実際の場面を想像しながら話を聞く。確かにダンスを持久力のトレーニングに採用するのはいいアイデアかもしれない。
「それで今日も午後にスタジオを予約してあるんですが……トレーナーさんも良かったら”うまぴょい”一緒にやってみませんか？ダンスはミークにみっちり指導された私が手取り足取り教えますし、これもきっと貴重な体験になると思うんです」
ぜひやりましょう、と返事をする。ほぼ同期の桐生院トレーナーと交流を暖める良い機会だ。それにダンスに関して知識も経験もないままでは一流のトレーナーとはいえないだろう。ウマ娘達にとってウイニングライブはおまけなどではなく目標なのだから。
そしてこのアイデアは、きっとエアグルーヴとのトレーニングに活かせることだろう…そう確信つつ、俺はトレーナー室に戻ることにした。

「……それであの子、担当トレーナーと”うまぴょい”までいっちゃったんだって！」
「えーっ！マジ！？最近すっごく仲良いとは思ってたんだけど……一気に差しきっちゃったんだ！？」
廊下に立つ女生徒二人の方から、下世話な話が聞こえてくる。全くけしからん。わざとらしい咳払いをしつつ近づき、じろりと二人の方を見る。
「エアグルーヴさん！？……ご、ゴメンナサイ……」
「内容にとやかく言うつもりはないが……時間と場所を選べ。風紀を乱すな」
女生徒達は気まずそうに、そそくさと立ち去った。彼女達がしていた話はおそらく、距離感を誤ったウマ娘とトレーナーの噂話だろう。そして”うまぴょい”とは……そういった類の話に用いられる、ある種の隠語である。

それが何を指すかは時によって変わるが、大抵は口に出すのも憚られる、碌でもない行為のことだ。誰が言い出したのか知らないが、その珍妙な響きが一部のウマ娘達の心を掴み、こうして下卑た言葉を覆い隠すために使われている。
ひとつ大きなため息をつき、現状を整理する。トレセン学園の生徒でありながら、風紀を乱す会話を往来で行うなど言語道断だ。あまりひどいようであれば次の会議で議題に挙げ、生徒に注意喚起することも考えなければならない。
また仕事が増える……最近は自分でも自覚できるほどに疲れていた。あと30分でトレーニングが始まる。トレーナー室では既に奴が今日の練習内容を整理していることだろう。
少しぐらいなら、愚痴を聞いてもらっても許されるだろうか。そんな甘えた考えを頭の隅に追いやって、足早にトレーナー室へ向かった。

「入るぞ」
ノックされたドアが開き、俺の担当バが部屋に入ってくる。……資料の入ったカバンのジッパーが半開きだ。きっと疲れているんだろう。
「お疲れ様、エアグルーヴ。トレーニング開始まではあと15分あるから、ゆっくりしてていいぞ」
「ああそうさせてもらう。トレーニングに支障はないが、今日は仕事が多くてな」
「君は偉いな、頭が下がるよ。俺なんかよりもよっぽど学園のことを考えてる」
「たわけ。学園の女帝として当然のことをしているまでだ。褒められるようなことではない」
いつも通りの応酬だ。褒めて、女帝だから当然だとつっぱねられる。偉いのは本当なのだから、たまには素直に頷いてくれてもいいのにと思う。
そうだ、あの話をしておこう。俺も女帝のトレーナー、日々研鑽を続けてるってところを示しておかないとな。


「実はさ、俺もやってみようと思うんだ、”うまぴょい”」
「うまぴょいを！？」

「待て貴様！！自分が何を言ってるのか理解しているのか！？」
「意外か？ははは、やっぱり俺みたいなのには似合わないよな」
「似合う似合わないの話ではないだろう！！」
「でも女帝のトレーナーとして一度もやったことないのは良くないと思ってさ」
「一度もッ……！い、いやまあ貴様はそうであろうが！だからっていきなり……！」
「きっと君とのトレーニングにも活かせると思うんだよ」
「活かせるかたわけ！！」

「だ、大体……！誰とやるというのだ貴様！いつの間にそんな相手が……！」
「ん？ああ、まあ一人でやるものじゃないしな。桐生院トレーナーだよ」
「桐生院トレーナーと！？」

「あの女……！！いつの間に、いつの間にそこまで進んでいたというのだ！？」
「え？まあほぼ同期だし……よく意見交換とかもしてるし結構仲良くやってるよ」
「同期だからってそんな距離感の詰め方があるか！すっ飛ばしすぎだろう！！」
「すごく体力を使うみたいでさ。いい運動になるから一緒にやりませんかって誘われたんだ」
「それはそうだろうが！運動ならもっと他の選択肢があっただろう！？なぜよりにもよって……！」
「手取り足取り教えてくれるらしいから、この機会にバッチリマスターしてくるぞ」
「手取り足取りだと！？あの女疎そうな顔をしておきながらそういうタイプなのか！？」

