二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1621430066809.png-(796485 B)
796485 B21/05/19(水)22:14:26No.804453620そうだねx4 23:14頃消えます
「マスター。夢を見ました」
今朝。ミホノブルボンが唐突に、そう話しかけてきた。
彼女がそんな話をするなんて、珍しい。
「いい夢だったの?」
聞いてみる。
「…記録メモリには、何も残っていません。何も、殆ど。覚えていません。
ただ。マスターが出てきたことは、覚えています。そして、多幸感を得た記憶もあります。ですから感謝を。…プロセスは遂行されました。退出します」
「待って、ブルボン」
呼び止める。問題があったわけじゃない。ただ、彼女の見た夢について。
…自分が出てきた、というのが少し気になった。そしてそれが彼女にとって、幸せだったと。
有り体に言えば。このまま帰られると恥ずかしい。なんだかこちらだけ、幸せな勘違いをしてしまっている気がする。
「あー、そうだ。夢に私が出てきた。それは間違いない?」
「はい。それだけは、強く覚えています。」
「そして、夢を見て幸せな気分になった。それも間違いない」
「はい。感覚は既に失われていますが。そういう記憶は残っています」
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/05/19(水)22:16:17No.804454354そうだねx2
「…じゃあ、私が出てきたから幸せになった…とは限らない。忘れてる夢の内容が、幸せだったのかも」
何を説き伏せているのかわからない。ただ、自分がブルボンの夢に出てきたというのが恥ずかしい。
「…その可能性は否定できません。ですが」
ブルボンの薄い表情が、少し寂しそうに変わる。ああ、そんなつもりじゃないのに。なんと言い訳しよう。
「ああ、私が言いたいのはね、ブルボン。その忘れてる幸せな夢を思い出せたら、貴女にとって素敵じゃないかなーって」
そうだ、その通り。
「了解しました、マスター。ですが。一度ロストした記録を思い出すことは困難かと」
それはその通りだ。何か方法はないものか。
「あー、もう一回寝てみるとか」
「オペレーション:眠気取得を実行。1.2..3...失敗です、マスター…」
「あはは、そりゃそうだよ、ブルボン。まずよく眠るための準備をしなきゃ」
「準備、とは一体」
「そうだね、うん。今日はトレーニングもお休みの日だし、気持ちよく昼寝するには…」
一つ案が浮かんだ。これだ。
221/05/19(水)22:16:39No.804454517そうだねx2
「…一緒にお風呂入ろっか、ブルボン」
**
「マスター。ここは機械ばかりで、私には向いてないのでは…」
「大丈夫大丈夫!」
そう言って、手を引く。
ブルボンを連れ立って、近くのスーパー銭湯へやってきた。
周りの視線はまあそれなりに。"三冠ウマ娘"のブルボンは有名人だ。
でも、有名人だって出かける権利がある。ウマ娘だって年頃の女の子なんだからと、私は思う。
「さあ、こっちこっち!お風呂で血行を良くしたら、身体があったまってよく眠れるんだから!」
コインロッカーから何まで機械だらけのスーパー銭湯で、未知の光景に目を白黒させているブルボン。
その手を取って、リードして。服を脱いで、湯船へと向かう。
321/05/19(水)22:17:00No.804454651そうだねx2
ミホノブルボンの身体を洗う。別にそこまでする必要はないけど、それが不審に思われている様子はない。
素晴らしく均整の取れた身体。しかし傷の痕はなく。彼女のトレーニングの成果と、恐れ多くも私の管理能力。その真髄が、彼女の肢体には詰まっていた。
「…マスター。すこし、くすぐったい感覚があります」
「ごめんごめん、ブルボン。優しく洗わなきゃと思うと、手が震えちゃって」
「…優しくしていただきありがとうございます、マスター」
律儀にお礼を言われる。すこし、にやけてしまった。
でも、見えていないから問題ない。
じゃばー。お湯を背中からかけて、彼女の身体を洗い終える。
…これ以上触れるのは、蛮勇だ。
「さ、背中はこれで綺麗になったよ。あとは自分で─」
「お待ちください、マスター」
へ?
