その後、新人トレーナーとしてダイワスカーレットを担当した。
常に一番を目指すため努力を重ねる彼女を応援したかったのだ。
時を同じくして理事長によって宣言されたURAファイナルズの開催。
彼女とともにその大舞台を目指すことを誓った。

…しかし、新人である自分には荷が重い話であった。
彼女の目指したトリプルティアラの夢は最後の1冠で彼女のライバルであるウオッカに阻まれ、
その後もエリザベス女王杯、大阪杯と勝ちきれず、秋の天皇賞ではなんとか勝ちを得るも有馬記念で敗れる。
URAファイナルズへの参加権も得ることが出来なかった。
結果として初代チャンピオンはウオッカが輝くこととなった。
その後、理事長主催のURAファイナルズの打ち上げに参加した。
…悔しい気持ちはもちろんあったし、これから返り咲いてやろうと二人で誓い合った。
打ち上げの片付けをしている最中、ふっと意識が遠くなる感覚を覚えた。
そして俺はそのまま意識を手放してしまった。最後に見たのは慌てるスカーレットの顔だった。

次の瞬間、俺は路地裏に立っていた。
手にはあの日貰った目覚まし時計、目の前にはあの日出会った老婆が立っている。
状況を飲み込めず辺りを見回すと老婆が口を開いた。
「その様子だと、戻ってきちまったみたいだね」
戻ってきた？どういう事だ？そう思いスマホを確認して表示された日付に驚愕した。
紛れもなく俺が買い出しをしていたあの日そのものだったのだ。
一体何が起きているのか、混乱する俺を尻目に老婆は続ける。
「一種の呪いさね、あんたは女神に選ばれちまったのさ」
呪い？選ばれた？一体どういう事だ？
「今日という日をやり直したい、そう思ったらその時計をぶっ壊しな。ただし一度に3回までだ」
言っていることが何一つ分からない。

「それじゃ、今度こそ『あんたの絶対の幸福を祈っているよ』」
そう言って老婆は踵を返して路地裏に消えていった。

その後、いろんな媒体を確認したが紛れもなく3年前と一緒であった。
URAファイナルズなんて物は存在していないし、俺は入ったばかりの新人トレーナー。
自室には新品の家具が揃い、パソコンには俺の体験した出来事など残っていなかった。
スカーレットにも出会ったが、向こうは俺のことなど知らなかった。
そこでようやく俺は3年前に戻ってきてしまったのだと思い知った。

老婆はこれを呪いと言った。ではその呪いはどうすれば解ける？
老婆は絶対の幸福を祈ると言った。幸福に絶対などあるのか？
疑問は消えなかったが、その出会いがきっかけで俺は再びスカーレットの担当となった。

その後の彼女の活躍は素晴らしいものだった。
俺の最初の3年間で得た経験を注ぎ込み、彼女は見事トリプルティアラを達成した。
その後も成果を残し続け、有馬記念でも優勝しURAファイナルズへの切符を手にした。
しかし、その決勝で敗れてしまった。
成果を残す度に彼女と勝利を分かち合い、ときには敗北を噛み締め、
…良くないことと思いつつも身体を重ねてしまったこともあった。
ファイナルズの打ち上げの後、ベッドの中で二人で来シーズンの誓いを立て、将来を誓う証として彼女に指輪を贈った。
我ながらこれ以上無いほど幸福であると感じていた。その瞬間が訪れるまでは。

強い眠気を感じ床についた次の瞬間、俺は再び路地裏に立っていた。
「おかえり、今回はどうだったんだい？」
目の前の老婆がそう語りかける。
ふざけるな、俺が何をしたというのだ。俺は幸せだったのに。
「そいつは知らん、女神様に聞いてくれ。ただ…選ばれちまった以上、あんたは普通の幸福では許されない」

脳をかき乱されそうな感覚だった。何より自分の変化が恐ろしかった。
あれだけ愛していた筈なのに、今の自分にはスカーレットへの恋慕の情が抱けないのだ。
あるのは記憶だけ。身も心も紛れもなく3年前のあの日に戻ってしまっている。
狂いそうになった。それから4ヶ月部屋から出られなかった。
そして大事なはずの模擬レースの見学をすっぽかした。
そうするとどうだろうか、俺は再び路地裏に立っていたのだ。
「狂いそうな気持ちは分からんでもないが、あんたは進まなきゃならない」
そう語る老婆に俺は尋ねる。

俺が絶対の幸福とやらを得れば、解放されるのか。
「ああ、それは保証してやろう」
絶対の幸福とはなんだ。
「それを決めるのはあたしじゃあないが…ま、妥協はするなとだけ言っておくさ」
そう言って踵を返して路地裏に消えていった。

