正直な感想だった。トレーナーさんは「ジミ婚希望かー」とあきれたように呟く。
　確かにこの年で現実見過ぎなところもあるかもしれないけど、過度な期待はそれこそ毒だ。
「なんです？　トレーナーさんは目立ちたがり？」
「そうだなぁ」腕組みの姿勢から右手のみ動かして顎を撫でると彼は言う。「俺だったら嫁さん綺麗なら見せびらかしたいからなぁ」
　なるほどぉなどと軽口をたたいている間にも撮影は進み、新婦が新郎の頬にキスをする仕種を見せると聴衆が色めきだった。
　瞬間、その二人だけがスポットライトをあてられたようにはっきりと浮かび上がって見えた。アタシは瞬きも出来ず、人垣の隙間から彼女たちの顔が離れるまでを見つめ続ける。
「…ネイチャ……痛い」
　トレーナーさんが小声でささやく。気づかないうちに彼のシャツの肘あたりを強く握っていた。爪が引っかかったかもしれない。
「あ…！　ごめん…もう行こっか」
　慌てて手を離し、吹っ切るようにして足を動かす。トレーナーさんも一歩遅れて、しかしすぐに並ぶ。
「……あのね？　…アタシはちゃんとした披露宴でも別にいいよ…？」
「え？」
「え？」
　思わず口が滑った。

「号外ー！　号外だよー！」
　ゴールドシップが叫びながらビラを配るというかばら撒いている。
　その一枚を手に、トレーナーさんは眉間を押さえていた。
『ナイスネイチャ　衆人環視の中でプロポーズ！！』
　紙面にはでかでかと文字が踊り、何故か写真まで添えられていた。
「……いやー面目ない」
　先ほどまで理事長室でこってり絞られたであろう彼の顔は青白い。
『以後このような誤解を招かぬよう。精進っ！』
　とりあえずは理解してもらったらしい。
「今回は仕方ないとはいえ冗談はほどほどにしような…」
「気をつけます…」
　二人そろってベンチに座り項垂れる。
「アタシは学生だからまだ早いもんね」
「え？」
「え？」

「ごうがいー！　ごうがいだもーん！」
　ツインターボが商店街を走り抜けながらビラをばら撒いて…あ、転んだ。
　強かに顔面を打ったのでイクノを呼び出し、連れて帰ってもらう。
　その間中トレーナさんは顔を青くして立ち尽くしていた。
『ナイスネイチャ　ゴールまでカウントダウン！　あと1000日（か）！？』
　ビラに書かれた最後の（か）がすごい小っちゃい。
　けどトレーナーさんの視線は別の物を見ている。
　商店街の入り口にでかでかと掲げられた『ネイちゃん記念まで後999日』の掲示板。
「……行動はやすぎんだろ…」
「…あははぁ」
　とにかくと彼が掲示板の撤去を願い出ていると、スマホが震えた。見れば母から鬼のように着信がある。
　それを彼に告げると「…説明に行かないダメか」ため息とともに吐き出したので、
「アタシはいつトレーナーさんのご両親に挨拶に行けばいい？」
「え？」
「え？」

「号外ですわー！　号外ですわー！」
　翌朝の学園ではマックイーンが門前で一枚一枚ビラを配っていた。
　自然に受け取ると『ナイスネイチャ　トレーナーの両親とすでに懇意！？　ですが私には』それ以上読む気は起きなかった。
　トレーナーさんは今日は体調不良で休みと連絡があった。
　まぁ昨日はうちの親の説明というか説得に相当に神経をすり減らしたようだったから仕方ない。
「…いきなり子供は何人欲しいとか聞かれたら…そりゃね」
「ボクは少しキミのトレーナーに同情するよ……」
　トウカイテイオーは眼前に並べたケーキをつつきながらウンザリと言わんばかりだ。
「ネイチャの気持ちも分からないではないけどさー」
　モンブランを口に運び、「おいしー」と左手を頬に添える。
　その薬指には銀色が光っていた。真新しいそれはつい最近彼女が手に入れたものだ。
「はいはい、勝者は余裕ですこと」羨ましいとはやる気持ちを抑え、「でさ、テイオー」
　視界の端に近づいてくるツインターボたちを認めながら、言う。
「次はどんな作戦でいく？」
　キラキラふわふわ。アタシにはちょっと似合わないけど、手に入れる権利くらいはある。

>手に入れる権利くらいはある。
あるけども

抱けーっ！1000日後に抱けーっ！

強い！このネイチャさんは強いぞ！

テイオーの賢さ800くらいあるだろこれ...

