去年の夏の日の事だった
合宿も終わり束の間の休暇、そんなある日のトレーナーさんとのお出かけ
デートだと思ってたのは多分私だけで彼はそうは思ってなかったのだろうか
靴を見て、服を見て、蹄鉄を見て、ランチを食べて──
やっぱり皆同じ事を考えるようで行く先々で学園のウマ娘とそのトレーナーに出会った
彼ら彼女らは決まって「あの話どう答えたの？行くの？」とトレーナーさんに聞いていた
何の話だろう？そう思ってもなぜだか聞けなかった、怖かった、この関係が終わってしまいそうで
進む訳でも引き返す訳でもなく壊れてしまいそうで
でも聞くまいと努めていても噂というものは嫌でも耳に入る、入ってしまう
その噂が本当だと確信してしまったのが去年の冬、有マ記念の翌日、4着の私を褒めてくれた、頑張ったな、ってその部屋で──
書類が目に入った、正確には書類に書かれた文字が目に入った
海外への招聘
あの話、行くか、行かないか
ああ、そういう事なんだな、見て見ぬ振りをして寮に辿り着いた瞬間肩の力が抜けた

多分トレーナーさんは私が想像していたよりも遥かに優秀で、私はそんな彼に似合わないのだろう
そう、思ってしまった
だから私は彼を送り出した、彼はせめてもの置き土産としてトレーニングのメニューが纏められたノートとレースに出走するにあたっての登録を全て済ませておいてくれた
だから──私は一人でも大丈夫だよ、トレーナーさんはもっともっと凄い事ができるよ
そう私は言った、心の裡の気持ちはついに伝えられずに
不思議と涙は出なかった、ただ受け入れてしまっていた
でも、いざ空港でトレーナーさんを見送った時、糸が切れてしまった
拭いても拭いても涙が止まらなくて、鼻血まで出てきて、顔がぐちゃぐちゃになってて、春の匂いのする空港の展望デッキで私は一人で泣きじゃくっていた
言えばよかった、ただ一言、好きです、って大切な人なんですって
でもそれを言う機会はもう訪れない、そう決まったから
でももしも奇跡が起こるなら──

「タンホイザさーん！！」
「頑張って下さーい！！」
「あっ！キタちゃんとダイヤちゃん！来てくれたの？」
「はい！」「はい！」
「私も今日は頑張るからねぇ〜！……頑張ったらきっと届くよね」
「……？はい！タンホイザさんならきっと届きますよ！」「キタちゃんの言うとおりです！だってタンホイザさん凄く努力してきたんですから！」
「あはは……」
努力、努力か
トレーナーさんが居なくなってからは寝れなくなった
だから毎日気絶するまで自分を追い込んだ
夜のメニューを強度も時間も増やした
同室には迷惑をかけたくないからトレーニングルームに布団を持ち込んだ
そうやって行くうちになんだか勝てるようになっていって、今こうしてターフに立っている

秋風が頬を抜けていく
出走の時間だ
──ゲートに入ろう
届くよね、そう願った時、奇跡が起きた
「タンホイザッ！」
「トレーナー、さん？」
なんでここに、海外に居るんじゃ
「……やっぱり、君と……俺は君のトレーナーだって──」
勝手だ、私がどんな気持ちで──
いや、勝手なのは私か？
分からない、でも口が勝手に動く
「届いたって事、ですか？」
「……ああ！」
なら、それだけでいいなぁ……──いや、まだ足りないかな、うん、そうだ
この心は、勝ってから……伝えよう、晴れた秋空の下私は──

奇跡なんて気軽に起きていいんだよ

よかった…

ありがたい

よくやってくれた！

>奇跡なんて気軽に起きていいんだよ
俺もその意見に賛成だ〜！

曇らせは最後にハッピーにするから良いんだよ！
おれはすこやかなきぶんでねる！

サンキュー三女神様！

ありがとうありがとう
これで明日も曇らせタンホイザが書ける

待てや！

>ありがとうありがとう
>これで明日も曇らせタンホイザが書ける
えっ？

脳の破壊はやめてくれ！

>ありがとうありがとう
>これで明日も曇らせタンホイザが書ける
シバくぞと言いたいけど曇らせ怪文書が出たら
その補完で尊い怪文書が読めるという矛盾の思考が

俺の心の中のチケゾーもう"わ"あ"あ"あ"あ"ん"！よ"か"っ"た"よ"お"お"お"お"お"お"！！と喜んでる

心身共に満ちたマチタンに敵無さそう

>奇跡なんて気軽に起きていいんだよ
奇跡を起こしてくれてありがとう
尊敬に値する

これでいいんだよこれで

闇の怪文書で曇った後光の怪文書を浴びるのは身体に良いからどっちももっと書け

光で終わるのならそれがいい

光と闇の果てしないバトルってやつか…

光と影の二つの心でしょ

サウナと水風呂の往復みたいだ

タンホイザが幸せで今日は良い夢が見れそう

胸糞悪い話と救いのある話を交互に読む事で"整う"んや

こんなロウリュもアウフグースも欲しくないよ…

脳が再生してきた…