「あー…見てのとおりですね…」
「ほんっっっと、だらしないなートレーナーはー！」
返す言葉もございません。
なんのために学んだスポーツ栄養学なのかと自分を問い詰めたくなるが、
少なくとも当時は自分のためじゃなかったな…と思い返して考えるのをやめた。
「もー、しょうがないから明日はボクがお弁当つくってあげるよ！」
「え゛っ」
「…なに、その反応？ ボクだって料理くらいできるんだよ？」
いや、疑ってるわけじゃない。
ただ、家族でもない中学生にお弁当作ってもらう大の大人というのは絵面的にどうなのか。

「いや、テイオーの負担になっちゃうだろ？」
「ボクの分も一緒に作っちゃえばおこづかいの節約にもなるし、別にいいよー」
「それに寮生活でどうやって弁当作るんだ？」
「寮の台所借りて作ってる子、結構いるよー？」
まずい、断る理由が思いつかない。
正直に言えば食べてみたい気持ちはとてもあるが、これ以上俺の株を下げるわけには行かない。

「わ、わかった！ じゃあ代わりばんこに作るのでどうだ！ 俺とテイオー、当番制で弁当を作るというのは！」
「…えー、トレーナー料理できるのー？」
「バカにするな、忙しくてやらなかっただけでちゃんとスポーツ栄養学とかを修めてる身なんだぞ」
ありがとうスポーツ栄養学の授業。 今ほど学んでいて感謝したことはなかった。
「そこまで言うなら、お手並み拝見といこうかなー？ 言っとくけど、ワガハイの判定は厳しいぞよー？」
「…の、望むところだ。」
こうして、急遽明日から弁当作り対決を行うことになったのだった。

さて、そうなると今日のうちから準備をしないといけない。
ホコリかぶってる調理道具の煮沸などしているヒマはないので、この際だからすべて新調してしまおう。
ついでにテイオーとの弁当箱も買わないといけないと気付いたので、午後のトレーニングを軽めにして
オフということで二人でおそろいの柄の弁当箱を買い揃えた。
明日を楽しみにしてるね、などとニヤニヤして寮へ帰っていったテイオー。
見ていろ、度肝を抜くような弁当を作ってやる。

テイオーの好みを考えれば、ある程度レシピは決めてあった。
にんじんを中心とした料理で、かつ弁当として遜色ないもの。
しかし弁当など作る機会はなかったので、盛り付け方がよくわからない。
悩みながら立ち寄った書店でパラパラと弁当レシピの本を見ていると、ふとある特集記事が目にとまった。
これだ。

翌日の昼休み。ウキウキした顔でテイオーがトレーナー室にやってきた。
「さてさて、トレーナー君はどんなお弁当を作ったのかなー？ せめて、食べられるものにしてよねー？」
若干緊張した手で弁当箱を渡すと、さっと受け取ったテイオーがあっという間に机に座って食べる準備を整えた。
「ふふーん、トレーナーのお手製弁当、はいけー……ん……」
一瞬テイオーの手が止まる。そして、
「…うっっわ〜〜〜！！ すっごーい、これってボク！？」

そう、俺が用意したのはキャラ弁、それもテイオーの顔モチーフのキャラ弁だ。
定番の白飯を丸く型取り、切り海苔で顔をつくる。
そこに、甘辛く茶色く煮詰めた人参のてりやきでテイオーの髪型と耳を再現した。
テイオーを象徴する特徴な白い前髪は、クリームチーズを三角にカットして真ん中に位置取らせる。
そして、可愛らしいピンクのリボンは贅沢にローストビーフで飾り付けた。
余ったスペースには、彼女の功績である三冠をイメージして赤・黄・青ピーマンの野菜炒めを並べ、
耳飾りには彼女の大好きなはちみーゼリーをそっと添えた。
久しぶりに手の込んだ料理をしたが、腕はなまっていなかったようだ。

「すごーい、うれしいよトレーナー！ ありがとー！」
「お、おう。 見直したか？」
「見直した見直した！ やるじゃん！」
…ふふん、と心のなかでガッツポーズを取る。 はじめてテイオーに勝った気分になった。
こんなに喜んでくれるなら、料理も悪くないな…と思った次の瞬間。
「ｶｼｬｯ」
…カメラのシャッター音がした。 見ると、テイオーがスマホを構えている。
「あのー、テイオー何してるんだ？」
「せっかく作ってもらったから、SNSにあげるんだー。 トレーナーが作ってくれたって自慢する！」

…俺の静止も遅く、既にテイオーは画像をアップロードし終わったあとだった。
その後、俺のスマホにもあちこちから通知や質問が止むことなく届くことになった。
やれレシピを教えろだの、マヤにも同じの作ってだの、テイオーとはどこまでいっただの…
俺の腹筋が引き締まるより、心労で痩せるほうが先かもしれない。

テイオーと一緒にトレーニングの続きです
人間はスキの多い生き物

お弁当を自分のトレーナーに作ってもらうブーム来たか・・・っ！

>やれレシピを教えろだの、マヤにも同じの作ってだの、テイオーとはどこまでいっただの…
マヤは自分のトレーナーさんにお願いしなさいよ…

甘ったるい話だ…

むう…交換日記ならぬ交換弁当

こういうの好き…

むう…体格いいスポーツマンで実は料理も得意か…

SNSで公然と自分の物扱いするテイオーの外堀埋め作戦

こういう時手先が器用な男はポイント高いですよ！

愛バの栄養管理もトレーナーの仕事だな！ヨシ！

本当に弁当を自慢しただけなんだが
それに対する反響見て自分のやったことの意味に気づくも結果オーライで開き直るテイオーてのも

このテイオー絶対内心ニヤニヤですよ

昨日のお腹ぷにぷにトレーナーか…

ほほえましいけど男料理特有の悪いところが全部出ている…
まずレシピを決めてから食材を買うから節約の概念がない…だけにとどまらず調理器具一新とか準備段階ですごい金がかかってるし
初日だから気合入れたけど毎日続けること深く考えてなくて後が続かないやつ！

仁義なき弁当マウントが始まるんだ

>初日だから気合入れたけど毎日続けること深く考えてなくて後が続かないやつ！
隣に指導してくれそうな愛バがいるじゃろ？

なるべく使いまわせるような計画立てるのが一番だからな

中学生とお弁当交換する方が絵面的にどうかな！？
いやすっごいうらやましいしいい絵面だけどさ

>なるべく使いまわせるような計画立てるのが一番だからな
冷蔵庫の残り物整理の達人に教えを請いに行くしかないな…
テイオーと仲良かったしな

ウマ娘に隙を見せるなと白書にあれほど書いてあったろうに！

相手の顔のキャラ弁作っちゃうのは迂闊すぎる…

初回からキャラ弁とかハードル上げるとどうなる？

>冷蔵庫の残り物整理の達人に教えを請いに行くしかないな…
>テイオーと仲良かったしな
出汁があれば割となんとかなるとネイチャが言ってた

マヤのトレーナーも兼任してるのかな？

健全ですごく安心して見れたよ

こんなのめちゃくちゃ嬉しいやつじゃん…！