「お任せください。ウチの弟は俺とは比べ物にならない天才ですからまぁ、怪我させないのとセクハラで訴えられないことは確かですよ。あ、八百屋のばあちゃん、腰良くなった？ 時間があればまたマッサージしに行くっていっといて」

「…兄貴たちっていっつもこんな感じなの？」

笑い合う肉屋のおっちゃんと上の兄貴を見ながら、アタシは両手いっぱいのネイちゃんおめでとうの品を持って下の兄貴へと話しかけた。商店街の人気者がくっついた…なんか言い方ヘンだなコレ。とにかく専属トレーナーと専属ウマ娘ができたお祝いは凄まじく、あれ持っていきなコレ食べなと皆さんもう持っている荷物の上から乗せていく。いやぁ、お気持ちだけでと言おうとする前に上のアホ兄貴が受け取ってしまうのだ。全く遠慮がない。

「俺まで一緒にしないでくれ、兄さんだけだ」

「まったく、久しぶりに会ったと思ったら昔と変わってないようでネイチャさんは嬉しいですよ…あ、次は焼き鳥屋さんに狙いを定めた」

「いつもは此処までじゃないんだけど、ネイチャがいるからかな」

「ひゅえっ、ごほん、な、なんで？」

その言葉に思わず声が上擦ってしまって、下兄貴はアタシの目と頬をちらりと見た。そして焼き鳥屋さんからセット商品を貰っている上の兄貴を見る。にぎやかなあちらに反して、こっちはひどく静かになってしまって、アタシはそれを誤魔化すように咳をして誤魔化した。

「ごほん。し、しかし今日はホント驚いた！ 兄貴たちってあのルドルフ会長さんとそのトレーナーさんと知り合いだったんだ、しかもめっちゃ親しそうだったし！ なになに〜袖の下ですかな〜？」

それはアタシが兄貴の担当ウマ娘になった後の事だった。あのシンボリルドルフ生徒会長とそのトレーナーがあいさつしに来たのだ。この二人のセットと言えばもはや学校どころか、レース関係者、ファン、報道関係者の誰もが放っておかない輝きのてっぺん。あのトウカイテイオーが憧れる唯一のウマ娘。アタシなんかが近づくと影だけ残して消滅してしまうような、そんな人たちだ。

そんなペアが、とても仲良い感じに兄貴たちと話すからもうヤバい、語彙力が消失する。しかも「バッジが似合っているじゃないか」とか、「君たちが選んだウマ娘だから間違いなく上がってくるだろう」。とか、アタシにまで「期待しているよ」なんて声をかけてきて身が縮こまる思いをした。
しかも遠くからふくれっ面のテイオーの視線を受け取る始末までついている。まぁほっぺたを膨らますテイオーは可愛かったけど…。

「ははっ！ いやいや、違うよ。彼らは俺たちが最終学年で実習生になった時に担当してくれて、一年世話になったんだよ。とても勉強になったし、大きな後ろ盾にもなってくれた。俺みたいな新人のひよっこが担当を持てるのは彼らの力もあってだよ。感謝してもしきれない」

「つまり、兄貴たちは教え子ってわけか…いいの？ そんな期待の新星がアタシみたいなそこそこが精一杯のウマ娘をスカウトしちゃって…後悔してもネイチャさん知りませんよ？」

「後悔しない！」

いきなりの大声だったので、思わず私は肩を跳ねさせてアタシは貰いもののてっぺんからずり落ちそうになった、UMAいですよワイド煎餅を口でキャッチしなきゃならなかった。

むこうのおっちゃんたちや商店街の皆もこっちを見てきてしまう。うぅ…なぜ一日に何度も周りからの視線が突き刺さる思いをしなければならないのでしょうか…。

「ネイチャだから、いの一番に声をかけにきたんだ！ 他のトレーナーの担当になっていないかもう、心配で堪らなかった！ ネイチャなら絶対に勝てる、才能も、キラキラも、絶対にある！ 俺はネイチャじゃなきゃダメだから…」

