二次元裏@ふたば

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162598 B21/04/27(火)12:22:53No.796837890そうだねx1 13:43頃消えます
「私の負け、ですね……」
昼下がりのトレーナー室、日課であるトレーナーさんとの将棋は、今日も私の敗北という結果に終わりました。
「今日は惜しかったね」
そう言って、トレーナーさんは微笑みながら人差し指を立てて口の前に持ってきて、いわゆる『しーっ』のジェスチャーをします。
それは、機嫌がいいときの彼の癖でした。
「お邪魔しまーす! グラスのトレーナーさん、いますか!?」
将棋盤の片付けをしていると、トレーナー室の扉が勢いよく開かれ、大きな声と共にエルが入ってきました。
「やぁ、エル。こんにちは」
「グラスのトレーナーさん! こんにちはデスっ!!」
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/04/27(火)12:23:04No.796837948そうだねx1
「あら、エル……トレーナーさんに何か用ですか?」
「いえ、エルはただの付き添いデス!」
そう告げるエルの後ろから、ベストを着た男性――――エルのトレーナーさんが姿を現しました。
「相変わらず腑抜けた面をしているな」
「君も元気そうで何よりだよ」
そう軽口を叩きあってから、エルのトレーナーさんは私のトレーナーさんと向かい合うようにソファーに座り、エルもその隣に腰掛けました。
私がそれを見て2人にお茶を出すための準備をしようとすると、トレーナーさんが立ち上がってこちらへ歩いてきました。
「手伝うよ、グラス」
彼はそう言って、彼と私がいつも使っている湯飲みと、来客用の湯呑みを食器棚から取り出しました。私はそれに準備したお茶を淹れて、彼がお盆でテーブルまで運びます。
「ありがとうございます!」
「どういたしまして、エル」
221/04/27(火)12:23:14No.796838001そうだねx1
2人にお茶を渡して、トレーナーさんはソファーに座り直しました。
私もエルと向かい合うようにトレーナーさんの隣に腰掛けます。
「それで、私に何の用かな」
「ああ、それについてだが――――ん?」
要件を話し始めようとしたエルのトレーナーが、私のトレーナーさんが使っている湯呑みを見て何かに気付いたような声を上げました。
「お前……まだ使ってるのか、それ」
「ふふ、私の宝物だからね」
トレーナーさんの冗談めかした返答に、エルのトレーナーさんは顔をしかめました。
どうやらトレーナーさんがいつも使っていた湯呑みは、彼らにとって何か特別な品物のようです。しかし、それが彼にとってそこまで思い入れのあるものだと知らなかった私はただ首を傾げることしか出来ません。エルの方を見ると、彼女もそれについて知らなかったようで、不思議そうな顔をしています。
321/04/27(火)12:23:25No.796838055そうだねx1
「これはね、彼が昔、私の誕生日に贈ってくれたモノなんだよ」
不思議そうに湯呑みを見つめていた私たちに、トレーナーさんはそう説明してくれました。
「昔……ですか」
「うん、そうだね……十年くらい前かな」
「ケ!? 十年!?」
十年、というトレーナーさんの言葉にエルが口を大きく開けて驚きます。かくいう私も、想像していた以上の付き合いの長さに驚きを隠せません。
「幼馴染! という奴ですね!」
「そんなに上等なものではない。精々腐れ縁とかいうヤツだ」
エルのトレーナーさんはそう言って、イヤだイヤだ、とわざとらしく嫌がる素振りを見せますが、顔はどことなく嬉しそうでした。
「――と、そんな話をしに来たのではない。私が今日来たのはな……」
421/04/27(火)12:23:37No.796838119そうだねx1
「う、んぅ……?」
目が覚めると、側頭部に少し硬い感触。目の前にはテーブルと、その向こうにはソファーに座る男性と女性の足が覗いていました。
「おや、起こしてしまったかな」
ぼんやりした頭を起こそうとしていると、頭上からトレーナーさんの声が聞こえてきました。そちらを向くと、見えるのは少し困った顔で私を見下ろすトレーナーさん。
冷静になって状況を確認すると、私はトレーナーさんに膝枕をされているようでした。
「す、すみませんっ」
急いで彼の膝から頭を退けて起き上がります。どうやら気が付かないうちに眠ってしまったようです。
