自由時間ってことは、前々から考えていたことをついに実行に移す時が来た！
「じゃあさ、トレーナー。買い物したいから付き合ってよ。」
「荷物持ちなら私ほど不適格な相手もいないぞ。」
「違うよ、キミと選びたいの。トレーナーの部屋にボクのために椅子とマグカップ置くって約束したでしょ、それに菊花賞勝ったんだから、話の続きも。」

「あー……そうだな、約束してたな……。」
「面倒くさいと思ってるでしょ。」
「否定したほうがいいか？」
「嘘つかれるほうがやだ、とにかく付き合ってもらうからね。」
「お前が休みでもこっちは仕事が…「茶色の封筒。」
「ぐっ……お前、いつまでもそのネタが通じると思ったら大間違いだからな…。」
恨めしそうなトレーナーの声、んふふ、一本取ってやった。
何にせよ放課後はトレーナーとお出かけだ。今から楽しみ。

……⏰……

学園近くのショッピングモール、まずはマグカップ。大きい荷物を最初に買ったら大変だもんね。
「トレーナーってマグカップどんなヤツ使ってるの？」
「ん？あー、100円で買った、無地の……白、だったかな。」
毎日使っているはずのものなのにぼんやりした答えなのは、全く興味がないからだろう。多分トレーナーは最低限使えれば何でもいいんだと思う。
「そんなんじゃ駄目だよ！そういう小物をちゃんと揃えるとえーと…キュー、オーエル？が上がるんだって、エアグルーヴが言ってた！」
「QOL、生活の質のことだな。まぁ、一理ある、コーヒー渋も取れなくなってきたし買い替え時かもしれんな。」
「そーゆーこと！好きな色とかデザインとかある？せっかくだから合わせようよ。」
「そう言われてもな……。一番安くてすぐ壊れなければそれで十分だろう？」
ため息をつく、そーてーないだけど酷すぎる。というか向かってるの100円ショップだし、手を引っ張って止める。
「そっちじゃない、ちゃんとしたの買ってよ！だからこっちの雑貨屋さん！！」

……⏰……

「結局白買ってるー、汚れ目立つんだよー？すぐ汚くなっても知らないからねー？」
「柄が入ってるだろ、牛の。」
「外側じゃん。」
結局トレーナーは何を見せてもああ、とか、いいんじゃないかしか言わないからボクが先に選ぶことにした。
デフォルメされたミツバチがバケツでハチミツを運んでいる柄の薄オレンジのマグカップ。
トレーナーはそれを見るとなら、と同じシリーズの牛のデザインを取った。
ボクはハチミツが好きだから選んだけど、トレーナーも今まで全然選ぶ気がなかったの牛柄に迷いなく手を伸ばしていた。もしかして。

「牛、好きなの？」
「いや、牛乳が好きなんだ。」
「そうなんだ、知らなかった、なんか意外。」
「別に公言していないからな。学園でも知ってるのはお前とあと……ルドルフぐらいじゃないか？」
「なんでそこでカイチョーの名前が出てくるのさ！」
「そりゃあ、あー……詳しい話はまた今度な、立ち話でするもんじゃない。」
話を打ち切るようにマグカップを二つ持ってレジへ行くトレーナーを追う。
「ボクの分は払うよ。」
「私の家に置くんだから私が払う、小遣いは大事に取っておけ。」
「むー！レースの賞金いっぱいあるのに！」
「だからって無駄遣いしてるとすぐなくなるんだ、金ってのはそういうものだ。経験者の言うことは聞いておけ。」

……⏰……

椅子と他にも色々小物を買って（トレーナーはバインダーに挟むページを買い足してた）、帰り道、ゲームセンターの中、透明な板の向こうにぬいぐるみが山になっているのを見つけた。
「トレーナー、見て見て！あれ！」
肩を叩いてから指差す。ぱかプチだ！
中にはボクやマヤノや、トレセン学園でデビューしたウマ娘たちのぬいぐるみがたくさん入ってる。
「なんだ、欲しいのか。別に本人に会えるだろ。」
「ぬいぐるみと人は違うんだよー！抱っことか出来ないじゃん、ボクの奴欲しい！」
めんどくさそうな顔をして出口に向かおうとするのを通せんぼ、どうしてもトレーナーにはボクのぬいぐるみを取ってもらう！

