二次元裏@ふたば

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1055870 B21/04/28(水)19:30:27No.797250714+ 20:30頃消えます
「換えの用意、ですか?」
トウカイテイオーさんのトレーナーさんが珍しく私に声をかけてきた。普段はデスクにやってきて最低限の事務的な会話しかしない人なので呼び止められて廊下で話すというのは初めてだ。
「はい、いい加減寿命が近い、酷使している、というわけではないですが、やはり学園に来てからは比じゃない。」
うーん、と私は少し悩み込む。必要な書類形式は思い出せたが、申請から実際に換えが届くまでには時間が必要だ。
「見立てでは何時頃必要になりそうでしょうか?」

今度はトレーナーさんがしばらく考え込んで
「日本ダービーまで保てば御の字というところでしょうか、色々回ってみたのですが、手の施しようがないと断られまして。」
「それなら十分間に合うと思います、必要書類をお渡ししますので、一緒に来ていただけますか?」
「ありがとうございます。ああ、テイオーに聞かれると気にしそうなので、伝えないようにお願いできますか。」
「かしこまりました。」
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/04/28(水)19:30:40No.797250777+
後ろから付いてくるトレーナーさんの車椅子の車輪の音を聞きながら事務室へと向かう、確かに車輪やフレームからわずかに軋む音が聞こえる。
車椅子の交換が必要になる時は近いだろう。
221/04/28(水)19:30:53No.797250850+
ボクは呆然としてトレーナーから渡されていた宿題を床に落とした。
でもそんなことはどうでもいい、換え?寿命が近い?日本ダービーまで?
トレーナーは車椅子だから足が動かないのは知ってた、でも他の場所は平気だと思ってた、でも、違ったんだ。
日本ダービーまでじゃ二冠だよ、ボクなら絶対カイチョーに勝てるって言ってくれたのに、途中で投げ出すつもりなの?
なんでそんな大事な話をなんでもないことみたいに言うんだ!トレーナーはいつもそうだ、大事なことも、そうじゃないことも同じように話す、平坦で、冷たくて、温かいのは手のひらぐらい。
でも、どうすればいいんだろう……。ボクはお医者さんじゃないし、トレーナーももう手がないって……。
321/04/28(水)19:31:27No.797251027+
……⏰……
走っても走っても頭のモヤモヤが取れない、日本ダービーが終わったらトレーナーは死んじゃう。
代わりのトレーナーなんてついても、意味ないよ……。
「テイオー、身が入らないようだな。やる気が無いとは思えん、何があった?」
何があった?何かあったのはトレーナーじゃないか!ボクには秘密にして自分だけでなんとかするつもりだ!ボクはそんな子供じゃないのに!
「トレーナーのせいだよ…!」
言ってしまった、せっかくトレーナーがボクのために黙っててくれたのに、ボクは立ち聞きしちゃって、それで集中できないのをトレーナーのせいにしてる。最低だ、ボク……。
「どういうことだ?」
「トレーナーの体、もうボロボロなんでしょ……、日本ダービーまでもてばいいって、たづなさんと話してるの……聞いちゃった……。」
421/04/28(水)19:31:44No.797251124+
「ん……?」
「もう寿命だって、手の施しようがないって……それで、代わりのトレーナーを準備してるんでしょ……そんなのボク、やだよ………。トレーナーと一緒に三冠バになりたいよ……。」
これまで我慢してきたのに、胸の奥から悔しさと寂しさがこみ上げてきて、目元が熱くなって視界が歪む。
「ん、ん……?」
「ボクならカイチョーを越えられるって、トレーナーと一緒ならって、思ってたのに……話が違うじゃん……。」
「ちょっと、ちょっと、待て。何の話だ?」
「だから、トレーナーがもう寿命だって、手の施しようがないって……。さっき廊下でたづなさんと話してたじゃん!」
521/04/28(水)19:32:33No.797251371+
しばらくじいっとボクの顔を見ながら、眉間にシワを寄せて考え込んでいたトレーナーは、ああ、なるほど、と小さく呟いた。
「テイオー、お前は勘違いをしている。私の体は足以外は概ね健康だし、代わりのトレーナーなど探していない。」
え…?じゃあさっきたづなさんと話してたのは?
「ど、どういうこと?もう一回言って?」
「私は健康で、代わりのトレーナーなど探していない。私が換えを探していたのは車椅子だ。もう長いこと使っていていい加減ガタが来ている。修理も難しいというから新品の申請をしにいったんだ。」
「じゃあなんてボクには秘密って…!」
「車椅子が消耗したのは学園に来て芝生の上を走るようになってからだ、それをお前に知られたら気を揉むをと思ったんだが、逆効果だったようだな……。はぁ。」
ため息を付きながらトントン、と車椅子のアームレストを叩くトレーナー。じゃあボクが泣きそうなほど心配したのは無駄だったの?!
621/04/28(水)19:33:57No.797251818+
「なんだよそれー!!取り越し苦労もいいとこじゃん!!」
「そうなるな、全く、知らないうちに疲労でも溜まっていたのかと思ったぞ。まだ何かあるか?ないなら今度こそしっかり練習してもらう。」
「変な気遣いでボクを心配させた埋め合わせ、考えといてよ。」
半目でトレーナーを睨む。ボクの勘違いもあるけど原因はトレーナーだ。責任も当然トレーナーにある。
「わかったわかった、今度飯でも奢るからそれでいいだろう。ほら、続きだ。」
「はーい、もう隠し事はなしだからね、トレーナー!」
なんだか急に体が軽くなった気がする、鼻歌でも歌い出しそうなぐらい明るい気分で、ボクは坂道ダッシュを再開した。
721/04/28(水)19:35:43No.797252384そうだねx8
前回までのログです su4807763.txt
アンジャッシュをやってみたんですが難しいですね
やり取りしながら勘違いというのが出来なくて立ち聞きになってしまいました
821/04/28(水)19:40:09No.797253741そうだねx2
いやでもこれはこれで…
921/04/28(水)19:47:05No.797255950+
今回は天候に恵まれた良バ場だな
1021/04/28(水)19:49:57No.797256976+
アンジャッシュというか
書き下ろし短編、みたいな雰囲気でいい
1121/04/28(水)19:51:05No.797257384そうだねx1
ガタか来た車椅子が新品が来る前に壊れて事故って結局テイオーの勘違いが現実になるんだよね…
1221/04/28(水)20:03:41No.797261921+
途中ちょっと湿ったけどさっぱりしていますね
1321/04/28(水)20:11:00No.797264513+
ちょうどいい箸休めといった趣がある
1421/04/28(水)20:13:20No.797265385+
いいね
1521/04/28(水)20:27:29No.797270572+
かわいいなあ


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