二次元裏@ふたば

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199050 B21/06/06(日)23:46:03No.810601782そうだねx2 00:46頃消えます
雲一つない抜けるような青空の下、陽射しを浴びて芝がきらめくように萌える良バ場。
絶好のレース日和であることは、レース場に訪れた誰もが確信していた。
強いて挙げるとすれば、気温はやや低めで空気がひんやりとしていることか。
吸い込むと心地よく胸を撫でるその冷気は、これから始まる大レースの予兆にも繋がっていた。

「コンディションに問題はない?」
空調が効いているはずの選手控室にもその空気感が漂っているように感じ、トレーナーは声をかける。
「全然!本日もワガハイは絶好調であーる!」
トウカイテイオーはそんな彼の懸念を吹き飛ばしてみせるように、大きく胸を反らして答えた。
「大丈夫だよ。昨日はトレーナーからもたくさん元気をもらったしね。……ベッドであんなにいっぱい」
そう言って自分の下腹部をゆっくりと、愛おしげに撫でる。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/06/06(日)23:46:19No.810601889そうだねx2
「バ、バカ」
その仕草に頬を染め顔を逸らすトレーナーを見て、テイオーはイタズラっぽく笑う。
──が、それもすぐに真面目な微笑に移り変わった。
「観客席、見た?まだ始まってもいないのにすごい熱気だったよね」
「それだけテイオーにみんな注目してるんだ。観客だけじゃなくて──」
「うん。きっと今日出場する競争相手の子達も」
三冠を達成し、あの皇帝シンボリルドルフをも退け、『帝王』となったテイオー。
そんな彼女が今年初めて出場するG1レースは、実質的に帝王の座の初防衛マッチとして世間に認知されていた。
「みんなボクをマークしてる。そして勝つためのトレーニングだって積んできてるはず……油断なんてできない」
自分に言い聞かせるように口にすると、テイオーは小さく長く息を吐いて整える。
「……カイチョーが前に言ってたこと、ようやく分かったや。掴んだ栄光を守る戦いって、何倍もキビシーね」
元々個人同士が着順を争う競技とはいえ、集中的に狙われる状況はまさに孤軍奮闘。
名誉の称号を得た者が同時に手にすることになる宿命といえるだろう。
しかし、テイオーはそれをしっかり自覚したうえで言い切った。
221/06/06(日)23:46:32No.810601975そうだねx2
「でも負けないよ。始まったばかりのテイオー伝説を終わらせるもんか!」
「よし、その意気だ!」
トレーナーも呼応するように力強く頷いてみせる。
──と。テイオーの顔からフッと勝負に挑む者の険が取れ、普段の無邪気な少女の素顔が現れた。
「トレーナー」
少し甘えるように呼ぶと、テイオーはトレーナーを見つめる。
トレーナーは心得たようにまた頷き、小さな恋人を優しく、力強く抱きしめた。
そして二人の唇がしっかりと重なり合う。
「……ふ、ちゅっ……。ちゅく、ん、ふ……んん……」
小鳥の囀りのような音で互いの唇を吸うキス。一旦離すも別れを惜しむようにまた重ね合うのを二度も三度もくり返す。
最後にじっくり押し付け合うと、二人はようやく長いキスを終えた。
「俺が見守る。最後まで絶対に目を離さない」
「──うん!行ってくる!!」
再び張りの戻ったテイオー。その瞳は静かに燃えていた。
321/06/06(日)23:46:46No.810602050そうだねx2
「テイオーさん」
ゲートへと向かう道すがら、その姿を認めたメジロマックイーンは歩を向け声をかけた。
「今のあなたに挑めること、光栄に思います。──必ずや討ち取らせて頂きますわ」
レース前のけん制や心理的駆け引きなど、そんなことは考えてはいない。
ただ王者に挑む者の礼儀として、自らの覚悟を伝える。
「ふふん……そう?──でも絶対に譲らないから」
「……!?」
(なんですの……?)
軽く流してきたテイオーに、マックイーンは微かな動揺を覚えた。
いつもの奔放さからの返しとも、増長からの驕りとも違う。
帝王としての誇りからくる器の大きさ──にも思えたが、それも違う気がした。
名誉と誇りを胸にした風格は、メジロの名を背負う一族として幼少の頃から常に感じ取ってきた。
もちろん全く同じわけではないだろうが、類するものなら伝わる感覚で分かる。
だからこそ、今テイオーが漂わせるものが自分の知るそれと異なることに戸惑いを隠せない。
421/06/06(日)23:47:02No.810602150そうだねx2
(それに──……)
テイオーから緊張感がまるで伝わってこないことも、マックイーンを困惑させた。
ガチガチに固まることはなくとも、G1の大舞台にそれに相応しい大群衆からの声援の中なのだ。
出場常連者であろうとも、雰囲気に中てられ身を引き締めるのが当たり前。
なのに彼女は──まるで自室にいるかのような落ち着きと緩やかさではないか。
これも、レースを軽んじての態度ではない。瞳に灯る光を見れば勝負に向ける意気込みははっきりと分かる。
なのに。どうしてこうも余裕に満ち、平常心でいられるのか。
エアグルーヴやグラスワンダーの持つ冷たく研ぎ澄まされた平常心とは真逆の、温もりさえ感じられる。
(──いけませんわ)
マックイーンは首を振る。
テイオーの自信の源が何かは気になるが、突き止めることが重要なのではない。
彼女のメンタルは今、間違いなく最高の状態。勝負するうえで大切なのはその事実の方だ。
レースに集中しないと。頭に残る疑問をなんとか抑え込み、マックイーンは自分のゲートに入った。
521/06/06(日)23:47:19No.810602273そうだねx2
しかしいざレースが始まると、マックイーンの頭の中は再度それ一色なってしまった。
(何故……どうして、こんな──!?)