そこから俺の戦いが始まった。試せることは片っ端から試した。
スカーレットにはミス・パーフェクトと呼ぶに相応しい成果を上げさせたし、
タキオンの薬を飲んで七色に光り彼女のプランAを完璧なものへと仕上げたし、
ゴルシと一緒に馬鹿やって、ゲートを燃やしてエデンへ辿り着いた事もあったし、
テイオーを無敗の三冠ウマ娘にして皇帝を超えさせたこともあったし、
ルドルフを史上最強の八冠ウマ娘に仕上げたことだってあったし、
ライスを名前に相応しい幸福を呼ぶ青いバラにしたこともあったし、
ハヤヒデと共に勝利の方程式を完成させたこともあったし、
バクシンオーを自他ともに認める短距離の王にしたこともあったし、
オグリを誰もが知っているアイドルウマ娘にしたこともあったし、
スズカを誰も届かない景色へ連れて行ったこともあったし、
マックイーンと一心同体の関係となり名優と呼ぶに相応しい存在にしたこともあった。
その度に俺は路地裏に戻された。

時計の使い方も理解した。そこから試行は更に増えた。
ときには担当と恋仲となり甘い時間を過ごしたこともあれば、
逆に関係が悪化して担当を外されることもあった。
3年間丸々担当と爛れた生活を続けたこともあった。
学園が丸々タキオンの実験場になってしまったこともあるし、
トレセン学園の風紀が乱れに乱れまくったこともあった。
長い積み重ねの経験を元に複数人をまとめて導いたこともあったし、
それが原因で担当同士が俺の取り合いになったこともあった。
いっそのこと男の夢であるハーレムを築こうとしたこともあったし、
誰が1着を取るかなんて賭け事に興じていたこともあったし、
学園が保育園と化すみたいな大惨事になったこともあったし、
メジロタウンとかいう謎の街が学園の側に出来たこともあった。
その度に俺は路地裏に戻された。

…こうして俺はもう何回になるか覚えてないループを繰り返している。
老婆ともすっかり顔なじみだ。
「どうだい、答えは見つかりそうかい？」
いや、さっぱりだ。
「そうか、だがあんた楽しそうだね」
人生楽しまないやつは幸福になんかなれないだろう？
「言うようになったね。んじゃ、今回もせいぜい頑張りな」
そうさせてもらうさ。

合わせたように互いに背を向けて歩き出す。
なあ女神様よ、あんたが俺に何を求めてるのかは知らないが、
俺は俺でこの状況を楽しませてもらうとするよ。

んじゃ今回は何をするか…手始めに桐生院のケツでもしばきに行くかな

目覚まし時計絡みを一度書いてみたかったので満足しまいた

気軽に何回か学園に大惨事を招くな

ｺﾜｰ…

ウララを有馬で勝たせろ

繰り返してしまった時点でもう人格は壊れてるっぽいのが…

メジロタウンは吹くわ

割と長めなのに見入ってしまった…

最初の2回はスカーレットの幸福のために使うけど最後の1回を自分のために使って地獄に落ちるんだよね...

週刊ストーリーランドっぽさある

解放されたら絶望しそう

絶望というより戻れないっていうギャップに苦しみ続けそう
過去に戻れる以上予想できない未来が怖くなるだろうし

いつか呪いが解けたときに絶望しそう

ウララ有馬チャレンジの人はちゃんと過去のキャラの育成経験を基にして有馬1位でループ抜け出してたのに‥‥

ループを戻った瞬間ループ中にやったことがただの記憶で情動とかその辺がそっくりそのまま切り取られてるから
ようやく終わった…って感想しか出ないんじゃないか抜けだしても

>んじゃ今回は何をするか…手始めに桐生院のケツでもしばきに行くかな
ここのトレーナーの目が正気の目じゃないことは分かる

>気軽に何回か学園に大惨事を招くな
たぶん時計10周目辺りで試したんだろうな…
そしてでっけぇケツしばきに行くことを考え始めたとか

ゲームのシステムとかアイテムを真面目に考えるとけっこうホラーになるよね

なんかいい雰囲気だ

>手始めに桐生院のケツでもしばきに行くかな
もう桐生院の調教手段は確立してるだろうから
桐生院は突然同期にケツをしばかれたと思ったらわけもわからないうちに情けなく絶頂することになるんだろうな

壊れてしまった・・

色んな世界線が入り混じってるのクロスオーバーっぽくて好き

>桐生院は突然同期にケツをしばかれたと思ったらわけもわからないうちに情けなく絶頂することになるんだろうな
初対面なのに自分の性感帯を全て把握してる男…

駄目だこれってなったら躊躇なく首切りそうだ

>3年間丸々担当と爛れた生活を続けたこともあった。
うらやましい…というかどうやったの…？

オールユーニードイズキルあじがある
経歴は新人の筈なのに歴戦の顔をしていてまるでこれから起こる事を知っているかのような的確なムーブ

こういうのはループ能力無くなった後にこれまで積み重ねた実力で勝負するのがアツいよね…

実際無限のループを繰り返してたらある程度はその読みで行動してるとこもあるけど
新規開拓部分で間違いなくコミュ力とか伸びてるからな…

同じ状況になったら発狂しそうですね
ですが俺には有馬での勝利を誓ったウララがいました