レースの資料集めに熱中してしまった結果の徹夜明け、トレーナー室にあるベッドの上で仮眠から目覚めると背中に柔らかいものと重みを感じた。 目を開けると超至近距離に担当ウマ娘、セイウンスカイの顔がある。 「や」 へにゃり、と笑う彼女。 なんだか見てはいけないものを至近距離で凝視しているような気分になる。 思わず顔を伏せると、彼女の腕が首に乗った。 柔らかな二の腕だ。 「なにさ。お顔見してくれないんですか??」 彼女と反対側の髪の毛が彼女の手に弄ばれ、頭皮や耳の周りが爪でくすぐられる。 「うーん。トレーナーの髪ボサボサだねえ」 「あの、セイウンスカイ?」 「なに??」 「なんで俺の背中に乗ってるんだ?」 「お昼寝しようかな?って。嫌?」 「嫌、ではないけど女の子がそんな……」 「嫌じゃないならいいじゃないですか。ほら、君も二度寝二度寝」 良くない。耳元をくすぐられ、囁かれ、理性が崩壊寸前だ。 早くこの場を脱出しなければ。 「君がここにきてるってことはトレーニングの時間だろ?そろそろ行かなきゃ」 「まだ時間の余裕はあるよ。午後の授業をサボってここにきたからね」 「おいおい……」 彼女と反対側を向いてスマホを取り出すと本当にトレーニングまであと20分くらいであった。 本来ならば今さっき授業が終わったころだろう。 いつから彼女はここにいたのだろうか。 説得は出来なかったがこの状況から抜けねばと、腕をついて起きあがろうとしたその時、 「寝る前にスマホはよくないよ〜」 髪から離れた彼女の手が俺の腕を抑えつける。手からスマホがはぎとられ、そのまま彼女に手を握られる。 「んふ。逃げを打つ気?担当に似るのかな。逃がす気はないけど」 「す、スカイ、なんでこんなモガッ」 「うるさいでーす」 もう一方の手が後ろから回され口を覆われる。 手から女の子の匂いがする。 「なんでって?私さあ。トレーナーに結構真面目ちゃんにされちゃったような気がするんだよねー。前ならトレーニングの時間とか覚えてもいなかったのに」 そういえば最初の頃はトレーニングもすっぽかして釣りに行くような子だったっけ。 「トレーナーに変えられちゃった。だからさ。ちょっと仕返ししてあげたくなっちゃって」 「ねえトレーナー。今日はレースの後だから、流すだけだって言ってたよね。それくらいのトレーニングしに行くのと、一緒にさぼるの、どっちがいい……?」