真横を走るテイオーをチラチラと、必要以上の回数確かめてしまう。
……レースは序盤から大荒れだった。大方の予想より遥かに早く、何人もが帝王をその座から引きずり下ろそうと仕掛けてきたのだ。
大袈裟に逃げの姿勢を見せつけてくる者。囁きかけてくる者。
本来の自分の走りを捨てて張り付きプレッシャーを与えてくる者。
しかしその全てを、テイオーは軽やかにいなし振り払った。
無視を決め込むわけでもなく、まるで岩で流れを変える水のごとき自然さで。
後半に差し掛かった今テイオーに付いていけてるのは、変に仕掛けず地力で拮抗する自分とやや後ろに張り付いたナイスネイチャだけである。
(どうしてあれだけ仕掛けられて、全くペースが乱れませんの──!?)
これでは自分はいつ勝負に出ればいいのか。
攻めあぐねているところにネイチャが差してきた。
621/06/06(日)23:47:36No.810602387そうだねx2
二人を追い抜き前に出るネイチャ。
──その背中がスライドし、壁になった。
「…………ッッ!!!」
ほんの一瞬の動揺。反射的な加速の抑制。それが致命的なミスへと繋がる。
フフッ、とテイオーが小さく笑い声をこぼしたのが聞こえた気がした。
次の瞬間にはテイオーは風のような滑らかな軌道で外側に移動し、そこから加速する。
「あっ!……く……っ」
急いで後を追おうとするも、既に勝敗は決していた。
テイオーステップ。帝王を帝王たらしめる走法が炸裂し、マックイーンを置き去りにするどころかネイチャをも差し返した。
(これではまるで……)
レース場ではなく、彼女の庭。自分らは競争相手ではなく帝王が招いたゲストも同然ではないか。
無力感に浸る暇もなくテイオーはそのままゴール。二着にネイチャ、マックイーンは三着という結果に終わった。
721/06/06(日)23:47:49No.810602472そうだねx3
「負けましたわ……」
控室に向かう通路で、マックイーンは揚々と歩くテイオーに近付けないでいた。
単にレースの結果だけでなく、考えの及ばない何かに負けたことが本人に直接尋ねることを躊躇させていたのだ。
「いや〜まいったまいった……」
そこにネイチャがやってきて並ぶ。
「お疲れ〜マックイーン」
「お疲れ様ですネイチャさん。二着入賞、感服しましたわ」
「あはは……どうにかジンクス回避はできたかな」
でも、とネイチャもテイオーに視線を向ける。
「やっぱりテイオーは強いよね」
「……ええ」
「ただでさえ速いのに、あんな物腰まで身に付けちゃってさ。あっち方面までリードされちゃ敵わんわ〜」
「──え」
821/06/06(日)23:48:04No.810602577そうだねx3
マックイーンは目を丸くし、ネイチャの方へ向き直った。
「ネイチャさん、テイオーのあの余裕がどこからくるのか……ご存知ですの!?」
「へっ……?そりゃ見れば……もしかしてマックイーン、気付いてない?」
「気付いてません!なので教えてくださいまし!!」
詰め寄るほどの勢いでマックイーンは訴える。
「私にも身に付けられるものであれば、是非とも会得したいのです!」
「や、会得……っていうかね?」
困ったように頬を掻いた後、ネイチャはこそりと耳打ちする。
「男と……関係を深めた、女の余裕ってやつでさ」
「………………はい?」
ネイチャの言うことが理解できず、マックイーンはしばし絶句する。
「テイオーさんが?そんなまさか……」
「いや、どう見てもトレーナーと行くとこまで行っちゃってるって」
921/06/06(日)23:48:21No.810602687そうだねx2
まだ半信半疑で再びテイオーの方を見る。
すると、テイオーのトレーナーが彼女を出迎えてるところで。
「あ、トレーナーーッ!ボク勝ったよ!どうだった?」
(──え……!?)
