二次元裏@ふたば

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311265 B21/04/12(月)21:06:54No.792224044+ 22:07頃消えます
水族館、ペアチケット。
ナリタブライアンから半ば押し付けられるように渡されたそれの処理に頭を抱える。
彼女曰く「姉貴たちの為に用意したが不要になった。どうやらボケていたのは私の方だったらしい」との事。無駄に良い笑顔であった。まるで意味がわからないし不要になったからと言って私に押し付けるのは如何様な了見か。
何にせよ、手元にある以上は使わざるを得ない。
となると、誘うべき相手はただ一人。
「……まあ、別にどうという事はない。ただ労うだけだ」
まるで自分に言い訳をするかのようだが、言葉の通り大した意味はない。二人組用のチケットなのだから、水族館に誘う相手として私と共に歩むあの男の顔が浮かぶのは至極当然の事なのだ。
「……」
スマートフォンのメッセージアプリを起動し、そこで何故か指が止まる。どのような文面が良いか。水族館へ行く目的はなんだ? そう、あくまで労うだけ。緊張する事はない、筈。
「……フン」
結局、小一時間程悩んだ末に送った文章は『明日は暇か』という飾り気のないもの。
あの男ならばこの程度のメッセージで十分意図は伝わるだろう、とベッドに横になって返信を待つ事にした。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
121/04/12(月)21:07:20No.792224205+
メッセージを送って小一時間。返信は無し。既読すら無し。

メッセージを送って一時間。返信は無し。既読すら無し。

メッセージを送って二時間。返信は無し。既読すら無し。

メッセージを送って三時間。返信は無し。既読すら無し。

メッセージを送って──
221/04/12(月)21:08:13No.792224532+
「……はっ!?」
気が付くと、スマートフォンを握り締めたまま時間が飛んでいた。壁の時計を確認すると時刻は朝の8時ジャスト。
私とした事が──!
「……っ」
彼からの返信はどうか、と画面を確認するが充電が切れて液晶は真っ暗。黒い画面にただ酷く焦った表情をした私が映るだけだった。
「……身支度を済ませるか」
スマートフォンに充電ケーブルを差し込み、ベッドから起き上がる。
準備が完了した頃には充電もある程度は済んでいるだろう。

──結局、顔を洗い身支度を整えてメッセージを確認しても、既読すら付いていなかった。
321/04/12(月)21:08:46No.792224731+
自然と私の足は食堂へと向かっていた。
落胆などしていない。あの男のプライベートにまで口を出す筋合は私にはない。
気を落としてやけ食いなどするつもりもない。ただ、意図せずして体力を消耗してしまったためにその分のエネルギーを補給するだけだ。
421/04/12(月)21:08:57No.792224804そうだねx4
「……エアグルーヴ先輩、今日めっちゃ機嫌悪くない……?」

遠巻きにこちらを見やる後輩たちの声など、気になる筈もない。

「……メイク、めっちゃキメッキメだけど……」

気になる筈も、ない。

「……あ、トレーナーさんにデートすっぽかされたとか……?」

気に、

「……あ、もしかしてフられた、とか……」

521/04/12(月)21:09:38No.792225052+
食堂を出た私の足はトレーナー寮のとある一室へ。
昼を過ぎても未だに既読が付かないというのはどういうことか、だとか。
念の為に電話をかけてみたが一向に出ないのは何故だ、とか。
先程の後輩の言葉で不安になったから、だとか。
決して、そういった理由ではない。
冷静に考えればあの男も社会人。休日であろうとパートナーのメッセージを無視し続けるというのはあまりに自堕落ではないだろうか。
であれば、私は活を入れる必要がある。
うむ、正当性しかないな。
「……む」
インターホンを2回、出ない。ノックを3回、出ない。
もしや外出中か? そしてスマートフォンを部屋に置き忘れたのであれば、この状況にも辻褄が合うかもしれんが。
「……戯けが。不用心にも程があるぞ」
ふとドアノブに手を掛けたら、玄関はあっさりと私を迎え入れた。
621/04/12(月)21:10:08No.792225272+
「……呆れたな」
目当ての人物はソファで寝転がっていた。
その周囲に転がる幾つかの空き缶。近付けば漂うアルコール臭。眉を顰めるのも厭わない匂い。
だらしないとしか形容する言葉のない状態。所謂ヤケ酒でもしたのだろうか。
私の理想とは程遠い姿を晒す男に思わず溜息が溢れる──が。
「いや……一体、何があった?」
思い返せば、この男が酒に溺れる姿なぞ見た事がない。
いや、それどころかビールを口にする姿すら。
その様な男が、急に酒に走る理由とは?
「ええい……仕方あるまい」
何にせよ、このまま放っておくわけにもいかない。
まずは空き缶を処理するゴミ袋を用意せねば──と気合を入れる私の耳に、か細い声が届いた。
721/04/12(月)21:10:43No.792225473+
「ルナ……行かないでくれ……」
821/04/12(月)21:11:24No.792225744+
聞いた事のない名前。聞いた事のない声音。