421/05/19(水)22:17:17No.804454764そうだねx2
「私はマスターに背中を洗っていただき、"幸せ"でした。
ならば。マスターの背中を洗えば、マスターを幸せにできると考えます」
ぐい。確かに掴まれて、逃れる術はなかった。
そういえば、幸せな夢を思い出すために銭湯に来たんだっけ。
「…ありがとう、ブルボン」
ブルボンの背中に比べたら、私の背中は貧相だ。それを見せるのすら、恥ずかしい。
「マスターの背中は、問題ないと思いますが」
「…声に出てた?」
「マスターの口から言葉が出ていたという意味なら、はい」
恥ずかしい。耳まで真っ赤になる。
私には、もったいない言葉だ。
肉体美を褒められるべきは、ウマ娘の役割で。
"私は、ウマ娘にはなれなかった"。
521/05/19(水)22:17:35No.804454863そうだねx2
憧れた。遠い、遠い過去の夢。彼女達には耳が生えていることに気づかなかった。自分には尾が生えていないことに気づかなかった。
確かに見たその夢は、今も私を導いていて。縛っていて。
トレーナーという仕事にまで就かせた。
そしてミホノブルボンに出会い、彼女の夢を支えた。
夢。今は彼女が、私の夢だ。
それを見続けている限り、私は幸せだ。
ああ、そうか。だから恥ずかしかったんだ。私が貴女を見ていて、貴女も私を見ていたら。
それは、まるで。
「…ありがとう、ブルボン。あとは自分で洗うよ。ブルボンも自分の身体を洗っておいで」
そう言って、離れる。
いつかは、離れるのだから。
621/05/19(水)22:18:01No.804455042そうだねx1
「いい湯だね」
「はい、マスター」
「上がったら、眠れそう?」
「…体温の上昇を感知。意識にも眠気が混濁しています」
「それはよかった」
ざぱん。
「…そろそろ上がろうか」
「はい、マスター」
そうして、湯船から上がって、浴衣に着替えて。…ブルボンがうっかり触ったコインロッカーが、故障してしまったのは割愛しよう。
「…マスター。ねむ、けが」
休憩室。私とブルボンは、折り重なってうつらうつら。
「…うんうん、よーく眠りー…」
予定通り、ばっちり眠くなった。私も含めて。
視界が閉じられ。ゆっくりと互いに互いを沈め。
眠っていく。2人とも。
721/05/19(水)22:18:21No.804455181そうだねx1
白い世界。意識が白に染まって、私は夢の中にいることに気づく。
ああ、なんて。素晴らしい。
気づく。夢を見るだけで、私は幸せなのだ。
それはどんな夢でも変わらない。私がかつて見た夢も。私が彼女に見た夢も。眠る私が見る夢も。
その側には、この世界は。ウマ娘がいつも、夢を見せてくれるから。
ごとん。頭を打って、強制的に目が覚める。…おかげさまで、夢の内容を忘れずに起きれた。
ブルボンを見ると、まだすやすやと。小さく寝言が、聞こえた。
「…マス…ター…」
ふふっ。ほんとに私の夢を見てる。彼女は私のことを、どう思っているのだろう。マスター。その言葉に、どれほどの親愛を込めてくれているのだろう。
821/05/19(水)22:18:38No.804455295そうだねx2
「ねえ、ブルボン。こっそり教えてあげるけど。
私は貴女の夢を見れて、幸せだったよ。
頑張り屋さんなところも、ちょっと天然なところも。大好き」
そう、今のうちに吐き出しておく。返事の代わりに寝息が返ってくる。
最初の三年間を乗り越えて。これから先、ミホノブルボンはきっと走り続ける。
…そしていつかは。引退して、家庭を持って。彼女は優しい子だ。きっとみんなに愛される。私がいなくなっても。
「おはようございます、マスター。」
ぱちっ。ブルボンは目を覚ますと、すらすらと挨拶を述べた。
「…夢の内容は、覚えていません…。失敗です、マスター…」
そう申し訳なさそうに述べるブルボンに向けて、違うよ、と首を横に振る。
921/05/19(水)22:18:57No.804455439そうだねx2
「貴女の夢は、私が見てあげるから」
「それは、どういう」
自分でも言語化できないけど。ミホノブルボンというウマ娘のことを、私はよく知っている。それなら、当たり前のことだったのだ。
「だから、大丈夫だってこと!」
なんとなく、根拠はない。だけど当たり前。
「…はい、マスター」
彼女はいつも私を信じてくれていた。理屈がなくても、心が戸惑っても、いつも。
なら、これからも。
貴女の競争生命の最後まで。
「よし、帰ろうか」
そしてその終りの時。貴女がもう、1人で立てるようになった時。
私の愛は、鉄の如く燃え尽きる。
1021/05/19(水)22:22:14No.804456717そうだねx2
😇
1121/05/19(水)22:24:05No.804457410+
>😇
1221/05/19(水)22:28:56No.804459241+
ミホノブルボンは電気羊の夢を見るか?みたいなタイトルをつけたかったけどなんか脱線してつけられなかったです…
1321/05/19(水)22:32:44No.804460598+
マ-ベラス...
1421/05/19(水)22:48:25No.804466551+
良いですねぇ


1621430066809.png