何であれ極められた肉体操術は芸術の域に達すると言うが、まさしく私にはそうしたものに見えた。
線を引くように綺麗な放物線を描いたボールはリングへ触れることさえ無く、ネットだけを静かに揺らしてゴールに収まった。
「お見事です。まるで衰えていらっしゃいませんね」
「昔取った杵柄とやらさ。プロを目指していたんだからこのくらいはね。
　しかしこんなところでフリースローをやってるなんてどうしたんだい」
「それが〜…お恥ずかしながらこれが今日の授業内容だったのですが、授業時間内にうまく出来なくて」
約束の時間を破ってしまった負い目が私を縮こまらせる。
最初はここまで熱心にやるつもりは無かった。
うまくゴールにボールが収まらないから、軽く居残って練習していこうと。
しかし続ければ続けるほどシュートの成功率は悪くなり、気がつけばむきになって何度も繰り返しボールを放っていた。
負けず嫌いの虫が騒いだのだ。どんな些細な挑戦であれ負けっぱなしは許せない。私の悪い癖だった。
それを察したのか、腕組みをして私の話を聞いていたトレーナーはなるほどと苦笑していた。

「理由が知れて安心したよ。何かトラブルが起きていたら困っていた。なるべくなるべく時間は守ってほしかったけれどね」
「はい…。申し訳ありませんでした」
「今日は大目に見よう。それで…フリースローが入らないんだって？」
「はい。いくらかは成功するのですが、私の中で納得が行かないのです。どうか教えてはいただけませんか」
そうか、と言ってトレーナーはこちらへと歩いてきた。
彼はその昔、将来を嘱望されたバスケットボールのプレイヤーだったという。海外リーグも夢ではないというほどの。
しかしこれからという時に脚を患って、手術で脚は生身から金属の棒へと置き換わって…。
私はウマ娘としてレースに携わると決めた時から果てを目指すと志した。今でも決意は変わらず燃えている。
だがトレーナーの脚を見ると思う。もし私に、彼と同じような運命が降り掛かってきたとしたら。
ぞっとする。心がそんなこと考えるなと叫ぶ。何事からも逃げ出さないとする私がその想像からは必死で逃げたくなる。
骨折どころじゃない。脚が脚でなくなるのだ。それはきっと、想定することも出来ない絶望に違いない。

そんなふうに一度は絶たれた道から違う道へと乗り換えてここにいるトレーナーは、私に構えてみてと穏やかに告げた。
「こうですか？」
「ああ。うーん。少し力み過ぎだな。入れようという気持ちが強すぎる。そのままの姿勢でいて」
と、トレーナーは私の後ろに立って…ち、ちょっと待ってください。
何をしているんでしょうこの人。背中側から私を抱きしめるように。彼は長身だからすっぽりと。ボールに添えた私の手に、彼の指が。
トレーナーの指先は少しひんやりとしているくらいなのに、まるで私の指はバターで出来ているみたいにぐずぐず溶けてるんじゃないかと錯覚する。
気配が、息遣いが、耳元へ直に感じられる。常より泰然自若を心がけるはずの私の心臓は面白いように早鐘を打っていた。
なのに背中は絶妙に密着していなくて下心を感じないのが残念、ではなくて却って苛立たしい。
「弓道は経験者だったよね。僕はやったことないが、聞いたことのある射の概念と同じ。シュートは入れるんじゃない。入るんだ。
　力を抜く。まっすぐ上に柔らかく飛ぶ。肘を締めて、一定のスナップでボールを放つ。入れる要素を増やすんじゃなくて入らない要素を減らすんだ」

「は、はいっ！」
「いくよ。動きに合わせて。3,2,1…」
…実のところ、よく覚えていない。カウントダウンに合わせて彼の身体が伸び切り、私もそれにつられて体を動かしただけだ。
だが私の指先と重なった彼の指先がぴったり同じタイミングで離れたボールは、それが当たり前であるかのようにすんなりとリングを潜り抜けた。
私から離れた彼がボールの軌道の行方を追った後の視線を私へ向け、「ね？」と微笑みかける。
それが自分のかつての得意分野でなおかつ“夢”だったスポーツだからか、いつもより子供っぽい笑い方で。
一方で私はつい不満を訴えていた。彼と同じように子供っぽい膨れっ面で。
…私は我ながら、同世代の中では大人びたほうだなんて勝手な勘違いをしている。
でも彼はずるい。本当にどうしようもなく酸っぱいことも苦いことも経験してきた彼の稚気の前には、私だって子供に戻らざるを得ない。
彼はずるい。不意に私の心に潜む獰猛な部分を簡単に手懐けてしまう。
指先や、腕や、肩や、そういうこの一瞬で彼の身体が触れていた場所。
曖昧な温もりが今もそこだけじんじんと痺れさせていて、もう離れてしまっているのが少し寂しかった。

甘酸っぱい恋いい…

青春シテマース……

一人称僕だっけ…

人間には人間の、ウマ娘にはウマ娘のプロリーグがあるのかな
この世界なら身体能力の差はあれどお互いプロ同士のリスペクトしあう関係性があるんだろうな

骨肉腫…

甘いデース！
酸っぱいデース！

ここのグラストレ色々優秀過ぎない？盛りすぎじゃない？

>ここのグラストレ色々優秀過ぎない？盛りすぎじゃない？
割と初期から伏線はあったりするんだ

グラスのトレーナーはこのくらい盛らないと勝てない

ウマ娘の隣や前に立つトレーナーなんだ
これくらい盛られて当然よ

トレーナーは盛りすぎであればあるほどよいとされる

有望視されたバスケ選手が夢絶たれて嫁とも別れた上で何故ウマ娘のトレーナーを目指したのか

よわよわグラスいいデース
今なら勝てる気がしマース

エル。

グラスの理想は高いからこうして理想より高いトレーナーをお出しするんです

凄いトレーナーを持ってくることでグラスも頑張らなきゃという気持ちになるのでセーフ

エル。私のトレーナーいいでしょう

スピードが50上がった！⤴⤴
スタミナが50上がった！⤴⤴
パワーが50上がった！⤴⤴
根性が50上がった！⤴⤴
賢さが50上がった！⤴⤴
グラスワンダーは絶好調になった！⤴⤴

前回ちょっと押せたと思ったら差し返して来た…これが大人の余裕…

剣道だ将棋だバスケだとグラストレは優秀なのが多いな

全部トレーナーの手のひらのグラスいいデース

年相応に恋してるグラスいい…

将棋グラスは変な方向に目覚めてたな…

エルもトレーナーにマスクつけてもらって絆深めて来マース！

グラスは武人すぎてまだ中等部の年頃娘だということを忘れられがち

覚醒でナギナタ振り回すのは年頃の娘だからでいいのかな…？

血気盛んな年頃娘が微笑みひとつでねじ伏せられるのいいじゃないですか