横恋慕ウンス 1 造花というモノがある。 ポリエステルなどの樹脂を材質に用いて、人工的に整形された無機質な花。 当然植物では無いのだから、水が無くとも枯れる事は無い。 本物の花は、土と水と太陽が無ければ満足に咲く事も出来ず、水が足り過ぎれば根が腐ってしまう。 でも、種から芽吹き、花を咲かせ果実が実り種を運ぶ…その、生命力というか。“生きている”からこそ生まれる美しさというか。そういったものを持たない、所詮“咲いている花”という見栄えだけの作り物では到底太刀打ち出来ない、“本物”の魅力ってのがやっぱりあると思う。 何が言いたいかといえば、要は『ニセモノは本物には敵わない』という話だ。 ニセモノは本物があるから成立する。本物は何が無くとも本物だ。 結局、何かを羨んで真似ただけのモノでは一番にはなれない。一番になって…“一流”を名乗っていいのは、自分の道を走りきった強い者だけだ。 私が惹かれたあの娘は、どんなに泥だらけでも、たとえ劇的ではなくとも、確かに咲き誇っていた。 それが本当に羨ましくて、強く憧れて……『私だってそうなりたかった』と、嫉妬したのが始まりだった。 私は、自分がニセモノだとは微塵も思っていなかった。 いつだって自分なりに頑張ってきたつもりだし、結果も出してきた。勝負事に手を抜いた事なんてない。 そうした自信もあるので、自分で言うのもなんだけど、こと長距離において私“セイウンスカイ”はかなり強いウマ娘だろうと思う。 同期にも強い娘が沢山いて、世間では“黄金世代”とかなんとか言われていたりしたっけ。 なんだかんだといって世間では、クラシック戦線が終わる頃には何となく黄金世代の中でも格付けが済んだようだった。 私はというと、他の娘に比べれば一歩届かない感じ。二冠を取りはしたけど、他の娘たちも凄い成果を出してるワケで、特に文句は無い。悔しくないワケでも無いけど。 しばらくして脚を怪我するまでは、私は自分なりに頑張ってやってきたつもりだ。その後だって、復帰に向けてリハビリだって頑張った。ましてや誰かの後追いをするとか、そういう事は断じてなかった。そのはずだった。 同じ様な立場の娘に、キングヘイローというウマ娘がいた。 偉大な母の名前を振り払う為にクラシックを戦った気高い自称一流のウマ娘。母の幻影に縛られて、その影を追いかけていた…さっきの話でいう『ニセモノ』。 距離適性の合わないレースでいまいち勝ちきれず、他の黄金世代と比べればクラシックはパッとしない成績で終わってしまった彼女だけど、その後は何やら吹っ切れた様でスプリント路線で大暴れしている。転んでもタダでは起きない泥臭さに惹かれる人は多く、かく言う私もその一人だ。彼女を見ていると、私も復帰の為に頑張ろうとよく勇気付けられた。 でも、彼女も一人で起き上がってきたワケじゃない。 泥塗れの彼女を何度でも起き上がらせたのは、彼女の担当トレーナーだった。 最初彼女にトレーナーが付いたと聞いた時には驚かされた。 入学当初から同じクラスだった事もあり、からかっている内に友達になるのにそう時間は掛からなかったが、お世辞にも付き合いやすいタイプとは言い難い。 “一流”である事に拘る彼女は、場合によっては道化とすら見られる事も多かった。選抜レースの頃なんか、スカウトに来たトレーナー達の彼女を見る目はそれはそれは酷いものだったように感じた。なんせ、皆“キングヘイロー”では無く、その後ろの偉大な母親を見ていたのだから。 しかし、そこに現れたのがあの新人トレーナー。自身を「一流ウマ娘の担当である一流トレーナーだ!」と声高に宣言してみせたのはよく覚えている。