた。
基本的に、道義上問題が無いとしても俺は彼女の前で飲酒をしない。小さなこだわりでしかないのだろうが、特に苦しむでもなくそうしようと決めている。
酒が嫌いというわけではない。むしろ平均より好きだ。ルドルフも、それは知っている。
だから、頼んだ覚えのない酒があるということは、彼女の気遣いなのだろう。
「有り難く」
「いつかは、こうして差し向かいで飲みたいものだな」
「俺の楽しみの1つだよ」
「私の両親のようなことを言う」
クスリと笑う、皇帝の酌である。美味いに決まっていた。
食事の間も、会話は弾んだ。今更気を張る間柄でもなく、故に非日常がもたらす微かな高揚感が、お互いを饒舌にした。
221/06/14(月)00:03:23No.813006075そうだねx4
大きな窓の外は、月明かりがぼんやりと山陰を象る程度で、逆にそれが山深い自然の実りを想像させた。
食後、窓辺のソファに並んで腰をかけ、俺は酒の続きを、ルドルフは緑茶を楽しんでいた。
「うん。やはり、懐かしい」
「そうだろ」
「あの日も、こうして並んで外を眺めたね。散歩の後、離れがたくて」
初めてルドルフとここへ訪れた時、まだ今のような関係ではなかった。お互い憎からず想っていたのは今なら解るが、当時はどこか危うい均衡が残っていたように思う。
「色々と語り合った。これからの事、これまでの事。話題を探して、君の子供の頃の話も聞いたかな?」
「間が持たなかったんだ。ルドルフと2人きりで旅館だぞ」
「私からは随分余裕があるように見えたよ、流石に大人の男だ、と見直したものだ」
「嘘つけ」
「ま、その後がこれではね」
言って、ルドルフが意味深に微笑みながら顔を寄せてくる。苦笑いをして、俺は彼女の額にコツンと頭をぶつけた。同時に、大笑い。
雰囲気を作り、求め合うようにキスの間合いが出来たのに、あの時俺は緊張でルドルフに頭突きをしたのだった。
321/06/14(月)00:03:38No.813006156そうだねx5
「黒歴史だ」
「私には優しい思い出だ。好きな男と泊りがけとはいえ、今思えば緊張も迷いもあった」
「結果的には、あの時の勢いでルドルフを欲しがらなくて良かったと思ってるよ」
「今はどうかな?」
きっと無意識であろう、長く美しい髪を首の後に払いながら、今度は挑戦するような目をルドルフは向けてきた。
何も言わず、肩に触れ、頬へ運び、軽く引き寄せるよう力を込めた。抗わずに、彼女の美しい唇が近づいてくる。
舌先だけで触れ合って、どちらからともなく離れた。まだ口に酒が残っている。
「あの時の忘れ物だな」
「気にしてたのか?」
「前日、下着選びに1時間以上かけたくらいにはね」
いたずらっぽく笑って、ルドルフは居室へ戻った。浴衣に羽織っていた半纏を座椅子に引っ掛け、既に延べてある床に腰を下ろし、こちらを見る。
「まだ忘れ物があるだろう?」
「ある」
それでも、見栄を張って少し見つめ合って、結局すぐに彼女と同じ布団へ飛び込んだ。
夜具の中の月は、改めて美しかった。
421/06/14(月)00:04:05No.813006296そうだねx10
会長と改めてゆっくり温泉に行きたいだけの人生だった
521/06/14(月)00:07:14No.813007248+
皇帝の威厳を保ちつつも独占力も年相応さもあって素晴らしいです
621/06/14(月)00:09:10No.813007810+
>「あの時の忘れ物だな」
>「気にしてたのか?」
>「前日、下着選びに1時間以上かけたくらいにはね」
かわいい
かわいい
721/06/14(月)00:10:08No.813008084そうだねx5
正しい意味でアダルティな二人だ
とても素敵だ
821/06/14(月)00:10:21No.813008157+
久々に見たぜ皇帝
気心知れたやりとりいいよね…
921/06/14(月)00:11:30No.813008481+
大人な二人のいちゃいちゃは健康に良い…
1021/06/14(月)00:13:59No.813009293そうだねx7
最近タヌキも増えて忘れかけてたが
やっぱ会長いいな…
1121/06/14(月)00:18:52No.813010889+
久々にかっこいい皇帝を見れて満足
1221/06/14(月)00:18:54No.813010908+
夜具の中のルナか…えろ…
1321/06/14(月)00:22:11No.813012044+
会長のお酌で飲む酒は美味いか?
美味いだろうな…
1421/06/14(月)00:26:42No.813013645+
久々にいいものを読ませてもらった
1521/06/14(月)00:35:38No.813016604+
相変わらず洋画みたいな生活しやがって
オシャレだ
1621/06/14(月)00:35:40No.813016617そうだねx4
正直このシリーズが一番好き
1721/06/14(月)00:37:04No.813017067+
優劣つける気は無いが読後感が一番好きなのはこれ
困るとしたら良い話にまとまってて俺の妄想が入る余地が無いことくらいだ
1821/06/14(月)00:38:13No.813017462+
良い空気だ...
素晴らしい...
1921/06/14(月)00:38:50No.813017674+
皇帝のオトナなやりとりほんと好き...
また読めてよかった
2021/06/14(月)00:40:05No.813018130+
これシリーズだったんか
前の話も見たいな
2121/06/14(月)00:42:27No.813018948そうだねx1
これと疲れた女帝あとスポ根テイオーが好きだな
よその話をするのは行儀が良くないが許してくれるねグッドエンペラー
2221/06/14(月)00:46:08No.813020068そうだねx4
スレ「」ですが疲れた女帝とスポ根テイオーいいよね…
ここ暫くコロナ陽性で隔離されてたから皆の怪文書あさって楽しんでるよ…
あとまとめたから会長いいよねしていってね
sa79567.txt
2321/06/14(月)00:46:58No.813020339+
まとめありがたい
これで明日からも頑張れる
2421/06/14(月)00:48:40No.813020866そうだねx3
>ここ暫くコロナ陽性で隔離されてたから皆の怪文書あさって楽しんでるよ…
おおお
いいい
しばらく見てないなと思ったらやばいことになってたわあいつ
後まとめありがとう…
2521/06/14(月)00:49:42No.813021209そうだねx2
>ここ暫くコロナ陽性で隔離されてたから皆の怪文書あさって楽しんでるよ…
オオオ
イイイ
お大事に
2621/06/14(月)00:51:00No.813021593+
書き込みをした人によって削除されました
2721/06/14(月)00:51:29No.813021734+
>ここ暫くコロナ陽性で隔離されてたから皆の怪文書あさって楽しんでるよ…
なんと...
お大事になさってくださいね
2821/06/14(月)00:51:55No.813021854+
疲れた女帝は最近見てないな…作者病院関係職だったっけか?
それはそれとして
>ここ暫くコロナ陽性で隔離されてたから皆の怪文書あさって楽しんでるよ…
お大事に…
2921/06/14(月)00:52:43No.813022112+
>疲れた女帝は最近見てないな…作者病院関係職だったっけか?
あの人そんなんだったのか…
3021/06/14(月)00:57:04No.813023318+
うろ覚えだけどね…ログが残ってるかもしれない
3121/06/14(月)01:00:56No.813024352+
一番すきなシリーズ


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