「で、なんで急に兄の話を？」
「いや…なんだ、今度姉貴と模擬レースをやることになってな…相手方の情報を知るために、な」
「いつもなら『誰が相手でも喰ってやるだけだ』とか言うのに、ブライアンらしくないね」
「まあ…そう言ったこともあるが……チッ…」

ブライアンは明らかに居心地悪そうにしてイラついている。
彼女とも長い付き合いだからわかるが、これでも彼女は気を遣ってくれているのだろう。

───だが、彼女らしくもないその態度が、僕の卑屈な心をちくちくと刺激する。
『何をやっても一歩及ばない”秀才”の弟クンは、天才の兄をどう思ってる？』
僕に兄の事を問うてきた連中が、本質的に聞きたいのはそういうことだ。
ある者は僕を慰めるために、ある者は悪趣味な好奇心から。
言葉を変えて、オブラートに包んで、何度も聞かれてきた質問。
いい加減食傷気味になるのも仕方がないと思う。

そんな僕の不貞腐れた態度があからさまに出ていたのか、ブライアンは舌打ちをするとすっくと立ちあがった。
そして、大股にずかずか歩いてきて僕の隣に乱暴に腰を下ろした。

「おいトレーナー。こっちを見ろ」
「悪いけど仕事中だよ。今度のセミナーの書類がまだまとまってなくて…」
「いいからこっちを向けと言ってる」

ブライアンは両手で僕の両頬を挟み、無理矢理目線を合わせるように動かした。
まるでキスをねだる恋人のような距離感で、少しドギマギしてしまう。

「アンタは分かりやすいんだよ。いつもは何があってもニコニコしてるくせに、露骨に感情的になるじゃないか」
「そんなこと…」
「とぼけるな。さっきも言ったがこっちも長い付き合いだ。いい加減アンタの考えくらいわかる」

どこまでもまっすぐに突き刺すような視線が、僕の矮小な自虐心を見透かされているようだった。

ばつが悪くなった僕は思わず目を逸らしてしまうが、ブライアンがしっかり頭を掴んでいるおかげで逃げ切りは叶いそうになかった。
すると、ため息を一つついたブライアンが、こう言ってきた。

「確かにさっきは気を遣って悪かった。いつも通りがお望みのようなら、単刀直入に聞かせてもらう」

なかなか出てこないような漢らしいセリフを吐かれて、思わず体が強張ってしまう。
さすがに事故憐憫が過ぎたか、ブライアンに罵倒の一つもされるものかと覚悟した。

「……アンタは、兄貴に…プレゼントとか…贈ったことはあるか？」
「…………え？」

だから、顔を真っ赤にしながらそんなことを言われるのは全くの予想外だった。

「えーっと…ブライアン？プレゼントってどういう…」
「だからクリスマスプレゼントだよ！家族でのプレゼント交換くらいするだろ普通！！」
「する…かな？」
「するだろ絶対！クリスマスの楽しみだろ！それで、どうせ贈るなら喜んでもらいたいのが人情ってもんだろ！」
「まあ…それは、そうだけど…」
「だから！同じ似てない兄弟姉妹同士の立場として、何か参考にならないかと…そう思ったんだよ…！チッ…！」

そう言い切ると、髪をがしがしとかきむしりながらブライアンはそっぽを向いてしまった。

「えーっとブライアン…？」
「なんだよ」
「ご期待に添えなくって申し訳ないんだけど…普通男兄弟で贈り物を贈ったりはしないんだ」
「なんだと！？」

いや、そんな信じられないみたいな顔初めてみたよ。

「じゃあなんでアンタさっき不貞腐れた顔してたんだ！？」
「いや…それは、兄が天才だから嫉妬してるんでしょ、って訳知り顔で質問されたものだと思って…」
「えっ」
「えっ」

いや、なんでびっくりしてるの。

「トレーナー…？妹や弟は…普通、兄や姉を自慢に思うものじゃないのか…？」
「うん…まあ…誇らしく思ってないわけではないけど…」
「だろう？そこに天才とかどうとか関係あるのか？私は姉貴のこと天才だと思ってるしこの上なく誇らしいぞ？」

ブライアンの表情はいつも通り真剣で、同情の類で言っているわけじゃないのはすぐにわかった。
…………もしかしてブライアンはどこの兄弟姉妹も無条件で仲がいいものだと思ってらっしゃる…？

「おい、なんだその顔は！なぜいつもの3割増しでニヤニヤしてる！？」

「いや…ブライアンはそうだよなって」
「なんだ！おかしくないだろ！！お姉ちゃんと仲良くしなさいって親に言われるし仲がいいのが常識だろ！」
「ははっ…はははははははははははははははは！！」
「笑うな！！クソッ！！もう二度とアンタには聞かないからな！！」

大笑いする僕を後目に、ブライアンは「気分転換に走ってくる！」と言い残して部屋を出て行った。
一人残された僕は、なんだか肩が軽くなったような気がしていた。

僕は何を悩んでいたんだろう。兄が天才、大いに結構じゃないか。
ビワハヤヒデとブライアンの直接対決を前に、少しナーバスになりすぎていたようだ。
兄が天才だろうが関係ない。僕は自分の愛バであるブライアンを信じるだけじゃないか。
重ねてきた地道な努力は、きっとブライアンの血肉になっているはずなのだから。

…………ふと、携帯を取り出した僕は、長いこと使っていなかったアドレス帳を立ち上げた。
そして、『兄』とだけ書かれたページを開き、そこに書いてある番号に電話を繋げる。
ずぼらな兄のことだからきっと携帯不携帯だろうけど…まあ…なんとなく、ね
そう思ってスマホを耳に当てると、ベルの音が一回、二……

『───お、おうっ！一体どうした急に電話して！？なんでもアンちゃんに言ってみな！！』
「───」

食い気味にまくしたてる兄の声を、僕はびっくりするほど素直に聞くことが出来た。

「……いやね、今度のクリスマス、にーちゃんはプレゼント何が欲しいか聞きたくてさ───」

そうだ、せっかくだからハヤヒデも誘ったらどうだろう。
今年のクリスマスは、兄弟姉妹、二組仲良く過ごすのも面白いだろう、そう思った。

🤔
…
😇

ナリタブライアンとビワハヤヒデのトレーナーが兄弟だったら面白いなという気持ちを出力したらこうなりました
そのうちハヤヒデ側の話も書きたいです
ちなみにナリブは天井で来ました
途中でハヤヒデも来ました

あとブライアンはトレーナーが兄貴からもらったプレゼントが気に食わなくてへそを曲げているものだと思ってました

ハヤヒデとブライアン　ハヤトレとブラトレで
関係性が逆なのは面白いな

>あとブライアンはトレーナーが兄貴からもらったプレゼントが気に食わなくてへそを曲げているものだと思ってました
かわいい

ブライアンはかわいいなあ！

😇

ハジケリストみたいなトレーナー

奔放な兄は、何事も着実に力を付ける弟を尊敬している…といいな

トレトレ…

これ兄貴弟大好きだな？

>これ兄貴弟大好きだな？
弟も兄貴好きだしなんなら姉も妹もお互いに大好き
お似合いのタッグだな！

>ちなみにナリブは天井で来ました
かわうそ...
>途中でハヤヒデも来ました
良かったな

>奔放な兄は、何事も着実に力を付ける弟を尊敬している…といいな
フクキタルの姉みたいな構文やめろくれ！

兄貴は…！真冬でもアロハでクロックスなんだろ…！