キングの方が困惑していたのがまた印象的で、しばらくそれでからかっていた。 キングとの繋がりで私もトレーナーとはよく話す機会があったけど、彼はキング以上に彼女の目標にひたむきで、キング以上に彼女の適性を理解していた。だからこそその板挟みに苦悩する事も多かったみたいで、時々釣りのついでに相談に付き合っていた。 (……キングのトレーナーと二人きりとか良いのかな?)とか考えたりもしたけど、まぁ後ろめたい事は何もしてないし。私の一言がキングの助けになるならそれもまたよし。そういう風に考えていた。 そんなこんなで、私達はいつしか釣り友達になっていた。 トレーナーのいない私の相談に乗ってもらったり、キングの誕生日プレゼントの相談をしたり。彼は私の悩みにも真剣に向き合ってくれるし、私の事を良く信頼してくれている。その感覚が、本当に心地良かった。例えば私が共学の学校に通ってたとして、男友達が出来たらこんな感じだったのかなぁ? …私も自分のトレーナーを見つけていたら、こんな気持ちになっていたのだろうか。 それとも、彼だからこそこんな気持ちになったのだろうか。 もし彼が、キングよりも先に私に出会っていたらどうなっていたのか。 キングがいなかったら、私は彼ともっと親密な関係になれていたのだろうか。 そこまで考え到って、ようやく自分の心がわかった気がした。 「あぁ……私、好きなんだなぁ」 友達をいつの間にか恋愛対象として見ていた、なんてのは色んなお話で散々使い古された表現だけど、まさか自分がそんな事になるとは夢にも思わなかった。 自覚した途端、身体の内を血がもの凄い勢いで巡っているようで、暑くてたまらない。 誰かを想って自分を慰めたのは、この夜が初めてだった。 2 造花というモノがある。 人工的な花なので当然植物では無いのだから、風に吹かれて花弁が散る事も無い。 本物の花は、風が吹けば花弁は散ってしまう。とても弱いモノだ。 でも、その花びらの太陽の光に照らされた自然な色合いだとか…樹脂で作られたそれにはマネ出来ない、生きているからこそ生まれた自然な彩やかさがある。造花はそういったものを持たない、所詮はニセモノの花。 綺麗な色を真似たところで、同じものにはなれない。 ニセモノには相応しい場所があったはずだ、という話だ。 キングとトレーナーが単なる担当とは違う、特別な関係であるのは何となくわかっていた。 昼間は食堂でキングからトレーナーの相談を受けて、夕方には川辺で釣りをしながらトレーナーからキングの相談を受けて。 まさに相思相愛、一蓮托生、比翼連理、一心同体。お互い不器用ながら、キングはトレーナーを支えに壁を乗り越え、トレーナーはキングに釣り合う自分になりたいと自身を鍛えてたり。もうなんか、そんな二人に挟まれる私としては眩しい事この上無いんだけど。 そうして二人と付き合っていく内、私の心になにかドロドロとしたモノが渦巻いていくのを確かに感じた。 『誰にも理解されなくていい、たとえ独りであっても、自分は一流のウマ娘であると証明してみせる』と意気込んでいた…そんな孤高の王はもういない。友人の成長は喜ぶべきだ。 なのに、私の心にあったのは寂しさと罪悪感。そして……『私だってそうなりたい』という嫉妬心。 「ふっ…、うぅっ……」 こんな事はもうやめにしよう。 自分を慰めるその度に、そう決めていた。 ある時、脚を壊した。 屈腱炎。治らない故障では無いけど、治るまでには長い時間が掛かる。出走予定だったレースはすべて取り消しにせざるを得なかった。 悔しい。悔しい。悔しい。 こんな事で今までの積み重ねはいとも容易く崩れ落ちてしまう。