「疲れているのなら、無理しなくてもいいんだよ」
「いえ……大丈夫です」
ふとトレーナーさんの湯呑みを見ると、お茶がなくなっていることに気が付きました。エルのトレーナーさんの湯呑みも空になっています。
521/04/27(火)12:23:51No.796838193そうだねx1
「あ……私、お茶を淹れてきますね」
そう言って2人の湯呑みをお盆に載せてお茶を淹れるためにポットへと向かおうとしたとき、焦って動いたせいか足を滑らせてしまいました。
「っ!?」
バランスを崩し、転倒する私。手に持っていたお盆に載せていた湯呑みは床にぶつかって粉々に割れてしまっていました。
「ぁ……」
トレーナーさんがいつも使っていたあの湯呑みも、床に破片に散らばり、既に原型を留めてはいませんでした。
私は、彼が大切な宝物を壊してしまいました。
「グラス……!」
転倒した私の元に、トレーナーさんが駆け寄ります。駆け寄って――――
「大丈夫? 怪我はないかな、グラス」
――真っ先に、私の心配をしました。
621/04/27(火)12:24:03No.796838246そうだねx1
「は、はい……ですが、湯呑みが」
バツが悪そうに目を伏せる私に対して、彼は微笑みながら私の手を取りました。
「いいんだよ、湯呑みなんて。グラスに怪我が無くて本当に良かった」
そう告げる彼は私に怪我がないことを本当に喜ぶような笑顔で、私に優しくしてくれます。
「申し訳ございません、トレーナーさん……私のせいで……」
「気にしなくていいんだよ。湯呑みくらい、また買い直せばいいんだから」
「ですが、その湯呑みは――」
私が壊してしまったのは、ただの湯呑みではなく、彼が親友からの贈り物として受け取ったもの。新しく買い直したところで、それは代用品にはなりません。しかし、トレーナーさんはくすりと笑ってこう告げました。
「おや、居るじゃないか。あそこに1人、代わりを用意できる人が」
そう言ってトレーナーさんは、ソファーに座っていたエルのトレーナーさんの方を示しました。
721/04/27(火)12:24:13No.796838301そうだねx1
「おい、まさか」
「おやおやおや、まさか用意してくれないのかな?」
いたずらっぽく笑うトレーナーさんに、エルのトレーナーさんは大きくため息をつきます。
「ふん、精々次の誕生日を楽しみにしておくんだな」
「ふふふ」
落ち込む私の頭を、トレーナーさんは優しく撫でてくれます。
「私にとっては、グラスのほうが大事なんだよ」
そう言って私を慰める彼は、自分が大事にしていたものを壊した相手に向けている顔だとは思えないほど穏やかで、嫌な顔はおくびにも出しません。
そんな彼の様子を、褒める人はいても苦言を呈する人はいないでしょう。
なのに、私は。
――どうして、こんなにも残念な気持ちで一杯なのでしょう?
821/04/27(火)12:24:25No.796838344そうだねx1
「……グラス」
夜も更けた頃、寮の自室で、エルが真剣な面持ちで私に向き合います。
「エル?」
「正直に答えてください、昼間のアレはわざとデスか」
エルが私にそう問いかけます。昼間の、というのはきっと私が湯呑みのことでしょう。
私が、彼の大事な湯呑みを故意に壊したのかと聞いているのでしょう。
「――いいえ、そんなわけありません」
「……そうデスか」
私が一言、そうはっきりと否定すると、エルは静かに答えて言葉を続けました。
「あの時のグラスは、とても残念そうな――――まるで、期待が外れたような顔をしていました」
「きっと今のままでは、駄目デス。グラスのトレーナーさんにとっても、グラス自身にとっても。……アタシが言いたいのは、それだけデス」
そう言い終えると、エルは自分のベッドに潜ってしまいました。
私は……どうするべきなのでしょうか。
その日は、眠りにつくまでにずいぶんと時間がかかってしまいました。
921/04/27(火)12:28:33No.796839490+
快晴良バ
1021/04/27(火)12:29:09No.796839642+
エル。
1121/04/27(火)12:30:32No.796840007+
おっも…
1221/04/27(火)12:31:18No.796840221+
真面目なエル…?
1321/04/27(火)12:32:13No.796840440そうだねx3
>「あら、エル……トレーナーさんに何か用ですか?」
ここ怖い!