そうこうしていると、袋いっぱいにぬいぐるみを入れた二人組がゲームセンターの中から出てきた。
「おうアンドロイドと担当か、奇遇だな。」
「あー、テイオーちゃんもデートしてたんだ！奇遇だねー！」
マヤノとそのトレーナー、っていうかなんでボクのトレーナー、アンドロイド扱いされてるの！
「ボクのトレーナーはちゃんとヒトだよ！」
ボクが食って掛かると、マヤノのトレーナーは大げさに手を上げる。

「おっと、悪かった。こいつがいつも仏頂面だからそういうジョークをな。」
「トレーナーちゃん、そういうのゴアイサツでしょ！」
「わかったわかった、俺のジョークに着いてこれる奴がいなくて寂しいぜ。」
「付き合ってられん、行くぞテイオー。」
うんざりしたように顔を振ってトレーナーが車輪に手をかける。
「ちょっと待ってって！ぱかプチ！」
「なんだ、欲しいのか。分けてやってもいいぞ？」
袋にギュウギュウに詰め込まれたぬいぐるみを見せつけるように掲げるマヤノのトレーナー。
違う、ボクが欲しいのはただのぬいぐるみじゃなくて、トレーナーが取ってくれた……。

「もートレーナーちゃん！これ以上二人の邪魔するならマヤノ怒っちゃうからね！ユーコピー？！」
「ハハハ、アイコピー、それじゃあ頑張れよ。あのマシーン、がっちり掴んだと思っても揺れて取り落とすピーナッツ野郎だからな。」
マヤノは手を振りながら、そのトレーナーは笑いながら歩いていった。
「はぁ……そんなに欲しいのか？」
頭痛をこらえてるみたいに、トレーナーが呆れたような声を出しながらボクを見上げる。
「うん、お願い。」
「全く、ぬいぐるみの一つや二つで……。」

……⏰……

「トレーナー……もうそれぐらいに……。」
「ここまでやって止められるか…！見てろ、次で取る…っ。」
もう10回以上クレジットを入れてるけど、トレーナーは一個も取れてなかった。
こんなに熱くなってるとこ初めて見た。知らないところを見られて嬉しいけど、こんなところで……。
「よーし、掴んだ……、来い……来い……っ……。だぁーッ！」
もう少しで取り出し口というところでアームが揺れてカイチョーのぬいぐるみを落とす。そしてアームを動かす毎に動くミキサーみたいなパーツが無慈悲にぬいぐるみの山をかき混ぜて、カイチョーは山の中に埋もれていった。
「もう一回だ、もう一回………！！」

……⏰……

「やっと、取れたぞ……。」
あれから何十回もチャレンジして、疲れ切った顔のトレーナーが笑顔のボクのぬいぐるみ、大きいのと普通のを手渡して来た。
「もう二度とやらんからな、何なんだこの悪意ある集金システムは……。」
うん、ボクもお願いしたの悪いと思ってる……。まさかトレーナーがこんなにムキになるとは思ってなかった。
「えーっと、じゃあこっちあげるから部屋に置いてよ。」
と大きい方を渡す。不機嫌そうな顔をしながら受け取るトレーナー。
「なんでお前のために取ってやったのに返ってくるんだ。」
「ボクからのご褒美、すごい頑張ってくれたからね。」
「……ふん、要らん散財をした、もう寄り道せずに帰るぞ。」

出口に向かうトレーナーと一緒に歩く。
トレーニングもミーティングもボクのためだけど、今日はまたちょっと違うボクのためが見れて嬉しい。
横目でトレーナーを見ると、車輪に両手を使っているから、ぬいぐるみは膝の上に座らせてある。
膝に座るのも、部屋に住むのもボクの代わりだから、よろしくお願いね、ぬいぐるみのボク。