『もしかして、フラれたとか』

脳裏に蘇る後輩の声。この男がヤケ酒へと走った理由。
思考を巡らせるまでもなく、脳内でピースが組み上がっていく感覚。

「どうして……ルナ……」

たかが酔っ払いの寝言だ。
気にかける必要だとなどない筈なのに、何故か一笑に付す事もできなかった。
921/04/12(月)21:12:53No.792226342+
彼が目を覚ましたのは、太陽が地平線の彼方へと沈みかけた頃。
「本っ当にゴメンッ!」
目覚めて状況を理解した彼の最初の行動は見事な土下座であった。額を叩き割らんが如き勢いで頭を下げられては、怒る気も失せるというもの。
「……顔を上げろ」
「エアグルーヴ……」
態度や言葉だけではなく、心底反省の色に染まった瞳。であれば、これ以上私がとやかく言う事はない。

──やれやれ。何があったかは知らんが、酒は程々にしておけ。

ただ一言、そう口に出せばそれで終わり。
だが。
「……何故だ」
「え?」
私の口から、出た言葉は。
「何故、私ではないのだ……!」
1021/04/12(月)21:13:29No.792226600+
「ここまで貴様と歩んで来たのは私だ!」

「私は、貴様の理想で在り続けた筈だ!」

「貴様もそうだろう!?」

「……何故だ!」

「今まで! 誰よりも! 貴様の隣で、貴様を見ていたのは!」

「この、私だ!」

「ルナなどという女の事は知らんが、私に足りないものがあるならば努力する……!」

「だから……! だから……っ!」
1121/04/12(月)21:14:10No.792226835+
一度口に出してしまえば、もう抑えられなかった。
洪水のように溢れ出す感情を、ただ子供のように彼にぶつけてしまう。
それがいかに愚かな行為かを理解しておきながら、止める事ができない。
言葉を吐き尽くし息を荒げる私を前にして、彼は困ったように視線を左右に泳がせる。
お互いに次の言葉も出ないまま時計の秒針の音が室内に響き、そして。

「エアグルーヴ……ごめん……その、」

ああ、やめてくれ。
その先は聞きたくな──

「ルナってさ、俺の初恋の人の名前なんだけど」

──い?
1221/04/12(月)21:14:38No.792226994+
「本当に昔の話だよ」

「俺の地元に、ルナって年下の子がいてさ。その子もウマ娘だったんだけど、当時はよく遊んだんだ」

「だけどある日、その子は家の事情で引っ越しちゃって」

「あの頃は、ルナ行かないでーって泣いたっけな」

「俺がトレーナーになる事を目指したのもその子が理由だったんだよ、最初は」

「で、昨日ふとその事を思い出してさ。しんみりしちゃったから普段あんまり飲まない酒を飲んでみたんだけど……俺、思ってたより酒に弱かったらしくて」

「気付いたらあんな有様だったんだ」
1321/04/12(月)21:15:22No.792227293+
「…………そうか」
つまるところ。私の早とちりと勘違いでしかなかった、と。
「うん……ゴメン」
「いや……私が悪かった。それでは失礼する。急用が出来た」
「……? 今からどこへ」
「アグネスタキオンならば今日一日の記憶を消すことも可能だろう」
「いや待って!」
「ええい止めるなッ!」
彼に背を向け駆け出す──が、羞恥に焼かれた我が頭脳は足元の状況を見逃していた。
転がる空き缶を踏んづけ、勢いを付けて盛大に倒れ込む。
そして奇しくも、自ら彼へと身体を預けるような体勢となってしまった。

「エアグルーヴ」
1421/04/12(月)21:16:10No.792227604+
彼に抱き止められ、力が入らない。頬は熱く、脳は茹っている。
「……何も言うな。或いは無様だと笑え」
「いや、言わせてくれ。そしてこっちを向いてくれ」
彼に上体を起こされ、向き合う体勢となる。