「んー！ んんー！ ひゃにき、ひゅとっぷひゅとっぷ！ まーひゃーりーみろー！」

反射的にこっちも袋咥えながらの声と視線で、下兄貴に周りのニヤニヤーっとした視線にやっと気づかせると、頭が急速冷凍したのか代わりに頬を夕日みたいにしながら「ごめん」と呟いてアタシの口からワイド煎餅を取るとまた一番上に戻した。

「こりゃあ確かにネイちゃんを任せられるなぁ。なぁ兄ちゃん」

焼き鳥屋のおっちゃんがにやにやしながら言った。

「……だな」

上の兄貴はただ私達にどこか寂しそうな視線を向けてから、やきとりを口に咥えた。

みーんなにやにやしている、いかん、これはいわゆる公開処刑というものではないだろうか、荷物がなければ一瞬で走り去れるのに…！ このままではいらぬ誤解をされて、商店街に来るたびに話題のタネにされる、または酒のつまみ！

「あーー！ いたいたーー、ネーイーチャー！」

そのとき、三女神様に祈りが通じたのか救世主がやってきた、または主人公。テイオーだ。
アタシを見つけて手を振ってやってくる、その後ろからもう一人男の人も。もしかしてトレーナーだろうか、あんなにいっぱいいたのにもう決めたみたいだ。

「もーやっと、見つけたよー。ってなにその塔みたいな荷物！？ 大人買い？」

「ちゃうちゃう、なんというかそのー…お祝い？ どしたの急いで」

「出走表！ みてないのー、もう張り出されたんだよ、競技大会のやつ！」

あぁー、と思い出す。正式には種目別競技大会、トレセン学園の恒例行事でファンやお客さんを入れての毎年大盛り上がりの大会だ。しかしそれをなぜ、わざわざテイオーが言いにくるんだろうか？

「芝2000！ ネイチャも登録してたでしょー実はボクもなんだー！ だから今日は宣戦布告に来たんだ！ 勝負だ、ネイチャー！」

ふふーんと可愛らしく胸を張るテイオーだったけど、アタシは頭の中ではビックリマークとハテナマークで一杯だった。えっ、勝負？ レースで、テイオーと！？ ホワイ、なぜ！？ あ、いや登録したコースが一緒だからそうなるか…いやいやそれは問題じゃなくて！

「て、テイオーと…？ てか、えらくそのー…張り切ってない？」

「あったり前じゃん、だって今日カイチョーが来てたでしょ！ でも最初にボクじゃなくて、ネイチャの方に行って褒めてた！ ボクは二番だった！ だから次はもーっと完璧に走ってカイチョーに一番に来てもらうんだ！」

「あ、そ、そういう…」

そりゃそうかと心の中で思う、テイオーみたいな主人公が私みたいな脇役をライバルとして見るわけはないか。憧れの人の障害物ってわけだ。そう思うと気が楽になる反面どこかで冷や水をぶっかけられたように胸が冷たくなる。

「それにトレーナーもついたしねー！」

テイオーが脇によって後ろの男の人に向かってじゃーんと手を広げた。やっぱりトレーナーさんだったようだ。長身で年はウチの兄貴と変わらないぐらい、手帳を手に持っていて、目は氷のように冷たい。それに今日どこかであった気がする…。
テイオーのトレーナーさんは、私をじっと髪の先からつま先までじろりと見つめると「どうも」とだけ言った。ネイチャセンスが、あっ、コレアタシ好きになれないタイプだな、と直感的に察する。どうやら下兄貴もそうらしくて眉をひそめたようだった。

「主席だったアンタが」テイオーのトレーナーさんは下兄貴を向いて言った「どうやら血迷ったようだな」

瞬間、下兄貴が大きく足を踏みしめて、テイオーのトレーナーさんに詰め寄ろうとするのを見てアタシは慌てて間に入ろうとしたが荷物のせいで間に合わない。テイオーに至っては何が起きるか想像もしてなかったみたいで、ただ兄貴を見ていた。ええいこういう所には鈍感！

