「失礼します。あら……お留守でしょうか」
座学が終わった後、次の目標についてトレーナーさんと打ち合わせをしようとトレーナー室を伺ったところ。
部屋の鍵は空いていたものの、本人はいませんでした。スン、と鼻を鳴らして匂いを嗅ぎます。ウマ娘は常人よりも遥かに匂いに敏感です。
その気になれば、残滓だけである程度のことが分かります。
……この様子だと、少し席を外しただけでしょう。

机の上には次の選抜レースの出走表と、出走者の資料が置いてありました。
トレーナーさんは私がいくつかG1レースを制覇した結果を認められて、チームを持つことを学園から勧めらているようです。
その準備として、次にスカウトするウマ娘を探しているのでしょう。
道理としてわかってはいるのですが、心を平静に保つのは難しいです。共に苦難を乗り越えてきた自分だけの専属トレーナーの視線が、他のウマ娘にも向かうというのは。
チームのお局ウマ娘が有望な新人ウマ娘に嫉妬する、それを乗り越える新人ウマ娘……といった物語は世に溢れかえっており、不屈の名作もあります。
自分がそこに登場する悪役ウマ娘のような醜態を晒すことがないとは思っていますが……。

資料を手にしました。一枚一枚、鼻先に掲げます。
嗅ぎ慣れたあの人の匂いです。どれを長く手にしていたか、検討はつきます。
私は素早く3枚を抜き出しました。脚質はスプリンター、ステイヤー、ステイヤー。毛色は鹿毛、栗毛、鹿毛。体格は普通、普通、長身。
トレーナーさんが何を望んでいるのか……その共通点がないか探します。
こんなことをやるなんて、小姑のようです。はしたない。大和撫子の行いではないでしょう。しかし、自分の思考は止まりません。
一度始めたことは、最後までやりきる。それが私というウマ娘ではないでしょうか？

……あっ……もしや……これが？

「あれ、グラス。来てたのか」
トレーナーさんが部屋に戻ってきました。そして、私が手にしている資料を見てバツが悪そうな顔を浮かべました。
「あんまり見ないでくれよ。本来生徒が見て良いものじゃないんだから」
そういえばそうです。特定の生徒の個人情報の塊とも言える資料を、一生徒の私が見る権限はないでしょう。そんなことが頭から飛んでいたなんて……不覚です。
「すみません。ちょっと気になったもので……」
彼は資料をまとめて、引き出しにしまいました。私を警戒してではなく、私に配慮しているのでしょう。
こういった優しさがあるところも素敵だと思います。

「それにしても早いね。今日のトレーニングは簡単な調整だけだから、もう少しゆっくり来てもらっても良かったのに」
「次目指すレースについて、考えを共有しておきたいと思ったんです」
「わかった。俺としては……」
以心伝心。すでに考えられていたのでしょう。候補がいくつか、それに合わせたスケジュールが何パターンか提案されます。どれも理路整然としており、魅力があります。
しかし……かつてはないような隙間があることも感じます。おそらく、新人ウマ娘のための時間でしょう。そのことが先程の資料の内容と重なり、心に影を落とします。

話が一段落した時に、つい、その言葉が出てしまいました。
「トレーナーさん……私の髪、触ってみますか？」
「え？」
先程見つけた、3人のウマ娘の共通点。脚質でも体格でも気質でもありませんでした。
「お好きなんですよね？ロングストレートの髪」
ああ、言ってしまいました。もう止まりそうにありません。
トレーナーさんの顔が赤くなっていくのが分かります。彼の矜持を傷つけてしまったかもしれません。その反応を見て、かわいいと思ってしまうほどに。

トレーナーさんは私の提案に逆らうことなく、おずおずと髪に手を伸ばしました。末端に指が入ります。
「……サラサラだな。グラスの髪は」
酔ったような顔つきで、トレーナーさんはつぶやきました。
「匂いも、嗅いでもらってもいいですよ？」
まるで退廃的な文学作品のようなことまで言ってしまいました。
これはやりすぎというものでしょう。しかし、自分の言動を止めるものが見つかりません。自覚したくない嫉妬と不安が自分を後押しします。