私が三本足でなんとか歩いている間にも、皆は先へ駆けて行ってしまう。 誰が悪いワケでは無い。ただ、私の運が悪かっただけ。そんなやり場のないストレスを抱えた私を、彼はやっぱり変わらず、真剣に受け止めてくれる。 ……もちろん、友人として。 私の愚痴に返す言葉を、彼は慎重に選んでくれる。そうやって私を思いやってくれるのが嬉しくて、つい付き合わせてしまう。彼が嫌がらないのを知っているから。 悪い事をしているとは自覚している。だから、いつも別れ際に言う謝罪も間違いなく本心なのだ。 でも、一つだけ謝っていない事がある。 この瞬間だけは、私が彼の一番。私が彼を独り占めしているという優越感。絶対に知られてはいけない、秘密の心。 そうだ、私はキングから彼を奪って、独り占めしたいのだ。その欲望を、日々の付き合いや妄想の中で少しづつ処理しては、また募らせる。その繰り返しは、確かに私を充実させてくれた。 そんな空虚な喜びだけが、私の心を潤してくれた。 杖が要らなくなってから、彼を誘って出かけることが増えた。 遠出が出来ない内に見つけた釣りスポットだったり、普通に街に遊びに出たり。彼を色んなところに連れ回した。 別にキングに隠してる訳でも無くて、彼女としてはトレーナーを持たない私に貸し出しているような感じなのだろうか。私やトレーナーへの信頼もあってか、特に咎めるような事は言わない。まぁ、友達と遊びに行くのは普通の事だしね。 そう、私はあくまでトレーナーの“友達”。立ち振る舞いには注意が必要だ。変な噂が立っては誰も幸せにならないしね。 彼は彼で、怪我が治って元気になった私を見て嬉しそうにしている。ホント、ズルいよねそういう所。 でもやっぱり、好きな人が喜んでると私だって嬉しくなる。私が元気でいれば、この人は喜んでくれる。それがたまらなく嬉しくて、心地がいい。 彼を独り占めにしたいと言っておいてどういう事だと思われるかもしれないけど、キングとトレーナーの仲が進展する事は、普通にちゃんと喜ばしい。 流石に友人の幸せを妬ましく思う程スレちゃいない。なので、彼と遊びに出かけてもキングとのデートプランの相談を受けたりする。 ヤキモチも妬かないワケでは無いけど、真剣にキングの話をする彼を見ているとわかってしまう。『私は、キングが好きなトレーナーだからこそ好きになったんだ』と。我ながら拗れている自覚はある。 でもやっぱり、私も彼に恋をしている。叶わないのはわかっているけど、それでも好きなんだ。 たとえ叶わなくとも、どんなに拗れていようと、私の恋心は本物だ。 そう信じていた。 休日、街を歩いているとトレーナーを見掛けた。 (丁度いい、暇潰しに付き合ってもらおうかな) 声を掛けようと近づこうとして……足が止まる。トレーナーの出で立ちに気づいたからだ。 人を待つようにしきりに腕時計を確認して、周囲をそれとなく見回す素振り。誰かを待っているのは明らかだ。 きっちりセットされた頭髪に、カジュアルながら纏まった、オトナな雰囲気の服装。 誰を待っているのか、そんなの考えなくてもわかる。 程なくしてトレーナーの元に、これまたオシャレにおめかししたキングがやってきた。 少し遅れてしまったのか、申し訳なさそうに耳を垂らすキングの頭をトレーナーは優しく撫でた後、その手を取ってエスコートする。 どこからどう見てもお似合いの二人。一流のカップル。 ……私の知らない、二人の姿。私の知らない、二人のカオ。 私は、彼らの友達。それ以上でも以下でもない。それだけは知っていたハズだったじゃないか。なのにどうして、私は泣いているんだろう。 私は逃げるように寮に帰った。