二次元裏@ふたば

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1067731 B21/04/21(水)07:29:27No.794834710そうだねx2 09:59頃消えます
 ハルウララの朝は早い。
 その早さには大まかに分けて二つの理由がある。一つは言わずもがな朝のトレーニング。そして二つに、彼女はとある出来事以降、学園中の悩める子羊たちから頼られる存在となったからだ。
 特に忙しいのは朝ごはんの前と晩御飯のあと。彼女は至って健全なスケジュールで日々行動しているため、迷える者たちのシスターになれる時間は限られている。早朝三十分と夕暮れ三十分。それこそが彼女を少女から修道女へと変貌させる時間。今ばかりはみんなのよく知るウララじゃあない。彼女は『ウララさん』。このとき用にあつらえた修道服を身に纏い、目深にフードを被って彼女は来るべき悩みをにこにこ待つ。
 このトレセン学園の広い練習場、健全なスポーツマンシップが行き交うダートエリアの隅っこで。ウララのために特設された雰囲気盛りだくさんのプレハブに、様々な悩みを抱えた人々が集まってくる。今日もその例に漏れず、一人目の客人が懺悔室のドアを叩いた。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/04/21(水)07:29:53No.794834761そうだねx1
「ウララさん、ウララさん、いらっしゃいますか……?」
 この文句はウララを呼び出すための勅(ミコトノリ)のようなものだ。ノック二回に三秒おいてもう一回。そうすれば必然、事前予約必須な祈りが彼女に届き、あんまり厚くないドアが鍵の開く音と共に開いていく。
「はーい! いらっしゃいませどーぞどーぞ、立派なおもてなしはできかねますがささ、お座りくださいな!」
 元気な声と所作が簡素なプレハブに満ちていく。そんなウララの元気のよさにつられて相好を崩してしまいそうなものだが、どういうわけか来訪者の顔は雷轟く黒雲のようにひどく暗い。落ち込んでいるのか、悲しみにくれているのか。大丈夫かと尋ねることすら躊躇しそうな空気が、向かい合った二人の前に蔓延する。が、ウララはそんな空気の一切を無視して席にかけた彼へと問い掛けた。
221/04/21(水)07:30:15No.794834807そうだねx1
「今日はどーしたのー?」
 柔和な笑みを浮かべ、相手の出方を窺う。ウララが行う最初の一歩はただそれだけ。しかしそれこそが苦しみ喘ぐ子羊たちの頑なな心を溶かすのだ。ウララの笑顔に背中を押され、彼は重々しくも口を開く。
「実は……」
「うんうん、なるほど、なるほど」
「それで……」
「ほうほう……」
「と、言うわけで……」
「……うん、わかったよ! つまり、マックイーンちゃんがものすっごくすきすきオーラ全開で猛プッシュしてくるけど、トレーナーとしてどうして上げたらいいか全然わかんないってことだね!」
「はい……」
321/04/21(水)07:30:36No.794834842そうだねx1
 彼が溢したバラバラのピースを拾い集め、再度の確認とばかりにウララは直視したくないだろう現実を彼にぶつけた。他にも理由はあるだろうが、彼は肺からありったけの空気を絞り出しがっくりと肩を落とした。
「ご、ごめんねマックイーンちゃんのトレーナー! でも、うむうむ、ふーむ。なんとなくみえてきたよ!」
 安楽椅子に座る探偵のようにおもちゃのパイプを咥えてニヤリと口角を上げる。ウララがヒヒンと笑うとき、全ての謎は解けていく。噂を知るものなら誰もが確信する、自らに待つ我が世の春を。
「ほ、本当ですか?!」
 マックトレーナーの顔が目に見えて華やぐ。苦しみから早く解放されたい。そんな思いが声に言葉に乗っている。しからば、やることは一つ。カソックを纏う目の前の少女へ、息急ききって思いの丈をぶつける。
「真摯な想いを前にして、俺はマックイーンに何をしてやれるんでしょうか」
421/04/21(水)07:31:05No.794834886そうだねx1
「ちっちっち。正解はね、何をするんでもないんだよ!」
「何をするでもない……?」
「うんっ! あ、トレーナーって暖簾に腕押しって言葉知ってる?」
「は、はあ。手応えがないことの喩え……ですよね?」
 ウララは鷹揚に頷き、ぱちり、光るようなウインクを飛ばした。
「押してダメなら引いてみろ! 女の子ならそう考えるはず! 猛プッシュはすぐおさまるよ、ちょっとだけまってみよーっ!」
「……! ありがとうございます! 早速試してみようと思います!」
 レイニーデイだった入室時とは打って変わって、彼の顔はまるで晴天の青空の如く光輝いていた。憑き物が落ちたマックトレーナーは、短い謝意を伝えプレハブを後にする。
 あんなざっくばらんな受け答えを、果たしてアドバイスと言って良いのか。はっきり言って疑問ばかりが浮かび上がり、全く釈然としないやり取りなのだが、当人が満足しているのだから結果的には大成功と言えるだろう。
 また、この学園にウララの異名が轟くことになる。周知の事実だが、こと相談においてはフクキタルが表の顔、ウララは裏の顔としてトレセン学園に君臨している。その地位もひたすら磐石になるばかりだ。
521/04/21(水)07:31:27No.794834913そうだねx1
「ウララさん、ウララさん、いらっしゃいますか」