「はーい、どうもどうも！」

ふと、そこに影が入ってきたかと思うと上の兄貴が両手に焼き鳥を持ちながら間に挟まった。

「兄さん！ どけよ！」

「そー怒らない怒らない、あんまり詰め寄るとネイチャに見せたかったスーツ姿にタレが付いちゃいますよ」

「わー、やきとり！ 美味しそうな匂い〜！」

「あ、食べる？ お一つどうぞ〜」

やきとりに釣られたテイオーがむしゃりと頬張る姿を見て、下の兄貴も落ち着いたのかテイオーのトレーナーさんを睨みながら下がった。

「誰？」

「ご紹介に預かりました成績は中の中ぐらいの、主席の兄でーす。やきとり食べるか？」

「…そんな予定は組まれていない。テイオー、もう帰ろう予定が押している」

「はーい！ やきとりありがとねー！」

冷たい表情のまま手帳の中を一瞥するとパタンと閉じて、テイオーのトレーナーさんはそのまま背を向けていった。テイオーが周りをぐるぐると回りながらそれについていく。食べたやきとりが美味しかった話でもしているのだろう、笑顔だ。
あんなタイプはテイオー自身が拒否すると思っていたけど、何があったのだろうか？ そう思っていると、周りの人たちもテイオーのトレーナーさんを気に入らなかったらしい、腕を組んで見送っていた。

「ちょいと、なんだよあの男は。ネイちゃんにえらい失礼じゃないか！」

「副主席さんだよ。弟に負けたから根に持ってる！ ってわけじゃない、もともとあんな調子のヤツだよ」

「……なーんか今日見たような気がするんだよなー」

アタシがうーんと唸ると、上兄貴は私の頭をくしゃりと撫でた。どうやら気にすんなと言っているようだ、久しぶりの温かみのある手に少しだけ頬が赤くなる。

「そりゃあ多分、あれさ、ルドルフさんとこのトレーナーにあったからさ」

「え？ 何で？」

「兄弟なんだよ、あの二人は」

遅くなりましたしえらい長くなりましたが許してください私は悪くありませんただスリーゴッデスがそうやれと強制するのです

ウワーッ!兄弟もう一組出てきたー!

まだ不穏な気配はしない……

長い！けどいいね…タッチでいうもう一組の兄弟というと確か…

地雷原の上でアイビスサマーダッシュしている気分だ…

急に三女神がぶっ込んで来ないか心配ですよ私は…

>まだ不穏な気配はしない……
そうかな…そうかも…

シラオキ様の加護も無いしスリーゴッデスを止める手立てがない

テイオー達はお互い遠くに越えるべき壁があるわけだ…

テイトレからは東君みたいな匂いがビンビンしますねぇ…

三女神殴ってくれるシラオキ様はもういない

兄弟か…今のうちにからくりサーカスでも混ぜ込んでおくか…

フクトレのダービーがどうなってるのかも気になるが…
この兄弟のどっちが邪神の餌食になるんだ

カラクリサーカスを混ぜ込むのは洒落にならないからやめろ！

呼吸を止めて一秒あなた真剣な目をしたから(八方にらみ)