「あ、でもそういえばミークも来るって言ってたっけな。だから三人だよ」
「ミークも！？」

「貴様それは話が変わってくるぞ！！なぜミークを巻き込んだ！？ミークはまだ……学生だぞ！？」
「ミークはすごく上手いらしくてさ。桐生院トレーナーにいろいろコツを教えたのもミークなんだって」
「貴様聞きたくもなかった情報をつらつらと！！見かけによらなすぎる！！明日からどんな顔で奴と会えばいいのだ！？」
「前はミークと二人だったけど、本番は三人でやるものだから来てくれて助かるって言われたよ」
「歪んでいる！その認識は歪だぞたわけ！！本番は三人とかそんなわけがあるか！！」
「でもやっぱこういうのって年頃の女の子が一番上手だからな、先生だと思って気を引き締めないと」
「最低だぞ貴様！最も低い！！せめてその思想だけは改めろ！！」

「そうだ！エアグルーヴも一緒に来るといい！俺も君のを見てみたいしな」
「私も！？」

ウワーッ！アンジャッシュだこれ！

「断る！そんな爛れた三角関係に加わってたまるか！！」
「そう言うなって。最初はちょっと恥ずかしくてもすぐに慣れるってさ」
「はっ……恥ずかしいとか！そういうことではない！！慣れていいものでもないだろう！！」
「でもいずれは大勢の前でやらなきゃいけないんだぞ？今のうちに練習はしておくべきだ」
「そんな目論見があったのか貴様！？複数人でヤるだけでは飽き足らず見せつける願望まであったのか！？」
「みんなの前でビシッと決めてこそウマ娘の女帝としてあるべき姿って奴だ。そうだろ？」
「違う！違うぞ貴様！！そんなことのために走るなど馬鹿者のやることだ！！」

「エアグルーヴ！！」
「っ！？」

「……どうか撤回してほしい。”うまぴょい”は、君が思っている以上に大切な目標で、みんなの夢であるはずだ」
「な、何を……！」
「エアグルーヴ、俺を信じてくれ。今はまだ恥ずかしいかもしれない。でも君が”うまぴょい”を踊る姿は、きっとみんなに勇気を与えられるはずだ」
「……ん？」
「速く走るために努力するのは当然のこと。俺はその上で君に、皆に愛される女帝として輝いてほしいんだ」
「だから……俺達と踊ろう、エアグルーヴ！俺もきっと君に『うまぴょい伝説』を踊らせてみせると約束する！女帝のトレーナーに二言はない、絶対だ！」

「……ちょっと待て。”うまぴょい”を踊ると、そう言ったのか？」
「え？だから桐生院トレーナー達と”うまぴょい”を踊るトレーニングをするって話だろ？」
「…………」

こんなん芝生えて適性上がるわ

「うーーっ、うまだっち！」
「うーーっ、うまぴょい！うまぴょい！」
「う、うまぴょい、うまぴょい……」
「……エアグルーヴ、覇気がない。どうかしたの？」
「……この曲を聴くと嫌でも思わされるのだ。私は何と卑しい女なのだろうとな……」

この女帝トレセン学園の誰よりも頭ん中ピンクだろ…

ムッツリだったか

卑しくて良いじゃない

そうだよね…うまぴょいと言えばうまぴょい伝説だよね…
断じてウワーッ！ではないよね…

アンジャッシュだ…

うまぴょい
逆ぴょい
ソロぴょい

エアグルーヴ勘違い度が上がっていきます！
この展開どうでしょう？

普段からこんな妄想してるから胸が大きくなってそう

もうこの学園は駄目だ！

うまぴょいを隠語に仕立て上げた者たちが悪いのでは？

>エアグルーヴ勘違い度が上がっていきます！
>この展開どうでしょう？
掛かってしまっているかもしれませんね
冷静さを取り戻せると良いのですが
私の性癖にはあっていますね

ﾑｯﾂﾘｶﾜｲｲ女帝はともかくトレーナーは話が噛み合ってないの気付いてそう

ムッツリ女帝かわいい

>うまぴょいを隠語に仕立て上げた者たちが悪いのでは？
閉鎖環境で隠語が流行るのは世の常だし…

>うまぴょいを隠語に仕立て上げた者たちが悪いのでは？
性行為のことをうまぴょいと呼び始めた掲示板があるらしいな

トレーナーが実は非童貞だとわかったらどうするんだろうな女帝

噂話が大好きな女子校生とトレーナーとの関わりという特殊な体験が組み合わさった結果がこれ

>トレーナーが実は非童貞だとわかったらどうするんだろうな女帝
どうもせんわたわけっ！

>>うまぴょいを隠語に仕立て上げた者たちが悪いのでは？
>性行為のことをうまぴょいと呼び始めた掲示板があるらしいな
としあき最低だな！

>>うまぴょいを隠語に仕立て上げた者たちが悪いのでは？
>性行為のことをうまぴょいと呼び始めた掲示板があるらしいな
さいていだよ壺…

>性行為のことをうまぴょいと呼び始めた掲示板があるらしいな
ﾋは掲示板じゃありませんよ

おあしすのマエストロ

隠語とか暗号でヤバい物とか裏取引してるのが問題になってそうだよねトレセン

仮面ライダー鎧武

>隠語とか暗号でヤバい物とか裏取引してるのが問題になってそうだよねトレセン
黙認ッ！

>性行為のことをうまぴょいと呼び始めた掲示板があるらしいな
桜花賞とか菊花賞って言うよりはマシだから…