1421/04/27(火)12:33:30No.796840790+
お仕置きを期待してる卑しいメスウマデース…
1521/04/27(火)12:34:54No.796841146+
グラトレエルトレキテル…
1621/04/27(火)12:35:32No.796841311そうだねx10
他人の面前で思い人に公然と叱責されたいとか性壁1080度スノボトリックかよ
1721/04/27(火)12:36:19No.796841533+
>グラトレエルトレキテル…
ビリィ
1821/04/27(火)12:36:52No.796841676+
おっさんたちの腐れ縁いいデース!
1921/04/27(火)12:37:19No.796841820+
このトレーナーさん優しいから多分直接お願いしないと御仕置きしないんじゃないかな…
2021/04/27(火)12:39:53No.796842508+
男トレーナーは男トレーナー同士くっつくべきだじぇ…
2121/04/27(火)12:40:31No.796842692+
>ビリィ

退
2221/04/27(火)12:40:51No.796842770+
でもこのトレーナー本気で怒らせたらマジで心に来る感じになりそう…
2321/04/27(火)12:41:10No.796842845+
無意識のうちにレースで勝つより負けて叱咤されたいとかなったらお終いですよこれは…
2421/04/27(火)12:42:03No.796843116+
>無意識のうちにレースで勝つより負けて叱咤されたいとかなったらお終いですよこれは…
マスク(戦う理由)は自分でつけないといけないってのがよく分かる
2521/04/27(火)12:42:35No.796843281そうだねx1
グラス。
2621/04/27(火)12:43:58No.796843674+
湯呑み<グラス
2721/04/27(火)12:44:23No.796843814そうだねx2
…今はよくてもいつか後悔するデース
勝負は正々堂々正面からデース…
2821/04/27(火)12:45:23No.796844097そうだねx5
こういうタイプの人は怒らない
多分静かに失望する
2921/04/27(火)12:46:29No.796844426+
トレーナーの部屋でソロぴょいして見つかってお仕置きをせがめばいい
3021/04/27(火)12:46:31No.796844436そうだねx1
>男トレーナーは男トレーナー同士くっつくべきだじぇ…
失せろ
3121/04/27(火)12:49:06No.796845133+
でもトレーナーたるもの自分の担当バ以外の匂いが付いたものは部屋に置いておくべきではないのではないでしょうか
3221/04/27(火)12:49:07No.796845141+
聡いトレーナーだしグラスの表情に気がついてそう
3321/04/27(火)12:50:00No.796845362+
エルがグラスに忠告してるの初めてみた
3421/04/27(火)12:50:29No.796845487そうだねx1
真面目なエルコンドルパサーかっこいいかもしれない
3521/04/27(火)12:50:48No.796845585+
代わりを用意できる奴がそこにいるじゃないかはすごい好きな言い回しだ
3621/04/27(火)12:51:51No.796845860+
卑しい豚になりかけてるけど
このトレーナーさんなら大丈夫だろ…たぶん
3721/04/27(火)12:53:20No.796846294+
自分が悪いことをしたら蔑まれも仕方ないからな
不可抗力なんだ
3821/04/27(火)12:53:22No.796846304+
グラスワンダーはトレーナーのもっと激しい感情を見たい気持ちを抑えられない
3921/04/27(火)12:56:32No.796847146+
多分グラスの望むような事は起きないまま今順調に滅びに近づいている
4021/04/27(火)12:57:08No.796847301そうだねx11
たとえばふーふならゆびわとか…その人とのかんけいせいを感じられるものってあるよね
でもグラスちゃんのトレーナーさんとエルちゃんのトレーナーさんはそれが…湯飲みがなくなったとしてもおたがいのかんけいは全く変わらないから気にしない
だからグラスちゃんはざんねんだなって思ったんだよね
ウララそういう気持ちなんて言うか知ってるよ
嫉妬って言うんだよ
4121/04/27(火)12:58:54No.796847770+
湯呑みとグラスってそういう…
4221/04/27(火)13:00:00No.796848074+
性癖なんだよなぁ
4321/04/27(火)13:02:26No.796848680+
>嫉妬って言うんだよ
なるほどなぁ…
4421/04/27(火)13:03:01No.796848819+
ウララは賢いな
4521/04/27(火)13:07:42No.796849935+
自制心が足りないようですね。
4621/04/27(火)13:25:39No.796853981+
>嫉妬って言うんだよ
グラスの場合これとトレーナーに失望されたい性癖が混ざり合っておぞましいものになってるデス…


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