彼が私の髪束を鼻先に近づけて数秒後、私は身を翻しました。
「自分の好みでチーム作っては、いけませんよ」
「そ、それはもちろん」
我に返ったように慌てるトレーナーさんに私は微笑みました。
「私と競い、高めあってくれる……トレーナーさんならそんな後輩を選んでくれると、私は信じていますから」
赤くなった顔隠すように、私は足早に部屋を出ました。
彼が手にしていた髪の房を手に鼻先に近づけながら当て所なく歩きます。
こんな私で、立派な先輩ウマ娘になれるのでしょうか。

……これも戦い、ですね。
自分を偽ることなく応じてみせましょう。
私はまだ見ぬチームメイトに対して、心を高ぶらせました。

これだからグラスは頼もしいんだ

抱ケーッ！！

卑しい女デース！

グラス怪文書はもっと増えてほしい…

ヤるといったヤり遂げる女デース！

グラスは怪文書でも不退転すぎる…

卑しいデーーーーーース！！！１
…あとでアタシのトレーナーの分析もしてほしいデース…

おせいそ系でもスズカさんの本能で行く感じとはまた違ったしっとり感

書いてて思ったけどこれチームに入ってくる後輩は
エルかウンス並のガッツあるハートがないとダメだわ

グラスの独占力と束縛要素が強すぎる……

新入りの子がトレーナーに恋心を抱いたらより燃え上がりそう

飄々と手玉にとってそうに見えるけど内面でやっちゃった〜〜〜ってしてるのいい…

>チームのお局ウマ娘が有望な新人ウマ娘に嫉妬する、それを乗り越える新人ウマ娘……といった物語は世に溢れかえっており、不屈の名作もあります。
学生題材の昼ドラ流行ってるのか……

グラスのしっとりとした怪文書は腎臓病に効く

新人のお出かけやバレンタインやクリスマスが全部チーム合同の茶会になりそう

そういえば覚醒上げると独占力があるんだったな…

>新人のお出かけやバレンタインやクリスマスが全部チーム合同の茶会になりそう
武士の茶会って外交だよねって

手玉にとられてますねこれは

グラスを凌ぐような才を見せる子がいたら…きっとグラスも喜んでくれると思わないか

でもグラスって手玉に取るというか普段はイニシアチブ握ってるけど不意打ちとか攻められると弱くなるの似合うよね

>>チームのお局ウマ娘が有望な新人ウマ娘に嫉妬する、それを乗り越える新人ウマ娘……といった物語は世に溢れかえっており、不屈の名作もあります。
>学生題材の昼ドラ流行ってるのか……
少女漫画の部活物ってだいたいそうじゃない？
ガラスの仮面……はちょっと違うか

>グラスのしっとりとした怪文書は腎臓病に効く
よく養生しろ

黙れ気ぶりマスクウマ娘！！

>黙れ気ぶりマスクウマ娘！！
トレーナーさんを見ろ！！

ではこうしましょう
グラスの妹来日！即チーム入り！

その時、ふと閃いた！この嫉妬心は、教え子たちとのトレーニングに活かせるかもしれない！

あの先輩絶対倒す！するタイプの後輩が入ってきたら大喜びしそうだな

>>>チームのお局ウマ娘が有望な新人ウマ娘に嫉妬する、それを乗り越える新人ウマ娘……といった物語は世に溢れかえっており、不屈の名作もあります。
>>学生題材の昼ドラ流行ってるのか……
>少女漫画の部活物ってだいたいそうじゃない？
>ガラスの仮面……はちょっと違うか
このやりとりが後にグラスの仮面という作品になるかもしれんし…

グラスを見ろデース！

そして入ってきたのがカレンチャン

エアシャカールとか入れてバチバチなチームにするデース