あの場に居ると、私の心がドロドロしてくるのがわかったから。 わかってる。こんな涙も、嫉妬心も、筋違いなんだ。 3 造花というモノがある。 例えば本物と瓜二つ、見た目には全く遜色ない造花があるとして。それに触らず本物と見分けようとする時、どんな方法があるだろう。 色々あるけど、一番手っ取り早いのは『火をつける』事だと思う。 本物ならさっぱりと燃えて灰になるし、ニセモノなら溶けて、異臭を放つ見るも無惨な残骸が残るだけ。 本物はその終わりも美しい。ニセモノはそうでは無い。そんな風に、私の恋を表すことも出来ると思う。 少なくとも私の恋の終わりは見るに堪えない醜さであったし、こんな私の恋はニセモノだったんだと感じる。 全部、自分で選んだことだ。 あれからしばらく、夜中に目を覚ましては泣いて、気付けば朝になってるなんて事を繰り返していた。泣いたってどうにもならない。心には自己嫌悪が積もるだけだ。わかってるけど、どうにもならない。 あの二人の姿を見て、私の恋心は焼けて醜く崩れた。黒く燻って、どうにも落ち着かない。 嫉妬……、嫉妬なんだ。私は、キングに嫉妬してるんだ。 私だって、彼と手を繋ぎたい。髪を撫でられたい。キスだって、その先だって……。 ……ずるい。ずるい、ずるい。 一度膨らみ始めた劣情が明確なカタチを得ようとしてるのを、私は確かに自覚していた。 ウマ娘にはヒトとは違う体質が色々ある。ヒトと共存する為に、それを抑える薬を服用する必要がある娘もいる。 例えば“ウマっ気”と呼ばれる月に一度来る発情期。私もこれを抑える薬を毎月服用している。 ……その朝、私はそれをワザと飲まなかった。 汚れた感情が私の理性を焦がして、最悪の手段へ足を動かす。歪んでいる自覚がありながら、私はその足を止められなかった。 それは悪いことだ。それはやってはいけないことだ。 でも、でも。 だって、その方が簡単だって気づいちゃったから。 「トレーナー、いる?」 大雨の夜、私はトレーナー寮の中、彼の部屋の前にいた。 ノックして程なく出てきた彼はまさかの来客に驚いていたけど、雨にずぶぬれで泣き腫らした顔の友人に相談があると持ち掛けられては、断れるタイプでは無い。思った通りに、部屋へと招き入れてくれた。 私の心は、もうとっくにおかしくなっていた。恋心、嫉妬、羨望……もう訳が分からないくらいに渦巻いた気持ちを、後先構わず全て彼にぶつけるためここに来た。 最初は脚の話で様子を見た。トレーニングは再開できたものの、満足にタイムが伸びないと話して、脚を診てもらった。一応、嘘はついていない。 相も変わらず年頃の娘の生脚を触るというのに真面目な顔しちゃってさ。ズルいよね。でもコレは、私に対して必要なこと。 発情期の身体で、好きな人に脚を触られて無事でいられる程、私の理性は出来ちゃいない。 心の中の枷が、彼が脚を触る度に一つ…また一つと外れていく。呼吸が荒くなっていく。 そうして私の脚に対して考えを巡らせていた彼を、ベッドに組み敷く。ウマ娘の本気の腕力には、大人の男だって敵わない。 「ッ!?き、急にどうしたんだスカイ!?なんか、気に障る事でも言ったか!?」 こんなになっても、わたしの事を気遣ってくれる。優しいなぁ……。でも、気に障るというのは確かに正解かもしれない。 「ハァ、……ハァ、いや、大丈夫だよ。トレーナーはなんにも悪くない。ふふ、悪くないんだ……。悪いのは、全部わたしなんだから……」 もう、彼の言葉が、心音が、匂いが、息遣いの全てが気に障る。 ───ゾクゾクしちゃう。 「ねぇトレーナー、わたしね?トレーナーの事が好きなんだ。ずっと、ずーっと前から好きだったんだ」 ずっと言えなかったことも、今なら言える。