>ですが私には』
これいらんやろ！

ターボはかわいいな

まーネイチャみたいな嫁さんもらえたらとは思うけどさ…

>>ですが私には』
>これいらんやろ！
ですが

私には

一心同体の

マックイーンは一心同体のトレーナーさん自慢できればなんでもいいのかよ！

天丼大盛りだ…

>マックイーンは一心同体のトレーナーさん自慢できればなんでもいいのかよ！
その通りですが

一心同体ですわ！
一心同体ですわ！

もしかしてこれ登場したウマ娘全員で外堀埋めにかかる作戦…？

人バ一体！

やはりクソボケ相手には外堀から埋める作戦が有効…

これで外堀埋まった上に否が応でもトレーナーも意識してしまうからな…

その時、ふと閃いた！
このアイディアは、義兄とのトレーニングに活かせるかもしれない！

マックイーン何してんの…

小気味よいテンポの怪文書はいいぞ

ネイチャはいたずらっ子なのはイベントでわかってるからな

我々商店街も全面的に協力するよ

なんでマックは便乗して自分の惚気をはじめるの…

転んでるターボかわいい
慰めたい
飴あげたら喜ぶかな？

>なんでマックは便乗して自分の惚気をはじめるの…
これウマ娘みんなグルでそれぞれのトレーナーゲットのために協力しあってない？

サラッとテイオーもトレーナー捕まえとる…

>転んでるターボかわいい
>慰めたい
>飴あげたら喜ぶかな？
（ターボに差し出されるサルミアッキ）

>これウマ娘みんなグルでそれぞれのトレーナーゲットのために協力しあってない？
談合…

勝利に貪欲なネイチャ良い

マエストロ発動した思ったら一息も発動してしまいに一陣の風で駆け抜けたくらいの畳み掛け

全員グル！

このテイオーは外堀埋め済みか…

口はいくらでも滑らせてよい

毎回周りにバレるのはなんなんだよ！と思ったけどまさかネイチャお前…

>毎回周りにバレるのはなんなんだよ！と思ったけどまさかネイチャお前…
結婚する頃にはもしかして気づいてなかったの？と事も無げに言いそうネイチャ

もしや理事長にも...？

これが八方にらみ…

トレーナーが病む前に何とかしろ！

>トレーナーが病む前に何とかしろ！
まぁなんていうんだろうねぇ…もしトレーナーが病気になってもネイチャさんはずっと傍についていてあげますからねーなんてこりゃまるでプロポーズだね…あはは…

ツインターボ『たち』だからマックイーンもゴルシもみんなグルだ

>まぁなんていうんだろうねぇ…もしトレーナーが病気になってもネイチャさんはずっと傍についていてあげますからねーなんてこりゃまるでプロポーズだね…あはは…
ごうがい！ごうがいだもん！！！

つよつよネイチャ怪文書は気持ちが良い

トウカイテイオーナイスネイチャツインターボゴールドシップメジロマックイーン
が一ヶ所に集まって策を練るシーンは妙に迫力がある
まあ内容はネイチャの恋愛事情なんだが

>ビラに書かれた最後の（か）がすごい小っちゃい。
東スポか！

ターボは可愛いな‥‥

ターボとマックイーンは自分達の番でも応援してもらうという条件付きかな
ゴルシは…ノリ？

クソボケ相手だとこのくらい事あるごとに畳みかけてそんなつもり無かったでは済まなくさせていかないとな

一人はみんなのために
みんなは一人のために

逆にテイオーの時とかに号外配ってるネイチャさんは可愛いとおもう

ネイチャのトレーナーは責任取らないとダメだと思う

ネイチャが協力者になると近隣商店街が丸ごと仕掛け人側に回るから強い

まぁ今告白とかしても少女特有の憧れから来る勘違いって断るだろうし‥‥
だからこうして退路を塞ぐ

なぜかトレセン学園から遠く離れた小倉商店街で「ナイスネイチャちゃん婚約おめでとうセール」が開催される