この学園には様々なトレーナーがいる
    一心同体になりすぎて頭がメジロ印の砂糖菓子で脳が構成されたマックイーンのトレーナー
    ゴルシ２号と呼ばれているゴールドシップの伴侶でもあるトレーナー
    どんなに体が変化しようとも担当バの良き理解者になりすぎたアグネスタキオンのトレーナー
    ビワハヤヒデと両想いなはずなのにちょいちょいズレあってしまい将来の義理の妹をやきもきさせるビワハヤヒデのトレーナー
    女帝を支える宰相って渾名があるんだけど最近陰りっぽいのがついたエアグルーヴのトレーナー
    正直今期は変人とかイロモノ揃いじゃないかと思えるぐらいの多様性である


    では僕トウカイテイオーのトレーナーはどうかというと今挙げた人たちと比べると普通だ
    でもいつでも僕を見守ってくれて無理をしようとしたときは本当に心配して怒ってくれる
    そして僕が幾度となく骨折して挫けてもずっと僕に寄り添ってくれた
    心から信頼できる僕の大好きなパートナーだ
    悪いところとかある？と聞かれたら変にマイペースで何考えてるのか
    分からなくなるところと僕の気持ちに鈍感だということ
    同じ中等部のマックイーンなんかメールでもチュッチュッしあっているのに
    僕が同じことをしてもトレーナーに軽くあしらわれてしまうのだ
    これってまだ子供っぽく見られているだけなのだろうか
    それとも妹のようにしか思っていないということなのだろうか
    そのことを考えるともやもやする
    授業でもトレーニング中でもずっとずっと・・・


    そんな気持ちを抱えたまま
    ある日のレースに勝利し勝者インタビューを受けていた時のこと
    僕の隣にいたトレーナーにも質問する記者が何人かいた
    「トウカイテイオーを育てた手腕を他のウマ娘を発揮することはあるでしょうか？」
    「これから何かしたいことはありますか？」
    質問の内容は今後のことばかり
    最近の僕は少しそういった質問にひやひやしている
    トレーナーの躍進は本来パートナーとして嬉しく思うべきだけど
    出来ることならトレーナーはずっと僕を見ていてほしいという気持ちがある
    なのでこういう質問（特に前者）は勘弁してほしい
    「そうですね、今はテイオーだけに集中したいので他の娘は考えてないです
    　したいことは・・・うーん・・・」
    「なんでも良いんですよ、今したいことでもなんでも」


    どうにか返答が欲しい記者の煽りを受け
    ふとあっとした表情を見せたトレーナー
    「なら休み貰って帰省しようかなー最近帰っていないし」
    あのねぇトレーナー・・・記者が聞きたいのは今後の目標とかそういう話だよ
    的外れな答えに若干白けた顔をする記者
    まあ僕がひやひやする答えではなかったから良いんだけどね

    そう、この時までは

    僕の顔を見たトレーナーはさらに思いついたような顔をして顔
    「テイオーさぁ俺の故郷に来ないか？俺の両親に会ってほしいんだ」


    瞬間、記者たちからどよめきが起こる
    僕は信じられないような顔をしてる気がする
    写真に撮られたけどそんなの気にしてる場合ではない
    「お前が最高に輝いたときとかにメールでいつも話してたんだ
    　テイオーが１着になった、奇跡の復活を成し遂げた、テイオーはいつも凄いってね」
    待ってそんなことしてたの？僕のことをトレーナーのパパママに？
    「そしたら二人ともいつか会いたいって返事が来たことがあって
    　良い機会だし帰省の際にお前を紹介したいなって」
    ねえ分かってるの？そういう話を記者の前でする意味
    マイペースなのにも限度ってものが
    「あー・・・嫌か？」
    でも僕は
    「嫌じゃない！」
    即答しちゃった


    「僕もトレーナーのパパママに会ってみたい！」
    「そうか親父もお袋も大歓迎してくれるよ」
    チャンスが突然降ってきたかのようだ
    トレーナーが両手を広げて自分は無防備だ
    テイオーのものにしても良いよと言ってるように思えた・・・だったら！

    もう攻めるしかない！攻めて攻めて攻めまくるんだ！

    一般常識からして正しいとか間違いとか知るもんか！

    今この瞬間が！僕が！僕のトレーナーへの想いが絶対なんだ！

    「それならトレーナーも僕のパパママに会いに行くのはどう！？
    　二人で取った栄光は僕のパパママにも報告しに行くのが筋ってものでしょ！」


    どんどんざわめきが大きくなる目の前の記者たち
    僕は気にならない
    というより・・・利用しちゃおう
    最高の飯のタネってものを僕が提供してあげてるんだ
    その見返りに壮大に報道してもらわないとね
    「なるほどそりゃそうだわ、それなら」
    「二人で一緒に会いに行こう！」
    そうしようそうしようと僕たちはにこやかに今後の予定を立て合う
    記者たちは早く記事にしようと我先にその場から走る
    今やレースを行っているのは記者の人たちの方だ
    どんどん走ってヒートアップして報道熱も高めてほしい


    学園に戻ると一斉に皆からおめでとうおめでとうと拍手された
    マックイーンなんか泣きながら「本当に良かった」と言ってくれた
    トレーナーは戻った後理事長に呼び出しされたらしいけど
    「なんか理事長がポケットマネーで臨時収入くれた、これで菓子折り買えって」
    良かった理事長も後押ししてくれた
    行けるのは次の連休時らしいから少し時間が空く
    それなら早くパパママに事情を説明して事前準備してもらわなきゃ

    そういえば皆が僕を応援する中エアグルーヴが
    「そうか・・・そうやって周囲にカップルだと認識させる手があったか」
    とぼやいていた
    エアグルーヴもトレーナーとの仲を深めたいのかな
    上手くいくといいな