……

『よう、俺だ。デートお疲れさん、気付いてるか知らんがお前さんの功績はトレーナー陣に波紋を呼んでる。
　今の所特に動きは無いがお前さんが何か秘策を持ってるんじゃないかと勘違いしてる奴もいる。
　俺としても直接聞いてなきゃ同じように考えてただろうな。』
　
「どうやってこの番号を？」

『マヤノがテイオーから聞き出した、お前さんの交友関係の狭さには舌を巻くよ、他に誰も知らねえんだから。
話を戻すぞ、大抵はお前さんの仏頂面に話しかける勇気もないようなピーナッツ野郎だが、中には動いてくるのがいるだろう。
　アグネスタキオンのトレーナーとかな、奴は掛け値無しのイカれ野郎だ、ご主人様のためならなんだってやるだろう。紅茶の匂いに備えときな。』

「チョコレート臭くはなくなったか、わかった。……あー、感謝する。」

『レーダーを教えてくれた礼だ、次は負けねぇからな。じゃあな。』

前回までのログです　su4882050.txt
気温差のせいか寝込んでいて遅くなってしまいました、申し訳ありません
ちゃんと今後のプロットやネタはありますのでご安心ください、純粋に体調が悪くて書けなかっただけです

ツンデレ堅物おじいちゃんいいよね…

寒暖差あるしこの時期割と体調崩しやすいから無理せんといてね…

>「お前が休みでもこっちは仕事が…「茶色の封筒。」
>「ぐっ……お前、いつまでもそのネタが通じると思ったら大間違いだからな…。」
遺書書いてたとか洒落抜きで10年ぐらい言われ続けるネタだかんな！！！

待ってた…いつもありがとう…

結局このトレーナーの性別がよくわかってない

あれ？いつぞや女性だったのを見た覚えがあるけど別のだったかな

いつも楽しみにしてる
体調には気をつけてね

見た目ウマ娘なんだよね…

ルドルフにコンシーラーでクマ隠すならオレンジ系がいいぞってところとマヤノトレーナーとの会話でオールバックのポニーテールというのはあったけど性別どっちでもとれる感じだよね

全トレーナーが満場一致でタキトレを狂人扱いは解釈一致が過ぎて芝生える

ここまで砕けたトレーナーはだいぶ新鮮だ…こっちのが案外素なんだろうか
怪文書いつも楽しみにしてるよ　カラダニキヲツケテネ！

>全トレーナーが満場一致でタキトレを狂人扱いは解釈一致が過ぎて芝生える
だってこの渋めの世界観の中で発光人間だぜ？
そらイカレてるわ

テイオーの湿度が凄い勢いで上がってるな…

青色の髪で紅茶の匂いして光るとか控えめに言ってキ印の類だし…

全員キャラが濃くてしゅきぃ…

イカレてるというかもう人間に分類していいものじゃなくなってる感

俺の脳内でこのテイトレはCV大塚明夫というかもうバトーさん

テイオーの足みたいにただタキオンの走りのためにやれる事をやっているだけなのに…

>俺の脳内でこのテイトレはCV大塚明夫というかもうバトーさん
女性だと思ってたから田中のあっちゃんで再生してた
似たようなもんだな！

>>俺の脳内でこのテイトレはCV大塚明夫というかもうバトーさん
>女性だと思ってたから田中のあっちゃんで再生してた
脳内ボイスは阪脩さんだった
公安9課だこれ！

モルモットくん別にタキオンのイエスマンじゃないのが一番タチ悪いからな…必要ならタキオンの指示無視して動く

>「そりゃあ、あー……詳しい話はまた今度な、立ち話でするもんじゃない。」
車椅子に座りっぱなしだろとツッコんでしまって軽く自己嫌悪した

おっとお久しぶりに見られた
ぬいぐるみキャッチャーにムキになるトレーナーかわいいな