「近い」
「そうか」
「重い」
「そうか？」
まあ身動きが取れなくなるわけでもない。トレーニングメニューを考え、資料を作成し、レースの出走届けを提出する。
「君は生命線が長いな」
右手を持っていかれ、手のひらをスーッとなぞられる。
「こそばゆい」
「そうか」
そうしている間にも隣の愛バは指を絡め、手の大きさを比べ、俗に言う恋人つなぎを実行する。
自分とは違う、細く、しなやかな指が右手を包む。
握り返し、もう片方の手も差し出したい気持ちを【集中力】で抑え込む。まだ仕事が残っているのだ

キーボードで文字を打つのは利き手でなくても支障はない。
ないのだが、カタカタと打つ文字量が増えるにつれ右腕の占拠率も上がっていく。
最初は手のひらだけであったのが気づけば腕ごと抱きしめられている。もちろん胸も当たるしいい匂いもするがトレーナー標準装備の【鋼の意志】を発動して持ちこたえる。
そうして最後のメールに目を通そうとしたとき、画面は上へと逃げていった。
「返せ」
「なあ、トレーナー君」
パソコンをどかした彼女はこちらを向いたまま膝の上に座り、耳元でささやく。
「私と仕事、どっちが大切かな？」
「君のために仕事が大事だ」
やはり様子がおかしい。甘えるのは増えたが仕事を邪魔するほどではなかったはずだ。
今の時代、パソコンでできることのほとんどは携帯でもできる。彼女を抱きかかえながら理事長からのメールを開き……、なるほど。

「そっちにもこのメール来てたのか？」
「見えないからわからないな」
ぎゅっと抱きしめられながら返答を打つ。用件はチームを持ってみないかというもの。いずれ来る話だとは思っていたため返答はもう決まっている。
返信が完了した携帯を彼女の手に握らせる。
「これは……ふふっ。そうか、そうか！」
だいぶオブラートには包んだが、チームは組む気は無い、シンボリルドルフの担当は外れないというものである。
抱きしめる力が強まる。骨がミシミシと音をたてて軋み始めたので隣に座らせると、彼女は満面の笑みだった。
「少し不安になっていたようだ。八冠を取ったウマ娘のトレーナーを求める場所は多い。君の選択肢を奪いたくはないが私から離したくもない。二律背反というやつだな」
しかし、と一言置いてメールの文面を指さす。
「『皇帝を手放す気は微塵もない』か。私も束縛するほうではあるが、君に似たのかな？それとも君が私に似たのかな？」

彼女の走りに魅せられた。彼女の夢を共に叶えたいと思った。彼女の、皇帝の隣に立ち続けると誓った。
チームを結成することになれば俺は経験の浅い子の育成に回され、サブトレーナーが彼女の担当になるかもしれない。
仮定の話。しかし想定しただけでも虫唾が走る。嫉妬深い男である自覚はある。
絶対に逃がさない。手放したくない。俺の皇帝を、シンボリルドルフを、ルナを。
恥ずかしくて口には出せないが、彼女はお見通しだといわんばかりに笑う。

「君を信用しているし君が私を裏切らないことも知っているが、束縛していないと即バクっと食べにくる子も多いからね。私も逃がす気はないよ。トレーナー君」
生徒会室の入り口付近からやる気の下がる音がした。

本当はダメな事だけど！まだ見れてないんだけど！温泉イベントが結構湿度高いって聞いたから酒の勢いで書いちゃった！
初投稿です

いいもの書くじゃないの

2人とも重いのいいですね…いい…
これから毎日お酒を飲んでくれ

お互い重たいカップルはよいものです

>生徒会室の入り口付近からやる気の下がる音がした。
覗いていた！？

鋼の意思が発動してるところ初めて見た

一瞬ダジャレに気づかなかった
やる気の下がる音がしなかったらそのままスルーしてたかも

折角エアグルーヴが空気を読んでドアの外待機で済ませたのに…

>一瞬ダジャレに気づかなかった
>やる気の下がる音がしなかったらそのままスルーしてたかも
束縛と即バクっとか

骨がミシミシ言ってるのこわ…

ここまで的確にスキル発動してるトレーナーはじめて見た

真っ当に強い会長と重いトレーナーだ...

やはり鋼の意思はトレーナー用…

こいつ肉やったら食うんじゃね？ってぐらいの肉食ガール

重箱の隅をつついておくと
女帝のやる気が下がるのはルドルフのギャグがつまらないからじゃなくてギャグに気付けずスルーしてしまった自分への不甲斐なさとギャグをスルーされてちょっとションボリルドルフな会長に気が付いたからだよ！

それは今更だろう

>やはり鋼の意思はトレーナー用…
考えてみればトレーナー教本から学んだからそりゃそうか
つまり歴代桐生院家も…