トレーナー君、ちょいと私に話に付き合ってくれないかな? いや別にこの緑色に光るこの薬を今飲んでくれとはお願いしないさ、やるなら実験室でさ そうそう話したい事と言えばこの色……私の持っている薬の色の事じゃないさ トレーナー君、あの木の葉は何色に見えるかね?……そう、鮮やかな緑色だ それじゃあ今私が来ている服の色は?……そうさ、白色だね ああいやトレーナー君の色覚検査をしてるわけじゃないさ、ただの確認だよ 世の中には何万何千万の色があるのは知っているかい? もっとも私達に見えるのはその中でも数百万色とも言われているがね……意外に多いだろう? そこでトレーナー君に聞きたいことがあるのさ 昔は色なんてなかったって言ったらトレーナー君は信じるかい? ……あっはっは!その怪訝そうな顔は傑作だねぇ、意地悪してるつもりはないさ 言い方を変えようか、『昔の色はこんなではなかった』と言った方が正しいだろうねぇ 流石にこの私も全面的にこの話を信頼してるわけじゃないさ、ただ、興味が湧いただけさ 写真の技術が出来たのは何時頃だったか知ってるかい?まあ大体1800年の中頃ぐらいさ 昔の写真は見たころぐらいあるだろう?モノクロ写真と言われているあれさ その写真は色がついていない……と言うよりかは白黒以外の色はないだろう? 話を戻そうか、写真技術が生まれた辺りに妙な出来事が起こったのさ 白黒以外の色がその写真に入り込んでいたって出来事さ 最初は何か不具合の結果生じたものだと思われてたみたいだねぇ まあその時はそれ以外特に何も起こらなかったのでスルーされてたんだよ 問題は発生したのは1935年前後辺りらしいんだよ その白黒以外の色が世界に広まったのさ……感染したと言った方が正しいのかな ……なんだいその顔は?私は大真面目に話をしているんだが? 『元々は白黒の色しか無かった世界がそれ以外の色も見えるようになってしまった』のさ まあ私も聞いただけだから詳細は分からないがこの現象が大問題になったらしい 現に私たちはあの葉っぱの緑色もこの服にある白色も認識できる、けど昔はそうではなかったのさ その時人々はどうしたかって?それは私にも分からないさ、だって生まれていないからねぇ まぁそんなオカルトじみた話だったんだが妙に説得力があってねぇ、興味が湧いたのさ それでトレーナー君?今私が話したこの話を信じるかい?それとも信じないかい? ……?そもそもその話を誰から聞いたんだって?はて、誰から聞いたんだったかな…… あぁ、なんかオカルト系の企業に勤めてるお偉いさんだって言ってたねぇ、白衣も着てたねぇ ところでトレーナー君?今日のお弁当の話だが……えー!?作ってないのー!? どうしてだいトレーナー君!?私は君のお弁当を貰うついでにこの話をしたんだぞー! はーやーくー!はーやーくー!作ってくれよー!……いいのかい!?ふぅん、言ってみるものだねぇ それじゃあ早速お昼といこうか……おや?……そうか今日は雲一つない快晴なのか ――――青い、青い空だねぇ SCP-8900-EXの対策は今現在講じられていません SCP-8900-EXの影響を受けていないのは昔のモノクロ写真以外ありません SCP-8900-EXは空の色も、木々の色も、どれも等しく"下品な"色に変えてしまった だがもうこの事実を知るものは少ない、本当に残念でならないよ ――――諸君、我々は失敗した