双子じゃないからタッチではないよね？

タッチャ

>双子じゃないからタッチではないよね？
でも一卵性双生児なんだ…

>まだ不穏な気配はしない……
でも今ってジェットコースターが急落する前にじわじわ上がってるとこですよね

平穏な日々が映し出されるたびにいつ三女神が何をするか分からなくてドキドキしてしまう

>タッチャん…

というか達也の話になると顔を赤らめるあたりネイチャの矢印は…

ネイチャのことになると感情的になる下兄貴がかわいいな

ああこれ2話か…

邪神共が鎌首をもたげてきた

トレーナー兄弟でドロドロになるんだろうか…

生きてトライアングラーと死んで傷痕残し隊なら君はどちらを選びますか？

>生きてトライアングラーと死んで傷痕残し隊なら君はどちらを選びますか？
どちらとも選べばフクキタルの姉ポジとなって挟み撃ちの形になるな…

テイオー悪い大人に騙されてる…？

1話読んだけど…
最後の一行は何よ

今からもう胸がしんどい

>テイオー悪い大人に騙されてる…？
まだ人となりもわからん
キャリアに利用するつもりかも知れんし純粋にテイオーに惹かれたのかも知れんし

ああいうのは中盤か佳境でデレるもんだ

テイトレが打倒兄を心にしてるならテイオーに同じものを見てるのかもしれない

>1話読んだけど…
>最後の一行は何よ
別れの始まりってだけで誰かが死ぬってまだ分からないから…

優秀なやつしか覚えていない所は東君だなテイオートレーナー…

タッチは弟と兄どっちが死ぬっけ…？

でも「」はこういう序盤はいけ好かない態度の奴が実は良い奴だったとか内には熱いものを持ってる展開好きでしょ？

>タッチは弟と兄どっちが死ぬっけ…？
ヒロインが惚れてない方

>>タッチは弟と兄どっちが死ぬっけ…？
>ヒロインが惚れてない方
もう少しこう…手心というか…

大丈夫大丈夫
下兄とネイチャがお互い好きあって心を通じ合わせて次のレースに勝てたらちょっとだけ素直になってみようみたいな決心するまでは優しい平和に包まれたままシナリオ進むから

うーんちょっとパンチ足りなくない？

兄貴は世渡り上手な感じで弟は真面目一辺倒そうかな
兄弟間の仲あんま良くなさそうだし拗れそう

テイオートレはテイオーを担当するなら主席しかいないと勝手に期待してたとか？
どうでもいいことだけど副主席って初めて聞いたわ 単に次席って言い方ばっかで

テイオーが信頼してるし悪い人ではないのかな......？
続きが楽しみだ

テイトレはメガネなのかデブなのか…

テイオーはトレーナーなんか誰でも良いと話してた時期もあるから深く考えてないかもしれない
会長トレーナーの兄弟だからあのかもしれない
あるいは他にテイオーを惹きつける何かが彼にあるのかもしれない
個人的予想は三番目

ワイド馬券頬張るネイチャのイラストっぽいワイド煎餅頬張るネイチャが見える
かわいい

ルドルフを超えたいテイオーと兄を超えたい弟で目標一致しただけじゃないの

>UMAいですよワイド煎餅を口でキャッチしなきゃならなかった。
器用だな・・・

>上の兄貴はただ私達にどこか寂しそうな視線を向けてから、やきとりを口に咥えた。
兄弟両方から矢印は出てそう

穏やかな日常なのになんでこんなに苦しいのだろう

>穏やかな日常なのになんでこんなに苦しいのだろう
破滅の未来を幻視してるからですかね……

もー！読ませるなあ！でも曇らせるんでしょ!もー！

ナイスタッチャ･･･

兄貴は弟からネイチャに矢印出てるの分かっててお前にならネイチャを･･･
弟はネイチャから兄貴に矢印出てるの感づいててそれでも矢印が自分に向いて欲しくて優秀に･･･
ってとこかしら
ネイチャ自身は全矢印無自覚っぽくてうーん美事なすれ違い

なんかタッチ未読っぽいコメントが多くて結構ビビるな
国民的漫画じゃないのかあれ

>なんかタッチ未読っぽいコメントが多くて結構ビビるな
>国民的漫画じゃないのかあれ
40年前のマンガなんて知らなくても無理ないだろ

タッチってよくカタログで首飛ばされてたやつでしょ

綺麗な顔してるだろ？のシーンしかぶっちゃけ知らないんだ