「好きだ。エアグルーヴ」

「君の言う通り、君はずっと俺の理想だ」

「エアグルーヴに足りないものなんてない。あったとしても俺が埋めてやる」

「……というか、俺の方こそ足りないものだらけだよ。だからこれからも、俺と一緒にいて欲しい」

「エアグルーヴ。俺と──」
1521/04/12(月)21:17:04No.792227953+
『ブレイズ・オブ・プライド Lv.6 → Lv10』
1621/04/12(月)21:17:32No.792228139+
「……エアグルーヴ先輩、また自己ベスト記録更新だって……」

「……最近めっちゃ調子いいよね! それに何か……」

「……うん、すっごく綺麗になった……」


「お前達、トレーニング中だぞ。私語は慎め」


「あ、ごめんなさーい!!」
1721/04/12(月)21:18:02No.792228348+
「全く……」
蜘蛛の子を散らすように去っていく後輩達の姿に苦笑が溢れるが、すぐに気分を切り替えトレーニングに戻る。
コンディションは絶好調をキープしている。その後も最後の走り込みで自己ベストを更新し、今日のトレーニングは終了した。
「うん。この調子なら次のレースも問題ないな」
「ふ、当然だ。私を誰だと思っている」
「理想の女帝。あと可愛い子」
「……貴様」
「ごめんって」
「いや、許さん。これは埋め合わせをしてもらわねばな」
「埋め合わせ?」
「ああ」
1821/04/12(月)21:18:21No.792228459+
「ここに、処理に困っていた水族館のペアチケットがある。後は言わずともわかるな?」
1921/04/12(月)21:19:48No.792229004+
とても良いものを見た…
2021/04/12(月)21:20:10No.792229152+
長編女帝怪文書ありがたい…
2121/04/12(月)21:20:19No.792229214そうだねx23
ねぇでものこ初恋の子って…
2221/04/12(月)21:20:31No.792229290+
とても力作ですね
私の性癖には合っています
2321/04/12(月)21:20:34No.792229318そうだねx4
???「私は七冠バだがみんなネタに困ったら私を当てウマにすればいいと思っているんじゃないかい?」
2421/04/12(月)21:20:59No.792229478+
ねぇこれ
会長との関係が不穏すぎる
2521/04/12(月)21:21:26No.792229626+
会長は会長の専属トレーナーくんとよろしくやってるだろうし…
2621/04/12(月)21:21:46No.792229779そうだねx17
最初はガチで失恋したトレーナーと傷の舐め合いをしたりとか会長とちょっとドロっとする予定でしたが私の心が弱かったので良バ場になりました
エアグルーヴと温泉に行きたい
2721/04/12(月)21:22:11No.792229946+
会長を初恋の子と気づいているか否か…
この様子だとまだか
2821/04/12(月)21:22:19No.792230007+
若干嫌な予感もするけど良かった良かった
2921/04/12(月)21:22:43No.792230152+
これ多分ルナちゃんはトレーナーが自分に恋してたの知らなかったら多分丸く収まる
3021/04/12(月)21:22:48No.792230180そうだねx2
>最初はガチで失恋したトレーナーと傷の舐め合いをしたりとか会長とちょっとドロっとする予定でしたが私の心が弱かったので良バ場になりました
>エアグルーヴと温泉に行きたい
もっと心弱くなれ
3121/04/12(月)21:23:11No.792230329+
>最初はガチで失恋したトレーナーと傷の舐め合いをしたりとか会長とちょっとドロっとする予定でしたが
こっちも是非見せてもらいたいですよ私は
3221/04/12(月)21:23:39No.792230514そうだねx1
>これ多分ルナちゃんはトレーナーが自分に恋してたの知らなかったら多分丸く収まる
これで当時両思いだったら…
3321/04/12(月)21:24:39No.792230870+
まぁ成長した会長を見て気づかないならその程度の初恋だろう
それに会長にはすでに理解あるトレーナーがもういるだろうし・・・
3421/04/12(月)21:25:13No.792231061+
>最初はガチで失恋したトレーナーと傷の舐め合いをしたりとか会長とちょっとドロっとする予定でしたが私の心が弱かったので良バ場になりました
>エアグルーヴと温泉に行きたい
素晴らしい
この調子で良バ場女帝怪文書を書いてくれ
3521/04/12(月)21:25:48No.792231265+
これで全部会長に話したら「なんだなんだ最初に言ってくれれば受け入れていたんだがな。おっとどこかの誰かの目が怖いから、後悔するのはこれくらいにしておこうかい」とか言って女帝たきつけてくれるはず
3621/04/12(月)21:26:06No.792231388+
ルナちゃんのトレーナーとして感動の再会ルートも観たいぜ…
3721/04/12(月)21:26:28No.792231530+
