「流れの早い所はとりあえず今日は避けてちょっとポイントを探そうか」
「うん」
うん。だって。
わたし、未だに可愛い子ぶってんのかな
彼と一緒に居る時の癖になっているのか未だに抜けない
とはいえ気の合う友人と散歩をするのは楽しいのだからこれは仕方の無い事だろう
電車の通っている川沿いを二人歩いているとトレーニング中のウマ娘とも幾人かすれ違う
「そういえば今日はキングは？」
「義母さんとお出かけだよ。母の日のプレゼントを直接二人で選ぶんだとかなんとか」
「いやー、そりゃあまた一年前じゃ考えられなかった事だねえ」
「まあ良い事じゃないか」
「人は変わる、ってやつ？」
「そうかー？そう簡単に人は変わらんよ。簡単に曲げられない物もある
素直になれないものもある。そういうのがあの二人は邪魔をしていただけの話だからな」
成程。まあ自分にも身に覚えのある話ではある

やがて良い感じのポイントが無いか探していると
おあつらえ向きの水路を見つけトレーナーの袖を引っ張って指を差した
「ね、あそこなんかどう？」
「おお良さそうだな。水深も十分そうだし魚影も見える」
「そいじゃいっちょやりますか」
「ああ」
早速餌のパスタをつけ暫くするとすぐに反応が来た
かかったのはモツゴ。体長８ｃｍ前後の小魚で汚水に強くクチボソとも呼ばれるが
これは小さな口で餌だけ食べてしまう事から来ているらしい
旬は春から秋にかけて人によっては佃煮や唐揚げにもするそうだ
「おー、いいじゃんいいじゃん」
「クソ、先を越されたか」
子供のように悔しがり、俺もと意気込んだ彼の餌が取られるのに笑う
そして餌を付ける彼の左手に指輪が光っているのに改めて気が付いた

「…婚約会見、大々的にやったねぇ」
「あれな。散々リハは平気そうだったキングがまさか泣き出すとは思わなかったが…」
「はは。そこはまだまだトレーナーも女心ってもんが分かってないね」
ＵＲＡ優勝を成し遂げ、一つの区切りを迎えたこの春
誕生日を迎えたキングヘイローは記者を集めてトレーナーとの交際、そして婚約を発表した
まあこの二人が付き合っているのは誰の目にも明らかだったので驚きは無かったが…
先に教えて貰っていたとはいえ
二人の共通の友人であるわたしとしては
ああ、やっと来たんだな…と妙に感慨深い気持ちにさせられたし
ファンや周囲の人間が二人を一流として認め、祝福してくれたのがくすぐったくもあった
「うん。結構釣れるじゃん。やっぱ春先で魚も活発になってる？」
「だな。だがそろそろクチボソ以外も釣れるといいんだが…っと」
噂をすればだろうか。トレーナーの竿にかかったのはカワムツだった
こちらもモツゴと同じく比較的釣りやすい小魚である

「わたしさ」
「うん？」
「髪、伸ばそうと思うんだよね」
「おおいいじゃないか。似合うんじゃないか？スカイの勝負服にもあってるし」
「そうそう。失恋したら普通切るって言うじゃん、けどこれ以上短くすんのもあれだし
どうせだったら伸ばしてやろうかなってさ」
「…なるほど、な」
わたしは最近、トレーナーに告白した
以前から好きだった彼に、告白した
キングとトレーナーが好きあっていると知りつつ
鬱屈とした感情を抱えたまま三年間過ごし、専属トレーナーを見つけぬままでいたわたしに
ケジメをつけろとキングが発破をかけてきた結果玉砕したのだ
当然その日は大泣きに泣いたがそれでもお互いこうして友人で居られるのは
キングヘイローのお陰と言わざるを得ない

「でね、思いっきり奇麗になってやるから覚悟しといてね。逃がした魚は大きいぞ〜」
「かもしれんなぁ…だとしても俺も一つの竿を握るのに精一杯だからな」
「あ、そこはごめん、とかじゃないんだね」
「謝られたかったのか？」
「まさか」
彼は一途だ
分かってた
だからといってどうしようもない感情というのもある
キングヘイローが好きな彼を好きになったわたしだからこころがわやくちゃになってしまった
「…あれ、ティラピアいない？」
「どっかの養殖所から逃げて来たんだろうな。流石にこの竿じゃ無理だな…」
「この水路の広さなら手づかみでワンチャン…」
「やめんか」

区切りはついた
でもこうして、彼と一緒にいるとやはり胸はざわめくもので
我ながら女々しい事だが仕方が無い
新たなスタートは切れたもののこの晴天のようには中々上手くいかないものだ
「…スカイならやれるさ」
「えっ手づかみで？」
「そっちじゃなくてさ。俺も専属トレーナー、また紹介するから」
「…うん」
ならまず、その人の心境を読むのからやめて欲しい
背中を押してくれるその手を掴みたくなるから
ああ、残酷だ。けどまあやるしかないか
いつだってレースは走り切るまで結果は分からないものだけど
もうこのレースにキングとトレーナーは参加していないのだ

季節は皐月。そしてやがて梅雨が来る
果たしてそこが空けるまでにわたしは晴れやかな季節を迎える事ができるのだろうか？

なんだぁ…？！てめぇ

キングのスレ画だからまたイチャコラしてるよコイツらだと思ったのに…

じっとりしている…

キングトレーナーとウンスの釣りの人じゃないか！待ってた…

ようやく次のレースに出走できるんだね

梅雨はまだなんですけど！？

ちょっと泣く

キングをダシにせずにウンス画で建ててくれないか

キングがいい女だったアレの続きか…いいね…

ウンスのスレ画でやるべきじゃねぇかな…

>キングヘイローが好きな彼を好きになったわたし
だしキングのスレ画でやるのもわかる

シリーズもの怪文書だしこれでいいんだ
キングも全部分かってたことだから…

雨上がりの青空いいですね

ケジメつけろって言ってくれるのも優しさよな…

>そして餌を付ける彼の左手に指輪が光っているのに改めて気が付いた
ここでいったん休憩入れた