二つ返事で了承していただき、レース場周辺の市街を散策しています。
日が落ちかけようとしている町並みからは、独特の匂いがいたします。
帰宅しようとしている方たち向けの、飲食店の仕込みの匂いや、帰りを待つ家庭の晩ごはんの支度、みなそれぞれに、今日の夕食というゴールに向けて足並みを揃えています。
そんな中で、嗅覚、視覚、双方を捉えて離さなかったのは、少し路地に入ったところにある、焼肉屋「ウマナミ」と書かれた看板。
レース場の周辺ともなれば、ウマ娘向けの量を提供する飲食店も数多くあります。その名が示す通り、ここもまた同じなのでしょう。ええ、そうに違いありません。ここならば、私は…！
「あそこにいたしますわ」
そう言うやいなや動き出していた足は止まることなく、気がつけば店内のテーブル席に腰を据えて、メニューを開いていました。
「はっ！も、申し訳ありませんわ…私とした事が、無意識に…」
恥ずかしくなって俯いた私を見て、トレーナーさんはただ笑って一言、
「気にせず、好きなだけ食べてね」
とだけ言ってくれます。

こうした事は初めてではないのですが、恥ずかしさと同時に、そんな私を肯定してくださることに喜びを感じてしまいます。
それはそれとして。
トレーナーさんの許可も得ました。
私、今から少しだけ悪い子になりますわ。
手始めに、ライス大盛り2杯と、カルビとハラミを5人前ずつ。
タンから食べた方がよいとか、そういった作法や常識はもう関係ありません。
今の私は、肉を求めてやまない獣。とにかくがっつり行きたいのです。
「カルビとハラミ、あとお米です！ごゆっくりどうぞー」
早速お肉を載せた皿が机に並んでいきます。
まるでパドックのように、鮮やかな肉が出走の時を今か今かと待っています。高級焼き肉店ではありませんが、見栄えはなかなかのもの。思わず笑みがこぼれます。
いただきますは先に済ませておきます。一旦走り出せば、もう言う暇がないのですから。
（さあ、今ゲートが開きました！各肉一斉に網の上へと飛び込んでいきます！）
そんなナレーションを脳内で響かせながら、お肉を次々と投入していきます。

レース場に響き渡るウマ娘たちの足音のように、ジュウジュウと一斉にお肉が網の上で焼かれていきます。ああ、なんと甘美なる光景なのでしょうか。跳ねる油の一つ一つまで見えるようですわ。はやる気持ちを抑えながら、焼き加減を調整していきます。
（っ！ここですわ！）
あまり焼きすぎず、柔らかさと焼き目の香ばしさを両立した、ミディアム・レアの状態を見極め、網から肉を取皿へ。
さあ、ついに私という名のゴールへ一直線。と、その前に。
（スキル発動！ワンバウンドですわ！）
口には出しませんが、心の中で高らかに宣言します。皆様は、口にライスを入れた時、油でコーティングされた口腔が少し、もそっとした感じにお米に油を吸われてギャップが生じてしまうことはありませんか？私はあります。お肉をお米の上でワンバウンドさせ、油を少し吸わせることで、それを防ぐのです。過剰な油を分割することもできる、一石二鳥のテクニックなのですわ。
お肉とお米。両者は私のトレーナーと私のような一心同体コンビではありますが、こうしてひと手間加えることで、さらに濃密な一心同体になるのですわ。

一度食べ始めた私はもう止まることはできません。押し寄せる肉の波動にその身を任せるのです。
お肉、油、お米。
タンパク質、脂質、炭水化物。
だんだん語彙も少なくなってきました。
もう余計な思考は不要。
ひたすら口の中に目の前の食物を入れていきます。
お肉、美味しいですわ！お肉、美味しいですわ！
タレもうまいですわ！タレもうまいですわ！
うまいですわー！と叫びたいのですが、あいにく口いっぱいにお米と焼き肉がつまっていますし、いくら個室に近いテーブル席とはいえ、公衆の面前で大声を張り上げながら食らいつくわけにはいきません。
「うまっ、うま、っぁい、ですわっ」
実際に出る声はこんな不格好なもので、体の底から湧き上がる感動、情動、その他諸々を、肉と米、時々お水の波で押し流しながら、ただただ肉を食らう獣になります。
食べながら喋るだけでもはしたないのですが、もうそんなことはどうでもいいですわ。今の私はメジロマックイーンとは無関係。メジロ肉食いーンですわ！
……上手くもなんでもないですわね…これではシンボリルドルフさんになってしまいますわ……