飛び跳ねるように駆け寄るテイオーを見て、マックイーンは息を呑んだ。
その顔はまさに花が咲くという表現がぴったりの、傍からも見惚れるほどに美しい笑顔で……。
先程の疑いを即座に撤回し、二人が男女の仲であると確信するには充分なものだった。
「最高の走りだったぞ!特に最後の直線での差し返しは胸が熱くなった!」
「ちゃんと見ててくれたんだ……えへへっ♪」
寄り添うようにして、テイオーとトレーナーは通路奥へと消えていく。
「通じ合ってる一番大切な人がさ、レース中ずっと見守ってくれるんだよ?怖いものなんてないよね」
どこか羨ましそうなネイチャのつぶやきを、マックイーンはぼんやりと聞きつつ遠ざかるテイオーを見送る。
1021/06/06(日)23:48:34No.810602781そうだねx2
「マックイーン、今日は惜しかったな。けどいい粘り具合だったぞ!」
と、そこにマックイーンのトレーナーがやってきた。
「……………………」
「──マックイーン?」
「トレーナーさんっっ!!!」
いきなり大声で迫ってきたマックイーンに、トレーナーは身じろぎする。
「な、なんだ!?」
「大事なお話がありますの!私達二人の今後について!!」
「あ、ああ……反省会か?──って、うわ!そんな慌てなくても一旦休憩を挟んで……」
「いいえ!一刻も早く話し合いたいんですの!」
自分のトレーナーを強引に引っ張っていくマックイーンに、ネイチャは肩をすくめる。
「ほーんと、どこもお熱いことで。ネイチャさんはとてもとても──……」
いつものように傍観者を気取りかけ──しかしネイチャは言葉を切った。
「……いや。そんなにふうに逃げてちゃ、いつまでたっても進展しないよね。アタシだって……!」
1121/06/06(日)23:48:49No.810602895そうだねx4
「ね、トレーナー。明日からすぐトレーニング始めたいんだけど」
ふと足を止め、後ろを振り返っていたテイオーがそんな提案をする。
「レースが終わったところなのにか?」
「うん。きっとみんな、次までにずっと強くなってるはずだから」
確信めいて、テイオーは大人びた微笑みを見せた。
「ボクには分かるんだ」
1221/06/06(日)23:49:46No.810603274そうだねx7
おしまい。
トレーナーとの恋愛が色ボケにならずちゃんと力になっている姿を書きたくなったので。
1321/06/06(日)23:50:38No.810603658+
ウワーッ!?
1421/06/06(日)23:51:12No.810603861+
少し掛かり気味ではないでしょうか!?
1521/06/06(日)23:51:52No.810604105+
うーんこのテイオーは帝王
1621/06/06(日)23:52:23No.810604315+
色ボケどもがー!!
1721/06/06(日)23:52:44No.810604455そうだねx2
ネイチャもしっかりライバルとして描いてるのはポイント高いですよ!
1821/06/06(日)23:54:20No.810605027+
これぞ一心同体……
1921/06/06(日)23:54:24No.810605062そうだねx6
トレセン学園はマッチングアプリや…
2021/06/06(日)23:55:26No.810605432そうだねx6
ヒトとウマ娘の絆の力がトレセン学園の未来を紡ぐんだ
2121/06/06(日)23:56:15No.810605714+
一心同体になったんだな…
2221/06/06(日)23:57:26No.810606178そうだねx1
走ってる時も一緒なのは強い
2321/06/06(日)23:58:53No.810606674そうだねx2
>トレセン学園はマッチングアプリや…
タマモクロス
トレーナーと一蓮托生になってこそウマ娘は強くなれるのだ
色ボケと無礼るなよ
2421/06/06(日)23:59:27No.810606888+
パワポケでも彼女作ると強くなるしな
2521/06/07(月)00:00:34No.810607319+
なるほど人バ一体…
2621/06/07(月)00:02:08No.810607890+
>パワポケでも彼女作ると強くなるしな
ポケットの方に限定するんじゃない
2721/06/07(月)00:03:49No.810608501+
パワシリーズは強選手育成の場合は彼女イベント完遂が必須だからな
2821/06/07(月)00:03:52No.810608517+
実質マックイーン怪文書では?
ネイチャは訝しんだ
2921/06/07(月)00:07:01No.810609688+
一心同体の素晴らしさを再確認しましたわ!
これを促進する街を作りますわ!
3021/06/07(月)00:11:43No.810611380+
夜のテイオー来たな
3121/06/07(月)00:12:08No.810611553+
元からテイオーが強いの知ってるし周りの評価もあんまり気にしないネイチャはやっぱり強い…
3221/06/07(月)00:42:27No.810622390+
一心同体は力になると思うけどそれそれとして前日にぴょいは冒険すぎない!?
3321/06/07(月)00:42:48No.810622489+
誰か自分以外の異性をを心から愛し
また自分も愛されたという経験は確かな自信を生むんだろう
まぁ誰からも愛されたことのない童貞には分からないんですけれどねハハハ……ハハ


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