まだほら…ルナって名前の別の子の可能性だってあるし…本の剣士かもしれないし…
3821/04/12(月)21:26:32No.792231553+
>これで全部会長に話したら「なんだなんだ最初に言ってくれれば受け入れていたんだがな。おっとどこかの誰かの目が怖いから、後悔するのはこれくらいにしておこうかい」とか言って女帝たきつけてくれるはず
エアグルーヴの調子が下がった
3921/04/12(月)21:26:33No.792231559+
>最初はガチで失恋したトレーナーと傷の舐め合いをしたりとか会長とちょっとドロっとする予定でしたが私の心が弱かったので良バ場になりました
>エアグルーヴと温泉に行きたい
これくらいの良馬場は心身の健康を助けるので今後もお願いしたい
それはそれとしてどうしてエアグルーヴってこんなに早とちりが似合うんだ
4021/04/12(月)21:27:07No.792231767そうだねx3
>>最初はガチで失恋したトレーナーと傷の舐め合いをしたりとか会長とちょっとドロっとする予定でしたが私の心が弱かったので良バ場になりました
>>エアグルーヴと温泉に行きたい
>これくらいの良馬場は心身の健康を助けるので今後もお願いしたい
>それはそれとしてどうしてエアグルーヴってこんなに早とちりが似合うんだ
だって女帝ぶってるけどただの高校生だからな!
4121/04/12(月)21:29:22No.792232627+
女帝だってお年頃の女の子だから修羅場になったら泣いてしまうよ…
4221/04/12(月)21:29:52No.792232822+
>???「私は七冠バだがみんなネタに困ったら私を当てウマにすればいいと思っているんじゃないかい?」
当て馬ですんでくれればいいけど
あんた本気で略奪してくパターンも多いのが問題なんだよ…
4321/04/12(月)21:31:12No.792233331+
>それはそれとしてどうしてエアグルーヴってこんなに早とちりが似合うんだ
つんとした気丈な女の子を突き崩したいという思いは誰にでもあるからだ
なお1人勝手に崩れていった奴がいるが今回はそれには深く触れないでおく
4421/04/12(月)21:31:44No.792233546+
>あんた本気で略奪してくパターンも多いのが問題なんだよ…
いいだろう?七冠バだぞ?
4521/04/12(月)21:32:58No.792234023そうだねx1
>姉貴たちの為に用意したが不要になった。どうやらボケていたのは私の方だったらしい
そうだね×1
4621/04/12(月)21:33:23No.792234154+
いいもん見せてもらったわ…
4721/04/12(月)21:33:30No.792234204+
ルナちゃんは子供の頃の私服はボーイッシュ寄りだからな…
今の会長とは結びつかんよ
4821/04/12(月)21:35:30No.792234947+
でもこれくらい優しい話の方が月曜日の夜には合ってますよ
4921/04/12(月)21:36:08No.792235186+
ルナちゃん多分子どもの頃はライオンってあだ名付けられてたろうし今とは想像つかないというか
5021/04/12(月)21:37:52No.792235788+
>ルナちゃん多分子どもの頃はライオンってあだ名付けられてたろうし今とは想像つかないというか
そのあだ名は原作で大人になってからだ
5121/04/12(月)21:41:35No.792237155+
初恋は初恋
今は今だよ
5221/04/12(月)21:41:38No.792237177+
会長は会長で理解あるトレーナーいる筈なのでまあ今となってはアレもいい思い出だったな……くらいの気持ちなんじゃないかな……
5321/04/12(月)21:42:54No.792237643+
>会長は会長で理解あるトレーナーいる筈なのでまあ今となってはアレもいい思い出だったな……くらいの気持ちなんじゃないかな……
私こういうの好き!!
5421/04/12(月)21:45:37No.792238641+
幼馴染みの特権活かしていじり倒してもいいよね
5521/04/12(月)21:46:44No.792239046+
>会長は会長で理解あるトレーナーいる筈なのでまあ今となってはアレもいい思い出だったな……くらいの気持ちなんじゃないかな……
やりすぎない程度で理解のあるトレーナー君の独占欲を煽る為のネタにするかもしれないししないかもしれない
5621/04/12(月)21:47:29No.792239322+
この世界線の女帝は会長に何があってもかなわなさそう
恋愛以外
5721/04/12(月)21:51:16No.792240688+
>幼馴染みの特権活かしていじり倒してもいいよね
エアグルーヴの前で「ふふ……あの時のようにルナとは呼んでくれないのか?」ってわざとおちょくってもいいよね……
5821/04/12(月)21:53:52No.792241634+
激しくうまぴょいされる女帝のトレーナーと別の場所で激しくうまぴょいされる会長が見れるぞ


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