さすがに少しだけ恥ずかしくなってしまった私は、一旦、箸をおきます。何事かと心配した私にお水を渡してくださるトレーナーさんに感謝し、喉をスッキリさせた後、ゆっくりと、談笑しながら食べることにいたしました。がっつくほどの勢いはなんとか落ち着かせることができましたわ。せっかくの二人でのお食事ですもの。ここも、大事にしなくては。
お会計をすませ、店の外に出ると、もう日はとっくに落ちて夜になっていました。
「ふう、大満足ですわ！」
扉を閉め、夜風に身を委ねながら、食後の軽い散歩も兼ねて、通りを少し歩きます。
「そういえば、焼き肉にはビールがあうと、どこかで聞いたことがありますわ。トレーナーさんは、よかったのですか？お水しか飲んでいませんでしたが…」
確かに美味しいけど、未成年との食事で飲むのもなんだかね。と言うトレーナーさん。
そうですわ！
これは、これからの私達の関係に活かせるかも知れません！
「でしたら、私がお酒を飲める年齢になった時、また、こうしてまた二人でお腹いっぱい、焼き肉をしませんこと？今度は、ビールで乾杯して」

自分でよければいくらでも。そう応えてくれたトレーナーさんと顔をあわせ、笑いあいます。
「ふふっ、約束が少し、おじさま臭いかもしれませんわね」
ああ、大人になった時の楽しみが、また一つ増えてしまいましたわ。
迎えの車が来るまで、肩を寄せ合いながら、これからの、具体的には明日以降のトレーニングの増量について話し合いながら、未来の私達に思いを馳せるのでした。

演者

メジロマックイーン役　メジロマックイーン

メジロマックイーンのトレーナー役　メジロマックイーンのトレーナー

「ウマナミ」店主　ご本人

原作者　メジロマックイーン　「メジロのグルメ」

制作　テレビメジロ

メジロのグルメ
おわり

>「ああ、お腹がすきましたわ…」
ここでﾎﾟﾝﾎﾟﾝﾎﾟﾝとカメラが引いて行く画なのは分かる

夜中にやるには少々刺激が強い…

腹減ってきちまった！
ちょっとメジロスーパーまで行ってくるわ

ナチュラルに成人しても一緒にいると思ってる…

テレビメジロ…！？

いつも何か食ってるマックイーン見てたら書きたくなりました
お嬢様がモリモリ食うグルメ番組的なの見てみたいです

店の名前それでいいのか…

>ナチュラルに成人しても一緒にいると思ってる…
いいでしょう？
一心同体ですのよ！

お嬢様キャラの「」かと思った

井戸水とか麦ジュースとか飲むコーナーも欲しいな…

>井戸水とか麦ジュースとか飲むコーナーも欲しいな…
トレーナーたちオンリー回で…

su4773317.jpg
参考資料

>井戸水とか麦ジュースとか飲むコーナーも欲しいな…
本編終わった後はマックイーンのトレーナーを中心にして毎回いろんなウマ娘のトレーナーがゲストで来たりするとよい

>su4773317.jpg
>参考資料
かーっ！うまいですわー！

>参考資料
お腹が空きますわ！
お腹が空きますわ！

こんな時間にやるなんて酷いですわ
酷いですわ

深夜の飯テロは卑怯ですわ！
深夜の飯テロは卑怯ですわ！

これマックイーンの書いた食べ歩き記をマックイーンがドラマ化したのか……

焼き肉といえばライスですわ！
ライスさんはどこですの！？

よくも夜中に放送してくれたな…！

ライスもあれで食べる方だから出たら映えるな…

原作者メジロマックイーンのフラットMEZIROはどこ…？

>原作者メジロマックイーンのフラットMEZIROはどこ…？
本人役本人だから普通に2回食べることになるだけだな…

またイメージプレイに企業を使ってる…

読み物としても普通に面白かった…

(イチャイチャしてる二人に目もくれず黙々と食べ続ける松重豊似のモブ)

ウォオン今の私はウマ娘火力発電所ですわとか言いながら食べるんだ…