言ってしまえる。脳が沸騰するくらいの熱に浮かされ、ずっと我慢してた気持ちが溢れてくる。 「ずっとずっと、キミを独り占めしたかったんだ。キングからキミを奪って独り占めにしたかったんだ。キミがキングのことが好きで、キングもキミのことが好きなのも知ってた、だから、だから」 「待て、待ってくれスカイ!だからって、こんな……!」 「こんな?あはは、そうだね、そうだよね……わたしがヤケ起こしたようにでも見えるかな?でもゴメンね、なんだかわたし、キミが思うよりも悪い娘みたいでさ」 開放感のままに、彼の首筋に吸いつく。焦りからか汗の匂いが濃くなってきて、それが余計に頭を甘く痺れさせる。 「あぁ……、ダメだよトレーナー?そんな甘い匂いさせてちゃ。歯止めが、効かなくっ……なっちゃうからさぁ……っ」 「そんな事言ったって……ッ、やめるんだスカイ……!」 身体を密着させるだけで、擦り付けるだけでこんなに気持ちいい。 フーッ、フーッと、まるで動物みたいな息遣いになってるのが自分でもわかる。 怯える顔も悪くない。今、彼の全てを握っているのはわたしだという実感が湧いてきて、背筋がゾクゾクする。 あぁ、あぁ、たまらない。上がっていく体温を逃がすように制服とブラを脱ぎ捨てて、身体を擦り付ける。 「ねぇ、トレーナー?わたし、今までいっ……ぱい我慢してきたんだよ?わたしはキミが好きだけど、キミとキングにはちゃんと上手くいって欲しい。わたしは、キングを愛するキミを好きになったんだって、そう思って我慢してきたんだ」 「でも、でもダメだった。キミとキングが幸せそうにしてる程、すごく嬉しいのに、寂しくなるんだ。『キングよりも先にキミに逢えていたら』なんて事を、ずっと考えちゃうんだ」 「スカイ……」 「ねぇ、トレーナーにはわたしがどう見えてる?まだ友達?それとも一人の女の子?それとも、ただの悪い娘かな」 「んっ……少しでも情けがあるならさ、今夜だけでいいから付き合ってよ。大丈夫、いつもと同じだよ。釣りをしながら、おしゃべりするの。使う道具がっ、違うだけで、さ……っ」 「おっ、おいダメだスカイ!俺達はっ……」 無理やり彼のズボンを下ろすと、大きく怒張したモノが飛び出てきた。 わたしに迫られて興奮したのか、単に危機感に緊張して反応したのか…多分後者かなぁ。まぁ、初めから勃ってる方が手間省けて良いよね。 「なんだかんだ言いながらちゃんとおっきくしてるじゃん、これでキングとも繋がったんだ?…じゃ、釣られてあげよっかな」 そういじわるを言いながら、口で咥えてみる。もちろんこんな事するのは初めてだけど、どうやら感じてくれてる様だった。わたしの刺激に合わせて腰がビクビク動くこの感じ、すごく好きかもしれない。 「くぅっ、はぁ、だ、ダメだ、お願いだからやめてくれスカイ、俺はお前を」 「『傷付けたくない』、かな?大丈夫、わたしはキミに何をされても平気だよ。それに、今日はキミを傷付けるために来たんだもん、やめてあげられないなぁ」 私がどんどん悪い子になっていく。彼の知らないわたしになっていく。 まだ抵抗するやさしい彼を黙らせるべく体勢を変える。腰を彼の顔に乗せて、すっかりぐちょぐちょになった下着を押し付ける。 ぐりぐり、すりすり……マーキングするみたいに彼の顔にわたしの匂いを擦り付ける。彼の吐息と混ざって、ただでさえ蒸れたスカートの下が熱くなる。 みて、わたしをみて。わたしの腐った心を全て曝けだす。 わたしにさわって。私を汚した火を、トレーナーにも分けてあげる。 今だけは。今だけは、わたしと同じに汚れて欲しい。 大雨は、更に勢いを増していた。