三和土にポツンと一人、ブライアン。
なんとも言えない居心地の悪さを感じていると、アイツはすぐに戻ってきた。
「タオルだ、使ってくれ。中まで濡れ切ってたりするか？」
「ありがとう。そうだな、動くと気持ち悪い程度には」
まぁでも大丈夫だ、少し雨が落ち着いたら寮まで戻って——
「風呂に入っていきなさい、万が一にでも君に体調を崩して欲しくない」
「待て待て、私は着替えも何も持っていないんだぞ」
「ここから寮まではそう遠くもない、適当な服でも大丈夫だと思う。気になるのならお姉さんにお願いしてとってきて貰うとかもできるが」

「わかったわかった、姉貴に世話はかけたく無い。言う通り入っていくから、適当な奴を用意しておいてくれ」
まさかこんな事態になってしまうなどとは。期待していた？いやそんな事はある訳が……
ともあれ、ぐっしょりと重たいジャージと下着を脱いでいく。
乱雑にそれらを投げ捨て、浴室に入るとどこか普段と違う感覚を覚える。
そうしてカランを捻り、汗と雨の混ざり合った不快感を洗い流す。
折角だし石鹸やシャンプーの類も使っていいのだろうか。まぁ、アイツなら文句を言う事もないだろう。
ん、どこか清涼感のある香りと感覚だ。嫌いじゃない。

一頻りの儀式が終わる頃には、どこかアイツの匂いのようなもので包まれている気がした。
同じものを使っているのだから当然か。そのまま、ざぶりと湯船に身を委ねる。
外から響く雨音は大分小さくなってきていて、これは出る頃には止みそうだ。
「外にパジャマ置いておくから、すまないが寮まではそれで戻ってくれ！」
「わかった！」
すっかり暖まった、この礼はいずれ返さねば。
立ち上がり、顔を振って水を弾き、外に出る。
ふむ、これか。
下は……まぁいい。上にシャツだけ着て、パジャマを纏っていく。
胸元以外はブカブカで、見事に不恰好になってしまった。
それほど身長が低い方でもないが、こうなるとやはり体格差を実感する。
同じ匂いで同じ格好、か。

「出たぞ。気持ち良かった、ありがとう」
「それは良かった、落ち着いたら寮に戻って——」
「ん、どうかしたか？」
「いや、髪を下ろしてるのをそういえば初めて見たと思って。見惚れてしまったよ」
「バ……いきなり何を言うんだ！もういい、私は行くからな」
顔が赤くなる、たかだか外見を褒められただけなのに脈拍が速くなる。
「風呂は感謝する、それじゃ」
「あ、おい、着替えた服は——」

「また来るかもしれないから洗って置いておけ！」
脱兎の如く部屋を飛び出して、自室への道を急ぐ。
日が落ちてくるのに合わせて心地が良い風が頬を覚ましていく。
ああ、くそ、なんなんだ一体。
不意に、視界によく知る顔が映る。
「ブライアンか、今日は練習場でも見かけなかったが、何かやって——」
今この場で一番会いたくない顔だ。
「待てブライアン、その匂い、格好……おいブライアン！何があったんだ、ブライアン！！！ブライアン！！！！！！」

あっ…

姉貴はさぁ
妹の恋路ばかり気にして自分はおろそかなひと？

気ぶるなや！

純粋に妹が心配な可能性もあるだろ！？

ぶかぶかの服…濡れた髪…シャンプーと石鹸の香り…これが意味するところは…ブライアン！！！！

>ぶかぶかの服…濡れた髪…シャンプーと石鹸の香り…これが意味するところは…ブライアン！！！！
お赤飯だな！！！！！

一つ聞いてもいいかブライアン
下着、何処にやった？

ここにはクソボケしかいないのか

どう見ても異常事態だし…

母さんには報告したのかブライアン！

お祝いか？！
お祝いなんだな！！！！

ブライアンって誰と同室なんだっけ…

ヒシアマさんが気付いてトレーナーを問い詰めに行くパターンもあるな…

この後ブライアンの服をクリーニングに出してる姿を見られるんだよね…

おいアンタ！！とうとうヤッたんだな！？

相手のパジャマを着たまま走って帰ってくるとか何かあった後にさらに何かあったとしか考えられないじゃん！

>ヒシアマさんが気付いてトレーナーを問い詰めに行くパターンもあるな…
事情を話したら納得して貰えそうだな
下着まで置いていかれた事に気付かれなければ

ノー下着でシャツとパジャマはまずいですよ

>>ヒシアマさんが気付いてトレーナーを問い詰めに行くパターンもあるな…
>事情を話したら納得して貰えそうだな
>下着まで置いていかれた事に気付かれなければ
まああのブライアンだしな…で納得するヒシアマ姐さん
ハヤヒデはキレた

ク　　ソ　　ボ　　ケ
ハヤヒデのトレーナーはどう思う？

>ハヤヒデのトレーナーはどう思う？
見惚れたとかそうゆう口説いてると誤解されそうな言葉は口に出さない方が良いと思う

寮の台所でお赤飯を炊き出す姉貴

やったのかブライアン！

ぶかぶかになった服
濡れた髪
石鹸の香り
下着をつけていない
顔真っ赤
焦っている
これは…

こいつらうまぴょいしたんだ！

風呂に入っただけだ！

またそうやって私よりも先に行ってしまうんだな…