 息つく間もなく次の子羊がやってくる。ウララは先程と変わらず、実に丁寧にかつスピーディーに悩みを捌きに捌いていく。
「実は、トレーナーがボクの想いに気付いてくれなくて……」
「もっと積極的になってみよー! とーへんぼくにはプッシュが大事だよ!」
「ミー……担当の娘とどこかへ行こうと思ってるんですが……どこが良いでしょう、水族館以外でお願いします」
「んーそうだなあ、そしたらお風呂とかどーかな! 裸のつきあいで一気に仲良くなっちゃおー!」
「あの……ス……同室の子ともっと仲良くなりたくて、寝てるあいだにキスをしてしまったんですが大丈夫でしょうか……」
「うーん、大丈夫かな! そのかわりもーしないようにしよーね! クセになっちゃうよ!」
「なあなあ、マグロとザリガニ。どっちがよりブッ飛んだ生き方してると思う?」
「マグロ! おいしいからね!」
 そして、悩みを解決していくうちに時は過ぎ……
621/04/21(水)07:31:47No.794834940そうだねx1
「よし、これで朝の分は終わり……ウララ、そろそろご飯行くぞ」
「はーい!」
 現時刻を以て俺はウララのアシスタントから専属トレーナーへと転身する。
「きょうもおつとめごくろーさまであーる、トレーナーくん!」
 得意気に褒めてくれるウララに、俺は勿論。
「ははーっ! 有り難き幸せっ!」
 平伏する。こっちのが面白いからな。それにしても気になることばかりだ、少し問いかけてみるとしよう。
「なあ、ウララさあ……相談受けてるときだけT大卒業してないか?」
「あー! ちょうちょだ〜! まてまて〜!」
 俺が話している最中でもウララはぱたぱたと好奇心のままに遊んでしまう。しかし、正直その方が子供らしくて安心する。そのせいで、いつものように軽口を叩いてしまう。
「恋の相談とか結構受けてるけどさ、ウララはそういう相手、居ないのか?」
721/04/21(水)07:32:22No.794834984そうだねx1
 俺がそう尋ねた瞬間。びくんと体を震わせ俺の方へ振り向き、綺麗な桜の咲いた、しかし何故だか澱んだ瞳でジッと見つめられた。彼女の口元は水面に浮かぶ舟のようにほんのりとカーブを描いている。笑っているように見えるが、違う。無機質、失望、諦念、欲情。様々な景色が彼女の顔を通じて俺のなかに取り込まれていく。時間にして十秒そこら。おそらくその程度だったろうが、あの目で見つめられた途端蛇に睨まれた蛙のように体が硬直した。
「ふふ……どうかな〜トレーナー! ほらほら早くご飯食べにいこー?」
 ぐいぐいと袖を引かれて体が動くようになったのだと気付く。ウララに恐怖を覚えるなんて、それにウララが誰かと付き合うなんて、そうさ、そんなこと有り得る訳がない。努めて笑顔で彼女に笑いかける。
「……今日の献立はシャケだぞ〜っと」
「おいしそ〜! はやくいこトレーナー!」
 抱いた思いが嘘であることを信じて、俺はウララと共に食堂へと歩く。頭の中から要らないものを吹き飛ばすように、ウララとの本日のスケジュールを再度組み立てながら。
821/04/21(水)07:32:38No.794835009+
 なお、マックイーンのトレーナーは数週間後ひどくゲッソリしていたようだったが、この件にはあまり関係がないだろう。
921/04/21(水)07:37:40No.794835482+
まあ人のことは客観的に見れるからね…
そういうウララちゃんはしっかりアプローチしてるのー?
1021/04/21(水)07:41:33No.794835939+
あさの30分とゆうがたの30分がねつれつアプローチの時間だよ!基本はみっしつで2人きりだよ!
1121/04/21(水)07:44:27No.794836250+
狩人の目だ
1221/04/21(水)07:54:03No.794837414+
ウララちゃん暖簾に腕押しなんて難しいことわざよく知ってるね
1321/04/21(水)08:04:56No.794838721+
あの目だ…
1421/04/21(水)08:07:40No.794839037+
朝だけでこれか
かなりギッチギチだな
1521/04/21(水)08:20:11No.794840758+
恐らくすでにウララの中ではトレーナーをどうやって攻略してやろうかって算段はついてそう
1621/04/21(水)08:31:53No.794842358そうだねx1
ウララは『頭』が『いい』からな…
他の中等部の面々より確実に恋愛強者だと思う
1721/04/21(水)08:32:52No.794842482+
ウララさんの館は遠からずプレハブから本格的別館に進化しそうだな…
1821/04/21(水)08:50:51No.794844924+
マックイーンの相談を先に受けてトレーナーを差し出すことにしてたな?
1921/04/21(水)09:16:38No.794848526+
ス‥‥って誰‥‥?
スペちゃん‥‥?スズカ‥‥?スイープ‥‥?スカイ‥‥?クリークかファル子?
2021/04/21(水)09:23:05No.794849407+
>ス‥‥って誰‥‥?
そうぞうにおまかせするよ!しゅひぎむってやつ!すごいへんそうしてきてたしわかんないかも!あ、でも髪の毛は黒っぽい鹿さんの色だった気がするよ!白もまじってたかな!


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